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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
169/325

*** 169 サンダス王国への宣戦布告 ***

 


「ふう、それじゃあ仕方が無いか……」


 はは、俺がそう言った途端に公爵閣下が貪欲そうな笑みを浮かべたか。

 そりゃあこの出城の富を見れば垂涎だろうからな。


「そうそう、そういえばお前、『実効支配』っていう言葉を知ってるか?」


「な、なに?」


「偉大なる始祖陛下の血を引く優秀な王族さんたちは、この地を領土だと思っていても、これだけ大きな城が完成するまで気づかなかったんだろ? 

 それって無能の極みだよなぁ」


「うっ……」


「そうして俺の建国宣言が届いたもんで、慌ててこうしてやって来たわけだ。

 領土に他人に城を建てられて、それが完成するまで気がつかないとは……

 きっと始祖陛下も墓ん中で、子孫たちの無能ぶりに泣いてるぞ」


「なっ、ななななな……」


「よし! それじゃあこうしよう!

 ガイア国初代代表代行である俺、サトルが宣言する!

 サンダス王国は解体して我が国の属領にするわ。

 特別な温情措置として、サンダス王族と貴族一同は隣国イザリア王国に逃げ延びろ。

 そうすれば命までは取らん」


「こっ、ここここここ、ここな無頼者が何を言うかぁっ!」


「えー、だってこれ、お前らの始祖陛下の領土宣言と同じだろうがよ。

 俺はお前たちサンダス王国を支配する蛮族を滅ぼして、この地を平定することにしたんだ。

 でも命までは取らないって言ってるんだから、お前の先祖の野蛮な行為よりは相当に真っ当な措置だぞぉ」


「そ、それは我が王国に対する宣戦布告か!

 も、もう許せん! 我が国の精兵8500がこの城に攻め込むぞ!」


「なんだぁ、たったの8500かぁ……

 それじゃあウチの案内係が5人もいれば十分かな」


「サトルさま、1人でも充分でありますが……」


「いや、全員殺さずに留置場送りっていうのもけっこうタイヘンなんだよ。

 だから5人ぐらいは必要だと思うぞ」


「…… 御意のままに ……」


「きっ、キサマ……

 それだけではない! 隣国イザリア王国も兵を出そうぞ!

 さすれば精兵3万5000がお前たちを滅ぼしてくれよう!」


(この城の財宝を知れば、イザリア王国も最大限の兵力をもって出兵するに違いなかろうぞ!)



「あーあ、300年も経てば、どんな英雄の子孫でもこんなアフォ~になっちまうんだなぁ……

 やっぱ世襲制っていうのは諸悪の根源だわ。

 ま、共和制や民主主義も似たようなもんだけどな」


「あ、あとで後悔するなよ!」


「それじゃあさ、お前、王城に帰るのに3日はかかるよな。

 だから特別な温情をもって、戦争開始は3日後の夜にしてやるよ。

 だからせいぜい急いで帰った方がいいぞ。

 それとも俺が送ってやろうか?」


「て、敵の施しは受けん!」




 俺とアダムはそれから2日ほどかけていくつか準備をしたんだ。

 まあ準備と言っても、『転移の魔道具』を装備した小屋を300個ほど作ったのと、『神界防衛軍』の1個大隊に頼みごとをしたぐらいだったんだけどな。



 公爵閣下は大慌てで帰って行き、3日目の昼に息も絶え絶えになってようやく王城に辿りついた。

 来るときは300人も近衛兵がいたのに、帰りはたったの15人で。

 まあふつーなら公爵といえども処刑されてもおかしくない大失態だけど、ガイア国の出城のあまりにもな財宝と、そのガイア国からの宣戦布告で大騒ぎになっちゃったわけだ。


 もー、国土全域に動員令が出されるわ、近衛軍も国軍も貴族軍も集められるわ、宗主国のイザリア王国に出兵要請の早馬が出されるわでさ。

 王城前広場には臨時の軍集結所が作られて、そこに続々と将兵が詰めかけてたんだ。

 まあ、この国はせいぜい東京23区の半分ぐらいの広さしか無い弱小国だったんで、兵の集結もそれなりに早かったみたいだけど。


 夕方になると、王城前広場の初代建国王の石像を中心にして大量の篝火が焚かれ、あちこちで兵たちがメシを喰い始めてたよ。

 さすがに戦の前には奴隷兵にもメシぐらいは喰わせるようだ。

 そうして日も落ちると、急造された壇上に王族やら軍の司令官やらが上がって来たんだわ。

 そのうちのキンキラキンの鎧を纏ったおっさんが大声を張り上げ始めた。

 たぶんこいつが軍の総司令官なんだろうな。



「このたび不埒にも新興のガイア国なる蛮族の徒が、我が神聖なるサンダス王国の領土に侵攻して来おった!

 その上、傲岸にも我が国に宣戦を布告したのであるっ!

 この暴挙は断じて許せん!

 この蛮族に天誅を与えるため、我々は全兵力8500をもって、明朝ここより東100キロの地点にあるガイア国出城に進攻する!

 この城には貴重な鏡や金属を始め、大量の財宝があるそうだ!

 お前たちの奮闘によっては、これら財宝の配分も行われる予定である!

 各員陛下より賜った糧食を頂き今晩は英気を養え!

 そして、明朝からの奮闘を期待するっ!」




(なあアダム。こいつの檄って、盗賊団の親玉のそれと変わらんよな)


(はい。やはりヒト族は、『力あれば全てを略奪出来る』と信じ込んでおりますな。財を得る手段は他者から略奪する以外には思いつかないのでありましょう)


(うーん、なんか世界は違っても、戦国時代の国や明治から昭和初期の日本と戦うような気がして来たわ。あとそれから中世ヨーロッパか。

 E階梯の低い奴らって、世界が違っても発想はおんなじなんだなあ……)


(それでいかがいたしましょうか……)


(この戦争は全部俺が片づけるわ。

 お前は俺の指示した通りに動くのと記録だけしといてくれ。

 映像が無いとまたエルダさまたちに文句言われるからな……)


(畏まりました……)



 それで俺、司令官殿の演説が終わると、サンダス王国の王城前広場上空に転移したんだ。

 おーおー、むさいおっさんたちが大勢集まってまあ……



(アダム、この広場の篝火をすべて消してくれ)


(はい)



「な、なんだなんだ! 火が消えたぞっ!」

「奴隷兵っ! すぐに火をつけよっ!」


 俺は上空で30メートル程に巨大化した。

 さらに背中部分から巨大な『光の魔法』を発する。


「うわぁ~っ! な、なんだあれはっ!」

「人だ! 人が宙に浮かんでるぞっ!」

「ば、莫迦を言うな! あれは身長30メートルはあるぞ!

 あ、あんな人間がいるわけが無かろう!」


「あ、あああ、あれは……

 ま、間違いなくあのガイアの代表代行サトルとか言う不逞の輩……」



 俺は自分の声を150dB程に拡大した。

 間近で耳にしたら聴覚障害を起こすレベルの大音量だ。


「俺はガイア国代表代行のサトル神だ!

 サンダスの支配層を自称する蛮族共に告げる!

 お前たちはガイア国に対し、武力をもっての略奪を試みた。

 そもそもガイア国には他国を侵略して略奪をする意図は無い。

 だが自衛のための措置は取る!

 よってこれよりこの国の王族貴族を捕縛し、サンダス王国を我が属領に組み入れることとする!


 また、王族貴族以外の平民、奴隷に告げる!

 ガイア国には税が無い。

 また、王族貴族などの支配層もいない。

 支配層を名乗る蛮族の排除後は、諸君は自由である!

 自分で育てた作物は全て自分で食してよい!

 また、もしもガイア本国に移民を希望する者には、充分な日々の食料と農地を与えよう。

 支配層を名乗る蛮人を排除した後には、すぐにこの地に大量の『移民受付窓口』を設置することにする。

 諸君らの移民応募を歓迎する!」


 はは、みすぼらしい服を着た連中からまばらな歓声が上がっとるわ。

 まあ、連中はどの国に属そうが、あんまり違いは無いんだろうな。



「ええいっ! 弓兵っ! なにをしておるっ!

 早くあの不逞の輩を射殺せっ!」


 それで、司令官の怒声に続いて、まあ矢がぱらぱらと上がって来たんだけどさ。

 それが全部俺に届く前に空中で魔力に捕らわれて止まっちゃったワケだ。


「な、なにをしておるっ!

 そ、それでも我が栄光あるサンダス王国の弓兵かっ! 

 弩だ! 弩弓をもってあやつを射殺すのだ!」


 おー、なんか荷車に積んだでっかい弓を持ち出したか。

 あ、10人がかりで弓引いてる。

 そうかこれ、城門破壊用の攻城兵器か……


 それでその丸太みたいな矢が俺の前に飛んで来たんだけどさ。

 俺、その矢を無造作に手で掴んで、国王陛下とやらの前に放り投げて地面に突き刺してやったんだ。

 あー、王サマ失禁しちゃったよぉ。根性無ぇなあ……


「きっ、キサマこの卑怯者めぇっ!

 この地に降りて正々堂々と我が軍と戦えっ!」


「はい了解♪」



 それで俺、そのまま地面に降り立ったんだよ。

 もちろん足の下には、なぜかさっきから喚き散らしていた総司令官殿がいたんだけど……


「あわわわわわわわわわわぁぁぁぁぁぁ~っ!」


 ぷちっ


 あー、俺の体重、50トンほどにしといたからなあ。

 司令官さん、ぐしゃぐしゃになった鎧と肉片が混ざって壮絶な姿になっちゃってまあ……


 俺は司令官殿の残骸を宙に浮かべた。

 ハミ出た内臓やら血やらがぼたぼたと地面に落ちている。

 あー、兵たちがびびってるびびってるぞぉ……


 それでもさっきこっそり『命の加護(死亡時5分後に復活)』をかけといたし、アダムに3分経ったら死体を収容所に転移させるように言っておいたからな。


 うぷぷ。司令官殿も1人用収容所でまっぱで生き返ったときに、さぞかしびっくりするだろう。

 あとでアダムに映像を見せてもらうか。



 それから俺はずしんずしんと音を立てて、初代国王陛下の石像に近づいて行ったんだ。


 まず5メートルほどの石像を、俺の魔力で半液状化する。

 そうしてその石像をやはり魔力で動かして、身につけた大剣を捨てさせ鎧も全部脱がせた。

 前に練習したスキル『人形フェチ♡』が役に立ったぜ。


「お、おい…… 石像が動いてるぞ……」


「しょ、初代さまの像が動いてる……」


「ああ…… 剣を捨てて、鎧も脱いでる……」



 そうして俺は、パンツだけの半裸になった石像をさらに動かして、俺の前で土下座させたんだ。

 頭も地面に打ち付けさせて、ついでに額から流血もさせて目から水も噴き出させてな。


 周囲には王族貴族達の、声にならない驚愕の呻きが満ちていたよ。



 辺りにはまた150dBの俺の大音声が響き渡った。


「うむ。初代国王の殊勝なる降伏を受け、王族の命までは取らぬこととしてやろう」


 初代陛下の石像がさらに平らかに平伏した。

 スピーカーの魔道具から大きな泣き声とお礼の言上も聞こえる。


「だが我が平和を尊ぶ我がガイア国に一方的に攻め込んで略奪を試みた罪は重い。

 王族、並びに貴族一同、ここへ直れっ!」


 予めアダムがロックオンしてくれていた、王族貴族とその郎党が宙に浮かんだ。


「さらに城内にいる王族貴族もここに直れ!」


 城の中から、悲鳴とともに数十人の女たちがふよふよ浮かんで飛び出して来た。


「お前たちは今より王族貴族としての全ての権利を剥奪する。

 これからは一平民として生きよ!」


 俺が手をひと振りすると、宙に浮かんだ全員の衣服が転移させられて下着だけの姿になった。

 さらに悲鳴が高まる。


(それじゃあアダム。

 城内の全てのヒトを収容所に転移させてくれ)


(ペットらしき猫が2匹いますが、それは如何いたしましょうか?)


(もちろんそれも一緒に頼むわ)


(はい……)



 俺は城を指差した。

 まあ、城と言っても3階建てぐらいの中規模の砦みたいなもんだけどな。


 そうして、城がまっ白な光に包まれると、上から徐々に砂に変わって崩れて行ったんだよ。

 へへ、資源抽出のために岩石を砂化する魔法作っておいてよかったぜ。



 王城前広場の大群衆は声も無かった。

 聞えるのは宙に浮いて半裸になったケバい女どもの悲鳴だけだ。


 俺は手をひと振りする。

 そして全ての王族貴族とその郎党がその場から消えたんだ……




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