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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
140/325

*** 140 族長会議での提案 ***

 


 俺は、各種族の族長たちを前にして、E階梯の上昇促進仮説についての説明を続けた。


「そうして、これらの手段は文字や映像を通じて、飛躍的に多くのひとたちの様子を見ることも出来るんだ。

 それまでは家族やせいぜい村社会の数百人としか触れ合うことのなかった連中が、これらのものを通じて数百万、数千万、数億のひとの姿を見ることが出来るようになったんだ」


「なるほど…… 『他人に共感出来る』、『他人を思い遣ることが出来る』ようになるためには、まず他人を見て知ることから始めなければならないということなのですな……

 だからサトルさまはこの街へ我らを受け入れて下さったときに、種族ごとの街を作られるのではなく、雑多な種族が隣り合って済むような配置にされていたわけだ……」


「そうだ。

 故に『学校』でも、各教室は種族ごとに分けたりするつもりは無い。

 あらゆる種族が混ざり合った状態にするつもりだ。

『他人に同情出来る』の他人とは、同じ種族だけではなく、他種族も含まれて欲しいからだ」


「なるほどなるほど……

『映像の魔道具』で見るのではなく、実際に他種族や他人と喋ったり共同作業をする場を作るという意味でも、『学校』には価値があったのですな。

 よくわかりました」



 ベヒラン族長が自分の前足を見ながら寂しそうに呟いた。


「残念ながら、我らベヒーモス一族は、文字は読めるようになれても書くことは難しそうですなあ……」


 ドラゴン族の族長たちも自分の短い手を見ながら頷いている。


「いやそれについても安心してくれ。

 システィの了解は得たから、手や指を使いづらい種族に関しては、全員に『念動力の魔法能力』を与えることにした。

 これを取得すれば、諸君は手を使わなくともペンを動かせるようになる。

 そうだな。ベヒラン族長、今その魔法能力を授けてもかまわないか?」


「も、もちろんでございます……

 そ、そのような能力を頂戴出来るとは……」


 俺が手を振ると、ベヒラン族長の体が淡い光に包まれた。


「おおおおおおお……」


「さて、それじゃあこの紙に書いてある文字が、族長の名である『ベヒラン』という字だ。

 それじゃあこのペンを使って同じ字を白紙に書いてみてくれるか?」


 ベヒラン族長がペンを見つめると、それは宙に浮いて動き始めた。

 そうして…… 

 大きな紙にたどたどしい字で「ベヒラン」と書かれたんだ。


「こ、これがわたしの名……

 ぶ、ぶもおおおおおおおおおおおおおおおおーっ!」


 あー、族長、号泣しちゃったよ……


「はは。この力があれば、風呂で自分の体を洗ったりも出来るぞ」


 そうして俺はフェンリル達やドラゴン達にもこの能力を授けてやったんだ。

 もー、デカいやつらが号泣しちゃってタイヘンだったわ。

 涙で床びしょびしょだったし。




「それじゃあ『内政』については、まず『学校』を作るという方向でこれから準備を始めるが、それ以外にもいくつか進めたい政策があるんだ。

 それでみんなに聞きたいことがあるんだが、ここにいる種族のうちの若い人が結婚して家庭を作るときにはどんなお祝いをしているのかな?」


「我々は、村人全員で若い夫婦の住居を用意したり、寝床や竈などの生活の道具を作ってやりますな。

 その後は全員で集まってご馳走を食べて宴会です」


「我らも同じようなものだ。

 まず巣や必要品を村全体で用意して、そのあとは宴会だ」


「うーん、我らはあまり家というものに拘らぬからのう。

 ほとんど宴会主体かのう」


「うちの種族では、子育ては女性達の仕事でしての。

 とくに結婚した番が一緒に住むという風習は無いのですが……

 まあ、子が出来たときに初めて番と看做されて、皆が祝いの宴会を開く程度かの」


「それじゃあ宴会料理にはどんなものが好まれるのかな?」


「そうですな、本来であれば肉類や魚や卵などが大ご馳走となりますが……

 そうそう都合よく手に入るわけもなく、そのために果物が主要なご馳走になりますか」


「ウチの種族では、番を作るときの祝いなどはなるべく秋にしておったの。

 要は果実が手に入りやすいからだが……」


「我らの主食はマナなので、特別にご馳走を用意するということは無いが、やはり果物があると皆喜んでいたのう」


「なるほどそうか……

 それで次の質問なんだが……」


 こうして俺は、俺たちの街に住む各種族たちの幸福のためのヒントを得て行ったんだ。



「それじゃあ最後に、何か『内政政策』について、意見はあるかな?」


「『サトルさん』、3つほどあるのですがよろしいですかな?」


「さすがはオーキーだ。ぜひ教えてくれ」


「はい、ひとつ目は仕事の紹介所を作って頂けないかということなのです。

 わがオーク族も、大森林内に分散して暮らしていた一族が大勢集まり始めております。そうして移住して落ち着いた彼らから、必ずと言っていいほど聞かれるのが、『どのような仕事をすればいいのか?』ということなのです。

 ですから、働く意思のある者たちに、そのとき人手を必要としている職場を紹介してやって頂けませんでしょうか」


「なるほど。

 それじゃあ各街の中央棟に『職業紹介所』を作ろう。

 そこに行けば、今人手が足りない仕事を紹介してもらえるようにするか。

 今の仕事に不満が有った際の仕事の異動も自由にしようか」


「それは皆喜ぶと思いますな。

 それから2つ目のご提案は、お忙しい中誠に恐縮なのですが、『集会所』をご用意願えまいかということなのですよ。

 我らが種族や以前の村単位で住むのは、サトルさまの多種族友好政策の一環であることは理解致しましたが、それでも年に2回の村祭りなどは開催したいと考えまして」


「なるほど。

 よし! それじゃあ各街の外側に、何カ所か各種族が祭りを開けるようなスタジアムを造ろう! 

 みんなで交代で使ってくれ。

 出来ればみんなの祭りには他種族の連中も見学に来られるようにしてやってくれるか」


「もちろんです」


「それから、そうした行事の開催を告知したりするために、街の中央棟に『掲示板』も用意しよう。

 紙や絵具も支給するから、是非種族感溢れる『お知らせ』を作って張り出してくれるか。


 そうそう、それからお前たちが種族のみんなに呼び掛けることの出来る場も用意するか。

 今中央棟の1階レストランや2階のTVルームで流れている『ガイア国内放送』だが、各種族につき、週に1回1時間の時間帯を割り振ることにする。

 ここにいる族長たちが種族のみんなに祭りの開催を知らせたり、伝達事項を伝える場にすればいいだろう。

 まあ、そういう『族長からのご連絡』以外にも何を流してもかまわんぞ。

 好きなように番組を作ればいい」


「そ、それはそれは…… 緊張致しますな……」


「それからな。あの『スクリーンの魔道具』については、これからたくさん作ろうと思ってるんだ。

 みんなの家一軒につき1台は配布出来るように。

 そうすれば、家のリビングで家族で晩飯を喰いながら、『族長からのご連絡』を見られるだろう」


「「「「「 おおおおお…… そ、それは素晴らしい…… 」」」」」」



「それで『サトルさん』、3つめのご提案なのですが……」


「聞かせてくれ」


「『サトルさん』は、食事の前後によく『いただきます』、『ごちそうさまでした』と仰っておられますね。

 あれは食材に対する感謝の念と、また料理を作ってくれた方への感謝の言葉だと伺いました。

 また、ゴブリン族の方々も、食前に『食事を頂けることに感謝致します』という意味の言葉を仰っておられるかと思います。

 この習慣を、『学校』での食事の際に広めて行っては如何でしょうか。

 それも具体的に『創造天使システィフィーナさまへの感謝の言葉』とするのです。

 皆がそうするようになれば、この世界の幸福ハピネスポイントが飛躍的に増えて行くのではないでしょうか。

 さらにこの習慣を、TVによる『族長放送』でもみなさんに呼び掛けて頂いたら如何でしょう」



「うーん…… 素晴らしいお考えじゃ……」


「実際に大いなる感謝の気持ちを持っているのも事実ですからの」


「この習慣が広まれば、毎日毎日莫大な幸福ハピネスポイントが増えて行きますなあ」


「やりましょう! やりましょう!」



「素晴らしい提案をありがとう。

 これからもこの『族長会議』」は月に1回開催したいと思う。

 みんな、そのときには、是非今のような素晴らしい提案をしてくれ」




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