表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
186/325

*** 186 領事館用地買収 ***

 


「それからサロモンにもうひとつ提案というかお願いがある」


「なんなりと」


「出来ればサロモンの孤児院をガイア国に移転させてくれないだろうか。

 今後サロモン商会はいろいろと大陸に影響を与え始めるだろう。

 その中で、万が一にも子供たちを人質に取られないようにしたいんだ」


「願っても無いこと。

 こちらからお願い申し上げようと思っておりました」


「それはよかった。

 それから、従業員の家族の安全にも気を配りたい。

 従業員達の住居を、出来るだけ一か所に固まるようにしておいて欲しい。

 場合によったら、俺が王都郊外に大規模な集合住宅を作ってもいい。

 その場合はこれも用地買収を頼む。

 その地域や建物には、如何なる武装勢力も侵入できないように、俺とアダムが安全措置を講じておく。

 もちろん家賃はタダだぞ」


「あ、ありがとうございます……

 孤児たちと従業員の安全が確保できれば、もはや怖い物はありませぬ」



「それから殿下」


「はい……」


「殿下の今の任務はどうする?」


「まずは、第1の目的である捕虜の安否確認は達成致しました。

 また、居場所も明らかになっております。

 わたくしが受けた王命はここまでですし、もし捕虜返還交渉を始めるに当たっても、その窓口もこうして確保させて頂きましたので、何の問題もございませんでしょう」


「そうか……

 それじゃあさ、王宮に帰ったら、ガイア国から、『和平条約や正式な国交を結ぶ前に、まずはお互い領事館を作ってみてはどうか』って提案してみてくれないか?」


「『領事館』……でございますか……」


「そうだ、お互いが主張や意見や要望を言い合ったりするための場だ。

 今のままだと、俺は言いたいことを『掲示板』ですべて伝えられるが、そちら側にはその手段が無いだろう。

 だからまず領事館を置いてみたらどうかと思ったんだよ」


「はは、また何か我らが思いもつかない策をお持ちなのですか……」


「あはは、バレてたか」


「畏まりました。

 わたくしの意見が通るかどうかは分かりませぬが、そのように提案してみます」



「それでは、ちょうど明日の朝から、中央大神殿で俺とシスティの降臨会があるから、それを見学して貰ってから、俺がみんなを王都まで送っていくことにしようか……」




 その日の夜。

 俺はアダムから提案を受けたんだ。


(サトルさま、今少々お時間をよろしいでしょうか?)


「ん? どうしたアダム」


(あの…… 

 サロモン商会の支店での仕事のためにも、わたくしの弟アバターをもう1万体ほど増やされてはいかがでしょうか……)


「おいおい、そんなに増やしてお前は大丈夫なのかよ?」


(ええ、おかげさまで、それら全てのアバターが稼働致しましても、わたくしの負担は全能力の0.01%ほどでございます)


「さ、さすがは『最上級世界管理システム』だなおい!

 それじゃあまた、エルダさまに頼んでアバター買ってもらおうか。

 アバターたくさん買えば、銀河宇宙の工業系の世界も喜ぶだろう」


(それがようございますね)


「あ、ところでさ。

 お前たちは子供増やさないのか?

 次期神界管理システムとしては、子供の100人や200人いてもいいんじゃないか?」


(そ、それはその……)


「なにか問題でもあるのか? 正直に言ってみろよ。

 俺とお前の仲だろうに」


(あ、ありがとうございます……

 あ、あの…… 

 子供を作るために必要な資材は、1体分で300万クレジット(≒3億円)も致します。

 それにアワンには最高級のアバターを買って頂きましたので、さらに500万クレジットがかかりました。

 私どものプライベートのために、これ以上の御負担をサトルさまにおかけしては……)


「なーに言ってんだよお前っ!

 俺がお前たちのためにその程度のカネを惜しむとでも思ってるのか!」


(で、ですがやはり……)


「わかった、お前たちに最優秀勤務状態の対価として、ボーナス3兆クレジット(≒300兆円)を与える!」


(!!!!!!)


「このカネは本当にお前たちへの報酬だ。

 故にすべてお前たちがお前たちのために使って構わん。

 家具だろうが食べ物だろうが資材だろうがアバターだろうが、なんでも構わん。

 また、このカネを使って銀河宇宙の物品を購入することも自由とする。

 お前たちが自分たちで注文して、自分たちで使え」


(ううううっ。うわぁぁぁぁぁぁぁぁ~んっ!)



 はは、また世界管理システムを号泣させちゃったか……





 翌日会頭一行は、中央街の大神殿に驚いて、その中を埋め尽くす30万の大観衆にも驚いて、外にいる200万の群衆にもっと驚いてたよ。

 しかも、俺とシスティは説教臭いことは一切言わずに、ただにこにこと手を振りながら移動してただけだったからな。


 でも詰めかけた観衆は、半分近くが泣きながら絶叫してくれてたんだぜ。

 へへ、俺たちってけっこう人気者?



 サロモンたちには、大金貨コンテナ4個と、世界樹の実のジュースが詰まった箱と、マナポーションが詰まった箱を持たせて、俺が王都のサロモン商会まで転移させてやったよ。

 なんか随分お礼を言ってくれてたぜ……






 数日後のビクトワール大王国謁見の間。


「そうか…… 

 やはり我が国と連合国の将兵27万は、ガイア国に捕えられておったか……」


「御意……」


「それで死傷者はいかほどおったのか」


「死者はゼロであったそうでございます。

 また、傷を負った者はおりましたが、既に全員治療済みだそうです」


「な、なんと……

 一兵も失わぬうちに我が将兵が全員降伏したと申すのか」


「いえ、降伏した者は1人もおらなかったそうです。

 ただ捕獲したのみ、と……」


「そんな莫迦な話があるはずが無かろうっ!

 単にお前が誑かされただけだっ! この無能めっ!」


「彼らは広範囲の多数の兵を、任意の場所に転移させることの出来る『兵器』を持っておりました。

 もしお疑いでしたら、ご自分で兵を率いて出向かれたら如何でしょうか。

 第1王子兄上……」


「なっ、なんだとっ!

 その、そのような蛮族が開発した兵器であれば、大陸最大の国家である我が国が開発出来ぬ訳はないっ!

 宰相っ! 至急開発を始めろっ!」


「それでは第1王子殿下。

 開発費用のご提供をお願い申し上げます」


「なっ、なんだとっ!」


「今年度予算を執行した後は、国庫には大金貨が8万枚しか無くなります。

 このままでは来年の半ばにも兵が飢え始めてしまうのです。

 そのようなときに、荒唐無稽な新兵器の開発などに回すカネはございません」


「なっ……」


「また、27万もの兵が敵国に養われている現状は、別の視点から見れば幸いと言えましょう。

 なにしろその分だけ、兵の維持費がかからなくて済むのですから……」


「だ、だから、そのガイア国に攻め込んでだな!

 捕虜を解放してきゃつらを蹂躙し、食料や金貨を調達すればよいのだ!」


「それではご武運をお祈り申し上げます、第1王子殿下……」


「な、ななな、なんだとぉっ!」



「静かにせんか!

 ところでイシスよ。捕虜返還の見込みは本当に無いのか?」


「ははっ、捕虜交換を提案しようにも、我が国にはかの国の捕虜がおりませぬ。

 また、金貨での交換の場合には、今までの捕虜の食費と迷惑料を含めて金貨1000万枚との提示を受けました」


「我が軍でかの国の城壁を取り囲み、撤退を条件に捕虜の返還を求めてもか?」


「かの国を取り囲む城壁は、高さ50メートルの表面が平らな大城壁でございまして、攻略は不可能です。

 さらに、その総延長は2万5000キロでございますれば、包囲も不能かと……」


「な、なんと!」

「まさかそんな巨大な城壁が!」

「いくらなんでも話が大きすぎる!」


「ふむ、それほどまでに財力のある国だというのですか……」


「ええ、宰相。

 限られた範囲だけを視察させて貰いましたが、あの出城の建造費だけで大金貨5000万枚は下らないでしょう。

 なにしろ長さ800メートルの廊下の壁全体に、鏡が張ってありましたので……」


 その場の男たち全員が声にならない叫びを上げた。

 もしもその国を征服出来たら……

 第8王子と宰相を除く全員の目が欲に濁り始めている。



「それでイシスや。

 お前はどうしたらいいと思う?」


「はっ、それにつきましては、かの国より提案のありました、『領事館』を置いてみるのがまずは得策かと」


「『領事館』…… とな……」


「はい、未だ国交が無く、ましてや和平条約も結んでいない国同士が、お互いに連絡担当官を置く場所だとのことでございます。

 双方の王都や王都近郊に土地を用意し、そこに『領事』を駐在させて国同士の連絡を取り合うためのものだそうでございます。


 かの国より、我が国の王都近郊に領事館を建てるため、直径10キロほどの土地の購入代金として大金貨1万枚を預かって来ております」


「わはははははーっ!

 やはりカネは持っていても蛮族共は莫迦よの!

 よし! 王都の南10キロほどにある沼沢地を売ってやれ!

 あそこならば直径20キロの土地でも構わんだろう!」



 王都の南10キロの沼沢地とは。

 地盤が緩く、干拓工事にも莫大な費用がかかるために放置されていた土地である。

 また、そこは王都から出る下水がそのまま流れ込んでおり、南風が吹く日には、王都全体が悪臭につつまれるといういわくつきの土地であった。


 その土地の売買契約が正式に為されたとき、サトル神は快哉を叫んだという。


「やったぜ! やっぱりあの沼地を売って来たか!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ