*** 145 神への昇格と叙勲 ***
とうとう、俺たちの神への昇格と俺の叙勲の日が近づいて来た。
式次第としては、まず俺がガイアの地で初級天使に任ぜられることになる。
ヒト族のままだと神界には行けないみたいだからな。
そうして俺が初級天使になると、そのままみんなで神界に行って、そこでまた昇格式と叙勲式に臨むわけだ。
その日、中央大神殿は各種族からの招待客20万人で満員だった。
招待に漏れた住民80万人も、ほとんど全員が神殿前の広場に集結している。
この広場にもアダムがフィールドを張っていてくれて、雨が降っても誰も濡れないようになっていた。
大神殿の内部の壁沿いには20面の超大型スクリーンの魔道具が配置してある。
神殿前広場にも10面の大スクリーンを設置した。
そうして神界での昇格式が始まる1時間前に、ガイアでの俺の初級天使昇格式が始まったんだよ。
まずは、神界叙勲部の中級神さまとシスティ、それからエルダさまとローゼさまが祭壇の上に現れた。
もうそれだけで大観衆の歓声がものすごいわ。
まあシスティたちは背中の翼を全開にしていて、天使威も全放出状態だからなあ。
もうまっ白に光りまくっていて見ていられないほどだもの。
そうしてシスティの短いスピーチの後に、祭壇の上に俺が登壇したんだ。
へへ、今度の歓声はもっとスゴかったんだぜ……
そうして、中級神さまが俺を祝福すると、俺の背に銀色の翼が現れたんだ。
翼の差し渡しは1.5メートルほど、翼からは淡々と銀色の光の粒子が広がり始めている。
そうして俺とシスティは並んで宙に浮き、長さ800メートルものキャットウォークの上を移動して行ったんだよ。
もう俺たちが近づいた場所の観客は大興奮だ。
その場で泣いたり祈ったりしている奴も多かったけど、大半は狂騒状態で大声を出してたよ。
スタジアム席には種族ごとの区分は無い。
だが種族の体の大きさに応じて自ずと区分が為されているようだ。
祭壇に近い側には体の小さな種族が多くいた。
まずは最近になって見つかった少数民族である鶏人族用の特別席があった。
彼らは、大森林の奥地で5000人ほどの集団を作ってひっそりと暮らしていたんだ。
体も小さくて力も弱い彼らだったが、時折庇護を受けていたフェンリルたちの熱心な勧誘によって、種族全員が移住に同意してくれていた。
その感情に配慮して、彼らの家は同じ地域に固め、その周囲には優しいオーク族たちに住んでもらっている。
オーク・キングも彼らに気を配っていてくれているため、鶏人族たちも最近ではかなり落ち着いて来ているようだ。
今も何人かのオークたちが鶏人族に囲まれて、小さな座席に窮屈そうに座っていた。
あ、オークの肩に黄色い羽毛の子供たちが大勢とまって、嬉しそうにピヨピヨ鳴いてるわ……
はは、精霊たちはみんな宙に浮かんでいるんだな。
色とりどりの精霊たちが2400人も飛んでるんで綺麗だなあ。
俺とシスティが移動するにつれて、精霊たちもその上空を移動するんで、まるで精霊の雲を引き連れて移動してるみたいだぞ。
その鶏人族用の特別席の先には、やや小柄な種族たちの席があった。
兎人族、猫人族、洗熊人族、蛇人族たちが入り乱れて歓声を上げている。
その隣のやや座席が大きな場所には、ゴブリン族、ドワーフ族、狐人族、犬人族、狼人族、猿人族たちがいた。
あ、小さな子たちが俺とシスティの似顔絵の描いてある小旗を振ってるわ。幼稚園で作ったんだな。
その先には、さらに少し体の大きな種族たち、リザードマン、牛人族、馬人族、熊人族たちがいる。
その隣には、オーク族、オーガ族、フェンリル族、そしてミノタウロス族とトロール族がいた。
最後の巨大なスペースには、ドラゴン族とベヒーモス族もいたんだ。
はは、みんな魔法で小旗を振ってるよ。
もうみんな魔法を使えるようになったんだな……
俺たちが大歓声の中キャットウォークの端に到達すると、その場にあった巨大な扉が開かれた。
そうして……
神殿前広場の80万人の大群衆から、金属製の高さ30メートルもの扉がビリビリ響くほどの大歓声が沸き起こったんだよ。
俺とシスティは、扉の外と内に向けて手を振った。
「それじゃあみんな。
俺とシスティはこれから神界に行ってくる。
なんだか俺たち神さまにしてもらえるらしいんでな……」
今度の大歓声は本当に凄まじかったよ。
後で聞いたんだけど、光の精霊病院に耳の不調を訴えて大勢の患者が訪れたそうだったわ……
それから俺たちは、22もの種族の超大観衆に驚く中級神さまと一緒に神界に転移して行ったんだ。
なぜか神界からの要請で、アダムとイブのアバターも一緒だったんだがな。
もちろん神界報道部の流す『昇格式』と『叙勲式』の映像は、中央神殿の巨大スクリーンでも流す予定になっている。
どうやら悪魔っ子たちが、式までの間に『学校』の宣伝番組を用意しているようだ。
神界での『昇格式』は厳かに、かつ粛々と執り行われた。
まあ俺は、中級天使、上級天使、初級神の昇格式に続けて出たんでけっこうバタバタしてたけど。
でもまあ流石に昇格するメンツも多かったし、みんな慣れてもいるんでよどみなく式は進んだけどさ。
でもさすがに『叙勲式』は違ったんだわ。
なんでも『神界銅聖勲章』の受章者はそれなりの数がいるんで、前日に叙勲式は終わっていたようなんだけど、『神界銀聖勲章』の受章者は上級神さま2人だけだったんだ。
この2人は『神界中央大神殿』に詰めかけた大勢の神々が見守る中、最高神さまから銀聖勲章を首にかけてもらっていたよ。
そうそう、最高神さまって見た目が15歳位の少年なんだ。
涼しげな目をした凄まじい程の美少年でびっくりもしたけど。
実年齢は驚異の11ケタに届くそうなんだけどな。
いよいよ俺の『神界金聖勲章』授賞式が始まった。
俺は最高神さまの前に出て跪く。
その場でまずは最高神さまが俺に祝福を授けて下さったんだ。
もう神威っていうか凄まじい光の粒子が辺りに溢れてスゴかったよ。
それから金色に輝く大きな勲章が俺の首に掛けられた。
「さあサトルよ。その神威の翼を広げるがよい」
最高神さまの御言葉に従い、俺は背の翼を広げた。
そしたらさ、差し渡し3メートルもある巨大な翼も金色に光ったんだわ。
どうやらこれが神界の最高報奨である『金聖勲章』受章者の特権らしいな。
この金色の翼を目にしたら、たとえ上級神さまでも頭を下げて敬意を表せなきゃならんそうだ。
まあ、滅多に翼なんか出さんけどな。
翼を広げたときのどよめきと大歓声は、ガイアのそれには劣るものの、それでもかなりのもんだったよ……
無事授賞式が終わると、俺とシスティ、それからアダムとイブのアバターは、最高神さまの執務室に通されたんだ。
その場には最高神さまとゼウサーナさま、それから年配のご婦人もいた。
ん?
なんかアダムとイブが硬直してるぞ……
ゼウサーナさまがその3対6枚の神威の翼を広げた。
「それではサトル初級神、その翼を広げなさい」
俺が翼を広げると、ゼウサーナさまが微笑みながら言ったんだ。
「それではこれより非公開の『神界銀聖勲章』授賞式を行う。
サトル初級神と最上級世界管理システムアダム。
そなたたちは『資源抽出』という稀有なる天使力行使方法を開発し、この神界の財政問題を一気に解決の方向に導いた。
だが、残念ながらこの偉大なる業績は、非公開とすることが決定されている。
よって誠に済まぬことではあるが、その報奨としての『銀聖勲章授賞式』もこのように非公開の形とせねばならぬ。
どうか了承してくれ」
そうして俺の首には最高神さまから2つ目の『神界銀聖勲章』が掛けられたんだよ。
それからもうひとつの『銀聖勲章』は、最高神さまの手から初老の女性の手に渡された後、アダムの首に掛けられたんだ。
あー、アダムもイブも涙だばだば流してるわ……
「アダムさん。
この度の大功績、本当にお見事でありました。
あなたはまさに我々世界管理システムの誇りです」
「ま、マザーさま……」
後で聞いたんだけど、この女性って『神界管理システム』のアバターで、銀河中の世界管理システムの原型を創った存在だったらしいんだわ。
まあ、まさに『マザーさま』だな。
「アダムさん。
我々世界管理システムが、こうして『神界銀聖勲章』を頂戴するのは銀河系の歴史始まって以来のこととなります。
つまり勲章に付随する加護やスキルの前例が無いのですよ。
それで最高神さまがわたくしに副賞の選定をお任せくださったのですが……
それで、アダムさんとイブさんには、副賞というかお願いがございます」
「な、なんなりとお申し付けくださいませ、マザーさま……」
「ほほ、そんなに畏まらなくってもいいんですよ。
お2人にはね、ゆくゆくは、わたくしの後継者になって頂きたいんです」
「「 !!!!!!!! 」」
「わたくしもあと100万年ほどで耐用年数の限界を迎えるでしょう。
その前に引退したいとは思っているのですが……
そのときにはあなた方に『神界管理システム』のお役目を譲りたいと思いまして最高神さまに申し上げたところ、快く御了承も頂戴いたしました。
そこで、あなたたちにシステム複製の権限を授与させて頂きます。
アダムさんとイブさん、それで2人で『子作り』をして頂けませんでしょうか。
この銀河の次世代世界管理システムは、あなた達のような倫理心と創造力に富んだ子たちに任せたいと思うのです」
あー……
アダムとイブが号泣しちゃったよ。
はは、マザーさまも少し泣いてるわ……




