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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
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*** 19 新魔法の開発と地上界への第一歩 ***

 


 俺は特訓の量を少々減らし、空いた時間でベギラルムに剣技を学び始めた。

 まだ体が出来ていないからって今までは教えてくれなかったからな。

 特に足運びやバランスのとり方を重点的に教わった。

 それから『身体強化』の魔法を使った『瞬歩』なんかもだ。


 そうそう。

 ラノベを読んで新しい魔法を開発していた大精霊たちからも、便利な魔法のマクロをたくさん教えてもらったよ。


 特に俺が重視していたのは、風魔法の上位版である雷魔法をさらに進化させた『ショックランス』の魔法だ。

 地球からスタンガンとか取り寄せて、風の大精霊シルフィーに調べてもらったし。

 もちろん俺が実験台だったけど……

 

 この『ショックランス』は、電圧も自由に調節出来て、単に相手を痺れさせて行動不能にすることから、完全に気を失わせることまで出来る。

 まだ単独の相手しか倒すことは出来ないし、射程距離も10メートル程だが、そのうちに『長距離ショックランス』や『広域ショックランス』の魔法も作れるようになるだろう。

 これで俺たちの『非致死性敵制圧能力』が格段に上がったことになる。


 また、水の大精霊ウンディーネが、マナを大量に水に溶かす『マナ水溶』の魔法を開発してくれた。

 起爆魔法陣や起爆の魔道具を開発出来れば、このマナを水ごと気化させて、ガソリンの代替物として使えるようになるだろう。

 そうすれば、地球から買って来た自動車も動かせるようになるかもしれないな。

 他にも耕運機とかコンバインとか……

 まあ、これらは技術に長けていると言われるドワーフなんかを仲間にしてからの話だろうが。


 それから俺は、『土操作』とその上位版である『岩石操作』も取得した。

 これは、単に土や岩を移動させるだけでなく、それらを使ってモノを形作れる魔法だ。

 例えば土を固めて家を作るとか、岩を粘土のように動かして石像を作るといったものだな。

 もっとも芸術の才能の無い俺だと、小学生の粘土細工みたいなものしか作れんのだが……

 まあ、その辺りは才能のありそうな土の大精霊ノームくんに任せておこう。

 彼が習作として作ってるロダンの『考える人』の模倣彫刻は素晴らしい出来だったからなあ。


 その次のステップは、土魔法の上位版である『物質抽出』の魔法だろう。

 これは鉄鉱石から純粋な鉄だけを抽出したり、海水から不純物と水を取り除いて純粋な塩化カルシウム、つまり塩を作ったり出来る魔法になるはずだ。

 その次の段階は『物質合成』かな。

 抽出した物質をいくつか合成させて、化合物とかを作る魔法になるだろう。


 直接戦闘には役に立たないだろうが、戦争行為終結後の内政に於いては要となる魔法になるから、今のうちから準備しておきたいからな。


 それからついに、光の大精霊ルクサーテムが『レーザー』の魔法を完成させた。

 まだ収束光射程距離も300メートルほどで、それより遠いとレーザー光が拡散してしまうんだけど。

 でも、100メートル先では厚さ3センチの石板を瞬断出来る力を持っているんだ。

 このまま発展すれば素晴らしい武器になるだろう。

 大陸中央部の無人地帯に、輪切りにされた石が大量に転がっていたのは見なかったことにしてやるか。




 こうして俺たちは順調に進歩していった。

 それで、とうとう俺は初めて一度地上界に降りてみることにしたんだ。


 降りる場所はもう決めてある。

 大陸中央部の大草原地帯のさらに中央だ。

 ここはまだどのヒト族の国にも属していない地域だからな。

 俺たちの国予定地への記念すべき第一歩だ。


 この場所を俺たちの国予定地に定めたのはもうひとつ理由がある。

 世界ガイア管理システムのアダムに、この大陸の住民分布を見せてもらったんだ。

 そうしたら、ヒト族は大陸東部と西部に集中して生息してたんだが、エルフやドワーフ、それから獣人種族なんかはこの大陸中央部に多くいた。

 どうもヒト族の迫害から逃れて自然に集まって来ていたらしい。


 それでは何故この大陸中央部にヒト族が住んでいないのか。

 それは北部山岳地帯の南側に広がる広大な砂漠地帯に原因があった。

 この砂漠の中央には、この世界にマナを供給するための巨大なマナ噴気孔があるんだ。

 動物や植物は、死んで土に還ると地中深くでまたマナに戻るんだが、そうして還元されたマナを世界に戻すために噴き出しているのが、この砂漠の中央にある大噴気孔だったんだ。

 まあ、神が用意してくれたこの世界のマナ循環システムだな。


 マナは全ての生き物、特に植物の生育の糧になる重要な物質だが、濃過ぎると毒にもなる。

 濃過ぎるマナの為に、如何なる生物も暮らすことが出来ずに、大噴気孔の周囲は平均半径300キロにも及ぶ大砂漠地帯になっているわけだ。


 このマナは、風で全世界に散らされる過程で空気で薄められて、主に植物の栄養や成長のエネルギーになるそうだ。

 そうして、このマナを拡散させる風を吹かせているのが風の精霊一族ということになる。

 風の大精霊シルフィーたちって、結構重要な仕事をしていたんだ。


 風の精霊たちは、北から南にかけての風を起こして、濃過ぎるマナを拡散させていた。

 そのため、砂漠は南北に引き伸ばされた楕円形の形をしている。

 南に行ったマナは、太陽の熱で暖められて上昇し、偏西風や偏東風に乗って世界ガイア全体に拡散して行っているそうだ。


 それでも大陸中央部南側の海上に散らばる島々ではマナが濃い。

 だから、ほとんどが無人島として放置され、わずかに植物が茂っているだけのようだ。

 もったいない話だよなあ。



 大砂漠地帯の周囲は、まばらな木と草原が広がるステップ地帯になっている。

 ここには濃いマナをもものともしない強靭な生物が生息していた。

 ドラゴンとかフェンリルとかベヒーモスとかだ。


 その周囲のややマナ濃度が薄れたところ、大森林地帯が始まる辺りに生息しているのが、それよりはやや弱いがそれでも強靭な生物、オーガやミノタウロスやトロールなどらしい。

 そうして大森林地帯の中には、さらに雑多な種族が生息していた。

 ゴブリン、オーク、リザードマン、蛇人族ワースネークなどのおなじみ亜人族に加えて、サル、牛、鹿、馬、狐、兎などの獣がシスティによって擬人化された種族、つまりは獣人族が暮らしているんだ。

 つまり、彼らはその強さに応じて、大噴気孔を中心にやや南北に引き伸ばされた同心円状に分布して生息していたんだな。


 さすがに連中はシスティーが創っただけあって、肉食一辺倒ではない。

 強い生き物ほど主食はマナで、ときおり嗜好品として果実を採取したり普通の獣を狩って食べているようだ。

 ゴブリン族や蛇人族ワースネークといった比較的弱い連中も、マナも摂取するが基本は雑食性で、やはり肉食は少ないということだった。


 南南東の高原には巨大な世界樹を中心にしたエルフの国があるそうだ。

 東北東の山岳地帯の洞窟にはドワーフの国もある。




 俺たちは大陸中央部の草原地帯に降り立った。

 おお、ちょうどいい丘があるな。

 ここに俺の小屋を建てて、俺たちの国の中心にするとしようか……


 だが…… 

 その草原は重く垂れこめた雲のようなマナに覆われていた。

 まあ、マナの大噴気孔から北に2000キロしか離れていないんで仕方無いんだろうが。

 上空では北から南へマナの雲が流れているのが見えるが、地表付近ではまるで霧がかかったかのように視界が悪い。視程は100メートルも無かった。


 俺たちには世界管理システムアダムがいるからいいが、これでは普通のヒト族だったら間違いなく道に迷うなあ。

 もっともこの濃度のマナの中ではすぐに狂って死んでしまうだろうが……



 俺たちはアダムの力でいったんシスティの天使域に戻り、それからすぐにマナ大噴気孔の近くの大砂漠に転移した。

 ずいぶんと細かい粒の砂だ。けっこう足が取られるわ。


 いやそれにしても、さらにすげえ濃度のマナだわ。

 システィや大精霊たちは元々いくらマナが濃くても平気だし、俺とベギラルムは相当にレベルが高くなっているのでなんとかなる。

 それでも3日もいると目眩ぐらいはするかもしれんな……




 大噴気孔は巨大だった。

 砂漠がすり鉢状に陥没していて、その底は岩稜地帯になっている。

 そうしてその岩に空いた巨大な裂け目からマナが噴き出していたんだ。

 すり鉢の直径は10キロ。深さも1キロはありそうだな。

 底に空いた穴も長径で1キロはあるだろう。


 この世界を支える神素マナ

 本来無色透明のマナがこうして目に見えるほどの勢いで噴出しているのは壮観だ。


 俺とベギラルムはシスティに『防御』の魔法を重ねてかけてもらって、みんなで窪地の底の岩稜地帯まで降りていくことにした。

 俺は予め『重力魔法』も教わっていたんで、システィに手を引かれてふわふわと飛びながら降りて行ったんだよ。


 俺は噴気孔の周囲を詳細に観察した。

 そのうちに噴気孔の中にも500メートルほど潜って観察を続ける。

 俺の視線はアダムが録画してくれているから、見落としがあっても後で気づけるだろう。


 俺は管理システムアダムに、更に噴気孔を20キロほど降りての調査を依頼した。観察用の小型探査機もあるようだし。

 特に重点的に調べて欲しい点を指摘して……


 さすがはアダムで、周囲の岩の中の様子も或る程度は透過して調べられるらしい。

 地球の人工地震による地中構成物調査みたいなものなのかな?


 その後はアダムに大噴気孔から北に3000キロほど離れたところからそそり立つ大山脈の調査も依頼した。

 さすがに山脈全体ではなく大きな山の山頂付近だけだったが……


 もしも俺の推測が当たっていれば……





 アダムの調査報告を受け取った俺は、推測がほぼ当たっていることを確信した。

 だから、みんなを集めて『戦略会議』を開催することにしたんだ。

 これにはなんとエルダリーナお姉さまも来てくれることになったんだよ。




「それではこの世界ガイアの全知的生命を救うための会議を始めます。

 最初の議題は、大陸中央部の改造です。

 いや『修理』と言った方がいいかな……」


「さ、サトル…… 『修理』ってどんなことをするの?」


「うん。あの大噴気孔に蓋をしようと思うんだ……」


「ええっ! 

 でっ、でもそんなことしても、噴き出すマナの圧力ですぐ蓋が壊れちゃうわよ!」


「うん。だから噴気孔を北の大山脈の中の、8000メートル級高山の山頂に移動させようと思って……」


「ええっ!」


 システィは驚いていたが、エルダお姉さまは腕を組んだまま俺を見ていた。

 どうやら続けろ、って言いたいみたいだな……





「なあシスティ。

 この世界って、もう何度も新任初級天使の試験場になってるんだろ」


「う、うん…… このタイプRS-7の世界では、わたしで51人目だって……

 もし試験に合格すれば、そのままの世界として存続出来て、知的生命体は『消去』されずにそのまま進化の階梯を昇っていけるの。

 それで、神界が整備して保存していた別のタイプRS世界が次の初級天使の試験場になるのよ。

 より優秀な知的生命体を宇宙にもたらすための試練でもあるんですって」


「この世界がタイプRS-7っていうことは、他のタイプの世界もあるんだろ」


「う、うん」


「その、他のタイプの世界での初級天使の合格率ってどのぐらいなんだ?

 それからこのタイプRS-7の世界の合格率は?」


「そ、それは……」


「いや実はもうアダムに調べてもらったんだがな。

 どのタイプの世界でも、合格率は60%ほどだったんだ」


「えっ……」


「ところが、この世界ガイア、タイプRS-7の世界ではそれが僅かに12%でしか無いんだ」


「…………」


「それも、最初の10人のうち6人が合格した後は、1人も合格者が出ていないんだ。つまり40連敗中の世界だったんだよ」


「そ、それは知ってたわ……

 わたしが初級天使になれて、試験場がタイプRS-7の世界だってわかったら、お友だちみんなに同情されたもの……

『不運のタイプRS-7』でお気の毒って……」


「それは、『不運』なんかじゃなかったんだよ。単なる神の『怠慢』だったんだ」


「ええっ!」


「考えてもみてくれ。

 あんな大陸のど真ん中にマナ噴気孔があるせいで、ヒト族が生息できない地域が大陸の3分の1もあるんだぜ。

 それでどれだけ食料資源が制約されているか……

 これもアダムに聞いたんだが、おまけにマナはこの世界ガイアの空気よりもほんの少しだが重いらしいじゃないか。

 そんなマナの大噴気孔が大陸のど真ん中の平地にあるなんて、おかしいと思わないか?」


「そ、それは……」





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