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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
196/325

*** 196 続々と人が減ってゆく国 ***

 


 そのうちに、炊き出し会場の周辺には大変な数のスラムの住民が集まり始めていた。


「サロモン商会さん本当にありがとうよ。

 久しぶりにこんな旨いものハラいっぱい食べられたよ。

 だけど、お礼をしたくてもなんにも持ってないんだ」


「それではもしもよろしければ、炊き出しを手伝って頂けませんか?

 料理の用意はわたくしたちが致しますけど、料理を配って頂く人手が足りないのです」


「わかった! おーいみんなぁ!

 ハラいっぱいになったら、サロモン商会さんが料理を配るのを手伝って欲しいそうだぁ!」


「「「「「 おう! 」」」」」




「こら! このようなところで何をしておる!」


「炊き出しですが……」


「勝手にそのようなことをすれば、飲食店から上がる税収が減ってしまうではないか!

 キサマは厳重に取り調べる!

 おい皆の者! こ奴を逮捕して衛兵隊詰め所にしょっぴけ!」


「はいあなた方、不当逮捕でアウトぉ~!」


 びかびかびかびかびかびか!


「「「「「 うんげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~っ! 」」」」」


 また白い軍服の男たちが現れて、気絶した衛兵たちを連れて建物の裏手に消えた。




「なあなあサロモン商会さんよ。

 スラムの仲間に腹いっぱい喰わせてやってくれてるのはありがたいんだけどよ。

 おかげで俺の屋台の喰いもんがさっぱり売れなくて困ってるんだ。

 この炊き出しはいつまで続くんだ?」


「仮にあなたの屋台の食べ物が全部売れたとして、売上はいくらぐらいになりますか?」


「ん? まあそうだな、全部売れたら大銀貨3枚ほどかな」


「わかりました。

 あなたの屋台の料理をすべて大銀貨5枚で買い取ります。

 屋台をこちらに移動させて、みなさんに料理を振舞ってください」


「ま、マジかよ!」


「あなたは他の屋台の経営者もご存じですか?」


「あ、ああ…… 一応屋台組合の幹事をしてるんだが……」


「それでは他の屋台の方々にも声をかけて下さい。

 同じように私どもが料理をすべて買い上げますから」


「ほ、ほんとかよ……」


「ですが、価格についてはあなたが責任を持って監督してください。

 虚偽申告でボロ儲けなどしようとしたら、その屋台は出入り禁止にしますし、出入り禁止の店が5軒に達したら屋台の買い上げは中止します」


「わ、わかった!」




 腹いっぱいになった連中は、皆建物の中に入って行っている。

 まあなにしろ中は暖かいからな。


 そうして建物内の広間では、『サロモン孤児院の紹介』とか『ガイア国移民のご案内』とかの映像が、巨大スクリーンで常に流されているんだ。

 まあ、紹介映像だけだと飽きるだろうから、合間には『地球産動物アニメ』とか『ガイア国の人気ユニットの歌と踊り』とかも流してるけど。

 みんなそんな映像なんか見たこと無いもんだから、口開けて夢中で見入ってるよ。



 こうして炊き出しを始めてから3日も経つと、スラム中の人間が集まって来るようになって、常に周辺にいるようになったんだ。

 だから周囲の建物も買い取って、映像部屋やみんなの寝場所にしてやったんだよ。

 最初からもっと建物を用意しておけばよかったわ。

 これは反省点だな。



 アダムブラザーは、そのうちにスラムの有志を集めて、動けない怪我人や病人も運び込み始めた。

 みんな腹いっぱい喰うと、そういう手伝いもしてくれるようだわ。

 その怪我人や病人も精霊診療所ですぐに治っちゃうから、おかげでますますヒトが集まるようになったんだ。


 そのうちに、まず孤児たちがみんなサロモン孤児院へ移り始めた。

 もちろん母子家庭の母子も。

 さらにガイア国への移民希望者も殺到して、次第にスラムの住民たちも減って行ったんだ。


 普通ならみんなもっと警戒したと思う。

 俺も、良くて3割ぐらいの希望者しかいないと思ってたんだけど。

 でもさ、なんかみんな『映像』で見ると、一発で信じ込んじゃうんだ。

 ま、まあ、地球でも『テレビで言ったことは全て正しい!』って思っちゃうヤツも多いからな。


 前世の俺の家の近所にもいたよ。

 テレビが『毎日クルミを食べると最高に健康にいいんですよ♪』って言ったの聞いて、毎日クルミを貪り喰ってたオバハンが……

 それで3カ月で体重が8キロ増えて、負担がかかった心臓が不整脈起こして入院してたわ。

『だってテレビで健康にいいって言ってたんだもの!』って力説してたけど……

 その番組、スポンサーがナッツ類の輸入を専門にしていた商社だっていうことには気がつかなかったみたいだな。




 こうして1カ月ほどで、その国の王都にあるスラムの住民はほとんどいなくなっちゃったんだ。

 おかげでサロモン孤児院は孤児800名を新たに収容して、ガイア国は移民希望者を3000人ゲットしたんだ。

 いやマジでこんなに上手く行くとは思わんかったわ……




 俺たちは、その国に2つあった街と18あった村でも同じことを繰り返して行った。

 まずは孤児院の孤児を全員引き取って、次にスラム街で炊き出しを始めて。

 さすがに村にはスラム街は無かったけどさ。

 でも村全体がスラムみたいなもんだから、ここでも効果は抜群だったぞ。

 中には、村長一家以外の全村民がガイア国に移民しちゃった村もあったぐらいだ。

 いつも威張り散らして命令ばっかりしていた村長は、村人が全員いなくなっちゃったんで呆然としてたわ。



 こうした大成功を見た俺たちは次の段階に進んだ。

 つまりまあ子供の奴隷の買い占めを始めたんだ。



 まずは豪勢な馬車を用意して、アダムブラザーを王都の奴隷商に送り込む。


「ようこそ我がザイリン商会へ。奴隷のお求めでございましょうか」


「うむ。私はサロモン商会の奴隷購入担当をしている者だ」


「こ、これはこれは……

 かの大陸最大のサロモン商会の方でございましたか……」


「まずは15歳未満の子供の奴隷を全員見せて貰おうか」


「畏まりました」



 アダムブラザーは、連れて来られた20人もの子供奴隷を見て、内心でため息をついた。


(皆痩せ細って…… ぼろ布しか纏っていないではないか……)


「この奴隷たちの平均価格はいくらだ?」


「はい、平均でおおよそ金貨5枚でございます……

 最高でそこの14歳の少女が金貨8枚、そこの怪我で手の動かない男の子が金貨2枚と大銀貨5枚でございます」


(平均でたったの金貨5枚(≒50万円)か……)


「この中には乳幼児がいないようだが……」


「は、はい。3歳未満の乳幼児は使い物になりませんので買い取りは致しておりません。また6歳未満の幼児も働き手にはなりませんので、7歳になるまで別室に置いてあります」


「私は15歳未満の子供を全員見たいと言ったはずだが……」


「はっ、はいっ! そ、それではすぐに連れて参りますっ!」


(それにしてもこの子たち……

 まだこんなに小さなうちから、ここまで絶望した表情をしているとはな……)




「こ、こちらが6歳未満の子供奴隷8名でございます」


「この子たちはいくらだ」


「は、はい。全員金貨3枚でございます」


「ということは全員で金貨124枚だというのだな」


「うへへへへ、5人以上お買い上げの場合には2割引きほどに……」


「それでは全員を金貨100枚で購入しよう」


「ぜ、全員でございますか!」


「なにか問題でもあるのかな?

 それならば別の奴隷商に出向くとしよう」


「め、めっそうもございません!

 そ、それでは金貨100枚ということで……」


「受け取れ」


「お、お買い上げ誠にありがとうございました。

 そ、それではサービスと致しまして、奴隷たちを洗った上で着替えもさせましょう」


「要らん。すべてはサロモン商会が準備する」


「あ、あのぉ……」


「なんだ」


「子供奴隷はまだご入用でございますでしょうか……」


「あともう少々だが」


「そ、それではぜひ1週間後にまたおいでくださいませ!

 近隣の支店から子供奴隷を集めておきますので!」


「そうか。

 ただし、急いで集め過ぎて怪我をしているような奴隷は要らんぞ。

 そのようなことがあれば、サロモン商会は今後2度とお前たちと取引をすることは無いだろう。

 そこのところは注意するように」


「は、はいっ!」




 こうしてアダムブラザーはこの国の全ての奴隷商を回り、全部で300人強の子供奴隷たちをかき集めたんだ。

 もちろん全員、ただちにサロモン商会の支店からガイア国内のサロモン孤児院に転移させた。

 そこではまず消化のいいものを腹いっぱい食べさせ、精霊病院で診察と治療を受けさせ、暖かい風呂に入らせ、そうして暖かい布団で寝かせたんだ。



 翌日には、落ち着いた子供たちに奴隷からの解放を伝える。


「あ、あの…… おいらたち、本当に働かなくっていいんか?」


「ええもちろん。その代わり学校に通ってもらいますけど」


「学校?」


「そこで字の読み方や書き方を教えてもらって下さい。

 それから数字の数え方も計算の仕方も。

 希望すればもっと高度なことも教えてもらえますよ。

 そうすれば、あたなたちも大人になったとき、自分が希望するどんな仕事にも就けるようになっているでしょう」


「そ、そこにも食べ物はあるんか?」


「もちろん。1日3回の食事が出ます。

 寝るときはまたこの部屋に戻って来て暖かいベッドで寝て下さいね」


「そ、そんな…… 俺たち奴隷だったのに……」


「うふふ、心配しないでいいんですよ。

 ここには、あなたたちみたいな子がとってもたくさんいますから」



 後で念のために孤児院に慣れた段階で奴隷だった子供たちに聞いてみたんだよ。

「生まれた村や街に帰りたいか」って。


 そしたらさ。全員が帰りたくないって言うんだわ。


「村に帰ってもまた奴隷に売られるだけだよ」


「親たちなんか子供をいつでも売り飛ばせる貯金としか思って無いからな。

 普段は畑でこき使って、カネが無くなったら売ればいいって。

 父ちゃんも母ちゃんもそう言ってたわ」


「それに、うちの親は、『農場に売られたらすぐに逃げて帰って来い!』って言うんだぜ。

 そうすればまた売り飛ばせるから」


「うちの父ちゃんなんか、俺がガキの頃はそうやって3回も逃亡したって自慢してたんだ。

 そのカネで畑を買ってこうして暮らして行けるようになったって」


(そうか…… だから奴隷の値段があんなに安かったんだな……)



「だからお願いだよ! おいらたちを村に帰さないで!」


「安心しなさい。

 あなたたちが帰りたくないのに帰すことなんか絶対にしないから。

 その代わりにお勉強頑張ってくださいね♪」


「うん。座って先生の話聞いてるだけだもんな」

「どんな畑仕事より楽だもん」

「それに食べ物もいっぱいあるし」

「お、俺、自分の名前が書けるようになったんだ……

 なんだかすっげぇ嬉しい……」




 やっぱりこのガイアのヒト族はとんでもなかい連中だったよ。

 まるで日本の昭和初期までみたいな暮らしぶりだぜ……


 ん? そうだよ。地球も日本もおんなじだったんだ。

 明治時代って、指導者層のおかげで日本が列強の仲間入りが出来たって威張ってるけどさ。

 それで支配層たちは勲章いっぱいもらって豪邸に住んでたけどさ。


 それを支えた工業力って、農村から僅かな端金で連れて来られた少年少女だったんだ。

 その僅かな金も地主さまに地代として巻き上げられてたけど。

 さらに男の子は、成長したら兵隊にされて、『お国のために死んでこい!』って言われてたんだよ。

 昭和初期には『産めよ増やせよ!』ってスローガンまで作ってたけど、あれ全部、女は軍需工場で働かせるため、男は兵として戦場で死なせるためだもんなぁ……


 まあこのガイアでも、よほどに運のいいヤツ以外には男の奴隷は成人すればほとんど奴隷兵だからな。

 まあ、昔の日本と変わらんか……




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