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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
210/325

*** 210 大聖国枢機卿終了のお知らせ ***

 


 大陸西部の5万カ所を超えるスクリーンの魔道具では、ガイアTVによる大聖国の断罪が続いていた。



「システィフィーナさまがお怒りになられた3つ目の点。

 それは奴隷制度と税金の高さです。

 土も水も作物も全てはシスティフィーナさまからの賜り物なのです。

 なのに何故、システィフィーナさまを信仰すると称する教会が、農民が作る作物から税を、それも高額の税を搾取しているのでしょうか?

 しかも税が払えなかった農民を奴隷にして売り飛ばしているとは。

 これこそが大聖国の教会が、システィフィーナさまの偽りの声を広めている証拠であります」


「だからシスティフィーナさまは、その使徒にお命じになられてガイア国をお造りになられたのですね♪」


「その通りです。

 システィフィーナさまは、使徒サトルさまにお命じになられて、まず亜人・獣人を集めてガイア国を作られました。

 システィフィーナさまが愛する亜人・獣人たちが、大聖国のように好戦的な国に攻め滅ぼされるのを危惧されたからでもあります。


 そうしてシスティフィーナさまは、ガイア国の民に広大な農地と家と食料をお与えくださいました。

 よってガイア国には税金がありません。

 農民一人につき、100メートル四方の畑と作物の種も与えられますし、作物が充分に育つまでの間、食料すらも大量にお与え下さるのです。

 すべては、システィフィーナさまがガイア国に下さった賜り物なのです」


「だからガイア国の民は、あんなに幸せそうに暮らしているのですか」


「そうです。

 ですからガイア国には国王も貴族もいません。

 もちろん奴隷もいません。

 唯一国の代表であるシスティフィーナさまと、その使徒サトルさま以外はすべて平等な存在なのです」




 祈りの間に居た枢機卿猊下たちは、半数が涙を流しながら項垂れていた。


「そ、そんな……

 教会の教えがすべて間違っていたなんて……」


 だが、半数の者は激昂して叫び始めたのである。


「す、すぐにこの邪悪な姿を映し出すガラスの板を打ち壊せっ!

 そうして神聖騎士団を全軍投入して大陸全土のガラス板を排除するのだ!」


 どうやら自分たちの命令は、すべてそのまま執行されるものと信じ込んでいるようだ。


 だが…… 

 祈りの間の床の石に融合したスクリーンの魔道具は、誰がどうやっても動かせなかった。

 また、中央神殿に詰める精鋭神聖騎士団の鉄の剣をもってしても、傷ひとつつかなかったのである……




 画面では軽快な音楽が流れ始めた。


「それでは大陸西部のヒト族のみなさま。

 これよりガイア国の暮らしをご紹介させて頂きますね♪」


 そうして、画面ではいつものガイア国紹介映像が流され始めたのである。


 まずは40万人都市の大景観。

 その大通りを歩く種々雑多な22もの種族たちの幸せそうな姿。

 数万ヘクタールもの超広大な畑と、そこで元気に働く農民たち。


 そうして……

 ポテータの収穫を終えた後の、膨大な量のポテータコンテナ。

 それを畑の横で茹でて食べている数十万人に及ぶ家族連れの姿。

 さらには倉庫に積まれた標高300メートルに達する岩塩の山。

 食べ放題の巨大レストランと、広大な日用雑貨の販売スペース。

 もちろんそこにある品々は、すべてシスティフィーナさまからの賜りものであって、全部タダであることも紹介されていた。


 大陸東部全域5万のスクリーンの前の大群衆からは、盛大なため息が連続して湧き起こっている。


(なあ…… 俺たちもこの国に行けないものかな?)


(ああ、システィフィーナさまにそうお祈りしてみるか……)




「それでは、システィフィーナさまからのメッセージをお送りさせて頂きます」


 画面はシスティフィーナ初級神の御姿に切り替わった。

 それも巨大な翼を広げて、膨大な量の白い神威の粒子を振りまいている神々しい御姿である。


 ほとんどの民たちがその場に跪いた。

 数人の枢機卿までもが泣きながら跪いている。



「このガイアの地に住まうヒト族たちよ。

 わたくしは、聖職者を僭称する者たちと、暴虐の限りを尽くす各国の王族と貴族に対し、『神罰』を与えることに致しました。


 中でも特に大聖国教会の聖職者を自称する者共は許せません。

 彼らにはこれよりすぐに神罰を与えますが、それ以外にも大陸西部全域の偽りの教会は、これから1ヶ月で全て打ち壊します。

 皆、自分の目でよく見ていなさい。


 また、これより3カ月後から、各地のサロモン商会の支店に於いて、ガイア国への移民受け入れ受付を始めます」


 各地では大歓声が沸き起こった。


「心正しき者はガイア国への移民を歓迎致します。

 それでは皆、ガイア国の中央神殿でお会い出来る日を楽しみにしていますよ……」




 画面からシスティフィーナ神の姿が消えると、そこには中央大神殿の祈りの間にいる枢機卿たちが映っていた。


「に、逃げろ!」


「し、神罰を与えられてしまう!」



 だが…… いつの間にか13人の枢機卿達の周囲は、オークの像もろとも、厚さ20センチに及ぶ超強化ガラス製の檻で覆われていたのである。


 そしてさらに……


 ごごごごごごごごごごごごご……

 さらさらさらさらさらさらさらさら……



 巨大な石造りの神殿が、みるみる砂に変わっていった。

 しかもその砂も、どこへとも知れずに消えて行っているではないか。


 大陸西部のほぼすべての人々が食い入るように画面に見入っていたが、ここ大聖国中心部の大神殿の前では、数万の群衆が砂になって消えて行く大神殿を直接見つめていた。


 そうして、その土台の上に残されたのは、巨大なガラスケースに入った13人の枢機卿と醜いオークの像だけだったのである。


 カメラがズームアップして枢機卿たちに寄って行く。



「ああっ! す、枢機卿猊下がぁっ!」


 豪華な聖職者のローブを纏った枢機卿猊下のお姿が、みるみる膨らんで行く。

 顔もどんどん変形して行くではないか。


 そう……

 そこに現れたのは、完全に石像と同じオーク族に変身した13人の聖職者たちだったのであった……



「す、枢機卿がオークの姿に……」


「な、なんという醜い姿だ……」




 尚、枢機卿たちは水と最低限の食料を与えられ、そのまま一生ガラスケースの中で晒し物にされる予定である。


 こうして西の雄、大聖国中央神殿は、その経済力も権威も根底から叩き潰されたのであった……


 だがまだこれだけでは十分ではなかろう。

 大陸西部各地の上級聖職者たちの中には、これで自分も枢機卿になれるとほくそ笑んでいた者もいたのである。





 翌日。


「それじゃあオーガ族の戦士諸君! 頼んだぞ!」


「「「「「 おおおおおおおおおおおおっ! 」」」」」



 大陸西部各地の教会にオーガ族の戦士たちが現れた。

 皆白地に金糸の縫いとりがある見事な軍服を身につけている。

 そうしてオーガたちは、その手に持った巨大な金棒で教会の建物を叩き壊し始めたのだ。


「な、なんだこ奴らは……

 え、ええい! 神聖騎士団っ!

 何をしておるっ! こ奴らを成敗せよっ!」


 だが相手は超屈強なオーガ族である。

 身長は全員2メートル50センチを超えていた。


 しかも……


「け、剣が刺さらねぇ!」


「剣を叩きつけたのに、傷ひとつつかねぇ!」


 もちろんオーガ達の体はぶ厚い絶対アブソリュートフィールドに守られ、さらにサトルによって手厚い身体能力上昇の加護が掛けられていたのであった。


 そうしたスーパーオーガ族の前には、石造りの教会といえどもひとたまりも無かった。

 祈りの間はめちゃめちゃに壊され、壁もすべてブチ抜かれ、残っていたのは、あのオークに変身した石像と柱と屋根だけだったのである。


 破壊が終わるとオーガたちは勝鬨を上げて消えていった。

 あれほどいた神聖騎士団も、いつの間にか全員いなくなっている。

 後に残されたのは、これもいつの間にか醜いオークの姿になった高位聖職者だけだったのである……



 こうしてオーガ族の戦士たちは大陸西部にあった教会を全て破壊していった。

 もちろん破壊されたのは、教会の建物だけでは無く、教会の権威そのものでもあったのだが……




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