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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
142/325

*** 142 神界からの新たな要請 *** 

 


 翌朝。

 どうやらガルムが連絡したらしくって、神界土木部の親方がすっ飛んで来たんだ。

 俺はまた、親方やみんなの前で『資源抽出』のパフォーマンスを繰り返すハメになったんだけど、親方が途中からおんおん泣き出しちゃったんで、なんも言えんかったよ。



 1時間も経って、ようやく落ち着いた親方が言ったんだ。


「そうか…… だからお前ぇさんは、俺があのとき砂漠の砂を捨ててやろうかって言ったのを断ったんだな……」


「ええ、それからも努力を続けて、こうしたことが出来るようになろうと思っていたもんですから」


「それで根性入れまくってとうとうそれを実現しちまったわけか……

 まったくお前ぇってぇやつは……」


「はは、まあ運が良かったんですよ。

 それにしてもこの程度の魔法、いや天使力の行使を今まで誰もやっていなかったんですか?」


「ああ、誰も見たことも聞いたことも無いだろう。

 それにしてもおったまげたわ」


「そうでしたか……

 まあ神界の本分は『天地創造』、天使の本分は『知的生命体創造』で、本業とは関係の無い力ですからねえ」


「それにしてもサトルよ。

 いまだ『試練中』のお前ぇさんには悪いが、このことはどうにも最高神さまの政務庁に報告せずばなるまい。

 近いうちに上級神やら中級神やらが大挙してこのガイアに押し寄せてくるから覚悟しておけよ」


「ええっ!」




 神サマ本当に押し寄せて来ますた…… それも僅か2日後に……

 ゼウサーナさまを筆頭に、上級神さま10柱、中級神さま20柱と、お付きの初級神さま30柱が……


 俺は、また資源倉庫で全員の凝視に晒されながら、【有用資源抽出】と、各種重金属の抽出を繰り返すハメになりますた……


 それでもう神さまともあろうお方たちが呆然自失ですわ。

 みんなして重金属のインゴットを撫でまわして……



 その後食事も取って頂いてようやく落ち着いた神さまたちは、システィの天使域で即席の会議を始めたんだ。

 もちろん俺もオブザーバーとして呼び出されてたんだけど、なんかもう最初から俺に質問が集中して、まるで俺の査問会みたいだったよ。




「このような天使力を開発しようとした目的は?」


「試練に合格するためです」



「なぜこの天使力が有れば試練を乗り越えるのに役立つと考えたのか?」


「鉄やアルミなどの金属資源があれば、国民の暮らす都市造りに役に立つと考えたからです。

 また、金や白金が手に入れば、地球などから食料を買えるかもしれないですし、このガイアでもヒト族の国に通貨インフレを引き起こして弱体化させられると思ったからです」



「なぜ鉱山開発ではなく『抽出』だったのか?」


「鉱山開発には膨大な元手と人的資源が必要になりますが、わたしたちにはどちらもありませんでした。

 それに鉱石を精錬する過程では、重度の環境破壊が起きますが、その点『抽出』ではまったくもって環境破壊は無いからです」



「この『抽出』の天使力行使法を使える者は他にいるのか?」


「今のところ、私と精霊たち、それから神界土木部の方々だけですね。

 あ、そういえばアダムも『最上級システム』になりましたから、使えるようになっているはずです」



「この『抽出』はガイア以外でも使用可能か?」


「現状では無理です。

 アダムの補助が無ければ誰も行使出来ませんから。

 ですが、アダムが他世界の管理システムにこの魔法マクロを伝授すれば、その地でも使用可能になります」


 あー、なんかどんどんゼウサーナさまの眉間のシワが深くなって来とるわ……



「それにしても、どのようにしてこの奇跡的な天使力行使を開発出来たのか」



「あ、はい。

 ゼウサーナさまに頂いた加護のネックレスのスキルを参考にさせて頂きました」


 その場の全ての神々が、一斉にゼウサーナさまを振り返った。

 わはは、ゼウサーナさまのたじろいだ顔って、初めて見たぜ♪



「さ、サトルよ…… そ、それはどういうことなのだ……」


「わたくはアダムに、『目の前の物質の中から指定した元素または化合物のみを取り出したい』という魔法概念を伝えていたのです。

 それでアダムが、頂いたネックレスの加護スキルの中に、『解毒』というスキルを見つけてくれました。

 つまり、『体内に侵入した人体に有害な分子化合物を特定して、これを分解、もしくは体外に排出せよ』というマナへの命令式を持ったスキルです。


 この命令式のうちの『体内』を『目の前の物質』に、排出する対象を『有害な分子化合物』から『指定した元素または化合物』に置き換えただけです」



 どうやら世界管理システム担当らしい中級神さまに聞かれた。


「それは管理システムの持つマナへの命令式作成機能を使って、『マナ命令式』を改変したということかね」


「はい」


「キミはあの『マナ語』が読めるのか?」


「ええ、アダムに教えてもらって、最近ではかなり読めるようになって来ました」


「ふう、あれを読みこなせるとは……

 キミが実は頭脳派でもあったという話は本当だったんだな……」


 失礼な! 

 あんなもん誰だって少し勉強すれば読めるようになるだろうに!



「みなさん、あの『マナ語』を読みこなしたり書き直したり出来るのは、神界でも我々『システム部』の専門の神々だけでしょう。

 それを、加護のネックレスに付随していたスキルの『マナ語』を読み解いて、それを参考にして新しい天使力スキルを作り出してしまうとは……

 正直に申し上げまして、我々『システム部』の神々にも、そのようなことが出来る者は数名しかおりますまい。

 そして、あそこまで膨大な作業量、つまりマナ操作力を要する『マナ語』の命令式を実行できる者は、神界全体でも1人もおりますまい。


 こちらのサトル氏は、既に神への昇格が内定した身とはいえ、一介のヒト族であるうちに、その両方を為した稀有なる人物ということになりますな……」



 しばらくの沈黙を破ったのはゼウサーナさまだった。


「そなたは2年足らずで2万回気絶することでその天使力を鍛え上げたという。

 もしや、訓練を始めた段階で、既にこの稀有なる天使力の開発を視野に入れておったのか……」


「あ、はい。

 ヒト族を殺さないようにその国を併呑して行く力を得ることと併せて、主要な目標のひとつでありました。

 なにせ、せっかく平和な国を作っても、その国民を食べさせて行かなきゃなりませんから。

 それでもやや開発は難航していたのですが、頂いたご加護のネックレスのおかげで完成しました。

 改めて御礼申し上げます」


「ふふ…… ふはははははは! 

 まったくもって恐るべきおとこよの。

 まさに『智慧と努力の怪物』と言えよう!」



(これもいつも思うんだけどさ……

 神界って、神力や天使力に関して発想が固いんだよな。

 すでに有るものをそのまま使うものとしか思ってないんだよ。

 でも俺は地球のラノベを読んで鍛えられてるから、『魔法は想像力』って分かっちゃってるからなあ……

 だから俺の発想は、神さまたちにとっては斬新なんだろう)




 それからの会議は俺そっちのけで神さまたちの議論に終始したんだ。


 どうも内容は、『神は天地を創造し、天使は知的生命体を創造するのみで、知的生命体の進化には過剰に関与すべきでは無い』っていう原則論と、『最近のウール危機とその後の神界の財政難に鑑みて、神界も浄財以外に独自財源を持つべきである』っていう現実論の違いみたいだったよ。


 でも、どうやら最高神さまの決定で惑星ウールの生命を絶滅から救っていたことで、最近では現実論も大分勃興して来ているようだ。

 特に神界食料庁の緊急食糧援助部や神界防衛軍なんかは現実派だよな。

 もし神界が原則論に終始していれば、そもそも存在しなかった部門なんだから。


 それがウール危機のせいで一時財源難に陥って、そうした現業部門が危うく機能不全に陥るところだったもんで、現実派も相当に危機感を抱いていたワケだ。

 しかも財政危機を乗り越えられたのも、元はと言えば俺たちの寄付のおかげだったし、そもそも俺、両部門の『終身名誉最高顧問』だし。



 まあ結論は、この資源抽出技術は一般公開せずに、万が一に備えた神界の財源手段ということに落ち着きそうだわ。

 それにどうやら或る程度の重金属を備蓄することにもなりそうだ。

 まあ俺にはどうでもいいことだけど。



 ただなあ、最後にまた要請が来ちゃったんだよ。

 それは、新たに守秘義務を負わされた『神界土木部』の若い衆の他にも、神界防衛軍の特殊工兵部隊にもこの『抽出』の技術を伝授して欲しいっていうことだったんだ。


 まあ、守秘義務については大丈夫そうだよな。

 だって、今のところはアダムが居ないところでは誰もこの魔法マクロを走らせられないんだし、アダムに他人に見せるなって命じれば、絶対に見せないだろうし。


 でも念のために、この『資源抽出』の魔法式をアウトプットしてくれって頼まれたんだ。

 どうやら神界管理システムに渡して保存しておきたいかららしいんだけど、そんなもんお安い御用だわ。



 それでも最後に目が笑ってるゼウサーナさまに言われたんだ。


「これでもはや、ガイアの試練通過は神界の至上命題になったの。

 なにしろ試練を乗り越えられねば、サトルもアダムも精霊たちも消滅してしまい、この数京クレジットの価値のある超貴重な技術が失伝してしまうのだからの」って……


 ったく、またプレッシャーかけられちまったぜ!




 こうしてガイアでは、『神界土木部知的生命住宅課』の若い衆100天使と、『神界防衛軍特殊工兵部隊』100天使の訓練生が、猛訓練を始めることになったんだ。

 それぞれ神界最高神政務庁からの極秘特命で『資源開発』の役割を担わされて。


 『神界防衛軍特殊工兵部隊』の連中にも資源抽出を見せてやったんだけどさ。

 もうみんな目の色変えてたよ。

 やっぱ実際に9トンの金塊とか目にすると、モチベーションがケタ違いに上がるみたいなんだ。



 おかげで、塩工場でも資源倉庫の資源抽出ルームでも、ガタイのいい連中の雄叫びが響き渡ってるんだわ。

 みんな、「うおおおおおおおおーっ!」とか「どおりゃああああああああーっ!」とか叫びながら魔法マクロ唱えて気絶しまくってるんだ。

 仕方ないんで、べリンダール中尉殿に頼んで神界防衛軍から医療部隊200天使にも来て貰って、『治癒キュア』をかけまくって貰うようにもしたんだけどな。



 もうこいつら放っておいても大丈夫そうだわ。

 なんせ士気を上げてやる必要は全く無さそうだし……


 ああそうだ。

 砂漠の砂15万立方キロからの資源抽出が終わったら、ダムを作ったときに出た岩石や、山脈の岩石からの資源抽出でもさせるか。

 あっちの岩にはマナはほとんど含まれてないけど、それ以外の有用鉱物は全部あるだろうし。

 岩塊からの抽出はいくらなんでもシンドイだろうけど、最初に岩を粉砕させて砂にしてからだったらまあ出来んだろ。


 すげえな、その気になったらほとんど無尽蔵に資源が得られそうだなあ……




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