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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
208/325

*** 208 混乱する枢機卿会議 ***

 


 俺の前に、超屈強で超イケメンでもあるオーガ族の若者が進み出て来た。



「サトル神さま!

 直属軍指揮官のオガリクルスでございます!

 なんなりとご命令を!」


「あ、ありがとな。

 みんなの出番はもう少し先になると思うんで、それまで待機していてくれるかな」


「畏まりました!

 それまでは地獄の鍛錬を行いまして、お待ち申し上げておりまするっ!」


「い、いや極楽鍛錬でもいいからな……」





「なあ、オーガキング、なんだかあいつら気合いが入り過ぎててコワイんだけど」


「そうでございますか?

 あれがいつものオーガ族の若者でございますが……」


「そ、そうなのか?」


「ですがまあ、あの将軍に据えたオガリクルスの奴めは、特に強者特有の悩み事を抱えておるようでもございますが」


「どんな悩みなんだ?」


「はは、あ奴は強さは若手ナンバー1ですし、人格識見も申し分ございませぬ。

 このまま成長して行けば、間違いなく次の次の族長に選ばれることでございましょう。

 ですが、今は『強さとはなにか?』、『強者とは如何に有るべきか?』という悩み事を抱えておるのですよ。

 まあこれも若さゆえの悩みなのですが。

 この任務を無事に果たすことで、自らその答えを見出すことを期待もしております」


「そうか……」





 3カ月後……


「それでは枢機卿小会議を始めさせて頂きます。

 まずは調査部門からガイア国の内情についてのご報告をお願い致します」


「そ、それが…… 農民に扮して難民として送り込んだ調査員たちが、1人も帰って来ないのです……」


「調査員の数が足りなかったのではないか?」


「さ、最初は10名送り込んだのですが……

 なにも連絡が無かったために追加で50名、さらには追加で100名送り込みましたのですが……」


「逃亡でもされましたかな?」


「い、いえ、特に信仰心篤い者たちを選抜してございます」


「ふむ。この地よりガイア国への往復では、早馬でも2ヶ月はかかろう。

 そのうちに調査員たちも帰還するのでは?」



「『神罰軍』の編成はどうなっておるかな?」


「はい。東の旧バリオン王国に兵10万の集結が終わりました。

 特に物資食料は、30万人の2年分の備蓄が終わっております。

 それ以外にも周辺国の神聖騎士団にいつでも動員令が出せるよう、通達の準備と更なる物資の調達を進めております」


「それでは、各地の奴隷はどうなったか?

 在庫不足は解消されたのか?」


「そ、それが…… 

 かのサロモン商会が、奴隷の買い付けを成人奴隷にまで広げまして、各地の奴隷商たちの在庫がほぼゼロになりました。

 も、もちろん莫大な奴隷取引税収入は得られておりますが」


「在庫ゼロか…… 

 それでサロモン商会はいったい何人の成人奴隷を購入したというのだ」


「は、はい。合計でおよそ60万人と見込まれます」


「なんと! なぜそれほどまでの奴隷を購入したというのだ!」


「そ、それが…… サロモン商会の奴隷買い付け担当者に聞いてみても、ただ『本店の会頭の命に従ったのみ』との返事しか得られなかったということでございます」


「ふむ、それではサロモン商会の会頭にこの中央大神殿への出頭を命じよ。

 わしが直々に尋問する」


「そ、それが会頭本人は大陸東部のビクトワール大王国に居るために、出頭を命じる使者が行くのに半年、会頭がこの地に至るまでにさらに半年かかるそうでございまして……」


「それでも早馬便を出しておくように。

 出頭に応じなければサロモン商会の支店を全て接取すると言っておけ」


「はっ」



「うーむ。次の納税までにはまだ時間がございますが、東の空白地域に送り込む農業奴隷不足と、金鉱山の奴隷不足を補うにも、まだかなりの時間がかかりそうですなあ」


「金鉱山の奴隷不足はどうなっている?」


「採掘奴隷はともかく、精錬奴隷は昨年に比べまして40%も減っております」


「そんなに死んだのか」


「は、はい。人数の減少を労働時間の増加で補おうとしたところ、死亡率が上昇致しました」


「やはり信仰心薄き者共はすぐに死ぬのう。

 自らの労働が大聖国教会、ひいてはシスティフィーナさまへの奉仕だということを、もそっと知らしめる方がよいの」


「ふむ。

 それにしても、サロモン商会のせいで奴隷不足が深刻化したか……」


「これ以上精錬奴隷を減らしても意味が無かろう。

 精錬奴隷を全員採掘に回して、金鉱石の備蓄に回したらどうだろうか」


「致し方ないでしょうな。

 納税期になって納税不能者を精錬奴隷に出来るまでは、そのような態勢に致しましょうか」


「その前に、各国の街に巣食うスラムの住民共をかき集めて奴隷にしたらどうなのだ?

 奴らなら、食事の一食も振舞ってやればすぐに捕まえられるだろうに」


「そ、それが……」


「どうしたのだ」


「2ヶ月ほど前から、サロモン商会が各地のスラム街で無料の炊き出しを行い始めておりまして、その結果住民たちが続々と商会に雇われ始めております。

 もはや各地のスラム街には、ほとんど人が残っておりません」


「何故サロモン商会はそれほどまでにして人員を集めておるのだ!」


「ふ、不明です」


「それにそれほどまでに大量の人間をどこに置いているというのだ。

 場合によっては我が大聖国が奴隷として買い上げても構わぬと申し入れてみよ」


「購入した奴隷や雇い入れたスラム住民の居所も不明です。

 それに、サロモン商会は奴隷を購入することはしても、奴隷を販売することは一切しないと断られました」


「なんだと!

 奴隷とスラム住民合わせて100万人近い人数を集めたのに、居所が分からないというのか!」


「はい、皆目分かりません。

 商会の支店長たちに聞いても、本店の人事部が連れて行ったと申すだけでございました」


「ふーむ……

 どうやらなにか異常事態が起こっているようだの。

 今後は各担当部署ごとに情報を集め、1カ月後に再度枢機卿会議を開催することにしたいと思う」


「畏まりました」

「畏まりました」

「畏まりました」




 そして1カ月後……


「た、大変でございます!

 この大陸西部の辺境小国40カ国に於きまして、1カ月ほど前からサロモン商会が塩の廉売を始めておりました!

 あのズワスデン王国と同じくキロ当たり銀貨3枚での販売でございます!」


「1か月前だと!

 何故そのような重大な報告が今まで為されていなかったのだ!」


「すべてこの地より離れた辺境国家でのことでございますれば、早馬でも報告の到着に1カ月以上の日数がかかりました。

 その中でも比較的近い地域では、すでに破産した塩商人が出始めておりまして、今頃は辺境国全域で……」


「すぐにサロモン商会の特別商業免許を剥奪しろ!

 同時に神聖騎士団の懲罰部隊を差し向けて、商会の従業員を捕縛した上で岩塩を全て押収するのだ!」


「か、畏まりました……

 で、ですが、その通達が届くにも1カ月近くはかかりますので……」


「ええい! 通達配布を急がせろっ!

 もはやサロモン商会を放置するわけにはいかんのだ!」


「これで今年の塩販売収入は半分以下に落ち込むか……」


「そ、そんな……

 まだ1カ月ですし、それも辺境の小国40カ国のみですので……」


「もしも塩価格が3分の1になったら、商人どもは貯えをはたいていつもの10倍の塩を買うことだろう。

 つまり、その辺境国では、今後数年に渡って我が国の塩販売はゼロに落ち込むということだ。

 それにまだ報告が無いだけで、我が大聖国の周辺地域でも塩の廉売が始まっているかもしらんのだぞ」


「それでは神聖騎士団の懲罰部隊を急がせることとしよう。

 念のため、我が大聖国と周辺国のサロモン商会の支店を全て潰しておくように」


「はっ!」




(さてと、それじゃあそろそろ畳みかけていくか……)


(はい。神界防衛軍の特別配備も完了したとのことです。

 人員の不足部分につきましては、わたくしにも逮捕権限を与えて頂きました)


(そうか、それじゃあ岩塩鉱山と金鉱山で、大聖国が作った坑道の10メートル先までの岩塩や金鉱石を全て掘り尽くしておいてくれ)


(畏まりました)


(俺は砂金の採れる川から砂金を全部頂いておくことにしよう)





 さらに1カ月後。


「た、たいへんです!

 サロモン商会が、我が大聖国以外の全ての地域で塩の安売りを始めました!」


「し、神聖騎士団は何をしておる!

 すぐに全てのサロモン商会支店を封鎖して従業員を捕縛し、塩を押収せよ!」


「そ、それが……

 1000か所を越えるサロモンの支店に神聖騎士団を派遣したのですが……

 なぜか全員行方不明になっておりまして、誰一人として帰って来ておりません」


「な、なんだと!」


「神聖騎士団を増員せよ!」


「か、畏まりました」



「た、たたた、大変でございますっ!」


「どうしたというのだ!」


「ただいま入りました報告によれば、我が国の管理する6つの岩塩鉱山が枯渇したとのことでございます!」


「な、なんだと……」


「そ、そのようなことが起きるわけが無い……」


「岩塩の埋蔵量はあと3000年分はあるとの報告も上がっていたではないか……」


「現地からの報告によれば、鉱山の坑道が突然巨大な穴に突き当たり、その穴の中には一切の岩塩が残っていなかったそうであります!」


「あ、あの、き、金鉱山も枯渇した模様です……

 やはり坑道の先が巨大な空洞に突き当たり、金鉱石が全て無くなっていたそうでございます……」


「さ、砂金はどうなっている!」


「3週間ほど前から、いくら川底を浚っても全く砂金が採れなくなっているそうです!」


「な、なんなのだ……

 いったい何が起こっているというのだ……」



 そのとき枢機卿会議の議長席が眩い光に包まれた。

 そうしてその光が収まった後に残されていたものは……



「書状?」


「なんだこれは……」


「いったい何の書状だ……

 だ、誰か読み上げてくれ!」


「そ、それではただいま……」




【受領証】


 大聖国御中。

 貴国から我がガイア国への軍による一方的な攻撃に対し、損害賠償金を要求させて頂きましたが、いっこうにご返答がございません。

 また、合わせて潜入調査員によるスパイ行為、更には我が国のサロモン商会支店に対する不当な攻撃への賠償金を追加し、強制執行させて頂きました。

 貴国の全ての岩塩鉱山6カ所より岩塩600億トン、3カ所の金鉱山より金鉱石6兆トン、5カ所の砂金河川より金120トン、確かに受領しておりますので、ここにご連絡させて頂きます。


                        ガイア国代表代行サトル神




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