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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
205/325

*** 205 ガイア岩塩バカ売れ ***

 



 ズワスデン王国王都、王宮前広場の一等地にあった大聖国教会は、何故か巨大な白い箱に覆われていた。


 そうして、その箱の前では中級司祭閣下と、この国の塩ギルド支部長でもあるギルイラ塩商会会頭が、ぷるぷるしながら『納品書』と『請求書』を見ていたのである。



「なっ、なんということだ……」


「お、おいギルイラ!

 す、すぐにこの塩を売り捌くのだ!

 半年後までに何としてでも全部、い、いや半分でも良いから売り捌けっ!

 死ぬ気で売れっ!」


「と、ところで中級司祭閣下……

 この箱の中の塩はどうやって取り出すのでしょうか?」


「………………」


「………………」


「そ、そんなことはお前がなんとかしろっ!」




 いやそれ無理じゃね?


 高さ30メートルの箱の上にあるのは、縦横30メートル、厚さ3メートルの蓋だよ。重さも8000トンあるよ。

 それ、現代地球最大のクレーン5台使っても、持ち上げるのが精いっぱいだよ。

 箱の側面を鋼鉄製の攻城兵器でぶっ叩いても、キズもつかないし……




「とっ、取りあえずサロモン商会に乗り込むぞ!

 こ、この度外れた量の塩を返品するのだ!」





 サロモン商会前にて。


 血相を変えて駈けつけた中級司祭閣下とギルイラ商会会頭は、数千人を超える群衆を前に立ち尽くしていた……



「ど、どうしたというのだ……

 サロモン商会はまだ塩を売っているではないか……」


「おっ、おいっ!

 な、何故まだ塩を売っているのだ!

 昨夜支店に会った全ての塩を売れと言ったではないか!

 け、契約違反だ!」


「ああ、ギルイラさんじゃありませんか。

 ここの塩は今朝本店より入荷したものですので、契約違反ではございませんよ」



「こ、こらサロモン商会!

 あの莫大な量の塩を引き取れっ!

 教会が埋まってしまっているではないかっ!」


「これはこれは、ザムワール中級司祭閣下ではございませんか。

 残念ながらご返品は受け付けられないのですよ。

 それこそ契約違反になりますので」


「な、なんだと!

 神殿神聖騎士団に命じてお前を捕縛させるぞ!」


「どうぞ御随意に。

 そうそう、そういえば先ほど我が商会の大聖国支店の者が、塩採掘・販売担当枢機卿猊下に契約書と請求書をお届けしたのですが、何故か猊下はたいへんお怒りでしてね。

『中央神殿の塩専売庁を無視して、地方教会ごときが直接塩の、それもこれほどまでの大量取引をするとは何事だぁっ!』と、それはそれはえらいご剣幕で。

 中級司祭殿は、この上神聖騎士団担当の枢機卿猊下のお怒りをもお買いになられるおつもりですか……

 さすがは中級司祭さまですな。剛毅なことで」




「お、終わった……

 おいギルイラ! か、カネを貸せっ!

 金貨1000枚だ!

 すぐに逐電して、い、いや本国に戻って中央神殿で申し開きをするっ!」


「ええっ! ザムワールさまはあれほどまでに金貨をお持ちだったではないですかぁ。

 そ、それに我がギルイラ商会にももうほとんどカネは残っておりませんぞ。

 閣下の仰る通り、塩ギルドに借金までして岩塩を買い集めましたので……」


「わ、わしの金庫はあの莫迦げた塩の箱の中だ!

 いいからさらに借金してでもカネをよこせ!」


「無理ですよう」


「な、なにをキサマっ!

 お前だ! お前のせいでこんなことにっ!」


「わたしはただ閣下の言うことに従っただけですのに……」


「な、なんだとコラ!」


「い、痛い痛い痛い! なにするんですか!」


「こ、こら! わしに逆らう気か!」


「先に殴って来たのはあんたでしょうが。

 あんたのアホな知恵に乗ったおかげでわたしは破産だ……」


「ええい中級司祭に向かってアホとはなんだ!」


「ナニ行ってるんですか!

 あと1カ月もすれば中央神殿から罷免されて、一介の修道士に戻るくせに!

 それとも最悪は処刑でしょうな。

 公開処刑が行われたら、最前列で見物して差し上げますよ」


「な、なんだとこの二流破産商人!」


「なんだとはなんだこの阿呆司祭!」




「おいおい、司祭と塩商人が殴り合いの喧嘩始めたぜ……」


「うーん、『強欲司祭』対『威張りくさり商人』か……

 いい勝負じゃねぇか」


「行列に並ぶヒマ潰しにちょうどいいわ。どっちも頑張れー」






(なあアダム。

 ここまで予想通りになるとは思わなかったな)


(まあ予想通りになるようにされたのはサトルさまですが。

 それにしても……

 ウケ狙いで8万トンもの岩塩をお使いになられるとは……

 なんともはや……)


(えー、だってそうしないとエルダさまとかが、つまんないって文句言うんだもん)


(………………)


(と、ところでさ、あの行商人はどうしてる?

 マジメに塩配ってるか?)


(はい、先日最初の村でサロモン商会からの好意だと言って無料で塩を配り、随分と感謝されておりました)


(それじゃあ、あいつをサロモン商会の嘱託社員か正社員に勧誘してさ。

 この国の村に一気にサロモン商会の評判を広げて行こうぜ。

 そうすれば、移民の勧誘を始めたときにもスムーズに行くと思うんだ)


(畏まりました……)






 数日後、ズワスデン王国での一連の映像をアダムに編集して貰って、エルダさまとかに見せたんだ。

 そしたらやっぱりウケたんだけど、特に岩塩8万トン入りの巨大箱は大ウケだったわ。

 おかげで、30分ほどの映像は、そっくりそのまんま『ローゼマリーナのガイア観察日記』に添付されたみたいだ。


 次の日に族長会議でもみんなに見せたんだけど、こっちはもっとウケてたな。

 まあ、何故かサロモンだけは蒼くなって冷や汗かいてたけど……



 そしたら翌週エルダさまに頼まれちゃったんだよ。

 あの白い箱と同じ形の小さな箱に岩塩を入れたものを、10万個作ってくれって。

 中にはちゃんと教会のミニチュアも入れてくれってさ……


 なんでも【株式会社エルダーシスター】の神界支店に、銀河中から『あの岩塩を売ってくれ!』っていう問い合わせが殺到してるんだと。

 それでまあ作って差し上げたのよ。


 箱の表面に小さな丸いガラスを嵌めこむのは多少手間だけど、それでも岩塩は既にあって、箱や教会の製作も箱詰めも魔法マクロのコピペで出来るからさ。

【ミニ岩塩箱作成10万】っていう魔法マクロ作って、すぐに渡してあげたんだ。



 エルダさまは、ローゼさまに頼んで『ガイア観察日記』にCMを挿入させて貰ったそうだ。


『【ガイア岩塩販売開始!】

 あのガイア観察日記に登場した巨大岩塩箱そっくりの、サトル手作りの箱に入ったガイア岩塩(1キロ入り)の販売を始めさせて頂きます。

 販売価格はあのガイアとおなじ、ひと箱30クレジット。

 お求めは、商売の神エルダリーナの株式会社エルダーシスターまでどうぞ!』

 ってなCMを……


 エルダさま、もう『商売の神』として開き直ったな……



 そしたらさ、銀河の8800万世界から注文が超絶殺到したそうで、翌週は追加注文1億個、さらにその翌週は追加注文100億個よ。

 結果として、その年の累計出荷個数は1兆個の大台乗せになっちまったんだ。


 利益はエルダさまと俺で折半の約束だったんで、俺とシスティの口座には、年末に15兆クレジット(≒1500兆円)も振り込まれてたわ……


 さらに、俺の笑顔がプリントされた袋に入れて売り始めたもんだから、来年はもっと注文が来そうなんだと。

 まあ、いまや『ローゼマリーナのガイア観察日記』の銀河全体での週間ヒット数は、1京件の大台越えてるそうだからな。



 ところで……

 そんなんでいいのか銀河宇宙?

 特に『星起こし』の観光名所にするって、岩塩8万トンと実物大の教会が入った30メートル立方の箱の注文が5件も入ったのはどうかと思うぞ?

 まあ超大口っていうことで価格は10分の1にしてやったけど、それでも1個24億クレジット(≒2400億円)だからなぁ。



「なあアダム。

 あのウケ狙いでムダにした岩塩8万トンも、これで十分元は取れたな」


(わたくし…… 

 知的生命体の精神構造がわからなくなって来ました……)





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