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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
130/325

*** 130 驚愕のハピネスポイント ***

 


 そんな或る日のこと。


「サトルさん。

 ニューウールに入植した住民たちからお礼の映像が届きましたよ」


「あローゼ様、もしよろしかったら今再生して頂けませんか。

 みんなで見ましょう」


 それで映像の再生が始まったんだけどさ。

 最初はぎっしりと住民たちが並んでる前に、5歳ぐらいの男の子と女の子がぽてぽてと歩いて来て、カメラを向いてお礼を言ったんだ。


「サトルしゃま。

 わたしたちの街を作ってくだしゃって、本当にありがとうごじゃいました。

 とっても綺麗な街で、私たちは毎日楽しく暮らしていましゅ」って……


 それから後ろの住民たちも「ありがとうございます!」って唱和したんだけどさ。

 なんか、みょーに声がデカいんだわ。

 それからカメラが一気に引いて全景を映したんだけど……

 こ、これ何億人いるんだよ……

 街と街の間のスペースに数億の住民がいて、全員が頭下げてお礼を言ってくれてるんだ。

 す、すっげぇ絵だよなあ。



 ところで……

 ウールの住民って、直立2足歩行の羊さんたちだったんですね……

 なんだよそれ! ウールって、まんまじゃん!

 自動翻訳システム、もう少し考えて訳せよな!


 それにしても……

 こんだけの羊の数を数えたら、どんな不眠症のヤツでも眠れそうだよなあ……

 もし最後まで数え切れたら永眠しちゃいそうだけど……




 2カ月も経つと、俺も相当に回復して来た。

 それを聞いて、或る日ヴラビエールさまとゼウサーナさまがガイアにやって来たんだ。

 お、あれ後ろにいるの、『神界土木部』の親方だよな……



「サトルよ。もうだいぶ回復してきたようだな」


「ゼウサーナさま、ヴラビエールさま。親方。

 わざわざお越しくださいまして申し訳もございません」


「はは、気にするな。

 おお、また髪の毛も生え始めたようだの。

 これではわたしの『回復』の必要も無かろうが、念のために施術しておくか……」


 そうしてゼウサーナさまが俺の頭に触れると、俺の髪がみるみる伸び始めたんだよ。

 よかったよかった。


「ところでサトルよ。

 今日は見舞いも兼ねて、そなたたちに依頼と提案があって来たのだ」


「い、依頼ですか……」


「はは、そう警戒せずともよろしい。

 まずそなたにとってメリットとなるのは、神界防衛軍の駐留部隊の引き続きの駐屯だ。

 まあ、規模は1個中隊600天使ほどになろうが」


「駐屯…… ですか……」


「実は、最近の銀河世界はほとんど紛争も無いので、今回駐留した1個師団の兵士のうち、実戦経験を有する者は2割ほどしかいなかったのだよ。

 それがここガイアにいれば、いくらでも実戦経験が積めるからの。

 まあ、神界からの感謝の気持ち兼彼らの実戦訓練と思ってくれればよい。

 もちろん駐屯費用は神界から出るし、彼らがガイアに居る間はお前が総指揮権を持つことになる」


「試練中の世界にそんな干渉をしてもいいものなんですか?」


「もはやこのガイアは単なる試練中の世界では無い。

『10億人を救い、30兆人を気絶させ、21京人を絶叫させた英雄』のいる世界だからな。

 そうそう。

 そなたたちさえ希望すれば、今すぐにでも試練には合格出来るぞ」


「お言葉は大変ありがたいのですが、我々が試練に合格しても、このガイアでのヒト族の暴虐が終わるわけではありません。

 ですから引き続き努力を続けたいと思います」


「はは、そう言うと思ったわ。

 だが、これからは神界はいかなる援助も惜しまないと思ってくれて良いぞ。

 もっともそなたには、ほぼすべての望みが叶いうる凄まじいまでの資金力があるだろうがな」


「あ、ありがとうございます」

(まあ、日本の国家予算の100年分のカネがあれば、大抵のことは出来るわなあ……)



「それから、今回の件について、神界は大いに反省をしたのだ。

 そして、今後の為にも『避難用世界』を創世することが決定された。

 この銀河に属する世界が再び今回のような危機に見舞われたとき、その世界の生命を避難させるための場所だ。

 ウール住民たちからの真摯な申し入れもあって、あの莫大な義捐金の一部がこれに充てられる。

 銀河世界の住民たちも、自分たちが寄付した資金でいつか自分や子孫も救われるかもしれないとなれば、納得してくれることだろう」


「はあ……」


(世界創世かよ…… 

 まったく神界はポンコツなんだかすげぇんだかわかんねえな)



「そこで神界土木部のトップからそなたに懇請と提案があるそうだ」


「お聞かせください」


「サトルよ。

 今回のことは本当に済まねえと思っている。

 俺っち土木部の力が足りねえばかりに、お前ぇさんに大変な負担をかけちまった。

 お前ぇたちの言う『マナ保有力』だったか。そういうパワーの他に『マナ操作力』なんてぇもんがあるとは気にもしてなかったんだ。

 それでこれからは土木部に『知的生命住宅課』を作ろうと思ってな。

 ウチの若い連中の『マナ操作力』を鍛えてやって欲しいのよ」


「一介のヒト族である俺が神さまや天使さまたちを指導するんですか?」


「ああそうだ。指揮権はすべてお前ぇのもんだ。

 お前ぇさんの指導に従わない野郎がいたら、遠慮なくぶっ飛ばしてやってくれてかまわねえ。

 もちろんどんだけ気絶させようが死にかけようがそれもかまわねえ」


「そうですね。あれ気絶すると能力が飛躍的に上がるんで、まあ50回も気絶すれば一人前になれますかね」


「はは、さすがは5000回爆撒死したおとこだ。言うことが違うわ。

 因みにお前ぇさんはそこまでなるのに何回気絶したんだ?」


「さあ、たぶん2万回ぐらいだと思うんですけど……」


「はは、まさに努力と根性の怪物だな……

 それでその見返りなんだが、その若い連中がお前の希望する大規模土木工事を全て引き受ける。

 たとえばお前ぇが造っている大城壁。ありゃあたぶん俺っちの得意分野だ。

 お前ぇがひと言発すれば、何万キロだろうが惑星10周だろうが造るぜ。

 もちろん他の工事もだ」


「いいんですか?」


「もちろん。

 新たに創られる避難用世界には、100億人収容可能な住居群が造られる予定だ。

 それをお前ぇに頼らずに神界が造れるようになるためだからな」


「それじゃあその若い方々に、100回気絶する気で来て下さいとお伝えいただけますか。

 そうですね。

 3日に1回の気絶として、1年弱で一人前に成れると思います」


「ありがてえ。それじゃあ引き受けてもらえるんか」


「ええ、大規模工事をプロ中のプロにお願い出来るなんて、これ以上のメリットはありませんからね。

 お礼を言うのはこちらの方ですよ」


「すまねえな。それじゃあお前ぇが全快したら連絡を貰えるか。

 根性のあるやつを選りすぐって送り込ませてもらうからよ」


「はは、根性で負けないようがんばります」


「お前ぇに根性で勝てるバケモノがいたらお目にかかりてぇもんだ……」




「ところでサトルよ」


「なんでしょうかゼウサーナさま」


「そなたも、今回の自分の働きが神界最高の褒章に値するということはもう分かっておるだろう」


「はい……」


「自らの命を危険に晒し、面識も無い他種族の命と幸福のためにあれだけの努力をした。

 しかもそれを為し得た能力は、5000回死んで2万回気絶するという空前にして絶後の努力の末に得たものであり、そなた以外に為し得る者は誰もおらぬ。


 だがそれだけでは無かったのだ。

 そなたはウールの民10億を救っただけではなかったのだよ。

 あの場に立ち、文字通り命を削って他の知的生命体を助けんとしたのは、命令されたからでも無く、報酬の為でも無く、ましてや名誉欲のためでも無かったのだ。

 そんなものの為であれば、アダムに任せたりせず最初からそなたが来ていたはずなのだからな」


(『最初から行かなかったのは、アダムを上級管理システムにしてやるためでもありました♪』とは、もう口が裂けても言えんな……)



「あの場を見た者には皆わかったのだ。

 この若者が死にかけてまでこの大偉業を為しているのは、それを実行可能なのが自分だけであるからだと。

 さらに加えて、種族も距離も超越した『隣人愛』の為せる業だったのだと……


 今までも近隣世界や同じ種族の住む世界が困難な状況に陥った際に、いくらかの世界が救いの手を差し伸べたことはあった。

 だがの…… 

 そこに内在する8800万世界が心を一つにして動いたことなど、銀河系史上初めてのことだったのだよ。

 そなたは自らの行動をもって、この銀河全域8800万の世界、21京人の心を揺さぶり、同じ宇宙に生きる者として大いなる共感を与えたのだ。

 そなたのおかげで銀河全域の知的生命体の平均E階梯が、一気に0.5ポイントも上昇したと言われておるほどなのだぞ」


「は、はあ……」


「今度自分の幸福ハピネスポイントでも確認してみよ。

 わたしも長いこと神をしておるが、18ケタもの幸福ハピネスポイントを見るのは初めてだ。

 天使でも神でも為し得なかった銀河史上断トツ最高の新記録であろう。

 そなたは、タイトルホルダーとして来年の『銀河○ネスブック』にも載るはずだ」


(銀河宇宙にも『○ネスブック』あるんか……)



「もしこの幸福ハピネスポイントを『試練』の査定に加えるとすれば、もはや異次元級の好成績で合格となるだろうがの。

 今までに、一世界の使徒が銀河宇宙の他の世界から幸福ハピネスポイントを得た前例はないので、参考記録とはなろうが……」


「はは」


「これほどの功績に報いなければ神界褒章部の存在意義が問われるとのことで、褒章部からは最高神さまの行政府に毎日矢の催促だ。

 実は最高神さまからも毎日迫られておる。

 そこでお前に『神界金聖勲章』を授与したいのだが、ひとつ問題があっての」


「そ、それって……」


「うむ。『神界金聖勲章』は、もともと数10万年にわたって宇宙に貢献した上級神に授与されるものだったのだ。

 中級神にいくらかの授与例はあるものの、初級神に授与された例すら一度も無い」


「…………」


「一介のヒト族に金聖勲章を与えるかどうか、かなりの議論が為されたのだがな。

 結論として、やはりお前には初級神になってもらいたいのだ」


「それは任地の変更を伴うものなのでしょうか。

 もし伴うのならば……」


「い、いや慌てるな。

 これも特例として、任地と使徒という役職は不動のまま、お前には初級神になってもらいたい。

 もちろんシスティフィーナ中級天使も2階級特進して任地不動のまま初級神だ。

 階級がお前と逆転するのは好ましくないだろう。

 お前を召喚して使徒にしていたという功績も充分だしな。


 また、エルダリーナ上級天使も、任地不動のまま初級神に昇格だ。

 お前をあれほどまでに援助していた功績は甚大だからだ。

 加えて、お前の素質を見抜いてガイアの使徒として推薦した慧眼にも素晴らしいものがある。


 さらにローゼマリーナ上級天使は、2階級上がって中級神になる。

 もともと彼女は初級神であったし、銀河全域のE階梯が急上昇したのも、あの『ローゼマリーナのガイア観察日記』があってこその話だからだ。


 そうそう、お前は知らぬだろうが、当初ヴラビエールに『ガイア観察日記』を見ることを勧め、お前の魔法マクロ採用を進言した上級天使も『銅聖勲章』受賞が決まったぞ」


「そうですか……」


「どうだ、その条件で褒章を受け入れてはもらえないだろうか……」


(みんなの昇進もかかってるからな……)


「はい。謹んでお受けさせて頂きたいと思います……」


「そうか! いやありがとう!

 ふふ、天使見習い、初級天使、中級天使、上級天使を一気に飛ばして5階級特進の新たな『神』の誕生だ! いや実にめでたいことだ!」






(父さん…… 母さん……

 俺、銀河系の神にしてもらったよ……

 前世では病気のせいで心配ばっかりかけてたけど、今世では健康で大勢の仲間たちも出来て、みんなに喜んでもらえて、そうしてとうとう神さまにまでしてもらえたよ……

 そうして幸せに暮らしているんだ。

 ああ、父さんと母さんにもこの姿を見せてあげたいよ……)


 知らずのうちに、俺の目からはぼろぼろと涙が落ちていた。

 みんなにも俺の気持ちがわかったようだな。なんだか全員が泣いてるわ……




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