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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
194/325

*** 194 ガイア国大族長会議 ***

 


 大武闘大会から1週間後。


 ガイア国大族長会議が開催された。

 その場には22人の族長たちに加えて、ベギラルムとベルミア、悪魔族の子たちの代表、6人の大精霊、そして神界防衛軍の指揮官と神界防衛軍特殊工兵部隊の指揮官、それから神界土木部の代表もいる。

 加えて今回からサロモン商会会頭、サロモンも呼ばれていた。



「みんな、よく集まってくれた。

 まずは新しいメンバーであるサロモンを紹介しよう。

 サロモンはこの世界最大の商会の会頭で、今後はヒト族対策の仕事をして貰うことになる」


「ただいまサトル神さまよりご紹介に与りましたサロモンでございます。

 みなさまよろしくお願い致します」


 はは、神界の天使や神もいるからかな。

 みんなあんまりヒト族の姿に違和感を持たなくなったようだ。



「これよりみんなには、本格的なヒト族対策の準備をお願いしたいと思う。

 俺が直接協力をお願いしたい種族や部門もあるが、自分たちで出来ると思えば是非協力も申し出て欲しい。


 まずは、ヒト族の移民対策だ。

 みんなも知っての通り、現在大陸西部の旧サンダス王国周辺地域より膨大な数の移民が流れ込んで来ている。

 現時点でその数は90万人に達しており、これからもどんどん増えて行くだろう。

 アダムの推定によれば、最終的には1300万人に達するとのことだ。

 それとは別に捕獲した捕虜は500万人に達するだろう」


 どよめきが広がった。


「移民希望者には、まずヒト族収容所で充分な休養と栄養を取って貰い、同時にガイアTVの視聴によってこの国のことをよく知って貰おうと考えている。

 最終的には、2万人居住可能な農村を800カ所ほど造って、自給自足体制を整えることを目標にしている。


 そこで必要になるのは、まず収容所での充分な食料と生活物資だ。

 ベギラルム、地球からの物資輸入は順調か?」


「はっ、既に代金としての金塊の移送も終了し、地球より継続して順調に物資が届いております!」


「そうか。もし足りなくなれば銀河宇宙からの輸入も行ってくれ。

 物資調達に関しては、お前に全ての権限を移譲する」


「ははっ! お任せくださいませっ!」


「ベルミア」


「はいっ!」


「現在出来上がった料理の在庫はどれぐらいあるかな?」


「現時点で1000万人の2000食分の料理が確保されています。

 食材のみであれば2400万人の80年分がございます」


 またどよめきが広がった。

 特に神界から来たメンツは驚いているようだ。


「そうか、素晴らしいな。随分と頑張ってくれていたんだ。

 ありがとう」


「もったいないお言葉……」


「ただ、移民たちの生活が軌道に乗るまで、このペースで完成品の料理を確保していってもらいたい。

 そのために必要な人員の手配は、お前にすべての権限を与える。

 各街の中央棟にある職業紹介所を活用して、必要な人員の手配を行ってくれ。

 困ったことが有れば直接俺かアダムに相談するように」


「はいっ!」


「それから、全ての移民希望者収容所に必要な食料、物資を届けるための『転移の魔道具』、料理や暖房のための『熱の魔道具』、水道確保のための水槽と水を転移させるための『転移の魔道具』などの魔道具シリーズについてだが……

 アダム、各種魔道具の在庫はどうなっている?」


「神界防衛軍特殊工兵部隊のみなさまのご協力により、現在1万人用収容所500カ所分の魔道具の備蓄が為されております」


「そうか、特殊工兵部隊のみなさん。

 ご協力誠にありがとうございます」


 神界防衛軍の司令官が微笑んだ。


「いえ、最高顧問閣下のお役に立てて幸いでございます」


「それではアダム、空いた時間を使ってあと1000カ所分の在庫確保を頼みたい。

 そんなに急がんでいいからな」


「お任せくださいませ」



「次はこれら移民希望者収容所への物資転移作業についてだが。

 これについては悪魔族の子たちに全権を委ねたいと思う。

 悪魔族5名ほどで『物資転移委員会』を作り、必要な人材を300名ほど『職業紹介所』で確保して転移作業に当たってくれ」


「「「「「 はいっ! 」」」」」


「この物資の配布に当たっては、同時にヒト族の犯罪行為が懸念される。

 暴力によって物資を支配したり、その支配した物資によって権力者になろうとする者が必ず出て来るはずだ。

 これに関しては、『神界防衛軍』の方々に収容所専任担当をお願い出来ませんでしょうか」


「畏まりました。

 その業務は我らの本分、治安維持でございます」


「どうもありがとうございます。

 以上が当面のヒト族移民希望者初期収容所の業務になる。

 続いてはヒト族の孤児保護業務だ。

 今後、大陸の東西に於いて、全ての孤児院の孤児を引き取って保護したいと考えている。

 ここにいるサロモンは、既にヒト族の孤児を5万人も養っているので、『ヒト族孤児収容所』を任せるつもりだ。


 現在収容所の設計を進めているが、設計が終わり次第建設を開始する。

 最終的にはヒト族の孤児50万人を保護することになるだろう。

 もちろん物資は充分にあるが、決定的に足りないのは保育士の数だ。

 そこで、熊人族ワーベアー大族長殿」


「はっ!」


「乳幼児のための保育士さんたちを大増員して欲しい。

 同時にヒト族の中からも保育士志望者を集めて教育もして欲しい。

 可能だろうか?」


「保育士は非常に希望者の多い職種でございます。

 間違いなく充分な人数が集まることと思います」


「そうか、さすがだな」


「ですがサトル神さま、ヒト族の乳児にミノタウロス族さんや牛人族ワーキャトルさんたちのミルクを与えても大丈夫でしょうか?」


「実は彼らのミルクは栄養分、特に乳脂肪分が豊富すぎて、ヒト族の乳児には少し重いかもしれないんだ。

 だが安心してくれ、既に2年ほど前から地球より『ヒト族乳児用ミルク』と、それを授乳する『哺乳瓶』も輸入して時間停止倉庫に在庫を溜めてあるんだ。

 そろそろ乳児50万人の10年分が溜まっていることと思う」


「そ、それはそれは……

 それほど前から事態を予測されてご準備を為されていらっしゃいましたか…… 

 畏れ入りました」


「それから猫人族ワーキャット牛人族ワーキャトル馬人族ワーホースにも保育士として働いて貰いたいんだが」


「お任せくださいサトル神さま」

「すでに保育士としてガイア国で働いている者を中心に、さっそく保育士講習会を始めましょう」


「もちろん希望者がいれば、その他の種族にも手伝ってもらいたい」


「あ、あの、サトル神さま。

 我々の種族もお手伝いさせて頂けませんでしょうか……」


「わ、我々も……」


「みんなありがとう。大いに歓迎させてもらうよ。

 フェンリー、保育所の護衛として、フェンリル族も50人ほど手伝ってもらえないだろうか」


「心得た。高齢者が喜ぶだろう」



「サトルさま」


「おお、どうしたアダム」


「以前サトルさまが盗賊団より保護された、ヒト族の女性たちを覚えていらっしゃいますでしょうか」


「覚えているとも。

 彼女たちも、もうこの国の生活に慣れたかな?」


「はい、充分に。

 それで最近彼女たちより何か仕事を与えて欲しいとの要望が上がっておりまして。

 彼女たちのリハビリを兼ねて、乳幼児孤児院の仕事を与えてみられてはいかがかと……」


「それは素晴らしい考えだ。

 よし、その業務についてはお前にすべて任せる。

 彼女たちの教育も含めて頼んだぞ」


「畏まりました……」


「それから犬人族ワードッグ狼人族ワーウルフの大族長殿」


「「ははっ!」」


「現在依頼中のガイア国の小学校と中学校に加えて、ヒト族収容所の小中学校と大人学校の管理も任せたいんだ。

 教員は今まで通りアダムブラザーが行うが、備品や文房具や給食の管理も含めてお願い出来ないだろうか。

 もちろん必要な人員の確保も頼む」


「もちろんお任せくださいませ」

「はは、皆仕事が出来て喜びますわ」



「それから精霊たちにも頼みがある」


「「「「「 はぁ~い♪ 」」」」」


「移民して来たヒト族や、これから移民して来るは、怪我や病気で相当に弱っているんだ。

 だから収容所に『精霊病院』を作って、そこでみんなを治してやって欲しい。

 お願い出来るかな」


「「「「「 わぁ~い! お任せお任せ~っ♪ 」」」」」


「神界防衛軍司令官殿、精霊病院の警護もお願い出来ますでしょうか」


「紛争地帯より逃れた難民を治療する活動の警護。

 それも我らの本分中の本分でございます」


「はは、さすがですな。

 さて、後は収容所に『スクリーンの魔道具』を配置して、そこでガイアTVの番組を流すとともに、移民希望者に料理の作り方や農作業の仕方も教えてやるとするか。

 この仕事については、アダムとイブに任せるぞ」


「「 お任せくださいませ 」」


「移民希望者や孤児の受け入れが順調に回り始めたら、次は順次ガイア大陸全土で奴隷の購入を始める。

 もちろんこのガイア国に来れば彼らはもう奴隷ではない。

 完全に移民希望者と同等の扱いになる。

 もちろん犯罪歴やE階梯によって、『犯罪者用収容所』と『一般収容所』に分けて入れることになるだろうが。


 ただし、この奴隷の大量購入によって、奴隷の価格高騰とその地域での治安悪化が予想される。

 つまり奴隷商や盗賊団共が新たな奴隷狩りを始めてしまうだろう」


 はは、みんなの表情が剣呑になったわ。


「そこで予めその対策を講じておきたい。

『神界防衛軍特殊工兵部隊』並びに『神界土木部』の諸君」


「はっ!」

「ははっ!」


「諸君には膨大な長さの城壁の土台造りをお願いしたいと思っている。

 現時点では、その総延長は16万キロ、すなわちこの星を5周するほどの距離になる予定だ。

 お願い出来るだろうか」


「はっ、紛争地域の治安維持のためにその地域を城壁で囲う。

 これこそは我々が最高顧問閣下に訓練をご依頼した本分でございます。

 いよいよ実戦訓練開始でございますな!」


「土木部にとっては得意中の得意作業でございます。

 ご恩をお返し出来る上に魔力の鍛錬にもなる最高の訓練であります」


「ありがとう。

 それではアダムから優先建設予定地の地図を受け取って工事を始めて欲しい。

 小国はその国の全周、大国は3分割か4分割して囲むことになるだろう」


「「 はっ! 」」


「神界防衛軍司令官殿」


「はい」


「奴隷購入開始と共に、その地域ではたいへんな治安悪化が予想されます。

 購入地域は当初限定されたものに致しますが、通常の治安維持業務が大変に忙しいものになってしまうと思われるのです」


「はは、おかげさまをもちまして、すでにこのガイア大陸全域にナノマシンの配備が完了致しました。それも通常の5倍の散布濃度で。

 加えて現在、ここガイアに駐屯する1個旅団5000天使の駐屯サイクルを、3カ月から1カ月に短縮する案が検討されております。

 真の実戦任務に当たる経験、そして山ほどの勲章を得る機会は、全兵士に均等に与えてやりたいですからな。

 そうなればたかが1カ月です。

 そのぐらいであれば、天使兵ならば不眠不休でも大丈夫です」


「それはどうも…… 心より感謝いたします。


 それではみんな。

 早速準備にかかってもらいたい。

 なにか少しでも問題があれば、すぐにアダムを通じて俺に連絡を取ってくれ」


「「「「「 ははっ! 」」」」」





(ふふふ、それにしても見事な会議だったことよの。

 この国には階級制も通貨も無いということだ。

 つまり通常の人々にとっては働くインセンティブがどこにも無いはずなのだ。

 にも関わらず……

 これだけの人物たちが、こうも熱心に他者への貢献のためだけに働こうとしておるとは。

 我々神界防衛軍ですら、任務であるとはいえ、勲章や昇格を楽しみにして働いている部分もあるというのに。


 いや…… 遥かな昔……

 私が期待に胸膨らませて防衛軍幼年学校の門を叩いたとき、そうした邪念はほとんど無かったか……

 ただ単に、虐げられたひとびとを守って皆に感謝される任務を望んでいただけだ。

 ここにいる者たちも皆、あのころのわたしとおなじ気持なのだろうかの……


 いや、それだけではないな。

 それだけでは今のわたしの、この5万年ぶりの高揚感が説明出来ないではないか。

 そうか……

 このリーダーに対する大いなる信頼と尊敬の為せる技か……

 それにしても凄まじいばかりのリーダーシップであることよ。

 いかに神になったとはいえ、これを実年齢僅か19歳の男が為しているとは、まさに奇跡としか思えん。


 いや……

 だからこその神界の英雄、全銀河系の英雄なのか……

 これこそが18ケタもの幸福ハピネスポイントを持っているということなのだの。

 それにしても畏れ入ったわい……)





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