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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
216/325

*** 216 旧神聖騎士団への宣戦布告 ***

 



 バリオン大堅牢城天守閣、軍議の間。


 宣戦布告と同時にバルコニーに出現していたガラススクリーンに映像が映った。

 如何に叩こうが切り付けようが壊せぬ憎きシロモノである。

 また、軍議の場を変えても、何故かその場にいつの間にかまた設置されている憎悪の対象でもあった。



「ちゃんちゃかちゃんちゃかちゃんちゃんちゃぁ~ん♪


 みなさま、ガイア国ニュースの時間でございます。

 ガイア国は、本日、大陸西部の旧大聖国の神聖騎士団の残党に対し、宣戦布告状を送るとともに、決戦を申し入れました。

 今から3カ月後に、バリオン城に立て籠るならず者軍団に対し、ガイア国はその精鋭軍3000を派遣致してこれを殲滅致します。


 旧神聖騎士団の寄せ集め軍諸君。

 諸君には理解しがたい概念かもしれませんが、決戦のときには正々堂々と戦いましょう。


 それではみなさん、3カ月後にはまた両軍の決戦の模様を特別番組でお送りさせて頂きますのでお楽しみに♪」



 画面ではその後も大陸西部の情勢や、バリオン城周辺の様子などが映し出され、解説者とやらが詳しい解説を続けていた。

 いったい如何にしてこの城の様子などをこのように映し出せるというのだろうか。

 しかもこの映像は大陸西部5万カ所で同時に放送されているのである。


 何人かの将軍たちが、また怒りに任せてスクリーンに切りつけたが、やはり傷一つつけることが出来ずに諦めたようだ。




 総司令官はスクリーンを無視して配下の将軍たちを見渡した。


「決戦に備えて、城の東側の要塞陣地構築を急がせろ!

 3カ月後にガイア国軍を殲滅した後は、『神聖王国』の建国を宣言し、そのままガイア国に進攻してこれを占領するのだ!


 もしもあの聖職者めの報告が本当であれば、奴らの出城の宝物だけで、優に旧大聖国の富を上回るそうだ。

 我らが門出には十分な財となろう!」


「「「「「 ははっ! 」」」」」





「それじゃあアダム、3カ月もあるからたっぷりと準備しようか。

 そうだな、精鋭軍にとっても晴れ舞台だから、3カ月間みっちり訓練してもらうとしよう」


(サトルさま……

 ずいぶんと楽しそうでございますね……)


「はは、俺は前世では遠足だの旅行だのって行けたこと無かったんだけどさ。

『イベントは、その準備をしているときが一番楽しい』っていうのは本当だったんだな♪」


(はあ……)




 そうして、サトルがウキウキしながら決戦の準備と精鋭軍の訓練に励むこと3カ月。

 ついにガイア国対旧大聖国神聖騎士団の最終決戦日が訪れたのであった。



 それまでの3カ月、ガイア大陸ニュースが番宣を繰り返していたために、大陸西部8万カ所、東部6万カ所の『スクリーンの魔道具』の前は黒山の人だかりになっている。


 ま、まあ異世界らしく髪の毛の色は多様だったので、赤山や白山や青山や緑山の人だかりと言うべきかもしれないが……





 戦争開始予定の12時まであと2時間ほどになった。


「ちゃんちゃかちゃんちゃかちゃんちゃんちゃぁ~ん!


 スクリーンの前の皆さま、お待たせいたしました!

 ただいまより、【ガイアTV特別番組 ガイア国対旧大聖国神聖騎士団、最終決戦】の模様をお送りさせて頂きます。


 実況はわたくしミシュラ、解説はお馴染のベギラルムさんです。

 べギラルムさん、よろしくお願い致します」


「よろしく」


「さて、それでは決戦開始までの2時間を利用して、まずはこの決戦に至るまでの経緯と、両軍の思惑につきましてベギラルムさんに解説をして頂きましょう」


「はい。

 まずは大聖国の旧神聖騎士団側の経緯ですが、大聖国の中枢部が事実上滅んだ今、その存在意義が無くなってしまったわけです。

 ですから、彼らと致しましては、普通ならば以前の盗賊団や傭兵団に戻るしか選択肢は無かったのですな。

 ですが、彼らにとって幸いだったのが、直前に大神殿の枢機卿会議から、ガイア国侵攻のために集結を命じられていたことでした。


 そのため、この東部のバリオンの地に、既に20万人規模の軍勢が集まっていたのですね。

 もちろん当時の大聖国の命によって、充分な食料や武器も用意されていましたし。

 そこで、神聖騎士団の幹部たちは考えたのですよ。

 ここでこのまま軍事国家を作ってしまえばよいと。

 そうすれば自分たちも、一介の軍人から国王や貴族になって、贅沢な暮しが出来るようになると。


 そうした彼らにとって、3カ月前のガイア国からの決戦申し入れは僥倖でもありました。

 大陸東部各地の神聖騎士団駐屯地に連絡を取り、自分たちに合流させることで、さらなる軍備の増強を図れたのですから。


 おかげで、3カ月前には20万程だった勢力が、現在では35万程に膨れ上がっているということです。

 そうして、ここでガイア国の精鋭兵3000を打ち砕けば、もはや彼らに逆らえるものはいなくなります。

 ガイア国に勝利した暁には、『建国宣言』を発布する予定でいるそうでもありますね」



「それでは、ガイア国はどういう思惑を持っているのでしょうか?」


「はい。ガイア国は、その代表であるシスティフィーナさまの命により、このガイア大陸を統一して、争いの無い平和な国を造ることを目的としていました。

 争いだけでなく、王や貴族といった支配階級も無く、税も奴隷制も無い究極の平和国家を目指しているのです。


 そのガイア国にとって、この大陸西部で新たな軍事国家が出来るのを見過ごすわけにはいかないのですよ。

『軍事国家』といえば聞こえはいいですが、実際には農業力や生産力を持たない単なる『略奪国家』ですからね。

 しかも、もともとはガイア国に侵略することを目的に集められた軍勢なのですから。


 つまり、ガイア国にとっては、その目的を達成するためにも、また自国の安全を確保するためにも、この旧神聖騎士団の軍勢を滅ぼす必要があったわけなんです」


「今までのガイア国の大陸統一戦略は上手く行っているのでしょうか?」


「実は相当に順調に推移しています。

 現在、ガイア国は大陸全土で農民や一般市民に対し、ガイア国への移民を呼び掛けていますが、驚くほど大勢の方々がこれに応じています。


 まあ、直前にあの大聖国が教会税を引き上げていたために、このままでは奴隷として売られるか、餓死するかしかなかった住民たちにとっては、ガイア国への移住以外選択肢は無かったのでしょう。


 おかげで、このまま行けばあと1年もしないうちに、今の大陸全土のほとんどの国は人口が1千分の1ほどになって、国としての体を為さなくなっているでしょう。


 考えても見てください。

 5万の奴隷兵と5万の農業奴隷と2万の市民を所有していると豪語していた1000人の王侯貴族たちが支配していた国が、1年もしないうちに1000人の王族と貴族だけの国になってしまうのです。

 そうなってしまえば、もはや王侯貴族といえども命令する相手がいません。

 税を払ってくれる農民も市民もいません。


 今まで蓄えて来た財宝も多少は有るでしょうが、それを売るにしても、買ってくれる商人すらいなくなってしまうのです。

 当然ながら、食料を買おうにも、その食料を作ってくれる農民も、売ってくれる商人もいなくなりますからね。

 後は、王族も貴族も自ら畑を耕して自給自足する小さな村が残るだけになります。


 農業すら出来ない王族は、喰うに困ってガイア国への帰順と亡命を求めて来ることになるでしょう。


 実は既に大陸東部60カ国のうち、そうして既に滅んだというか無くなってしまった国が、もう25カ国もあるのですよ。

 この大陸西部でも遠からずそのような形になっていくことでしょう」



 すでに人口が大幅に減りつつある国の支配層は、スクリーンを見ながら身震いをしていた。



「なるほど、両陣営のこれまでの経緯はよくわかりました。

 それでは次に、この決戦が行われるに至った両陣営の思惑について、もっと具体的に教えていただけませんでしょうか。

 確かガイア国は大陸東部ではこのような決戦は行っていなかったということですが、何故この西部ではこのような決戦を申し入れたのでしょう?」


「それは、この大陸西部では、大陸東部とは違って戦力の2分化が起きていたからなのです」


「それはどういうことなのですか?」


「はい。

 ガイア国の代表代行サトル神さまは、東部最大の国家であるビクトワール大王国と、その主要属国10カ国の王族と上級貴族が『連合国家会議』を開いていた議場を封鎖して、全員を閉じ込めました。


 これによって、東部全域の事実上の軍の最高指導者層を捕えてしまったことになります。

 残されたのは指揮官を失った軍の兵士たちと、辺境の小国の軍勢だけでしたので、残存兵力の掃討も比較的容易だったのであります。


 ですが、この大陸西部の場合は若干様相が異なります。

 それは、68カ国が個別に抱えている軍とは別に、旧大聖国の支配権を維持するために、神聖騎士団という軍の大勢力が分散して存在していたということなのです。


 もしも神聖騎士団が、今まで通り大陸西部各地に分散して駐屯していたとすれば、サトル神さまは大陸東部と同様、彼らを各個撃破していったことと思われます。

 ですが、神聖騎士団はガイア国に侵攻するために、ここバリオンの地に集結を始めてしまっていたのです。

 その数は、3カ月前でも20万人とかなりの勢力であり、また当時健在だった大聖国枢機卿会議の決定により、大量の武器も食料も集められていたせいで、このまま国を造れるほどの勢力になっていたのです。


 ですがサトル神さまは、この状況を好機と捉えられました。

 もしもこの状況で、ガイア国精鋭軍が、完膚なきまでに旧神聖騎士団を叩けたら。

 そうしてもし彼らの全面降伏を引き出せたのなら……

 今後の大陸西部統一は、つまりは残存敵性勢力の制圧は、ガイア国にとってより容易なものになると仰っておられました」


「ということは、ガイア国にとってはただ単に勝つだけではなく、圧倒的に勝たなければならないということなのですね?」


「はい、その通りです。

 この戦いにおけるガイア国の勝利条件は、『超圧倒的勝利』です。

 そうすれば、今も抵抗を続ける諸国軍も、諦めて平和的に降伏をするかもしれませんから」


「それにしてはガイア国の軍勢は、いくら精鋭兵であると言っても3000しかいないそうですが……

 神聖騎士団軍の35万に比べて100分の1以下では、圧倒的勝利は難しいのではないでしょうか?」


「はは、ガイア国には現在移民も含めて800万の人口があります。

 つまり、この世界の人口の3分の1近くを有しているのです。

 ですから、本気になれば300万の兵力を投入することも可能なのですが……

 でもそれでは、『超圧倒的勝利』とは言えないでしょう。

『超圧倒的兵力』とは言えるでしょうが。


 真の『超圧倒的勝利』とは、3000の兵が100倍以上の35万の軍勢を圧倒して完全降伏に追い込んだとき、それこそが『超圧倒的勝利』と言えるものになるのではないでしょうか」


「サトル神さまは、それだけの精鋭軍を組織されたということなのですね」


「わたくしも詳細は知らされていないのですが、あのサトル神さまのことですから、また相当な『やり過ぎ』戦力をご用意されたことと思います……」




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