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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
124/325

*** 124 神界からの『懇請』 ***

 


「サトル! たいへんよ!

 今神界から連絡が入って、これから上級神さまご一行がここにお見えになるんですって!

 な、なんなのかしら…… な、なにか問題でもあったのかしら……」


「ふーん、まあ話を聞いてみんことにはなにもわからないだろうな。

 だから心配するのはそれからにしようか……」


 エルダさまが大きくため息を吐いた。


「まったくお前と言うヤツは、度胸があるというかなにも考えてないというか……」




 その上級神さまは、お付きの初級神3名と共にシスティフィーナの天使域に姿を現した。


 おおー、直接上級神に会うのは初めてだが……

 すっげぇ迫力だわ。これが『神威』ってぇやつか。

 それにしても、この上級神さま、なんかやつれた顔してないか?

 目の周りとか黒くなってんぞ……



 俺たちは上級神一行の前に跪いた。


「こ、このような場所にようこそお越しくださいました、上級神ヴラビエールさま……」


「システィフィーナ中級天使、その使徒サトル。

 この訪問は公式訪問ではあるが、神界よりの命令や指導や、まして譴責のためのものではない。

 どうか落ち着いて座り、私の話を聞いてほしい」


「は、はい……」


「もちろんローゼマリーナ上級天使も、エルダリーナ上級天使も、オブザーバーとして同席してくれないか」



 俺たちはソファに腰を降ろした。

 正面には上級神が座り、その対面には俺とシスティが座るように言われた。

 横の椅子にはお付きの初級神たちとローゼさまやエルダさまも座っている。

 紅茶をひとくち口に含んだ上級神が口を開いた。


「突然の来訪済まなく思う。

 だがある緊急事態が生じてな。

 わたしは最高神さまの命により、その対策の責任者をしておるのだ」


 そう言うと、上級神ヴラビエールは俺の目を見た。

 神威がちょっと膨れ上がる。


(こういう場合は、目下の者は目上の目を見ずに、喉の辺りを見ろって地球では言うらしいんだけど……

 まあここは地球でもないしな……)


 俺は泰然としたまま上級神の目を見つめ返した。



(ふふ…… 噂に違わず豪胆なおとこよ。

 確かゼウサーナの昇格推薦を断り、仲間の為にこの世界に留まったのだったな。

『爆撒英雄』の二つ名は伊達ではなかったか……

 こやつには神界の『神威』は通じまい。『誠意』しか通らんだろう……)



「今日は、そなたたちに『懇請』に参ったのだ」


(懇請だと…… 神が俺たちに何を頼みたいというんだ?)


「実は今、或る世界の生命が絶滅の危機に瀕していてな。

 5日ほど前、その世界で、神界でも初めて耳にするほどの大規模な火山噴火が起きてしまったのだ。

 このまま放置すれば、高度知的生命体が居住するその世界にですら半年以内に死者が発生し、5年以内に絶滅してしまうだろう」


 システィが息を呑んだ。

 ここガイアでは500年後に生命消滅の危機があるが、その世界の場合、たったの5年だものな。

 しかも『消滅』ではなく、火山噴火という災害によるものだから、その死も惨たらしいものになるだろう……



「この世界は5万年前に最初の試練を乗り越えて、それからも順調に進化して来ていた。

 住民の平均E階梯も7.2ものスコアを持っていて、このまま行けばあと数千年で神界より『理想世界』認定を受けることも確実視されておった」


(あ、ローゼさまとエルダさまが驚いてる。

 そうか、それってよっぽどすごいことなんだろうな。

 それにしても平均E階梯7.2かよ。平均でも俺より上なのか……)



「このため昨日、神界最高神政務庁において、『あらゆる努力を傾注して、この世界の生命を救え』という決定が為された。

 むろん最終決定者は最高神さまだ。


 そのため、この世界「ウール」のために新たな惑星を用意し、全ての生命をそこに転移させることが決定されたのだ。

 その世界は既に初級天使の試練用として用意されていた世界であり、また「ウール」とも環境が似通っているために、生命の転移後も順調に同化が行われるものと予想されている」


(すげえな。

 惑星生命全てを救うために、新しい星を丸ごとひとつ用意すんのかよ。

 さすがは神さまたちだわ。しかも惑星全生命転移か……

 それにしても、なんでこんな話を俺たちにするんだ?

 あ、ま、まさか……)



「初期には食物連鎖上の混乱もあるだろう。

 だが、幸いにも「ニューウール」には、「ウール」の生命が必要とする必須アミノ酸が全て存在しており、生命たちは生き延びられるだろう。

 ただし、この惑星生命救援作戦には唯一大きな問題があるのだ」


(なるほど、そういうことか……)


(おお、もう理解しおったようだの。

 ふふ、こやつはただの脳筋ではなく頭脳派でもあったか。

 まあそれでなくては、あれほどまでの技術は開発出来まいがな。

 神でも行使不可能な技術を……)



「そう。もうそなたも察した通り、それは『住』の問題なのだ。

 10億もの知的生命体が暮らせる、それも快適に長期に渡って幸せに暮らせる住居は、神界土木部にも造れないのだよ。彼らは『土木工事』の専門家だからな。


 山脈を消し去ったり大陸の形を変えることは出来ても、知的生命体の住むような繊細な住居は造れないそうだ。

 10億人収容可能な箱ならばすぐにでも作れるとは言っていたが。

 だがそれは、窓も寝室もベッドも調理場も無いただの箱だ。

 トイレすら無いのだ。

 そんなところに10億もの知的生命体を放り込むわけにはいくまい。

 それこそ半年で死人が出るだろう」


(まあそりゃそうだよな。

 5万年もの文明を持つ連中に、いきなり原始人に戻れっていうようなもんだろうから……

 それにしても何故『懇請』なんだ?)



「そこでそなたの開発した『魔法マクロ』であったか。

 あれを使わせて欲しいのだ。

 神界からの最大限のサポートがあった場合、最大収容人数100万の街を1000個造るのにどれぐらいの時間がかかるものなのか?」


「そうですね。まあ頑張れば20日ほどですか。余裕を見れば30日でしょう」


「はははは。こともなげに言いおる。

 だが、それは実績に裏打ちされた真実に違いなかろうな」


「はい。大言壮語をするつもりはありません。

 ただし、あの都市の住宅の中には地球からの輸入品がございます。

 家具とカーペットやカーテンがそれです。

 まあ、家具はなんとか自作出来るかもしれませんが、この世界では原油を材料にした化学工業品の開発はまだ無理ですので、繊維製品は輸入に頼らざるをえません。

 さすがの地球の工業力でも、数億のカーペットとカーテンの製造はすぐには無理でしょう」


「うむ、それについてなのだが、実はこの世界「ウール」では、繊維産業が発達しておっての。

 カーペットとカーテンなどの繊維製品については彼らの所有物を一緒に転移させようと思っておる」



「恐縮ですが、我々の世界管理システムと会話させていただくことをお許し頂けませんでしょうか」


「うむ。もちろんだ」


「アダム、俺たちがクローゼットやチェストを自作するのに何が必要だ?」


(引き出しのレール部分の硬質プラスチックのみと思われます。

 それも『練成』で変形させて作れますので、地球より手軽に入手できる硬質プラスチック製品を10万トンほど緊急輸入為されたらいかがでしょうか)


「なるほど、ありがとうアダム。

 ということで、『10億都市建設』は、硬質プラスチック入手後は、転移に要する時間を除いて30日で可能ですね」


「そうか…… それはありがたい」


 はは、上級神さまの気配が目に見えて緩んだわ。

 きっとすごい重圧だったんだろうな……



「彼らに与える食材はすべてこちらで用意しよう。

 生活必需品も出来る限り用意するつもりだ」


「食材保管用の『時間停止の無限容量倉庫』については如何ですか?」


「それも大丈夫だ。むしろ神界の得意分野だからな」


「それでは街路樹や草花は如何でしょうか」


「それもこちらで用意しよう。「ニューウール」は植物の豊富な惑星でもある。

 だが、あの『マナ建材』とはいったいどういうものなのだ?」


「ああ、あれはかなり特殊な素材なんです。

 砂漠の砂が数万年間も濃厚なマナに晒された結果、固体マナをたっぷりと含んだものになりました。

 その状態から、鉄やアルミなどの金属成分を抜き取ったものなんです。

 最高の強度を持っているだけでなく、柔軟性も持ち合わせておりますので、都市建設には最適の素材ですね」


「それでは、そなたたちで10億都市群を建設してはもらえないだろうか。

 建設費用として素材費も込みで1000億クレジットを用意した。

 かなり少ない予算と思うだろうが、どうか引き受けて欲しい。

 事は10億の知的生命体の生存と幸福がかかっておるのだ。

 頼む……」


(おいおい、上級神さまともあろうお方が、一介のヒト族に深々と頭下げてるよ。

 驚いたな。

 ああ、ローゼさまもエルダさまもシスティも息呑んでるわ。

 ま、まあ当然だろうけど……


 それにしても1000億クレジットか……

 日本円で10兆円、1人当たり1万円か。

 はは、高いのか安いのかよくわかんねぇな)



「どうか頭をお上げ頂けませんでしょうか、上級神ヴラビエールさま」


(ああ、この目。おとこの目だよ。

 任務のためなら、そして10億の知的生命体のためなら、己のプライドなぞ屁とも思わないおとこの目だわ……

 それに引きかえ、この横のガタイのいいお付きの初級神野郎、俺を睨みつけてやがるぞ)



「いくつかご質問をお許し頂けませんでしょうか」


「聞かせてもらおう」


「先ほど『懇請』にお見えになられたと仰られました。

 また、報酬のご提示まで頂きました。

 なぜこれが、神界の『命令』による『強制労働供出』ではないのでしょうか?」


「ふむ。いい質問だ。

 そなたたちは今試練の最中だ。

 特にサトルはこの試練を乗り越えられねば『消滅』してしまうという、いわば命をかけた試練の最中だ。

 神界には、『試練中の天使並びにその卷族には、なんびとたりともその妨害をしてはならない』という法がある。

 故に『懇請』なのだ。


 また、それだけの金額であれば、神界だけではなく、神界が認定したこの銀河系の先進惑星8800万の星々の物資も購入可能となり、試練を乗り越える一助となるだろう。

 故に金銭を提示させてもらったのだ」


「やはりそうでしたか……

 ですがおかげでわたくしは今、非常に困っておるのです……

『ご命令』であればすぐにでも参上いたしましたが、残念ながらわたくしはこの世界を離れることが出来ないのです」



 突然横に座っていたお付きの初級神が立ち上がった。


「思い上がるな若造っ!

 キサマに許された返答は、『はい、畏まりました』だけだっ!」


 あーあ、とうとう暴発しちゃったよ、この初級野郎……


「ヒト族の分際で上級神ヴラビエールさまに口ごたえするとは!

 身分をわきまえろっ!」



 俺はガンを飛ばしてくるそいつを見つめた。

 すぐにそいつの上にロックオンマークが表示される。

 同時にそいつ限定で『隠蔽』を外して、出力10%の『威圧』も放出した。


「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃぃ~っ!」


 あーあ、腰抜かして床に座りこんじゃったよ…… 根性無ぇなあ。

 あっ! こ、こいつ粗相までしやがった!

 し、システィの天使域で…… ゆ、許せんっ!


 俺は『威圧』を20%に上げた。

 初級野郎の目玉が裏返り、手前ぇの小便に顔を突っ込んで気絶する。


 あ、ヴラビエールさんもこいつのこと睨みつけてるわ……




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