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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
135/325

*** 135 塩コンテナ作成マクロ ***

 


 それからしばらくして、『神界土木部』の若い衆100天使が親方に連れられてやって来た。

 み、みんなすげぇガタイだわ。ツラ構えも怖いし。

 そんな連中が俺を囲んで跪いて涙を流しているんだ。


 最初は『初級天使ですらない一介のヒト族に指導を受けるとは!』とか言う奴も少しはいたんだそうだけど、どうやらみんなあのこっ恥ずかしい映画を見たらしい。

 まあ、ああいう体育会系の集団だからなぁ。

 おかげでもうこの状態よ。

 英雄崇拝ってこんな風に出来上がるんだな。


 ヒト族の侵入も少し落ち着いてたし、頼りになる神界防衛軍もいるしで、俺はしばらくの間『神界土木部』の若い連中の指導に専念したんだ。



「それじゃあみなさん、さっそく訓練を始めましょうか」


「教官殿! お願いがございます!」


「なんですか?」


「『みなさん』とか呼ばれると気合いが入りません!

『お前ぇら!』もしくは『野郎共!』でお願いできませんでしょうかっ!」


 はは、全員が頷いてるわ。


「よしわかった野郎共! 

 これから訓練を始めるが気合い入れて行けよ!

 ケツまくるんじゃねぇぞ!」


「「「「「「 押忍っ! 」」」」」」


(ほんとにコイツら天使さまか? 中には初級神もいるんだろ?)



「まずは魔法マクロについての講義からだ。

 ああ、お前らが『神力』とか『天使力』とか呼んでいる力を、ここガイアでは『魔力』と呼んでいるんだ。

 それを行使することを『魔法』を使う、と言っている。

 例えばお前らがそこらの石を持ち上げて移動させるときには、『魔法を使って石を浮かせて移動させて降ろす』と表現するわけだ。

 この場合に使われる力は、ほとんどお前たちの体内マナを使う『魔力』だけになる。

 体内マナが有り余ってるお前たちなら、それこそ山脈を動かすことも出来るだろう」


 はは、みんな自信ありげに頷いてるわ。



「だが、ある決まった作業を繰り返すときは、『魔法マクロ』というものを使うんだ。

 これは予め固定された魔法式を組んでそれに名前をつけておき、使うときにはそのマクロ名を唱えるだけでその作業が行われることになる。

 具体的にはある作業をする前に、『魔法マクロ定義』と言って、魔法マクロ名を言ってから魔法を使ってさまざまな作業をする。

 そうしてその作業が終了したら『魔法マクロ定義終了』と言うんだ。

 そうして『魔法マクロ』を作ったら、後はマクロ名を唱えるだけでその作業が繰り返されることになる。


 アダムのような世界管理システムのいるところでは、俺が作った魔法マクロを唱えても、それをそっくりそのまま実行出来る優れものだ。

 慣れてくれば自分で式を改造することも出来る。

 あの10億都市を作った作業も、この魔法マクロで行われたものだ」


 うん。みんな真剣なツラして頷いてるよ。

 あの都市建設マクロはこいつらの憧れらしいからなあ。



「ただし、この魔法マクロを行使するためには、体内マナとは別に『マナ操作力』というものが必要になる。

 この力は普段はほとんど使わない力なのでお前らも意識したことはないだろう。

『マナ操作力』は、行われる作業の大小にはほとんど関係が無い。

 主に魔法マクロを実行するときに必要とされる力であって、その力の消費量はどうやら魔法マクロを構成する魔方式の行数や、反復作業の量に比例するようなんだ。


 さらに、この『マナ操作力』は枯渇して気絶したときには『マナ・ポーション』でも回復出来ないんだ。

 唯一『治癒キュア(エンゼル級)』か『治癒キュア(神級)』でないと補充されないんだよ」


「教官殿! 質問があります!

『マナ・ポーション』とかなんでありましょうか!」


「ああそうか、あれはここで開発したものだっけ。

『マナ・ポーション』とは、純粋マナの水溶液だ。

 これを飲めば単なる体内マナの枯渇ならば一発で回復する。

 飲み過ぎると余分なマナがケツから噴き出して来てエラいことになるがな」



(そ、そんなもんがあるんかよ)

(一晩寝れば治るもんだと思ってたわ……)

(お、おい。それがあれば力仕事は永遠に続けられるってぇことか?)

(お、恐ろしい…… 

 親方に知られたら俺たちどんだけこき使われるか……)



「あはは、知りたかったら後で作り方を教えてやるけどな。

 俺があの100万都市を作っているときにも、この『マナ・ポーション』を浴びるように飲んでたんだぞ。


 それから『マナ操作力』が枯渇して気絶したときには確かに『治癒キュア』で回復するんだが、それでも日に3回以上気絶すると、相当にキツイんだ。

 だからお前たちも、たとえお互いに『治癒キュア』をかけながら訓練するにしても、日に気絶2回までにしておいた方がいいかもしれん」


「教官殿! 

 最初に3回気絶して、どのぐらいキツイのか試してみてもよろしいでしょうか!」


「はは、別にかまわんぞ。まあ死にはしないから大丈夫だろう。

 それじゃあさっそく実地で魔法マクロを見てみようか」



 俺たちは南の塩工場に転移した。

 そこでは既に300人ほどのドワーフ達が働いている。

 優秀な奴は、もう一度に塩壺を3個ぐらいは作れるようになってるそうだ。


「みんなお疲れさん。

 こちらは神界から派遣されて来た天使さまや神さまたちだ。

 今日から魔力を鍛える訓練を始めるんだが、最初は塩壺作りからにするのでしばらくはみんなと一緒に働いてもらうことになるだろう」


「「「「「 よ、よろしくお願いします…… 」」」」」」


「「「「「 押忍っ! よろしくお願いしますっ! 」」」」」


 はは、ドワーフ達がびびってるよ。

 まあ天使さまや神さまが100人もいたら無理も無いけどな。



 俺は少し離れたところに新たな塩工場を作り始めた。

 左右に水深10メートル、広さ100メートル四方程のプールを50メートルほど離して2つ作る。

 そのプールを繋ぐ深さ10メートル、幅20メートル程の水路も作った。

 それから各プールに設置した大型の『転移の魔道具』の片割れを持って南の無人島に転移し、水深10メートル程の所と水面上10メートルの岩の上に設置した。


 塩工場に戻ると、左手のプールから湧き出した海水が右手のプールに向けて轟々と音を立てて流れ込んでいる。

 その海水は右手のプールの『転移の魔道具』でまた南の海に戻されていた。

 水路の流水量は毎秒100トンぐらいかな。



「さて、それじゃあ魔法マクロ作成の実演を見せようか。

 あ、もしよかったらドワーフ達も見学するか?」


 俺たちを遠巻きにして見ていたドワーフ達が駈け寄って来た。

 はは、みんな興味があるんだな。



「それじゃあまず『塩コンテナ』の見本を作ろうか。

 アダム、俺の前方50メートルほどのところにマナ建材を1万立方メートルほど出してくれ。

 あと、ガラス材料と純粋マナと少量の炭酸マグネシウムもだ」


(畏まりました)


「それじゃあまず、『作業台』と『塩コンテナ』の見本を作ろうか。

『俺の前方に、幅5メートル、横30メートル、高さ80センチの作業台をマナ建材で作成せよ。

 作業台の上に、内径1メートル立方のマナ建材製のコンテナを形成せよ。マナ建材の厚さは10センチとする。

 コンテナ上部は90センチ四方の穴を開けて段差をつけ、くり抜いた部分でフタが出来るようにせよ。

 また、前面も90センチ四方でくり抜くこと。

 次に作業台横のガラス材料に純粋マナを8%加えて、90センチ四方の超強化ガラス製の板を作れ。ガラスの厚さは5センチとする。

 このガラス板をコンテナ前面に嵌めこんで、ガラスとコンテナを融着せよ。

 先ほどくり抜いた前面のマナの一部を使って、ガラス板の周囲は充分に補強すること。

 また、コンテナの底部には凹状の部分を、上部には凸状の部分を作って、積み上げたコンテナがずれないようにせよ』」



 まあ塩壺はドワーフ達が順調に増やして行ってくれてるからな。

 さらに塩の備蓄を増やすには、こうしたコンテナの方がいいだろう。

 前面をガラス張りにしたのは、塩倉庫に案内したときに大量の塩を見せてやって安心してもらうためだ。


「それじゃあ『塩コンテナ作成』の魔法マクロを作ろうか。

 魔法マクロ定義。マクロ名【塩コンテナ作成1】。

『作業台の上の塩コンテナをコピーペーストせよ。

 目の前を流れる水路の海水から塩化ナトリウムのみを『抽出』して、作業台横の炭酸マグネシウムとよく混ぜ合わせろ。

 炭酸マグネシウムの配合率は0.4%とする。

 出来上がった食塩をよく乾燥させた上で塩コンテナに詰め、蓋をして作業台前方の一時保管スペースに移動させよ』

 以上、魔法マクロ定義終了」


 俺の目の前ではすぐにコンテナが出来上がり、そこに水路から飛んで来た塩に炭酸マグネシウムが混ざった物がみるみる詰まっていった。

 まあ塩壺ぐらいだったら純粋塩でもいいんだろうけど、この規模のコンテナに詰めるとなると、塩が固まっちゃったら掘り出すのが大変だろうからな。

 だから少量の炭酸マグネシウムを混ぜて、固まらない『食塩』にしてみたんだ。

 まあ、日本で売られている『食卓塩』とほとんどおなじものだ。



「す、すげえなおい……」

「ああ、海水から塩だけがみるみる取り出されてるわ……」

「さ、さっき教官殿は『抽出』って言ってたわな。

 天使力、い、いや魔力でこんなことまで出来るのか……」

「俺もいろんな天使力使ったことあるけど、この『抽出』は初めて見たわ……」



「はは、まあ割と珍しい天使力かもしれないな。

 でも見ての通り実に便利なものなんだ。

 特にここガイアみたいな世界では、塩は通貨の代わりとしても流通してるから、この魔法の価値は大したものなんだよ。

 それじゃあもっと効率的に塩コンテナが作れるように、さらに魔法マクロを作ろうか。


『魔法マクロ定義。マクロ名【塩コンテナ作成10】。

【塩コンテナ作成1】の魔法マクロを10回繰り返せ。

 以上、魔法マクロ定義終了。


 魔法マクロ定義。マクロ名【塩コンテナ作成100】。

【塩コンテナ作成1】の魔法マクロを100回繰り返せ。

 以上、魔法マクロ定義終了」



 作業台の上ではみるみる塩コンテナが作られ始め、水路の海水からはざーっと音をたてて塩の結晶が浮かび上がって来ていた。

 水路の海水流量は毎秒100トン。

 海水中の塩分濃度は3%なので、毎秒3トンの塩が『抽出』されている。

 また、塩の比重は3ほどなので、ちょうど1秒につき1個の塩コンテナが完成していった。

 それらは完成する度に前方の一時保管スペースに運ばれて、整然と積み重ねられている。

 こうして2分弱で110個の塩コンテナが完成したんだ。


 はは、ドワーフたちから大歓声と拍手が湧いてるわ。

 前面をガラス張りにしたおかげで300トンの塩の存在感もすげぇしな。



「やべぇ、鳥肌出て来た」

「ああ、なんとなくわかるな。この作業、俺たちがやったらコンテナ1個も作れないうちにぶっ倒れるぞ……」

「こ、これがひとりで100万人都市を320個も造った『英雄』の実力か……」

「寒気がするほどの『天使力』、い、いやここでは『魔力』か……」



「アダム、この【塩コンテナ作成1】のマクロはどのぐらいの行数で、行使にどれぐらいのマナ操作力を使う?」


(はい、マクロの行数は120行ほどですが、マナ操作力は350ほど必要になります)


「ということでだ。

 この魔法マクロは単純に見えて、『マナ操作力』を相当に必要としているんだ。

 なにしろ海水中から塩化ナトリウムの結晶を一つずつ抜き出して来てるわけだからな。

 つまり、この作業には塩化ナトリウムの結晶と同じ数の石を動かしているのと同等以上の『マナ操作力』が必要になるわけだ。

 よってお前たちの訓練には最適な作業になろう」



 はは、『神界土木部』の連中も少しビビってるわ。

 まあ直感的にこの作業をすれば途中で気絶するだろうことはわかっているようだ。

 なんせ連中、体内マナ保有力は5ケタあるけど、マナ操作力は普段ほとんど使っていないせいで平均30程しか無いからなあ。





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