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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
188/325

*** 188 最強イブシスターズ ***

 


「それではみなさまこちらのお席にどうぞ」


 立ち尽くしていた第1王子を始めとした一行は、応接セットに落ち着いた。

 護衛たちは後方に不動のまま佇立していたが、目だけは忙しく室内装飾を追っている。



「こ、このテーブルは……」


「宰相閣下、ガラス製のテーブルでございます……」



 そのテーブルは直径が8メートルもあった。

 また、天板は厚さが30センチ近い1枚ガラスである。

 むろん繋ぎ目も無く完全に透明で、これだけで数トンの重量があるだろう。

 たとえ地球であろうとも、この大きさのガラステーブルを作ることは不可能だった。

 溶融したガラスが冷える過程で体積が縮むために、砕けてしまうのである。

『液状化』と『固化』の為せる技だった。

 ガイアでの価値はとても測れるものではない。



 領事が手を振ると、テーブルの横にティーセットと4人の女性たちが現れた。

 驚くべきことに、その女性たちは顔も体型もまったくおなじであり、無論凄まじいばかりの美少女たちである。

 そうして彼女たちは、微笑みながら地球産の最高品質の磁器に、これも最高品質の紅茶を零れるような笑顔と共にサーブした。



「こ、これは……」


 まだこのガイア世界では磁器は発明されていない。

 王族ですら金属製のカップを使っている。

 庶民ならば木のカップか土器のカップだ。

 しかもここに出て来た磁器には、地球の超一流ブランドの手によって6色もの鮮やかな色彩の絵が施され、縁には金の装飾まで施されていた。

 1客50万円の最高級品である。


 カップを眺めて小声で唸る宰相に気づかず、紅茶を一口飲んだ第1王子が紅茶を吐き捨てて残りを床に捨てた。


「まずいっ!

 さすがは蛮族だ! 茶ですらまともな物が出せんのか!

 酒だ! 酒を持って来いっ!」


(兄上……

 蛮族の振舞いを為されているのはご自分だとまだ気がつかれませんか?)



 領事が微笑むと、テーブルと床に撒き散らされた紅茶が消えた。

 王子の振舞いにも眉すら動かさなかった宰相の顔が驚愕に歪む。


 すぐにサイドテーブルに白ワインとグラスが出現し、侍女が第1王子の前にグラスを置いてワインをサーブし始めた。


 その間に第1王子は紅茶のカップとソーサーを懐にしまっている。



「おいお前、第1王子付きの侍女にしてやる。光栄に思え」


 少女は微笑んだ。


「お断りします」


「なっ! な、なんだとうっ!

 き、キサマ、ビクトワール大王国第1王子の命令に従えんというのかっ!

 おい蛮族っ! お前はいったいどういう教育をしとるんだっ!」


 領事はため息をついた。


「おやめになられた方がよろしいかと……」


「こ、この無礼者っ!」


「彼女たちはわたくしの護衛も兼ねております精鋭でございます。

 そのような者をお傍に置かれてもよろしいのですか?」


「なんだと!

 このような女が精鋭などであるはずが無いっ!」


「はぁ、たぶん彼女一人でこちらの護衛の方々全員を容易に蹂躙出来ますが……」


 少女が護衛たちを見渡してにっこりと微笑んだ。


「きっ、ききき、きさまっ!

 おい護衛隊長っ! この無礼な女をぶちのめせっ!

 そうすればこの女を下賜してやるっ!」


 厭らしい笑いを浮かべた巨漢が前に出て来た。

 舌舐めずりをして少女を見ている。



「ふう、仕方ありませんね。

 それでは余興として手合わせをして差し上げなさい。

 ああそうそう、少しハンデもつけて差し上げましょうか……」


 領事がそう言うと、他の少女たちの手に長い鎖が現れた。

 その鎖で手合わせをする少女をぐるぐると縛りつけ始める。

 まもなく少女は全身を鎖で拘束され、そのまま微笑みながら立っていた。



「わたくしが立ち会いの合図をさせて頂きましょう。

 それでは始めっ!」


 巨漢が抜剣もせずに少女に襲いかかって行った。

 下卑た笑みを浮かべる口からはよだれすら垂らしている。


 だが次の瞬間……

 少女が消えて、その場に鎖だけが落ちた。

 そうして慌てる男の真後ろに少女が出現して、手刀を首の後ろに軽く当てる。

 すぐに巨漢は白目を剥いてその場に崩折れた。


 静寂……



「ご、護衛隊長っ! キサマは奴隷落ちだっ!

 おい、護衛副隊長ども! 全員でこ奴に切りかかれぇいっ!」


 5人の男たちが剣を抜いて少女に襲いかかって行く。


「やれやれ、立ち会い開始の声もまだ出していないと言うのに……」



 また少女が消えた。

 同時に護衛たちの両腕がばきばきと音を立ててへし折られる。


「「「「「 ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ! 」」」」」


 すぐに少女が現れ、ゆっくりと歩きながら男たちに近づいて行き、のたうちまわる男たちの額に優しく手を当てる。


 すぐに男たちは白目を剥いて静かになった。

 同時に、いつの間にか男たちの両手にはギブスと包帯が巻かれている。




 領事が硬直する第1王子に向き直った。


「私どもの国は、まだ貴国と平和条約の調印をしておりません。

 つまりまだ戦争中の敵国なのです。

 そうした敵国のこのような強者を本気でお傍に置かれるおつもりですか?」


「ぐぅっ……」


「それにこの娘が得意としておりますのは、本来戦闘では無く暗殺術なのです」


 少女がにっこり微笑んで手を前につき出した。

 その手に突如細身のナイフが出現する。

 さらに少女が少し指を動かすと、まるでトランプを広げるかのように、ナイフが10本に増えた。


「このような者をご城内に入れれば、一晩で王族全員が暗殺されてしまいますぞ。

 第1王子殿下も、朝起きたら体中にナイフが刺さっているのはお嫌でしょうに……」


「く、鎖で縛りつけて牢に入れてやるっ!」


「やれやれ、先ほど見たことをもうお忘れですか?

 この娘はいかなる鎖をもってしても拘束は出来ませんし、牢を抜けるなど、部屋を出るのとおなじでございます……」


「きっ、キサマ、ビクトワール大王国の第1王子を脅迫するかっ!

 俺様自ら直轄軍20万を率いてお前たちを滅ぼしてくれようぞっ!」


「はて、我が国はすでに貴国と連合軍の精鋭を27万人も捕虜にさせて頂いておりますが…… 

 それがさらに20万人増えるのですか。

 これは食費も頂戴せねばなりませんねぇ、ははは」


「ぐ、ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎ……」



「さて、それではそろそろ領事館内をご案内させて頂きましょうか」


「お、俺様は帰るっ!

 こ、このような無礼な場所にいられるかっ!」


 第1王子はそう言うと、ワイングラスとワインのボトルもポケットに入れ、護衛たちを同行させて帰って行った。

 気絶している護衛たちは当然放置したままである。


 残ったのは第8王子と直属の将軍を始めとする護衛5名、そして宰相閣下のみだった。




「領事殿。少々お尋ねしたいのだが……」


「なんなりとどうぞ、第8王子殿下」


「この娘たちの『総合れべる』は如何ほどなのか?」


「なに、ほんの5000ほどでございます」


「うむ……」



 それまで黙っていた宰相閣下が口を開いた。


「あの動く白い台は、領事殿以外にも動かせるのですか?」


「いえ」


 第8王子イシスは驚いた。

 滅多に見られない宰相の笑顔が見られたからである。



「それではイブシスターさんたち、こちらの護衛の方々の介抱をお願い致しますよ」


「「「「 畏まりました 」」」」


「殿下、宰相閣下。それではどうぞこちらへ……」



 その後一行は大型エアカ―に乗り込んで、領事館の周囲をゆっくりと飛んだ。

 最初は硬直していた宰相閣下も、すぐに落ち着いたようである。


「領事殿」


「なんでございましょうか閣下」


「この地は元は沼沢地であったはずだ。

 それが今やこのような城が建ち、周囲は草原になっておる。

 いったいどうしてこのようなことが起こっているのであろうか」


「はい。少々我が国の『技術』を使わせて頂きました」


「『技術』か……

 それであの汚水が流されていた川はどうなったのであろうか」


「あちらをご覧ください。

 あそこに見える建物は『汚水処理場』でございます。

 如何なる汚水も浄化して、真水に変えることが出来ます。

 また、僭越ながら、あの川には蓋をさせて頂いておりますです」


「それも『技術』か……」


「はい」



 そのとき遥か下方から、「なんだこの崖は~っ!」という声が聞こえて来た。

 どうやらあのエレベーターはいつのまにか消えていたらしい。


 宰相閣下がまた実に嬉しそうに微笑む。


「第1王子殿下はこの城が200メートルもの高台の上にあることを思い出されたか。

 これで殿下も、『記憶力』というものは意外に大事なものだと気がつかれるかもしらんの……

 ついでに『礼節』というものにも気づいてくれればいいのだが……」




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