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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
217/325

*** 217 決戦直前放送 *** 

 


「それではバリオン大堅牢城東側の大平原にカメラを回して、現在の戦場の様子を見てみましょう」



 画面が遠方からの俯瞰図に切り替わった。

 平原中央には決戦の舞台の印としてのポールが立っている。

 画面左手には、バリオン大堅牢城が見えていた。

 右手にはガイア国の紋章が描かれた旗が立っていたが、まだ精鋭軍の姿は全く見えない。


 カメラが大堅牢城にパンして行った。


 もともと大陸最強と言っていい大規模な城壁に守られた大堅牢城は、ここ3カ月の間にさらに防備を固められている。

 一部崩れていた城壁は完全に修復され、城壁は最も低いところでも高さ18メートルに達していた。

 城壁の上には1000基を超える大量のバリスタが配備されている。


 カメラが1基のバリスタに寄って行くと、そこには石壁の後ろに弦の引き手の兵が5名、矢の装填手が1名、そして100本を超える巨大な矢が用意されていた。


 また、城壁のやや後方一段下がったところには、通常の弓兵たちが控えている。

 それ以外にも、城壁をよじ登ってくる敵兵に対して使用するための、大量の石が蓄えられていた。



 これだけの攻城兵器対策が為されているのみならず、城壁の前にはもともとあった空濠だけでなく、この3カ月で掘られた大きな濠も存在していた。

 深さは10メートル、幅も30メートルはあるだろう。

 濠の底には大量の逆杭が刺さっており、あれだけの弓やバリスタの攻撃を掻い潜って近づき、濠を埋めて城壁を攻撃することの困難さを窺わせていた。


 さらに、城壁の正門を出た先の濠には巨大な跳ね橋が架かっている。

 濠の中ほどに造られた石造りの小島を利用した2段の跳ね橋である。

 正門の裏手には、後詰の歩兵10万が整然と並んでいる姿も見えた。



 正門を出て跳ね橋を渡った先の地点より、前方500メートルほどの部分も要塞化されている。


 高さ5メートル、長さ20メートルほどの防塁が、敵軍の進路に対して斜め方向に無数に築かれている。

 カメラがやや上空に上がると、それら防塁群は正面からやってきた敵兵を巧妙に中央に集めるためのものであることがよくわかった。

 そして中央通路の側面には、無数の矢狭間を備え、内部に大量の弓兵を隠した壁も築かれていたのである。


 すべての映像が、この大堅牢城がまさに難攻不落の大要塞であることを示していた。



 そうした防塁の前には、既に20万人の兵力が集結を終えていた。

 最前列に居るのは1万5000の弓兵である。

 その間には、矢を積んだ大きな荷車も並んでいる。

 彼らは矢を打ち尽くしたり、敵が接近して来たときには、後方に下がって正面軍の後ろにつくことになっていた。


 正面中央を固めているのは6万もの重装歩兵軍である。

 全員が巨大な盾と金属の鎧兜に身を固め、長さ4メートルはあろう長大な槍を手にしていた。

 この重装歩兵は、敵軍の突撃を跳ね返す全軍の盾でもあり、また敵の本陣を蹂躙するための矛でもある。

 その重装のために速度は遅いが、何者にも止められないその突撃は、この世界の軍事では最強の突撃部隊であった。


 重装歩兵の両脇には、左右4万ずつの軽装歩兵軍がいる。

 彼らは武装こそ軽装だが、その足で敵の側面を突くという役割を担っていた。

 さらにその両脇には、左右1万ずつもの騎兵が控えている。

 彼らは、重装歩兵が敵の正面攻撃を受け止め、軽装歩兵軍が敵側面を突いている隙に、敵軍の後方に回って包囲攻撃、もしくは敵本陣を攻撃すると言う役割を持っている。


 本隊後方には、兵5000が牽引する巨大な車輪付きのトレビュシェット500台の姿も見える。

 この世界のこの時代にしては画期的な、移動可能な遠距離投石兵器であり、その横には投石用に整形した大量の石を積んでいる荷車もあった。


 最後方は、大量の荷車とそれを引く馬、それから輜重輸卒部隊1万5000である。

 物資の総量は、この25万の超大軍の半年以上の軍事行動を可能にしている。



 まさにこの世界最強の軍事力である。

 その量、質と共に見る者全てを畏怖させる、世界最新鋭、最強の布陣であった。


 ただ……

 どうしてガイアTVは、こうした城や軍勢の配置を詳細に映すことが出来ているのか……

 まだTV中継に慣れていないガイア大陸の住民は、そんな素朴な疑問すら持たず、当代最強と言われる軍勢の威容を呆然として眺めていたのである……




 カメラが大堅牢城の天守閣部分を映し出した。

 そのままズームして寄って行く。

 そうして天守閣の内部とバルコニーにいる旧神聖騎士団の幹部たちの姿を至近距離から映し出した。



「まだ敵軍の位置は掴めないのか……」


 旧神聖騎士団東部方面軍総司令官が口を開いた。


「はっ! 騎馬斥候兵100からの報告によりますと、敵陣方向10キロ以内には何者の姿も見られないと……」


「はは、ガイア国の連中も、我が軍の威容に恐れを為しましたかな」


「いや…… あの大聖国大神殿を消し去った不可思議な力を持つ奴らめのことでございます。

 どこぞに隠れているのやも……」


「それにしても約定に定められた時刻まであと1時間もございませんぞ」


「まあよい。

 もしも時間通り現れなければ、遠征軍に予定通りガイア国への侵攻を命じるだけだ。

 守備隊10万を残して25万の軍でガイア本国を蹂躙せよ」


「「「「「 ははっ! 」」」」」




 この時点で、全世界のガイアTV視聴者のうち、軍事関係者は気づき始めていた。

 なぜこの不思議なガラスの板は、神聖騎士団の兵力だけではなく、こうした軍中枢部の軍議までをも映し出すことが出来るのか……

 これこそがガイア国の持つ恐ろしい力の一端なのではないのか……

 そう気づいて静かに油汗を流していたのである。


 まあ、それ以外の一般市民は、まるで映画のような臨場感に手に汗していただけなのであるが……




 決戦予定時刻まであと10分になった。


 そのとき、バリオン大堅牢城の東側上空に大きなガラスの板が現れた。

 高さ100メートル、幅も200メートルはあろうかという巨大な1枚板である。


 同時に前方に展開していた重装歩兵軍、軽装歩兵軍、騎馬兵軍の前後左右、隊列の上空にも、3メートル×6メートルほどのガラス板が1000個ほど現れた。

 トレビュシェット兵や輜重部隊の周囲にも現れている。


 更には大堅牢城の城壁の上、バリスタ兵や弓兵の前、城壁上空、場内の後方待機部隊の周囲にも現れた。

 天守閣の司令部の前方上空にも、特大のガラス板が出現している。



 それら総数1万近いガラス板に、突如若い男の姿が映った。


「ガイアTV視聴者のみなさま、並びに旧神聖騎士団軍のみなさま、初めまして。

 わたくしはガイア国軍総司令官代理のアダムと申します。

 ここからのガイアTV放送は、旧神聖騎士団軍のみなさまにもお届けすることにさせて頂きます。

 さて、あと10分ほどでガイア国と旧神聖騎士団軍の戦闘が始まります」


 画面下に、『戦闘開始まであと10:00』というテロップが出てカウントダウンが始まった。



「ここで、戦争に於いて最も重要な終了条件についてご連絡させて頂きます。

 この戦争は、どちらかの陣営が白い旗を掲げ、武装をその場に放棄したときに終結いたします。

 個別の兵のみなさまにつきましては、鎧兜を脱ぎ、弓、槍、剣などの武器をその場に置いて、両手を上げたときに降伏したと看做します。

 その場合は速やかに戦場を離れ、自軍の横方向に移動して下さい。


 また、停戦交渉はありません。

 つまりどちらかの完全降伏か全滅しか戦闘終了の道は無いということになります。


 それでは旧神聖騎士団軍のみなさま、正々堂々と戦いましょう。

 貴軍の奮闘を期待しています」




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