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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
154/325

*** 154 ウインターリゾート建設 ***

 



 農場仕事が一段落すると、俺は氷龍一族の族長の下を訪れた。


「こ、これはこれはサトル神さま。

 ようこそおいでくださいました……」


「やあ族長、街での生活は順調かい?」


「はい、おかげさまでドラゴニュートに変身出来るようになりまして以来、皆の生活が格段に向上致しました。

 なにしろ器用に手が動かせますし、皆と一緒の学校にも通えますからな」


「それはなによりだ。

 ところでさ。今日は相談があって来たんだが、お前たちって雪を降らせることって出来るのかな?」


「さあ、やってみたことはありませんが……

 そうですな、高空に水を播いたあと、我らが冷気のブレスを吹けば雪になるやもしれませぬ」


「それじゃあさ、悪いんだけど、30人ぐらいの氷龍に来て貰って実験に参加してもらえないか?」


「もちろんでございますサトル神さま……」



 こうして俺は氷龍30人を連れて、高原のダム湖畔に転移したんだ。

 俺たちは以前に俺が作った階段状の丘の斜面に立っていた。


 幸いにもその日はあんまり風が無かったんで、まずはダム湖の水を100トンほど上空5000メートルに転移させた。


 あー、水の表面張力で水滴に分離したけど、これじゃあちょっと雨粒が大きいな。

 こんなの冷やしたりしたら、雪じゃあなくって霰になっちゃうぞ。



 俺はアダムの手を借りて、水を雨粒状ではなく霧状にする魔法マクロを作ったんだ。

 あ、でもこれだと微風で霧が流されちゃうか……

 仕方が無いんで風の精霊を100人ほど呼び寄せた。


「なあ、今から上空に霧を作って、それを冷やして雪を降らせたいんだけどさ。

 氷龍達が霧を冷やして雪にしてくれるんだけど、お前たちは風の力でその雪がこの階段状の斜面に積もるようにしてくれないか」


「「「「「 わぁーい♪ 」」」」」」

「「「「「 面白そー♪ 」」」」」」



 俺はまた100トンほどの水を上空5000メートルに転移させて霧状にした。

 その霧に本来の姿に戻った氷龍たちが、零下20度ほどの冷気のブレスを当てる。

 それが凍って下に降りて来ると、風の精霊たちが風を吹かせて斜面に誘導してくれた。


 あー、なんかこれ、雪じゃあ無くって細かい氷の粒だなぁ……


「おーい、氷龍達よ。ブレスの温度をもう少し下げてくれるかぁ」


「「「「「 畏まりましたぁ! 」」」」」



 お、だいぶ雪らしくなって来たな……


「あと少しだけ温度下げてくれぇ」


「「「「「 はいっ! 」」」」」



 おおっ! 雪だ雪だ!

 見事な雪が降って来たわ!


 俺はもう100トンほどの水を転移させて霧を作った。

 階段状の斜面はみるみる雪に覆われていっている。


「みんな、もう少し続けるぞー」


「「「「「 はいっ! 」」」」」

「「「「「 はぁーい♪ 」」」」」



 こうして1時間ほどで、斜面は深さ1メートルほどの雪に覆われて行ったんだ。

 最後にまたブレスの温度を下げて、表面をパウダースノーにして完成だ。


 へへ、プチスキー場&ソリ遊び広場の完成だぜ!


 あ、一般ホテルの就学旅行生たちがみんなこっち見とる!



「なあアダム、雪崩は大丈夫かな?」


(それでは1.5Gほどの重力魔法で多少厚雪されてみてはいかがでしょうか)


「おお、それいいな!」


(それで今晩一晩様子を見て、明日の朝までに崩れた個所が無ければ大丈夫だと存じます)


「じゃあそうするか。

 おーい、みんなぁ。遊ぶのは明日にして、今日は帰るぞぉ」


「「「「「 はいっ! 」」」」」

「「「「「 はぁーい♪ 」」」」」


「それから修学旅行生諸君!

 今日はここで遊ぶの禁止な。

 明日の観察が終わったら遊んでいいから」


「「「「「 はぁーい♪ 」」」」」




 そして翌日……


 俺は地球から輸入していたプラスチックでソリを100台作った。

 2人乗り用50台と1人乗り用50台だ。

 雪の斜面はどこも崩れた跡は無く、しっかりと積もったままだった。



 まずは俺が緩斜面を滑ってみる。

 おー、それなりに滑るわ。

 これなら幼稚園児でもけっこう楽しめるだろう。


 次に急斜面も滑ってみた。

 わはは! けっこうスピードが出るじゃないか!

 うーん、これ面白いわぁ……



 それでまずはドラゴニュートたちに滑らせてみたんだけど、みんなキャーキャー言いながら楽しんでるんだわ。


 あの…… みんな飛べるんだから、こうした速度とかGの変化とかを楽しむのって慣れてるんじゃないかなぁ……


 あ、そうか! 

 ドラゴンって羽ばたきで飛んでるんじゃあなくって、魔法で飛んでるからGの変化って感じて無いのか……


 ドラゴニュートたちが楽しそうに滑っているのを見た風の精霊たちがそわそわしている。


「おーい、みんなあ、ドラゴニュートのおじさんに頼んで一緒に乗せてもらっていいぞぉ」


「「「「「 わぁーい♪ 」」」」」

「「「「「 おじさん、乗せて乗せてぇ♪ 」」」」」


 あはは、みんな楽しそうだなあ。

 辺りには「わー♪」だの「きゃー♪」だの「うきゃー♪」だのって、楽しそうな声が響いている。


 あー、修学旅行生たちがみんなこっち来ちゃったよ。

 これ年恰好からして小学6年生ぐらいのカンジかな。


「よしみんな、みんなも滑っていいぞ。

 あんまりいっぺんに滑るとぶつかって危ないから、順番にな。

 それから滑り終わったらすぐに立ち上がってその場を動くこと。

 そうしないと後から滑って来たソリにぶつかっちゃうからな」


「「「「「 はぁーい♪ 」」」」」



 うーん。みんな異様に楽しそうだわ……

 そうか…… やっぱり今までこんなふうに遊んだこと無かったんだろう。

 生きて行くのに精いっぱいで、こんな子供のころから畑仕事とかしてたんだろうし……


 そうだな。もっともっとこういう遊びの場を増やしてやろうか。

 こうしてみんなで楽しい体験を共有することで、きっとE階梯も上がって行くんだろうから……



 俺はその日の夜、修学旅行生達のホテルに行って、子供たちと話をしてみたんだ。


「なあ、ソリ遊びは楽しかったか」


「うん! とっても!」

「なんでこんなに楽しいんだろう、って思うぐらい楽しかった!」

「でもさ、なんであんなに面白いんだろうね?」


「なんでだと思う?」


「うーん、速いから?」

「そうだよね。大人でもあんなに速く走れないもんね」

「それからさ。なんか滑ってるときって、こう体がふわーって軽くなったような気がするんだ」

「そうそう、あれ気持ちいいよね。

 なんかお腹の中のものが上に上がって来てるみたい」


「それはな、重力っていうものが小さくなって、体が軽くなってるからなんだよ」


「軽くなってるんですか?」


「そうだ」


「そ、それ母ちゃんに教えてやらなきゃ!

 いつも『また重くなった』って落ち込んでるから……」


「あはは、軽くなるのはソリで滑ってるときだけで、滑り終わったらまた元と同じ重さだぞ」


「なぁんだー。そっかー……」





 季節は冬になった。

 大平原の各街もそれなりに寒くなっている。


 俺はまた保育園と幼稚園を視察してみた。


 あー、保育園の乳幼児たち、みんな保育士さんにくっついてるわ……

 人気の保育士さんは熊人族ワーベアーか。

 体が大きくて毛皮が立派だからだな。

 あの保育士さんなんか、周りに10人ぐらい小さな子がくっついてるわ。



 もちろん幼稚園にも『空調の魔道具』がついてるけどさ。

 あんまり暖かくし過ぎると、外で暮らせなくなっちゃうからな。

 子供たちから野性を奪い過ぎないためにも、室内の気温はやや低めにしてある。


「くしゅん」


 あ、あの子くしゃみした。

 ハナミズ垂れてる……


 そうか、もう少し寒くなったらアレ作ってやるか……



 それで俺、こたつを作ってやったんだよ。

 みんなで入れるように一辺が3メートルもある大型のヤツ。

 これなら正面の人と足ぶつかったりしないだろ。


 こたつの中に入れたのは『熱の魔道具』だ。

 温度は45度以上には絶対に上がらないようにしてある。

 低温やけども怖いからな。



 それでまず実験として、幼稚園の年長さんの『お昼寝部屋』に導入してみたんだよ。



 お、みんな入ってる入ってる。

 でもなんか、やたらに猫人族ワーキャットの子が多いような気がする……


 あはは、あの1面なんか全員猫人族ワーキャットの子たちだぞ。

 みんな体を全部こたつに入れて、顔だけ出して寝てるわ。

 それも全員うつ伏せで。


 うーん。こたつ布団から猫顔が10個ぐらい並んで出とるわ……


 あ、ひとりあくびした。

 わはは、その左右の子たちも連続してあくびしはじめた!

 やっぱりあくびって伝染するんだなあ。


 おーおー、見た目は可愛いけど、口開けると牙が見えて野性を感じさせるのう……

 まあまだ牙小っちゃいけど。



 あれ? なんであの子だけあんなに顔がデカいんだ?


 あ! あれ保育士さんだ!

 猫人族ワーキャットのお母さんだ!



 後でその若い保育士さんから話を聞いたんだけどさ。


「サトル神さま。

 アレは我々猫人族ワーキャットにとっては、『魔道具』というより『魔の道具』ですにゃ。

 アレに入った途端に、何も考えられなくなって思考停止するにゃ。

 中にまたたびの実でも入れてあるんかにゃ?」



 うーん。

 語尾に『にゃ』がつく女性と初めて話が出来たわ。

 可愛いから許す!




 本格的に冬になると、外で水浴びする奴が減って行った。

 代わりに混雑し始めたのが、各街に4カ所ずつある大浴場だ。


 その大浴場の一画に、さらに大混雑しているコーナーがあるそうなんで行ってみたんだよ。

 そのコーナーに出ていた看板には……


【アライグマのボディケア (シャンプー、リンス、トリートメント♡)】

 って書いてあったんだ。



 前に、『大平原の種族は互いに異性の美醜を気にしない』って言ったけどさ。

 体毛の多い種族が唯一気にするのが、相手の『毛並み』だったんだわ。


 ん? 地球で言うような『生まれ育ち』っていう意味じゃあないぞ。

 文字通り体毛の美しさなんだ。


 特にもともと毛の美しい狐人族ワーフォックスなんかは、相当に気にするみたいだな。

 後は猫人族ワーキャット犬人族ワードッグ狼人族ワーウルフなんかもそうだ。

 そんなに気にしないのは兎人族ワーラビット熊人族ワーベアー猿人族ワーエイプだけど、それでもボサボサで汚れている毛皮だとモテないそうだ。


 それで洗熊人族ワーラクーンが全身の毛を丁寧に洗ってくれる、ボディケアコーナーが大繁盛してるんだと。



 まあな、地球産のシャンプーやリンスに感動するって当然だろうからなあ。

 まして洗熊人族ワーラクーンのあの可愛らしい手でこしょこしょ洗って貰えるんもんな。


 あー、トリートメントも終わってふわふわもこもこになった狐人族ワーフォックスの娘さんが、鏡見て涙ぐんどるわ……


 しばらくしてから「ふんすっ」って気合い入れて帰って行ったけど、これから気になる男の子のところにでも出かけて行くのかな?



 あれ? あそこのベッドに寝てるの馬人族ワーホースだ。

 あいつらたてがみ以外はそんなに毛が無いのに……


 あ! たわしで体擦ってもらってる!

 あー、気持ちよさそうな顔してよだれ垂らしてるわ。

 地球でも馬はたわしで擦ってやると喜ぶらしいけど、こっちでもそうだったんだなあ……

 ああ、あそこの牛人族ワーキャトルもよだれ垂らしてるわ。


 あれ? なんでここにベヒモニュートがいるんだ?

 あ! 背中の甲殻を擦ってるあの洗剤って、「磨き粉」だ!

 そっかー、ベヒモニュートは甲殻がつやつやピカピカだとモテるのかあ。

 あー、ふとももと胸の甲殻は、さらに高級な磨き粉で磨いてもらってるわぁ。


 おお、ほんとにピカピカになっとる!

 アライグマさんたち、い~い仕事してるなぁ……


 あそこのドラゴニュートも首の鱗がピッカピカだわ。

 あ、ガッツポーズしとる……



 これさ、もし貨幣経済が導入されてカネ取るようになったら、洗熊人族ワーラクーンたちは、あっというまに大金持ちだろうね。


 それでも、みんなが喜んでくれるからって自主的にこんな仕事始めるなんて偉いよな。


 こんどなんか褒美でも考えてやるか……




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