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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
207/325

*** 207 大聖国中央神殿枢機卿会議 その2 *** 

 



 3カ月後。

 大聖国中央大神殿枢機卿の間。


「それではこれより定例大聖国枢機卿小会議を開催致します。

 まずは東部教会統括担当枢機卿猊下、ガイア国との難民返還交渉についてのご報告をお願い致します」


「前回の枢機卿大会議の後、東部地区の上級司教をトップとする交渉団をガイア国の交渉窓口である出城に送りまして、先日ようやく交渉団が帰国致しましたが……」


「それで交渉の結果は?」


「は、はい、ガイア国は難民の返還を全面的に拒否して来ました。

 それどころか、我が大聖国に対し、以前の司祭の暴走による軍事行動に対し、賠償金として大金貨1000万枚を求めて来ております」


「なんという不敬な……

 これは、システィフィーナさまを信仰する我ら大聖国に対する明白な敵対行動であり、ひいてはシスティフィーナさまを冒涜する行為でもありますぞ!」


「同行した神聖騎士団は天罰を与えなかったのですかな?」


「そ、それが……

 精鋭騎士1万を同行させたのですが……

 上級司教が天罰を命じたところ、騎士1万がその場から消え失せたそうでございまして……」


「まさかそんなことが起きるわけは無いでしょうに……

 その上級司教が、交渉失敗と敗戦の責任から逃れるために虚偽の報告をしている可能性は?」


「は、はい。ただいま厳しく尋問中ではございますが……

 かの者の言うところによれば、ガイア国の交渉代表が、『大聖国神殿の言う天罰とは、たかがならず者に暴れさせるだけのことですか。それでは本物のシスティフィーナさまの天罰をお見せしましょう』と言ったそうでございまして……

 その途端に白い光が満ち溢れて騎士たちが全員気を失った後、その場から消失したと言うのです……」


「そんな莫迦な……」


「我が大聖国の神聖騎士団が、システィフィーナさまの天罰を受けるわけはありませんでしょうに」


「ふーむ。

 確かガイア国にもシスティフィーナさまを祀る神殿があるそうですが……」


「は、はいございます。

 ですが、公称信者450万のうち、そのほとんどはあの亜人と獣人共だということでございまして……」


「なんと!」


「あの汚らわしい亜人・獣人共に、こともあろうにシスティフィーナさまを信仰させているとは……」


「それは真っ向から我がシスティフィーナ教会の教義に反すること。

 それだけでガイア国は滅ぼされるに充分な存在でございますな」


「ふむ。

 それでは最終的にガイア国は攻め滅ぼすことは確定として……

 ガイア国の国力はどれほどあるのか?」


「は、はい。

 公式な軍はせいぜい数千しか持っていないようでございますが、その財力はかなりのものかと。

 かの国の出城は、高さ150メートルを超える巨大な建築物であり、その廊下には800メートルに渡って壁にガラス製の鏡が張ってあったそうでございます。

 それ以外にも壁面は金銀の装飾で覆われ、また天井からは直径数十メートルものガラス製シャンデリアが下がっていたとか……」


「なんと……」


「数千しか兵を持たぬ国が、それほどの財を持っていると言うのか……」


「それほどの財を持ちながら、我がシスティフィーナ神殿に寄進のひとつもよこさないとは……」


「それこそシスティフィーナさまを冒涜する行為ですな」


「それでは早速に『特命神罰軍』派兵の準備を始めるといたしましょうぞ」


「異議なし!」

「異議なし!」

「異議なし!」




(なあアダム、こいつらの目が欲に濁り始めたぞ)


(サトルさまが出城を超豪華にお造りになったのは、実に効果的でございましたな)


(ついでにガイア国にはほとんど軍がいないし、また徴兵制も無くて奴隷兵もいないって、もっと宣伝しておくか……)


(はい)





「それでは『特命神罰軍』の派遣準備を始めるとして、その前に情報収集として、神殿調査官をガイア国に送り込むとしようか。

 特にガイア国の財宝調査を重視して、情報収集に当たるよう指示しておくように」


「畏まりました、筆頭枢機卿猊下」


「それでは奴隷不足の件につきまして、奴隷売買担当枢機卿猊下から経過の御報告を頂戴いたします」


「はい、ここ3カ月で、配下の奴隷商人たちから上がる奴隷取引税が10倍になっております」


「それはそれは……

 それは喜ばしいこととして、なぜそのように奴隷売買が活発になっているのでしょうか?」


「それは、かのサロモン商会が大陸西部全ての国々で15歳未満の子供奴隷を全員購入したからと思われます」


「全員…… ですか……」


「奴隷商共も徐々に値上げをして行った結果、この地の全域で、子供奴隷が合計30万人、1人当たり金貨5枚(≒50万円)で売れましたので、奴隷取引税収も大金貨30万枚に達しております。

 なにしろ奴らは8歳以上の子供奴隷だけでは無く、まだロクに働けない7歳以下の幼児や乳児の奴隷ですら同額で買い取りましたからな」


「ということは……

 我が教会の孤児院の子供だけでは無く、この大陸西部全域から子供奴隷が全ていなくなったということですか……」


「それでは将来、成年奴隷が不足することになりませんか?」


「それに、サロモン商会が成年奴隷も買い始めたら?」


「それに関しまして、また現状の鉱山奴隷不足に関しましても、皆さまにご提案がございます」


「提案…… とな……」


「はい、みなさまのご了承を頂いて、今年から農民に対する税率を上げてみてはいかがでしょうか。

 現在は農業生産物に関しまして60%の税率となっており、このうち30%が所属する国への納税、そして30%が我が大聖国への納税部分となっております。

 このうち大聖国に対する納税率を10%引き上げて40%とし、全体税率を70%とすれば、納税出来なくなる者が続出すると思われます。

 奴らは家族を奴隷商に売り払う以外に納税手段がございませんので、納税不能者に対する神罰部隊も強化すれば、奴隷の在庫はあっという間に増えるでしょう」


「おお! それは実に良いお考え!」


「税収も上がって一石二鳥ですな!」


「それでは大聖国への納税部分を40%に引き上げるということで、よろしゅうございますでしょうか」


「異議なし」

「異議なし」

「異議なし」




(なあアダム、こいつら完全に阿呆だよな。

 税率上げて、払えない農民を片っ端から奴隷にしたら、肝心の農業従事者が減って、かえって税収が下がるってわかんないのか?)


(彼らにとっては、農民は単なる収奪の対象だけの存在で、実際行う農作業と税収の関係が理解出来ないのでしょうな……)


(為政者が国民の生活から乖離し過ぎるとこうなるっていう見本だな。

 俺もたまには農作業で汗をかくか……)


(昨年、1人でポテータを18万トン収穫された方が何を仰いますやら……)




「それでは今回の枢機卿会議での決定事項は、まずガイア国討伐のための『神罰軍』の準備を始めること。

 それから農民に扮した調査部隊をガイア国に送り込むこと。

 さらには農民に対する税を上げて奴隷の数を増やすことですな」


「『神罰軍』の規模は如何致しましょうか?」


「そうさの。最終的な神罰軍の編成は調査部門の調査結果を見てからにするとして、最低で10万、最大30万の編成が可能となるよう準備を始めておくように」


「畏まりました」


「それでは次回の枢機卿小会議の開催は、また3カ月後ということで……」






「サトルさま」


「あ、オーガキング。

 俺の直属軍の編成は終わったかな?」


「はい、御指示の通り若手リーダーを将軍とする、青年オーガ・ソルジャーの精鋭300を集めました。

 皆、サトルさまの御為ならば命も要らぬという誓詞に血判を押しておりまする」


「そ、そそそ、そこまでしなくっても……」


「ははは、まあそのぐらい根性のある連中だということでございます。

 どのような死地への突撃でも、寸毫ほどの迷いもなく行ってくれましょうぞ」


「そ、そそそそそ、そうか……」


「それではこちらが指揮官のオガリクルスでございます。

 なんなりとお命じくださいませ」


「つ、強そうだなぁ。それになんかむちゃくちゃイケメンじゃないか?」


「はは、オーガ族とヒト族の美意識はかなり異なっておるようでございますな。

 こ奴は『オーガ族怖い顔コンテスト』で優勝したこともあるほどの強面でございます」


「そ、そうなのか……

 俺にはキングの方がよっぽど怖い顔に見えるけど……」


「ははは、わしのリングネームは『ベビーフェイス・キング』でございますぞ」


(やっぱりリングネームあるんか……)




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