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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
172/325

*** 172 移民政策の充実と『神界防衛軍』 ***

 



 移民希望者たちは、為政者の目をかいくぐって続々と旧サンダス領の王城前広場や南西の出城にやって来ていた。

 主に城壁沿いの道を通ってな。


 だから俺、城壁沿いにも移民受付窓口を作ってやったんだ。

 100平方メートル程の広さで、水場と食料とベッドと竈と燃料と食料が置いてあるやつ。


 そうしてそこにヒトが入って来ると、スクリーンの魔道具が起動して、アダムが姿を現して話しかけてやるんだ。


「お疲れ様でした。ガイア国への移民希望の方ですか?

 よろしければまず小屋の食材を使ってお食事をどうぞ。

 落ち着かれたら、移民先のご紹介をさせて頂きます」


 まあ、いくらアダムブラザーズでもそこまでの数は揃えていないけどさ。

 でも映像だけでの登場だったら10億体までは楽勝、ってアダムが言うもんだから、小屋もたくさん作れるんだ。

 それで、その場で説明を聞いて移民に合意した連中は、そのままアダムブラザーがガイア国のヒト族収容所に転移させるんだよ。


 まだ『仕分け』もしてないから一時的に100人用収容所に集めている。

 まだヒト族を他の種族と一緒に住まわせる自信が無かったから、仕分け後でも当面は『ヒト族専用街』に住んでもらうつもりだ。

 もちろんE階梯や罪業カルマポイントをチェックして、犯罪者は犯罪人収容所送りにするけどな。



 こうして俺は、大森林の西側5000キロの壁沿いに、10キロおきに500ヶ所の小屋を作ってやったんだわ。


 もちろんその小屋には盗賊団やら軍やらの連中もやって来たけどさ。

 でもまあ、態度言動、それからE階梯なんか見れば移民希望者じゃないのは一目瞭然だからな。

 そういう連中はそのまま『捕虜・犯罪者収容所』に転移させちゃうぜ。


 こうして俺たちは、さほどの負担も無いまま、大量の移民を受け入れられるようになったわけだ。



 でもさ。タイヘンだったのは『神界防衛軍』だったんだよ。


 最初のころは移民希望の農民や農業奴隷たちも自由に動けたんだけど、さすがにその地を統治する貴族連中も気づき始めたんだ。

「このままでは税を納めるべき農民がいなくなってしまう!」って……


 それで軍を出して移住希望の農民たちを強制的に捕えるようになったんだ。

 まあ、奴らにしてみれば当然の行動だけど。


 だけど、『神界防衛軍』の治安維持ドクトリンの中には、こうした「自由意思に基づく居住地の移動を、武力を持って妨害する」って言う行為は重罪扱いなもんだから、こうした貴族軍たちを片っ端から捕え始めたんだ。


 最初の内は、ナノマシン警戒システムの警報が鳴るのは日に30回ぐらいだったそうなんだけどさ。

 そのうちに警報の回数がどんどん増えて行って、数分に1回の割合でどこかしらの地域で治安維持行動が必要になっちゃったんだ。



 さらに加えて、近隣の盗賊団も大量に城壁沿いに集まって来た。

 まあ盗賊団にしてみれば、城壁沿いに待ち構えてれば家財道具を持った農民が向こうから来てくれるわけだからな。

 しかもその農民たちも奴隷商に売ればカネになるわけだから、近隣数百キロの範囲から盗賊団たちがうじゃうじゃ集まって来ちゃったんだ。


 その度に出動して奴らを捕獲しなきゃなんない防衛軍兵士は大忙しだ。

 実際の出動はツーマンセルかスリーマンセルだから、当直中の治安維持出動はひとり平均5回ぐらいなんだけど、それでも出動回数は増えこそすれ減りはしなかったからなあ……



 それで俺、ガイアにある神界防衛軍の軍域に行って、まず防衛軍兵士たちにお詫びを言ったんだ。

「無茶苦茶に忙しくさせてしまってすみません」って言って、丁寧にアタマさげて……


 そしたらさ、みんな顔を見合わせて不思議そうな顔してるんだよ。

 中には俺に直接会えて泣いてるやつもいたし……

 なんでだ?

 俺が神界防衛軍ガイア派遣部隊をブラックな軍にしちまった張本人なんだぞ?


 それで次は防衛派遣部隊の司令部に行って、司令官さんたちにおんなじようにお詫びを言ったんだけどさ。

 こっちの上級士官さんたちはもっと不思議そうな顔して、俺とおんなじように頭下げてるんだわ……

 なんでだ?


 でもって最後に神界にある神界防衛軍総司令部にもお詫びの挨拶に行ったんだけどさ。

 そしたら、俺が深々と頭を下げた後に、総司令官さんやら幕僚さんたちやらが笑顔で教えてくれたんだわ。



「終身名誉最高顧問閣下は、思い違いを為されておられるやもしれませぬ」


「我々防衛軍将兵はですな。

 その…… 子供のころから、そして見習い天使のころから、紛争地域で治安維持活動に当たる正義の神界防衛軍に憧れて、今の職に就いておるのですよ」


「左様でございます。

 ですが御存じの通り、神界が管轄する銀河世界は極めて平和であり、実際の治安維持活動の必要性は極めて小さいのですわ。

 今では中将を拝命している私ですら、実際に紛争地域で紛争当事者を捕縛した経験は、5回で50人ほどですらないのですからな」


「それが閣下、ガイアでは末端の兵士ですら、日に10回近い出動をして、50人近い犯罪者を捕縛出来ているのです。

 中にはすでに1000人以上を捕縛した者もおりますな。

 なんとも羨ましい限りであります」


「そして、我々防衛軍では、実戦における紛争の停止成功回数と犯罪者の捕縛数などを勘案して軍の勲章が授与されます。

 この分では派遣軍5000天使の兵全員が、3カ月ほどで最低でも1個から最大5個近い勲章を手にすることになるでしょう。

 そうしてもちろん、その勲章数は昇格の際の有力な査定対象になるのです。

 このまま1年も経てば、ガイア派遣軍の全将兵が1階級以上の軍階級の昇進を果たすのは間違いの無いことでありましょう。

 さらに神格の昇格すら大いに有り得ます。

 初級天使は中級天使に、そして上級天使は憧れの神の領域に到達出来るかもしれないのですよ」


「通常であれば、そのような大量昇格は人件費の大幅な上昇を意味致しますが、我々には最高顧問閣下が寄付して下さった莫大な剰余金があります。

 例え全軍将兵の給与が倍になったとしても、数万年は賄えるでしょうな。

 また、おかげさまで、ガイア派遣部隊の将兵には十分な派遣手当を支払うことが可能になっております。

 具体的には、我が兵士たちは、ガイアに駐屯中は通常給与が5割増しになっておるのですよ」


「それから実際の勤務体系も、閣下の御寄付により相当に恵まれております。

 通常であれば紛争地域での監視は、目視による24時間体制になるのですが、ガイアではなんと最低必要数に10倍する充分な量の紛争監視ナノマシンが配備されており、且つそれを統合管理するAIすらも数十体が稼働しておりますからな。

 兵士たちは紛争地域の哨戒活動をする必要は全く無く、待機ルームで出動命令と転移の順番を待つだけでよいのです。

 しかも転移先までもAIが自動的に設定してくれるのですからねぇ」


「さらにはですな。

 閣下の思し召しで、派遣軍将兵には例の『10時街』での宿舎すら与えられているのです。

 つまり、あの豪勢な地球食や、なかんずくベルミアスープまで、好きなときに好きなだけ飲み食い出来るのですよ。

 ここ神界では、神ですら30分並んで、ようやく1カ月先の予約券を手に出来るあのベルミアスープを……

 小職も中将から大佐に降格してもらって、ガイア派遣軍の指揮官になりたいほどですわな」


「わしの降格が先じゃ!」


「総司令官閣下が何を仰っておられますやら……」


「それからですな。

 ガイアの防衛軍将兵が何よりも喜んでおりますのは、助けた子供たちの笑顔なのです。

 まあ子供たちにしてみても、貴族軍や盗賊団の無体な暴力に怯えていたところに、光輝く天使が来て助けてくれたわけですから。

 恐怖に泣き腫らした目を一転キラキラさせながら、「おじしゃん、ありがとー♡」などと言ってくれる子も多いそうです。

 兵士たちの多くは、後でその子たちの姿を記録装置からプリントアウトして部屋に飾ってあるそうですな。

 そうした笑顔の写真が増えれば増えるほど、未だ経験したことの無い強烈な喜びと使命感が湧き上がって来るそうであります。

 軍が与える勲章など足元にも及ばない、彼らにとっての最高の誉れでありましょう」


「おかげで兵士たちは、軍務に際して通常の装備品以外にもこっそりと大量の菓子を持ち歩いておりますです。

 まあもちろん我らも黙認しておりますが……」


「更に彼らの活動の様子は、ガイアTVを通じてあの『ローゼマリーナのガイア観察日記』に登場することがあるのですよ。

 つまり銀河全域25京人の目に触れるのです。

 もう登場出来た兵士はタイヘンですわ。

 故郷の両親は号泣するわ、若い女性たちには超絶モテまくるわで……

 おかげさまで今期の神界防衛軍の新規兵士募集には、空前の数の志願者が押し寄せて来ているのですよ。

 皆、英雄たちに憧れて目をキラキラさせて……」


「その上、閣下は我々防衛軍の特殊工兵部隊に、大城壁という革新的な防衛システムをご教授下さっておられます。

 しかもあの重金属の抽出技術まで……

 まあ、シビリアンコントロールの観点から、我らの独自財源となることは無いでしょうが、今後の神界の財政危機にあたっても、我らが重金属を抽出して財源に充てることも可能になりつつあるのですわ。

 聞けば特殊工兵部隊の兵士たちは、自主的に日に10回も気絶してその能力を日々高めて行っているとのこと。

 羨ましい限りです。

 わたくしももう少し若ければ、一兵卒に降格してもらって、特殊工兵部隊に入り直したいものですなぁ……」


「そうした夢のような勤務状態にある中で、18ケタもの幸福ハピネスポイントを持ち、『21京人の涙』などとも呼ばれる彼らにとっての大英雄が、『忙しくさせて申し訳ない』などと頭を下げられれば、彼らが当惑するのも当然でありましょうな。

 ははは……」


「つまりはですな閣下。

 神界防衛軍の将兵は、今は至福の勤務状態にあるのですよ。

 なんら御心配に及ぶようなことはございません」





 っていうことでさ。

 まあさすがは『神界防衛軍』だったっていうことだな。


 それで俺は、『これは将兵のみなさんの出張手当やボーナスの足しにしてください』って言って、また3兆クレジット(日本円換算約300兆円)ほどの寄付をして、ガイアに帰って行ったんだ……




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