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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
212/325

*** 212 オガリクルス将軍、モテ期到来 ***

 



 大陸西部のすべての教会の破壊が終わり、俺は9時街の大通りをオガリクルスと歩いていた。


「お前たちもよく働いてくれたな。

 おかげで西部のニセ教会の権威を完全に叩き潰してやれたよ。

 ありがとう」


「もったいないお言葉を……」


「ところでさ、キングから聞いたんだけど、なんか悩み事があるんだって?

 お前みたいな強くって優しくってイケメンな奴に、悩みなんかあるとは思えんけどな。

 その歳で将軍だし、さぞかしモテるだろうに」


「はは、ヒト族のサトル神さまから見ればイケメンかもしれませんが、この顔はオーガ族から見れば異様なまでの強面こわもてなのですよ。

 だから年頃の女性達など、全く近寄って来ません」


(ベギラルムとおんなじパターンか……)



 そのとき曲がり角からリザードマン族の少女が走り出て来た。

 随分と小さいからまだ5歳位だろう。

 その子は、可愛らしいフリフリの服を着て、頭に大きなリボンをつけ、ルンルンしながらスキップしていた。


 だが……

 その少女はオガリクルスにぶつかりそうになって、慌てて止まった。

 そうしてオガリクルスの顔を見上げてしまったんだ……


「い、いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ!」


 そうして、その少女は泣きながら逃げて行ってしまったんだよ。


(そうか…… リザードマン族にとっても怖い顔だったのか……)




 その場には、少女のしっぽが残されていて、ぴったんぴったん動いていた。

 そのしっぽには、頭のリボンとお揃いの可愛らしいリボンが結ばれている。


(このしっぽ…… 地球のトカゲと同じように、外敵に襲われるとこうやって分離して、その隙に逃げるのか……)



 俺はその小さなしっぽを拾い上げた。

 あとでリザードマンの族長に持って行ってやろう。

 あー、オガリクルスがヘコみまくってるわ……


「な、なあ、そこいらの屋台でなんか貰って、そこのベンチに座らんか?」



 俺たちはハンバーガーとコーラを持ってベンチに座った。

 どうやら後ろからついて来ていたオーガ族の女の子たちも、離れたベンチに座ったようだ。



「まあお前の顔が怖いのは置いといて、『悩み』っていうのはなんなんだい?」


「はあ…… お恥ずかしい話なのですが……」


「いいじゃないか、『戦友』に話してみろよ」


「は、はいっ。

 わ、わたしは小さい頃からひたすらに鍛錬に励んで来ました。

 それこそ食事と寝る時間以外はほとんどの時間を鍛錬に費やしてきたのです。

 おかげでいつの間にやら若手リーダーなどになっていましたが……


 ですが、どう頑張ってみても族長には敵いません。

 いままで10回ほども挑みましたが、10戦全敗です。

 その族長が、サトルさまに一撃で秒殺されてしまったのですよ。

 もうわたしにはわからなくなりました……


『強さ』とはなんなのか……

『戦士』とはなんなのか……」


「なんだそんなことだったのか」


「はは、お恥ずかしいお話です。

 それで……

 もしもよろしければ、サトルさまのお考えになる『強さ』と『戦士』について、ご教授願えませんでしょうか……」


「あのさ、俺が自分からは誰にも戦いを挑んだことが無いって知ってるか?」


「そうなのでしたか……」


「そうだ、いつも必要に迫られたときか、挑まれたときだけ戦って来たんだ」


「………………」


「だから俺の考える『戦士』っていうのは、お前たちが考えるそれとはちょっと違うかもしれないんだ。

 例えば俺がみんなからそれなりに尊重されている理由、みんなから強者って認めて貰ってる理由って、『強い』からだけじゃあないと思うんだ」


「『強い』からだけではない……」


「それさ、俺がみんなを『守って』きたからじゃないかな?」


「守ってきた…… からですか……」


「そうだ。

 まず最初に必要なのは、決して『強い』ことじゃあないと思うんだよ。

 まずは『守る』ことであって、『強い』のは守るために必要だから強くあろうとしているだけなんじゃないかな。

 オーガ・キングがあれだけみんなに尊敬されているのは、キングが強いからだけじゃなくって、種族を守って来たからだと思うぞ」


「種族を守って来たから……」


「そうだ。

 だから『戦士』っていうのは、『守る人』っていう意味だと思うぞ。

 そういう意味で、お前はあのサユリィを立派に守ったじゃないか。

 だから俺は、お前を俺と同じ『守る人』だと認めて『戦友』の称号を贈ったんだからな。

 つまり『戦士』になる条件は、『いつでもどこでも誰でも、守る覚悟が出来ている』っていうことであって、決して本人の強さだけじゃあないと思うんだ。


 ヒト族の集団はそれなりに強いけど、奴らは決して『戦士』ではないだろ。

 誰かを守るどころか傷つけてるんだから。


 そういう意味で、お前はもう超一流の『戦士』だと思うぞ。

 なにしろ見ず知らずの、それもヒト族の少女を、何も考えずに自分の身を危険に晒して助けたんだからな」


「『守る覚悟』…… でございますか…… それならば……」


 はは、オガリクルスの表情が目に見えて明るくなったわ。





(ねえねえ、オガリクルスさんってカッコいいわよね。顔は怖いけど)


(あのサトル神さまと、ああして2人で語り合ってるなんて凄いわ。

 顔は怖いけど)


(それにサトル神さまから称号を頂戴したんでしょ。

 それも『サトル神さまの戦友』なんていうもの凄い称号を。

 ステキだわぁ…… 顔は怖いけど)


(あのキングさまが感激してたものね。オガリクルスはオーガ族の英雄だって。

 顔は怖いけど)



 はは、今の俺の聴覚だと、離れていてもオーガ族の女の子たちの声がよく聞こえるわ……

 それにしてもコイツの顔、そんなに怖いのかよ……



(ね、ねえ。あなた先に行きなさいよ……)


(あ、あなたこそ先に行きなさいよ……)


(じ、じゃあみんなで行かない?)


((( う、うん…… )))



 オーガ族の娘たちが近寄って来た。

 さすがに俺に直接は話しかけづらいのか、少し離れたところでおどおどしている。


「きみたち、なにか用かな?」


 彼女たちにとって俺に直接話しかけるのは無礼かもしれないが、話しかけられて答えないのはさらに無礼だと思ったんだろう。

 全員がしばらく躊躇ったあと、勇気を奮い起して話しかけて来た。


「あ、あのぉ、サトル神さま…… お、お話中失礼いたします……」


「全然構わんぞ。

 みんな好きなだけオガリクルスと話をしてみたらどうだ?」


 まあ、彼女たちがお話したいのは、俺ではなくオガリクルスだろうからな。


「「「「 あ、ありがとうございます…… 」」」」




「あの…… オガリクルスさま、さ、サインして頂けませんでしょうか?」


「サイン?」


「は、はい。

 わたし……

 オーガ族の英雄オガリクルスさまのサインが欲しいんです……」


「わ、わたしは握手してください……」


「あ、あの、わたしお弁当作って来たんです。

 よかったら食べて頂けませんでしょうか……」


「あ、ずるいずるいあなただけ!」


「わたしもお弁当作ってくればよかった……」


「あの…… 

 大陸西部でのご活躍のお話を聞かせて頂けませんでしょうか……」


「わたしたち、サトル神さまの直属オーガ部隊のお話を聞きたいんです……」



 俺は、急にモテ期の来たオガリクルスの肩をぽんぽん叩いて微笑んだ。


「さて、俺はリザードマンの大族長のところに行ってくるから、お前はお嬢さん方のお相手をしててあげてくれや……」





「やあ大族長」


「こ、これはこれはサトル神さま……

 このようなところに、ようこそお越しくださいました……」


「あのさ、さっきリザードマンの子が俺の連れにぶつかりそうになって、びっくりして泣きながら逃げてっちゃったんだけどさ。

 そのときに、このしっぽを落して行ったんだわ。

 だからこれ、返してやっといてくれないか?」


「それはそれは……

 わざわざありがとうございます。

 そのしっぽはきっとリザンナのものでございましょう。

 さっき短いしっぽのまま、泣きながら家に帰って行くところを見かけましたので」


「痛い思いさせちゃって悪かったな。

 早く精霊病院に連れてってやってくれ」


「はは、我々リザードマン族は、恐ろしい目に遭ってしっぽが千切れたときには、痛みはまったく感じませんので大丈夫でございますよ。

 それに1カ月もすれば元通りに生えて来ますし」


「そうか。それはよかった」


「そうそう、そのリボンはリザンナのお気に入りのようでしたから返してやるとして、しっぽはどうぞお召し上がりください」


「召し上がる? た、食べるのかこれ!」


「ええ、もともとは外敵に襲われたときにしっぽを落して、敵がしっぽを食べている隙に逃げるためのものでしたので。

 それでどうやら、筋肉質で美味しいしっぽになるように進化して来たようなのですよ」


「そ、そうか……」


「それに昔はしっぽは我々の非常食でもありました。

 冬など食料の乏しい時期のひもじいときには、祖父や祖母が落してくれたしっぽをよく妹と食べたものです。


 今ではサトル神さまのおかげをもちまして、まったくもってそのような必要は無くなりましたが、我々年配のリザードマンにとっては懐かしい味でもあります。

 そうですな、今度どなたかに恐ろしい思いをさせて頂いて、わたくしのしっぽを落して孫たちに食べさせてやりますかな。ははは」


「怖い思いをしないと落ちないのか?」


「ええ、不思議なことに、引っ張って千切るとそれなりに痛い思いをするのですが、恐ろしい目に遭うと痛みも無く落ちるのです。

 ですから祖父も祖母もしっぽを落すのに苦労していました……

 われわれ孫たちのために痛い思いをさせて、申し訳無かったですわ」


 なんだか大族長も遠い目をしてたよ。

 ちょっと涙目にもなってたし……



 それで、大族長の奥さんがリザンナのしっぽを焼いてくれたんで、その場で恐る恐る食べてみたんだけどさ。

 これがむちゃくちゃ旨かったんだわ。

 これ、ドラゴンのしっぽステーキとおんなじぐらい旨いぞ。





お読みいただきまして本当にありがとうございます。


唐突ですが、前作もお読み頂ければとても嬉しいです。


【初代地球王】(完結済)https://ncode.syosetu.com/n6170cu/

【プリンセスひかりのぼうけん】(完結済)https://ncode.syosetu.com/n1919cy/



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