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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
215/325

*** 215 集結する旧大聖国神聖騎士団 ***

 



 大陸西部の覇者、大聖国の中枢部は崩壊させたが、まだまだ西部には67の王族・貴族が支配する国が残っていた。

 当然のことながら、奴らは大聖国がマヒしている隙に、勢力の拡大を目論んで動き始めたんだ。


 そこで俺は、大陸東部の国々の国境沿いに埋め込んでいた土台の上に城壁を造り始めた。

 まあ、城壁ブロックは予め作ってあったし、魔法マクロも組んであったからそれほど大変な作業でもない。


 小国は国単位で、大国は3~5つほどの地域に分割して囲い込む、総延長8万キロの大工事だったけど、もう『神界土木部』の連中も『神界防衛軍特殊工兵部隊』の連中も相当に魔力が上がって来てるからな。

 アダムも参加すれば6時間ほどで造れる計算だったから、またガイアTVで特番を組んで、大陸西部に一斉放送しながら城壁を組み上げて行ったんだ。



 因みに俺は1人で別作業だ。

 各国とも軍事国家と言っていい国だから、王城を囲む城壁もそれなりに立派な物を持ってたんだけど、その周囲に別途巨大な城壁を作ってやったんだよ。

 連中って、イザというときのために、国軍も近衛軍も王城内に宿舎や本部を置いてたから、城壁で囲ってしまえば一網打尽に出来るからラクチンだろ。


 もちろん出入り口の城門は1か所にしか作ってやらなかったけどな。

 食料やら一般人やらの出入りは自由だけど、もしも武装して周辺各国に侵攻なんかしようとしたら、全軍そのまま封じ込めた後に収容所に転移させることにしている。



 そんな大建築の様子をTVで流したもんだから、一般住民はともかく各国の支配層は相当にショックだったみたいだ。


 まあなにしろ、王城に設置されたスクリーンに自分たちの城が映ったと思ったら、それがみるみる巨大な城壁に囲まれていくんだもんなあ。

 ついでに国境線も城壁で封鎖される様子を見て、もう侵略戦争は完全に諦めたみたいだったよ。



 大規模な国家間戦争を封じ込めた後は、東部で活動していた人員を西部に送って同じことを始めさせたんだ。


 もう既に孤児院の子供たちは全員保護しているし、スラムの住民たちも子供たちを含めて、炊き出しの後に続々とサロモン商会の従業員にしている。


 そうして、人員の配置が終わると、辺境の小国から『ガイア国への移民受付』を始めさせた。

 受け入れる側も、もうみんな慣れて来てたからな。

 それに、移民を希望する側も、あの大聖国大神殿崩壊や城壁建設のTV中継を見てたもんだから、移民意欲は充分だったようだ。


 もちろんそれぞれの国で王族や貴族たちからの抵抗もあったけどさ。

 でもサロモン商会の移民受付窓口が襲撃されるたびに、それらの抵抗勢力も神界防衛軍に捕えられて数を減らして行ったんだ。






(サトルさま)


「なんだアダム?」


(大陸西部全域に散らばっていた旧神聖騎士団が、続々と東部の旧バリオン王国に移動を始めております。

 もともと大聖国大神殿より、駐屯地に守備隊を残して対ガイア国戦争のためにバリオンの地に集結するよう命令が出ていましたが、どうやらバリオン城にいる東部方面軍総司令官からの新たな指令書が届いていた模様です)


「どんな指令書なんだ?」


(旧神聖騎士団はバリオン王国に集結した後に、そこで新たに『神聖王国』を建国し、同時にガイア国を侵略してこれを征服するというものでございます。

 各地の司令官には、引き連れて来た兵の数に応じて貴族の地位を約束するとも書いてあるようでございますね)


「はは、元盗賊団が国を造ろうっていうのか。

 まあ奴らにとってみれば夢のような話だし、中央大神殿が崩壊した今となってはチャンスだと思ったんだろうなあ」


(それで如何致しましょうか?

 集結しようとしている各地の軍が、国境の城門を越えようとしたところで捕獲することも可能でございますが……)


「いや、放置しておけ。

 途中で兵糧を調達するために略奪を始めたら、今まで通り『神界防衛軍』に捕獲してもらうが、それ以外の移動はそのままにして出来るだけバリオンに集結させよう」


(よろしいのですか?

 バリオンには彼らが『バリオン大堅牢城』と呼ぶまあまあに堅固な軍事施設がございますが……)


「ヒト族の支配層の心を完全に折ってやろう。

 ヒト族最強の軍勢をガイア国軍が完膚なきまでに打ち破れば、もういかなる国も抵抗しないようになるだろうからな」


(なるほど)


「そうそう、確かバリオン大堅牢城の東側には広大な平地が広がっていたよな」


(はい。

 土地はそれなりに肥えていますが、ほとんど雨が降らず川も無いために、荒涼とした平原が広がっております)


「今日から3カ月後に、その場所で最終決戦をすることにしよう。

 バリオン城から東側10キロに高さ10メートル程のポールを立てておいてくれ。

 3カ月後に、そのポールから東側5キロ地点に、ガイア国の精鋭兵3000を派遣するから、神聖騎士団軍と最終決戦を行おうという宣戦布告を起草しておいてくれや。

 それをバリオン城に届けたら、ガイアTVでも公開するとしようか」


(畏まりました……)






 バリオン大堅牢城。

 300年ほど前に当地を平定した初代バリオン王が、平定後にその総力を投入して造り上げた城である。

 どうやら度重なる戦争で心を病んだ王が、自分の死後も一族が生きながらえて行けるように、偏執的といっていい努力をつぎ込んで造り上げた要塞だった。



 まずは選んだ地が、一筋の川も無い乾燥した平原だった。

 無論、敵軍に包囲されたときにも、敵が水を得られないとする配慮である。

 城閣そのものは、直径5キロもの範囲を、この時代としては最高の高さ15メートル、厚さ10メートルもの城壁で囲っていた。

 もちろん城壁内には数年もかけて深さ30メートルの井戸を掘り、籠城時にも充分な水が得られるようにしてある。


 特筆すべきは城壁の形状であろう。

 なんと上部は膨らみ、オーバーハングになった形をしている。

 城壁上部にも無数の建物を作り、内部には大量の弓矢や投石用の石も備蓄されている。


 無論城壁の外部には、攻城兵器を寄せ付けないための巨大な空堀もある。


 濠の幅は50メートル、深さも20メートル近く、その縁は崩れないよう丁寧に石垣も構築されていた。


 更に城閣の中央部にある城も、出入り口が一つしか無く、壁は全て厚さ10メートル近い石造りであった。

 内部には、他の城にあるような舞踏室や謁見の間などの設備は無く、迷路のような通路のそこかしこには侵入して来た敵を迎撃するための矢狭間が開いていて、天井にも無数の投石用の穴が作られていた。

 地下倉庫には小麦や木の実などの長期保存に耐える食料が大量に保存されているが、城の外側や中庭には庭園などは存在せず、すべて畑として利用可能にしてあった。


 例えこの城が10万の敵軍に包囲されても、王族とその従者たち1000人が半永久的に生きていけるだけの準備が整っていたのである。

 偏執狂の初代国王とその子孫たちが、100年を超える歳月をかけて造り上げた、守りとしては大陸最強の城であった。



 どうやら初代国王は、兵を養うためにカネを遣うよりも、こうした建物に遣った方が有意であると考えていたらしい。

 こうして、それなりの大国ながら国軍と近衛軍合わせて1万に満たない兵しか持たないバリオン王国は、度重なる侵略をも撥ね退けて、250年の時を生き延びて来たのであった。



 だが、50年ほど前に、システィフィーナ教の信者であり、神聖国から上級司教の地位を約束された国軍司令官の裏切りにより、バリオン王の一族はその系譜を絶やしていたのである。


 その上級司祭もすぐに神聖騎士団によって暗殺されたために、現在では大聖国の東部方面軍総司令部となっていた。

 つまりまあこの城は、建城から300年の歴史の中でも、武力によって陥落したことは一度も無かったのである。




 そのバリオン大堅牢城の天守閣、旧神聖騎士団軍の総司令部では、並みいる将軍たちが軍議を重ねていた。


「それで、ガイア国からの宣戦布告状がここ軍議室に今朝置いてあったということなのですな」


「そうだ、厳重な警備を掻い潜ってな」


「3カ月後に、ここバリオン大堅牢城東側の平原にて決戦ですか……」


「それにしても、決戦という割には、ガイア国軍の総兵力は精鋭軍3000しかいないとのことで……」


「うーむ。

 舐められているのかそれともそれだけしか軍がいないのか……」


「どうやら本当に、あの国には徴兵制も無く、また奴隷兵もいないとのことでございます」


「本気で3000の兵で我が軍に対抗できると考えているのか?」


「おい、我が軍の現有兵力と、3カ月後までの集結兵力予測はどうなっている」


「はっ、現在大堅牢城周辺に野営中の兵力は20万、あと3カ月以内に15万が集結完了の予定でございます」


「彼我の戦力差は100倍以上か……」


「如何に精鋭軍といえども、対抗出来る戦力は3倍まで。

 しかもこちらには大堅牢城が控えておりますからな。

 ガイア国も無謀な戦いを挑んで来たものですわ」




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