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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
139/325

*** 139 第1回ガイア種族会議での施政方針表明 ***

 


「ということでだ。

 俺はこれから『外政』、すなわち対ヒト族戦争に専念したいと思っている。

 これは、ヒト族内での戦争阻止も含まれる。

 なぜならこれ以上この世界全体の罪業カルマを増やしたくないからだ。

 場合によっては、ヒト族を全員捕えて1人ずつ収容所に入れて、もう誰も不幸に出来ないし殺せないようにする手段も考えている。

 その際に必要な膨大な資材と食料についても調達の目途は立ちつつある。


 だが、出来ればこれは最後の手段にしたいんだ。

 何故なら、これはどう言い繕っても『誘拐』だからな。

 だが、ヒト族も『誘拐』されなければ『消滅』すると思えば、この最終手段もやむを得ないことかもしらん。

 具体的には、あと5年以内に、奴らが新たに生み出す罪業カルマポイントを、今の100分の1以下に出来なければこの手段を取らなければならないと考えている」


 はは、全員が納得してくれたみたいだな……



「そして内政の充実、すなわち人口を増やし、皆の幸福ハピネスポイントを増やし、さらにE階梯を上げる努力は、ここにいる皆にもお願いしたいと思っているんだ。

 もちろん俺も参加するがな。


 そして、この内政の目標を達成するには、『学校』に通うことが最も効果的な手段の一つだと思われるんだ。


 まずは、『学校』に通うことで、男女の出会いの場が出来る。

 学校で授業を受ける際には、授業ごとに40人ほどがひとつの教室で学ぶことになるが、このクラス分けはなるべく年齢ごとに分けようと思っているんだ。

 選択する授業ごとにクラスは異なるので、1日につきだいたい200人ほどの他人と同じ部屋で勉強することになるだろう。


 そうして授業の中には、5人ほどが『班』というものを作って共同作業をすることがある。

 これも他人と触れ合う場になることだろう。

 さらに学校の行事の中にはたくさんの行動がある。

 たとえば『遠足』だ。

 これは、300人ほどが一緒に遠方に出かけて景色を楽しんだり遊んだり弁当を食べたりして親睦を深めたりするものだ。

 あの『世界樹の森』をみんなで散策するのなんか楽しそうだな。

 さらに500人ほどで2泊3日程度の『旅行』に行くのもいいだろう。

 実は北部大山脈の中に素晴らしい場所があるんで、俺はこれからそこに宿泊施設を作ろうと思っているんだ。


 こうした『遠足』や『旅行』なんかの『学校行事』を通じて、『学校』に通う者同士は非常に緊密な人間関係を得ることが多い。

 俺の前世地球では、学校を卒業して何十年も経っていても、当時のクラスメートが集まってパーティーを開くことがあるぐらいだ」


「ということは、適齢期の男女の出会いの場にもなるということなのですな……」


「そうだオーキー、その通りだ。

 これは『人口を増やす』という内政の目的のひとつにも合致するだろう。

 さらに、『学校』で行われるのは『勉強』ばかりではないぞ。

 学校では『体育』と言って運動やスポーツも行われるんだ」


「うんどう?」

「すぽーつ?」


「運動やスポーツについては、これからTV放送でも紹介していくつもりだからすぐにわかることだろう。楽しみにして待っててくれ。

 それからな、学校で文字を覚えると、『本』が読めるようになるんだよ」


「『ほん』…… ですか……」


「本とは誰かが書いた話や考えを、紙やスクリーンを通じて読めるものなんだ。

 例えばだ。

 あのローゼマリーナさまは、このガイアについての話を書いているんだが、それは8800万もの世界の、とんでもなくたくさんのひとたちに読まれているんだよ。

 みんなもしょっちゅう登場しているぞ。

 そうそう、おかげでフェンリーなんか大人気になってて、フェンリー人形が500万個も売れたらしいぞ」


 あ、フェンリーくん、呆然自失&冷や汗ダラダラ……


「そういうのを読んでみたいと思わないか?」


「そ、それは…… 実に興味深そうですな……」



「それから学校には『クラブ活動』というものもある。

 授業が終わった後に集まって、それぞれが興味のあることをしたりするんだ。

 例えば『料理クラブ』なんかいいだろう。

 みんなで料理やお菓子の作り方を教わったり、自分たちでも作ってみたりするんだ。

 それから歌を歌ったり楽器を操作したりする『音楽クラブ』もいいかな」


「うた?」

「がっき?」

「おんがく?」


「はは、まあそのうちにわかるだろ。

 それから『運動クラブ』もいいなあ。

 いつか『サッカー部』とか作りたいもんだ」

 ということで、学校とは実は勉強するだけではないんだよ。

 実に楽しいところでもあったんだ。

 だからみんなの大切な時間を使ってでも行って欲しいんだ」


「なるほど……

『サトルさん』は、前世の地にて、その『学校』での生活を楽しまれていたのですな」


「いやオーキー、実は違うんだ。

 俺は前世では病気が重すぎて学校にはほとんど通えなかったんだよ。

『病院』という治療院にいるか自宅のどちらかで寝ているだけで、そのせいで学校に通う同年代の子供たちが羨ましくて仕方なかったんだ。

 友人もひとりもいなかったし。

 だからかな。俺がこのガイアで学校を作りたいと願っているのは……」


「そ、そうでありましたか……」


「まあこのガイアに来て、初めてお前たちみたいな『友人』が出来て実に嬉しいがな」


「『友人』…… わ、我らを『友』と呼んで下さるのですか……」


「もちろん。

 お前たちはどう思っているのか知らんが、俺の中では既にお前たちは俺の『友』だ。

 俺は友人達が幸せに暮らして行けるように努力しているに過ぎないんだ」


 あー、オーキー、泣き出しちゃったよ……

 すっげぇ大粒の涙がぼとぼと落ちてるわ。

 あ、他にもけっこう泣いとるやつがいるわ……

 みんな、あの映画見ちゃったからかなあ……

 まあ、『神』に友達って言われたらちょっと驚いても当然か……



「そのために、俺はこれから『学校都市』を作るつもりだ。

 大人たちが学校に通い始めたら教室の数が圧倒的に足りないだろうから、『8時街』を作ってそこはすべて学校になるようにしよう。


 そして、さっきのオーキーの疑問に戻ろうか。

 つまり俺がなぜこれほどまでの努力と時間をつぎ込んで、学校に拘るかということだ」


 はは、みんなまた真剣に身を乗り出して来たぜ。



「先ほどこの世界が『試練』を乗り越えなければならないということについて説明した。

 その条件の中には、『住民の平均E階梯が2以上でなければならない』というものがあっただろう。

 我々はこれも達成しなければならないんだ。

 だが…… 残念なことに、このE階梯を上げる方法についてはまだよくわかっていないんだよ」


「確か、『他人に共感出来る』、『他人を思い遣ることが出来る』でしたか……」


「そうだ。

 実はここにいるような族長たちは既にかなりE階梯が高い。

 なにしろ種族の幸せを願って、いつも努力していたからな。

 もちろん族長たち以外の一般人たちもけっこう高いんだ。

 そうだな、現在の平均でも2.5に近いところにいるだろう」


 はは、なんかみんなほっとしているようだわ。


「だが俺はこれをもっともっと上げて行きたいと思っているんだ。

 なにしろどうやら今のヒト族の平均は1未満のようだから、ガイア全体の平均は1.2ぐらいしか無いからな。

 そのときにヒントになるのが俺の前世、地球の姿なんだよ」


「あの映画に映っていたサトルさまの前世の世界ですな」


「そうだ。実は地球でもほんの100年ほど前までは、E階梯の平均は1.6ほどでしか無かったんだ。

 1万年ほど前に最初の試練に合格したときには2.5はあったそうなんだが、その後人口が増えて工業化も進み始めると、限られた資源を巡って争いが頻発し始めたんだ。

 それこそ100年のうちに、人が2000万人以上も死ぬような世界規模の大戦争を2回もしてたしな」


「「「「「 ………… 」」」」」



「だが、それでもここ100年ほどで、飛躍的な進化も見られ始めたんだよ。

 具体的にはE階梯5から6を持つ新人類の台頭だ。

 E階梯が1とか2しか無い旧人類は絶滅の方向に向かっていて、代わりにE階梯5以上の人類が増え始めたんだ。それも急激に。

 もともと進化とはゆっくり行われるものではなく、あるとき一気に為されるものなんだが、それでもここ100年間の地球人類の進化には眼を瞠るものがあるんだ」


「なぜそのような急激な変化が為されたのでしょうか……」


「正確なところはまだわかっていないんだが、俺が考えるに、『学校』と『テレビや新聞などのマスコミ』と『小説、ゲーム、スポーツ』のおかげなんじゃないかと思っている。

 俺が前世で住んでいた日本という国でも、100年前にはこのうちのほとんどが存在していなかった。

 学校はあるにはあったが、子供たちは農作業を手伝うのに忙しくてほとんど通えていなかったし。


 そうしてこれらE階梯を上げて行ったと思われる要素の中で、絶対的に必要だったのが、『文字を読むことが出来る』ということだったわけだ。

 日本でも100年前には文字を読んだり書くことの出来ないやつは70%近くいたんだよ。

 今はもう誰もが読み書き出来るけど」


「「「「「 ………… 」」」」」





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