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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
158/325

*** 158 ガイアTVの影響、城壁拡張工事 ***

 


「なあアダム、最近の収容所の様子やカウンセリングの進捗具合はどうだ?」


(非常に興味深い傾向が見られます)


「ほう。どんな傾向だ?」


(全般的に、元々E階梯の高かった収容者はさらに階梯を上昇させていますね。

 E階梯が低かった者はそのままですが)


「なぜE階梯が上がり始めたのかな?」


(スクリーンの魔道具で見るテレビ番組の影響が大きいかと思われます)


「やはりそうだったか……」


(特に、ベギラルムさまが作られた『各収容所の暮らしぶり紹介』という、収容所限定の番組の効果が大きいようでございますね。


 まずは紹介される模範収容者たちの生活は、相当に充実しています。

 日中は畑仕事などに精を出していますが、夕方になるとかなり立派な食事を作り始めますし。

 そうしてテレビで覚えた歌を見よう見まねで歌ったり、木を叩いて演奏のようなことまで始めています。

 さらに差し入れたリバーシなどを楽しむ者もおりまして、最近では大会なども開かれておりますね)


「そうか……」


(カウンセリングでも、今の生活は過去の生活よりも遥かに幸せなので、どうかこのまま暮らさせて欲しい、という感想が多いです)


「それでは、もっと文房具や遊び道具を差し入れてやってくれ。

 街の学校みたいに勉強も始めさせてみるか」


(畏まりました)


「さほどE階梯の高くなかった一般収容者はどうなってる?」


(高E階梯収容者の楽しそうな暮らしぶりを見て、徐々に模倣を始める様子が見られます。

 まだまだ全く働かない者や、他人を威圧して支配者になろうとする者も多いですが)


「よし、そういう奴らは別の空いた収容所に転移させろ。

 選別は全てお前に任せる」


(わたくしが選別を…… よろしいのですか?)


「なに言ってるんだ、お前は次期神界管理システムだろうに。

 俺なんかが選別するより、遥かにマシだと思うぞ」


(あ、ありがとうございます……

 ご信頼にお応え出来るよう努力いたします)


「ところで旧貴族や洞窟ドワーフの旧支配層なんかの様子はどうなってる?」


(相変わらず何もせずにぶつぶつ文句ばかり言っておりますが……

 ただ、他の収容者たちには『反面教師』として役に立っているのではないかと)


「どういうことだ?」


(あの『各収容所の暮らしぶり紹介』の中では、旧貴族や旧支配層の暮らしぶりも紹介されております。

 例えばあの洞窟ドワーフの元族長などは、体を洗うこともせず、垢じみた体に油分で固まったボサボサの髪のまま、いつもぶつぶつ文句ばかり言っているのです。

 部屋の中には排泄物すら放置していますし、着衣も前をはだけていて局部も晒しておりますが……)


「それは酷ぇな。もう完全に狂人の姿だな」


(にも関わらず、口にする言葉は、『わしはドワーリン様の直系長老一族だ!』、『だから高貴で偉いのだ!』、『故に全てのドワーフは、わしに忠誠を誓うのが当然なのだ!』、『なのに何故誰も従者が来ないのだ!』

 とかばかりなのです。

 この様子を見た旧支配層のうち、大人は激昂しながらおなじことを叫び始めるのですか、10歳までの子供のうち何人かは涙を流しながら首を横に振ったりするのですよ)


「そうか……」


(特にその後、中央神殿でシスティフィーナさまやサトルさまが神威の翼を出されて輝き、それを大観衆が讃える番組を流すと効果的です。

 子供たちも明らかに歓喜の表情でそれを見ていますし、その後の生活態度も大分変わって来ています)


「環境によって、元々E階梯の高かった者ほど階梯を上げられるし、また年齢が低い者ほどE階梯を上昇させることが可能だったか……

 しかもそれがテレビのおかげとはな」


(はい。どうやらそのようです)



「それじゃあ、旧支配層の食事内容をやや上げておいてくれ。

 せめて反面教師として長生きしてもらわなきゃならんからな」


(畏まりました)


「それからな。

 これはベギラルムにもよく言っておくつもりのことなんだけど。

 これからガイアTVの番組を拡充して行くに当たって、お前にも気をつけていて欲しいことがあるんだ」


(はい)


「地球、特に日本のTV番組ってヤタラに数が多いだろ。

 しかも民放中心で。

 だからいわゆる『娯楽番組』がほとんどになって来ちゃってるんだ。

 お笑いとかクイズ番組とか。

 それでさ、或る実験によると、そういう番組を見てる連中って、番組を見てるときは実に楽しげに笑ったり感心したりしながら見てるんだけど、番組を見てる時の脳波とか計測すると、ほとんど波型の変化が見られないんだと」


(ということは半分寝ていると言うことなのですか?)


「いや寝ているときの脳波とも違うらしいんだ。

 日中何か考えたり行動したりしているときの波型や、睡眠中とも違う第3の波型らしいんだけどな。

 その番組では学者が『思考停止の波型』って言ってたけど。

 そうしてその実験では、楽しそうにTVを見て笑ってた被験者に、番組終了後にその番組のあらすじを書き出してもらってたんだ。

 クイズ番組だったらクイズの内容とか、お笑いだったらギャグの内容とか。

 そしたらさ、あんだけ夢中になってTV見てた被験者が、そのTVの内容を10%ぐらいしか覚えてなかったんだよ」


(…………)


「俺が特に興味を持った実例では、被験者に番組の中でどの部分が一番面白かったかって聞いたときに、あるお笑いコンビの童謡の替え歌が面白かったって答えた奴が多かったんだ。

『う~み~は広いな大きいな~』っていう日本人なら誰でも知ってる童謡だったんだけどな。

 それをそのお笑いが、『つ~き~が昇るし日はし~ず~む』っていう部分を『つ~き~が昇るし舟し~ず~む』って歌ったんだ。

 まあ俺も大笑いしちゃったけど。


 そしたらさ、『どんな替え歌でしたか?』っていう問いに答えられたのは全体の1割もいなかったんだよ。

 2番なんか『い~ってみたいな~よそのく~に~』っていう部分を『い~ってみたいな~黄泉のく~に~』って歌いやがったもんだから、絶対安静中の俺が爆笑しちゃって看護師に怒られたんだけどさ。


 それで爆笑してた被験者に『黄泉のくに』ってなんですか?って聞いたら、こっちはほとんど誰も答えられなかったんだ。

 あんだけ笑ってたのにな。

 中には『わしを莫迦にしとるのか!』って怒りだした高齢の被験者までいたわ」


(……………………)


「全般に、みんなが口開けて夢中になった見てた番組ほど記憶されて無くって、被験者があんまり楽しそうに見て無かった番組ほど記憶されてたっていう結果が出てたよ」


(ということは……

『楽しそうに見ていた』の楽しいとは、『面白い』とか『愉快だ』とかではなく、単に『思考停止させてもらう中で、みんなの笑い声を聞いて楽しい気分にさせてもらう』というものだったのですね)


「たぶんそうなんだろう。

 なんせ、大口開けてげらげら笑いながら見てるのに、内容はほとんど覚えてないんだから。

 言ってみれば単なる思考停止だけの快感なのかもしらん」


(はあ、知的生命体にはそのような楽しみまであったのですねえ)


「はは、まるでこたつに入った猫人族ワーキャットの快楽だよな。

 だけどさ、俺はこのガイアでのTV番組をそういう番組ばかりにしたくないんだ。

 だからお前もTV見てる連中をよく観察して、そういう『思考停止のための娯楽番組』が増え過ぎないように気をつけておいて欲しいんだわ」


(人気番組ほど思考停止するかもしれないのですね……

 なるほど。気をつけてチェックして参ります)


「頼んだぞ」






「神界防衛軍特殊工兵部隊」の若い兵士たちの魔力も相当に上がって来た。

 もうみんな1日に塩コンテナを3個ほど作れるようになっているようだ。

 まあ、あれだけ毎日気合い入れて気絶してるからな。



「兵士諸君。

 諸君の魔力も相当に上がって来たようなので、次の演習に入ろうと思う」


 はは、みんな嬉しそうに頷いてるわ。


「諸君の最終目的は『資源抽出』だが、それ以外にも元々の目標として『城壁造り』もあったはずだ。

 そこで次の演習は、実際の城壁造りを行う。

 とは言っても最初は城壁の土台造りからだ。

 これがまともに出来るようになったとき、諸君は魔法マクロで城壁そのものも一気に造れるようになっているだろう」


「「「「「 よろしくお願いします、閣下! 」」」」」


 はは、みんな気合い入ってるな。



 俺は、スクリーンに大平原西部の大縮尺地図を表示した。

 そこには、既に完成している大城壁の北西の端から、西部大森林をぐるっと囲んで大城壁の南西の端まで連なる点線が表示されている。

 総延長1万キロほどの城壁建設予定線だ。

 これが完成すれば、西部大森林はすべてガイア国の領土になるだろう。


「それではまず、諸君にガイアの管理システムであるアダムとの感覚共有スキルを授けよう。

 これは、実際に現地に行ったとき、諸君の視界に城壁建設土台建設予定地が白線で表示されるスキルだ。

 他にもアダムを通じていつでも俺に連絡が取れる機能もついている。

 このスキルを受けたくない者はいるか?」


「「「「「「 ノーサー! 」」」」」」


「たいへんけっこう。それではスキルを授けよう」


 俺が手を振ると、その場の兵士が全員淡い光に包まれた。


 まあ、俺も初級神になったし、しかも神界防衛軍の終身最高名誉顧問だし。

 神格も階級も俺の方が上だからなあ。

 命令では無いにせよ、誰も逆らったりはせんか。



 俺たちは大城壁の北西の端に転移した。

 この辺りには木も草もほとんど生えて無いんで、まだ精霊たちの出番は無いんだけどさ。

 昨日、大精霊たちを呼んで、念のために木の移動作業を頼んでおいたんだ。

 もう植物の精霊たち以外でも木とお話出来る精霊も増えて来てるし、土を掘って実際に木を移動させる作業も、ほとんど全員出来るようになって来てるからな。


 加えて今日から300人ほどの精霊たちが木の移動を始めてくれているんだ。

 ここからは西部地域のヒト族と出くわす可能性も上がって来るから、神界防衛軍の護衛を常時50人ほど派遣してもらって、上空から監視もして貰っている。


 こうして俺は、100人の兵士たちに、『大地移動』の手順を教え、切り取った大地をバケットごと砂漠の緑化予定地に運び、穴をマナ建材で埋めて城壁の土台を作る作業を教えたんだ。


 まだ魔力が足りなくって、【大地移動1】のマクロでみんなフラついてるけど、意欲と根性だけは充分だから、すぐにひとりで【大地移動100】も行使出来るようになるだろう。



 この城壁の土台は、真西に向かって2500キロほど構築した後、南に5000キロ下りて行くことになるんだが、この部分は夜間に造ってもらうつもりでいる。

 彼らが実戦でこの城壁を使うとすれば、構築は夜間になるだろうという理由と、やはりまだ必要以上にヒト族と接触したくなかったという事情もある。


 俺は数日彼らの作業を見ていたんだが、魔法マクロを唱えるだけだから順調だったわ。

 時折小さな川を跨ぐ場面では、俺がスリット入り土台を作る手本も見せてやったけど。




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