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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
170/325

*** 170 戦後処理 ***

 



 俺が広場の兵たちに向き直ると、全員が後ずさりした。


「旧サンダス王国の兵、奴隷兵、農民、平民に告げる!

 今この地はガイア国の属領として併合された!

 この地にはもはや王も貴族も不要であり、戦闘行為も全て禁止する!」


 またまばらな歓声が沸き起こった。

 はは、ボロっちい服着てるやつほど喜んでるな。


「よって、この地の武器防具は全て没収される!」


 その場にあった全ての武器防具、すなわち木槍、銅剣、弓矢、革鎧、革兜等が消失した。


「先ほど宣言した通り、今よりこの地には税が無くなる。

 農民は自ら育てた作物を全て自分で食してかまわん。

 商人も自ら稼いだものは全て自分たちのものだ!」


「「「 わあぁぁぁぁぁぁ~っ! 」」」


「ただし!

 今後、この地では如何なる武力暴力も許さんっ!

 暴力によって貴族王族になろうとする者、暴力によって他者の財物を略奪しようとする者は厳罰に処す!

 また、これからこの広場に於いてはガイア国による炊き出しが充分な量、充分な期間行われよう。

 特に奴隷兵はその間に自らの生き方を定めろ。

 そのための支援はしてやる!

 また、我がガイア国への移民を希望する者は歓迎するっ!」


「「「「「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ!」」」」」






 それで俺、広場に30個ほど小屋を転移させたんだ。

 そこでは炊き出しを行いつつ、ガイア国の移民先の村の紹介映像を流したりもして、移民の受け付けも始めた。


 でもやっぱり自由になった途端、略奪を始めようとした莫迦も多かったわ。

 やっぱヒト族って、他者から奪う以外に財を得る手段を知らないんだなぁ。

 つい50年前までの地球のヒト族と変わらんわ。


 でもさ、既にこの旧サンダス王国の地には『神界防衛軍』の治安維持用ナノマシンが1平方メートル辺り10個も配備されてるからな。

『神界防衛軍』1個大隊2500名の兵士たちが、そうした奴らを嬉々として気絶させては収容所に転移させてたよ。

 連中、張り切ってたぜぇ。


 それにしても略奪や強盗でタイホされた奴は多かったよなあ。

 なんと全国民5万のうち、1万2000人が逮捕されて消えたんだもんな。

 神界防衛軍も大忙しよ。


 それにしてもヒト族ってどうしようもないわぁ。

 全ての行動原理が、相手よりも強いか弱いか、どれだけ相手から奪えるかしか無いみたいだわ。

 まあ、地球でも未だにそうとしか考えて無い輩も多いけどな。




 その夜から始まった炊き出しは常に長蛇の列だったわ。

 大声で周囲を脅しながら列に割り込もうとした奴らも、次々に気絶しては消えて行ったから、ものの1時間で整然とした列が出来るようになったけど。


 そうして、人間ハラいっぱいになると少しは好奇心も出て来るらしい。



「あ、あの…… あなた様のお名前は……」


「アダムブラザーと呼んでくれ。様は要らん」


「そ、それでは畏れながら、あだむぶらざーさん。

 いったいどこからこんなにたくさんの食べ物を持ち込んで頂けたのですかな……」


「全ては我が国の代表代行サトル神さまの思し召しである」


「あ、あの…… あのお方様は本当に神さまなんですかい?」


「無論だ」



「と、ところであだむぶらざーさん。

 おらたちはこれからどうすればいいんかのう……」


「サトル神さまも仰っておられたろう。

 全てはそなたたちが自分で決めることだ」


「と、言われても、おら今まで奴隷兵しかやったことが無いだに……」


「そうだな。これからは兵は必要無くなった。

 農村に行って農業を教わってもよし、この王都で商家に雇われて商人になるもよし、各地の村を回る行商人になるもいいだろう」


「お、おら自分で作物を育てて腹いっぱい食べてみたいんだども……

 農村の連中は農作業のやり方を教えてくれるかのう……」


「それならば、もしこの地に未練が無ければ、我がガイア国の村に移住してはどうだ?

 その村には農業指導員がいて、懇切丁寧に作物の育て方を教えてくれるぞ。

 作物が育つまでは、ここと同じように食べ物も配られる」


「そ、そこでもこんなに旨いものが腹いっぱい喰えるだか?」


「たぶんここよりももっと旨いものが喰えるだろうな」


「ほ、本当だか……」



「なあアダムブラザーさんや。

 わしちょっと心配なんじゃが……」


「どうした?」


「サトル神さまがこの地を解放される前に、サンダス王からイザリア王国に向けて参戦を勧める早馬が出て行ったんじゃ。

 このままでは、すぐにイザリア王国からの軍勢がこの地にやって来るのではないのかのう……

 そうしたらわしらもまた奴隷に逆戻りかもしらん」


「ははは。何の心配も要らん。

 すべてはサトル神さまにお任せしておけば大丈夫だ」


「そ、そうか…… 

 確かにサトル神さまがいらっしゃれば大丈夫そうだのう……」




 俺は『神界土木部』の若手100人と、『神界防衛軍特殊工兵部隊』100人に頼んで、旧サンダス王国の領地を囲む小さな城壁を造ってもらったんだ。


 まあ奴らの魔力も相当に上がって来てたし、城壁の総延長も100キロあるかないかだし、城壁の高さも15メートルほどだったから、3時間もしないうちに完成したけどな。


 そうしてその城壁には、あちこちに計10カ所の城門を造ったんだ。

 もちろん城門は開けっぱなしだけど。

 そうして武器やら兵糧やらを持った軍勢がこの門をくぐると、すぐに収容所に転移させられるように、門の内側には大きな『転移の魔道具』をたくさんつけといたんだよ。


 もちろん行商人やら移住希望の農民やらは、そのまま王城前広場に行けるけど。

 それ見てて安心して門をくぐったイザリア王国の兵は、全員転移させられちゃったんだわ。

 どうやら連中、俺の出城の財宝に過剰に期待して、治安維持以外の軍勢を全部つぎ込んで侵攻して来たみたいだ。

 おかげで4万5000もの将兵を捕獲出来ちゃったんだ。

 そう、つまり旧サンダス王国領全域を、『ヒト○イホイ』にしちゃったワケだな。


 その後も『転移の魔道具』は大忙しだったよ。

 どうやらサンダス王朝が打倒されて、王族も貴族も軍隊もいなくなっちゃったっていう噂が、それこそ燎原の火のごとく広まったらしくってさ。

 西方に隣接したイザリア王国だけじゃあ無くって、北や南に隣接した国々からもびっくりするほどたくさんの軍が侵攻して来てたわ。


 それに何と言っても、無数の盗賊団も集まって来たんだ。

 それこそ近隣の何十何百という盗賊団が。

 きっと旧サンダス領にはもう軍がいないから、略奪し放題だってヨダレ垂らしながら来たんだろうけどなあ……


 でも全員城門くぐった途端に収容所に転移させられるんだけど。

 中には、警戒して城門通らずに城壁乗り越えて来る奴らもいたけどさ。

 待ち構えてた『神界防衛軍治安維持部隊』が嬉々としてとっ捕まえてたわ。


 おかげで旧サンダス領解放後の3カ月で、収容所送りになった他国の軍隊と盗賊団は、合計で20万人を超えたんだぜ。

 いくらなんでも多過ぎるんじゃないか?




 まあそれからもいろんな奴らが直接俺たちの出城にやって来たんだ。


 もちろんいちばん多かったのは移民希望者だ。

 旧サンダス領の連中は、旧領地全域に作らせた移民希望者受付に来るんだけどさ。

 それ以外の国の連中も、1人で、もしくは夫婦で、さらには家族で、たまに村人全員で、けっこうな数が歩いて出城までやって来たんだわ。


 彼らの話を聞いてみると、それぞれの国で農民やってた奴が多かったんだけど、その年は大陸西部の多くの地域で作物が不作だったらしいんだ。

 それでも税の量は変わらなかったんで、そのままだと冬を越す食べ物が得られなかったそうなんだよ。

 だから例年通り、家族を奴隷商に売って食べ物を買うしか方法が無かったらしいんだ。

 酷ぇ世界だよなぁ。


 もともと奴隷だった奴らはさらに悲惨だ。

 家族を売ることすら出来ず、喰い物もほとんど無いから無事冬を越せる見込みはほぼ無かったそうなんだ。



 そこへきて村の広場に『ガイア国建国宣言』が張り出されたもんだからさ。

 みんな奴隷として売り飛ばされたり飢え死にするぐらいだったら、ガイア国への移民に賭けてみようって思ったんだそうだ。

 それにどうやら旧サンダス王国の様子も噂で伝わって来てたみたいだし。

 中には小さい子を抱えて300キロも歩いて来たやつまでいたんだわ。



 それで俺、慌ててまたいろいろ準備を始めたんだよ。

 まずは移民受付窓口の大幅な拡充だ。

 どうやら旧サンダス王国以外の国の人々は、まずは東に移動するらしい。

 それで大森林を囲む小城壁沿いに到達すると、そこから城壁沿いに歩いて南にある出城を目指してるようなんだ。

 城壁は土台が幅50メートルもある割に、城壁そのもの厚みは8メートルだから、土台部分がまるで道みたいに感じるらしい。

 だから家財道具や小さな子を乗せた荷車なんかを、引いて移動しやすいんだと。


 なんか泣かせるだろ。

 そんなたいへんな思いまでして、俺たちの国に移民しようとしてくれるなんてさ……




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