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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
138/325

*** 138 大城壁の完成と『ガイア国建国宣言』 ***

 


 一方、神界防衛軍ガイア駐屯部隊の軍域司令部では……


 全員が蒼白な顔をして黙り込んでいた。

 数億年に渡って整備されて来た彼らの防衛ドクトリンにも、まったく想定されていなかった防衛手段を見せつけられてしまったがためである。

 その衝撃は相当に大きかったらしい。


 しかも後日、仮に侵略軍にミサイルや航空兵力があったとしても、城壁を越えて準天使域に侵入した途端にロックオンと強制転移可能と知らされ、連中はさらに驚愕することとなった。

 このサトルという男は、世界管理システムの助けを借りれば、たったひとりで数10万人規模の武力侵攻を抑止可能なシステムを作り上げてしまっていたのである。

 そう、神界防衛軍1個師団に匹敵する抑止システムをだ。



 この映像は直接神界の防衛軍総司令部にも流されていた。

 そうしてこの光景を見た総司令官もその幕僚たちも慄然としたのである。

 彼ら神自身も気づかされたのだ。

 神力とは、なんと応用が効くものだったことだろうかと……

 

 そして、その発想、その力を得るための努力、そうしてその発想を実現してしまう行動力。

 どれを取っても驚異的なものであった。

 まさに21京人を絶叫させたおとこの偉業である……



 画面が城壁建設に戻ると、神界防衛軍総司令部では即席の幕僚会議が始まった。

 彼らが今目にしたものは、防衛軍の実戦ドクトリンを根底から覆すものだったからである。

 そうしてその場で討議された内容は、防衛軍内に新たな特殊工兵部隊を創設することと、その部隊の訓練を彼らの最高顧問閣下に懇請することであったのだ……




 1時間ほど経って俺たち全員が気絶から復帰すると、またマクロを唱えて気絶する作業が繰り返された。後はアダムに任せてのんびり休息だ。


 そうして城壁工事開始から約48時間後。

 城壁はあと1枚、100メートル程を残して全て完成していた。

 その場にはギャラリースタンドが用意され、俺たち幹部一同に悪魔っ子たちと全ての精霊たち、それから各種族からの招待客2200名が控えている。



 そうしてその場でシスティが高らかに宣言したんだ。


「私たちの国を守る城壁を完成させてください!」


「城壁建設、最終工程開始!」


 俺のひと言とともに、300メートルほど上空に長さ100メートルの城壁が現れた。

 その巨大な壁がゆっくりと降りて来て城壁の最後の隙間に嵌って融着され、同時に城壁内部が、2500万平方キロに渡って荘厳な光に包まれる。

 誰もが感動するシスティの天使威の光だ。



「この大城壁の完成をもって、わたくしはここに『ガイア国』の建国を宣言致します。

 ガイア国の代表はわたくしが務めさせていただきますが、代表代行はここにいるサトルです。

 建国の理念は、多種族が共同で幸福に暮らすことです。

 従いまして、この国には貴族制度や奴隷制度を含む身分制がありません。

 族長もその一族も一般人も、全て平等に国民として扱われます。

 法の詳細は後日発表させて頂きますが、これからはみなさん助け合って仲良く暮らしていきましょう」


 システィが微笑んで言葉を結ぶと、その場に一斉に花火が打ち上げられた。

 日本製の花火が次々と夜空に上がって炸裂している。

 そのうちに城壁の上からも花火が上がり始めた。

 さらに『9時街』と『10時街』の城壁からも花火が打ち上げられ始める。

 もちろん『2時街』の周辺でもだ。


 エルダさまに頼んで地球から輸入していた5億円分もの花火が、景気よく炸裂している。

 地球の悪魔さんたちに花火師として研修してもらった成果が出ているようだ。

 ひとり10万円のご祝儀出したらみんな目の色変えて頑張ってくれてたよ。

 まあ花火筒の周りと悪魔さんたちは、ばっちり絶対アブソリュートフィールドで覆っていたけどな。




 翌日、『中央街』の大会議場に於いて、第1回ガイア種族会議が開催された。

 にこにこしながら座るシスティを前にして、22の種族の代表220人が集まっている。

 中には巨大なドラゴン族やらベヒーモス族やらもいるんで壮観だよ。


「みんなよく集まってくれた。

 それでは第1回の種族会議を始めよう。

 まあ会議と言ってもそれほど堅いものでもない。

 要は俺たちの国の問題点を見つけてそれに対処していくための会議だ。


 まず最初に連絡事項なんだが、明日からこの中央街にて『システィフィーナ神殿』の建設工事が始まる。

 工事予定期間は3カ月ほどになる見込みだが、完成すれば国民のみんなに交代で神殿に訪れてもらえるようになるだろう。

 そこでは週に3日、朝夕にシスティフィーナさまが降臨してくださるとのことだ」


「「「「「「「「 うおおおおおおーっ! 」」」」」」」」


 はは、みんな嬉しそうだな。


「それから今後は2つの政策を取り始める予定だ。

 最初の政策は、大城壁も完成して建国も宣言したことだし、城壁の内側、すなわちガイア国内での内政の充実を図るものとなる。

 その内政充実の第一歩は、いまだ城壁の外側にいる種族や一族達への移住の推奨になる。


 これについては、塩の交易を通じてほとんどの種族たちとの交流があった、ゴブリン族とドワーフ族中心に正式に組織を作りたい。

 例えば大平原西側については、ゴブリン族に加えて精霊とフェンリル族がチームを作る。

 このチームに加えて、移住を勧める相手と同じ種族のメンバーにも入ってもらいたい。

 つまり、兎人族ワーラビットの集団に移住を勧める際には、既に移住した兎人族ワーラビットとゴブリン族と精霊とフェンリル族のチームに移住の勧誘に当たってもらいたいんだ。

 平原東部に於いてはゴブリン族の代わりにドワーフ族になる。


 まあ、今までのやってきたことの延長だが、正式に『移住勧誘部門』という組織を作ってこれに当たるわけだ。

 当面の責任者は、大平原西部については『岩山のゴブリンキング』、東部についてはドワールス氏にお願いしたいと思う。

 目標は、1年以内に大城壁の外側で暮らしている種族をすべてガイア国内に移住させることだ。

 なぜなら、その頃までにはヒト族が大城壁周辺まで攻め込んで来ているだろうからだ。

 諸君も同族がヒト族に殺されるのは忍びないだろう」


 うん、みんな気合いを入れて頷いてくれてるわ。



「もうひとつの内政の柱は『義務教育』になる。

 今までは実に慌ただしかったせいで、教育に割ける時間も少なかったが、これからは全員少なくとも週に3日は『初期学校』に通って文字を覚えて欲しい」


 はは、みんなザワついてるわ。


「なぜならもうみんなもわかっているだろうが、『転移の魔道具』なんかには転移先の表示がある。

 あれが読めないとここガイアでは暮らして行けないからな。

 それ以外にも、せめて自分や家族の名前ぐらいは文字が書けるようになっていて欲しいからだ。


 この『初期学校』での文字教育には認定試験制を取ろうと思っている。

 認定は、初級と中級と上級だ。

 初級認定を受ければ『初期学校』に通う義務は免除されるが、是非その後も学校に通って、最終的には全員が上級認定を受けて欲しいと思っている」


「サトル殿。

 サトル殿は週7日のうち2日は完全休養日にして欲しいと言っておられたが、その初期学校にはその休養日に通うのであろうか?」


「ああオーガ・キング。いや違うんだ。

 週に2日は本当に完全休養日にして欲しい。

 それ以外の週5日の内3日間を初期学校での勉強に当てて欲しいんだよ」


「ふむ。そうすると農業やれすとらんでの仕事に影響が出ることと思われるの。

 特に農地の拡大があまり捗らないかもしれん……」


「もちろん農地の拡大も街の中での仕事も大切だ。

 だがそれらよりもさらに大切なのが『教育』だと思うんだ。

 そのために、現在の国民40万人が10倍の400万人になっても、100年間は食べて行けるだけの食料を確保してある」


 はは、またみんながザワついてるよ。



「サトル殿。

 サトル殿はそれだけの食料を確保されるのに、信じられぬほどの財産を使って下さったことと思う。

 それだけの財を築くための努力、それを投じて食材を集められた努力。

 我々には想像もつかぬほどのご努力があったと思われる。

 サトル殿がそれほどまでの労力をつぎ込まれてまでも、『教育』を重視される理由を教えては頂けないものだろうか」


「はは、さすがはオーガ・キングだな。

 俺はみんなに隠し事をするつもりは無い。

 それでは多少長くなるが説明させてもらおうか。

 途中で分かりにくい言葉も出て来るかもしれんが、あまり気にしないでくれ。

 まあ好奇心があればすべては『学校』で教えてくれるだろう」


 うん、さすがは族長たちだわ。真剣な顔をして頷いてるよ。



 俺は再度『試練』の内容について説明した。

 もちろん幸福ハピネスポイントや罪業カルマポイントについてもだ。

 初めて聞く連中も多かったからな。




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