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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
123/325

*** 123 『いかなることをしてでも惑星ウールの生命を救え!』  ***

 


 神界最高神政務庁の奥まった一画。

 神々が詰めかける重厚な会議室に、神界の誇る3D立体スクリーンが現れた。

 そこでは、大勢のギャラリーを前にしたサトルが、にこやかに宣言をしていたのだ。


「今日はみんな『10時街』建設見学会によく来てくれたな。

 心から礼を言う。

 それじゃあいよいよ今から我々の都市を造るぞ。

 みんなよく見ていてくれよー。

 それじゃあ魔法マクロ、【衛星都市建設】実行っ!」


 途端に目の前の大地が直径8キロ、深さ50メートルに渡って切り取られ、巨大な岩塊が宙に浮いた。

 さらにその岩塊が粉々に粉砕されると同時に消滅し、代わって白い砂が飛んで来て穴を埋めている。

 その白い砂は、一瞬液状化したかと思うとすぐに平滑化され、その上に薄い円盤状の白い砂が飛んで行き、同心円状の低い円錐台形を造り始めたが、その様子があらゆる角度から撮影されていた。

 いったい何台のカメラを用意したというのだろうか……


 辺りには大歓声が満ちていた。

 複数のカメラが雑多な種族の集合体であるその大観衆を映し出す。

 だが、不思議なことに、その観衆には2種類あったのだ。

 満面の笑みを湛えて大きな歓声を出している観衆と、蒼ざめて絶句している観衆である。



「これで都市の土台が出来たよー。

 次は都市のインフラ整備が始まるぞー」


 円錐台状の土台の四方に広い道が出来始めた。

 同時に直方体の小さな板が無数に形成されて飛んで行き、土台の上に次々に着地している。

 それからも無数の溝が土台に掘られ、蓋がされ、岩石が飛び、土が飛び、箱が飛んで土台に埋められ、ついには長さが4キロもある棒状の通路が100個近くも宙に浮いて土台に向かって飛んで行った。

 さらに東西南北の大通りに沿って開いた穴に次々と木が植えられ、また無数のプランターが現れて中の美しい花々ごと道の両脇に配置されていく。


 その間にも、画面手前の大通りには5階建ての大きなビルが計50個も配置されている。

 また、土台の中央部分には直径600メートル、高さ30メートルの建物が形成されていった。

 画面がアップになると、その建物の周囲がみるみる素晴らしい彫刻群で覆われていっているのがよくわかる。


 そうしてその中央の建物の上部には、底部の直径が30メートル程もある塔が立ち上がり始めたのだ。

 そのまっ白な塔の周りには、ガラス製と思われるチューブが乱舞して巻きついて行っている。塔の頂上にはどうやら展望台と見られる構造物が出現した。

 やはり全周がガラスで覆われているので展望台で間違い無いだろう。


 塔が完成すると、その基部に近い白い台の上がアップになって映される。


「さあ、住宅の建設が始まるよー♪」


 おなじみのサトルの声とともに、その台の上にやはり白い砂が飛んで行き、上面が階段状になった家を形作り始めた。同時に5つ程の家屋が出来つつある。


「あれは、『ユニット住宅』って言って、18軒の家がくっついたものなんだよー」


 そのユニット住宅には、箱、パイプなどが飛んで行って飲み込まれた。

 それが終わると、カーペット、ソファ、クローゼット、チェスト、ベッドなどが飲み込まれて行く。

 ついで、トイレ、各種魔道具、アルミサッシ製の窓、ドアなどが飛んで行って張り付いて行った。

 そうして最後にカーテンが装着されると、その家は宙に浮かんで飛んで行き、周囲の土台の上に次々に固定されていったのである。


「こうして10秒で5軒のユニット住宅が出来て行くんだー。

 それじゃあ少しの間、住宅が出来て行く様子を見ていてくれるかなー」



 画面はしばらくの間、次々に住宅が作られて飛んで行く様子を映していたが、そのうちにモデルルームの中の紹介に移った。

 可愛らしい少年と少女がにこやかに家の中を紹介して行く。


「それでは、サトルさまが作った住宅の中をご紹介させていただきます。

 皆さんがこれから一生の間、ひょっとしたら何代にも渡って住めるように、サトルさまが一生懸命考えて作った住宅です。

 実際にご自分でも住んで改良もした家ですので、よーく見てくださいね♪


 そうして家の中が詳しく紹介されていった。

 もうどこからどう見ても、高度知的生命体の清潔で暮らしやすそうな住居である。


 神々の顔が次第に驚嘆の色で染まってゆく。

 それはもちろん豪華さに於いては神々の邸には劣るものの、遥かな昔、彼らが天使見習いだった頃に住んでいた住居に比べれば、遜色無いどころか勝っているように見えたのだ。


 特にウールの担当天使は驚愕していた。

 質朴な暮らしを好むウールの住民から見れば、それは十二分に豪邸だったのである。



 画面上では説明が続いていた。


「それから、水浴びの好きな種族の方には、外に水浴び場があります。

 ここはわざと黒い石を使っていますんで、太陽の光で水が暖められるんです。


 それからですねー、実は北門と南門の近くには、大浴場と温水プールがあるんですよ。

 お風呂って入ったことあります?

 ものすごーく素晴らしいものなんで、是非入ってくださいね♪

 それからプールには、楽しい楽しいウォータースライダーまであるんですよ。

 もうわたし、お尻が赤くなるまで滑っちゃいました♪


 それじゃあ次は、この街の中心になる中央棟の中をご紹介しまーす♪」



 画面が切り替わって、今度は男の子が案内を始めた。


「こちらがレストランです。

 朝7時から夜8時まで開いていて、誰でも好きなだけ好きなお料理が食べられます。僕たち悪魔族が作っているお料理なんですけど、最近ゴブリン族の方々も手伝って下さるようになりました。

 ああ、今は30種類ぐらいのお料理ですけど、そのうちにメニューは100種類ぐらいまで増やすつもりです。

 看板料理は『ベルミアスープ』って言って、神さまの世界でも有名なスープなんですよ。



「あ、あのベルミアスープまであるのか……」

 或る神の呟きに何人もの神も頷いた。

 それからも2階と3階のスペースの説明が続いていく。

 特に3階のショッピングスペースの品物の充実ぶりは神々をも驚かせた。


「そうそう、申し遅れましたけど、この建物内の物は全てタダです。

 お料理も映画も服も台所用品もすべてタダなんです。

 でも、あんまり持って帰るとすぐ家が一杯になっちゃいますからね。

 今後ずっとタダのままですから、必要なときに取りに来た方が家が広く使えていいかもしれません。

 使徒サトルさまって、太っ腹ですよねー♪


 それじゃあいよいよ塔に昇ってみましょうか。

 実はこの塔に昇るのには、エレベーターとは別に階段もあるんです。

 それも「初心者用」と「中級者用」と「上級者用」が……」


 それからはまたしばらくの間、階段と展望台の紹介が続いた。



((((( 暮らしに必要な施設だけでなく、住民を楽しませるためにプールや映画館や展望台などのアトラクション施設まであるのか…… )))))


 その場の全ての神々の驚嘆が更に深まっていく……



 画面には展望台からの景色が映し出されていた。


「いよいよ展望台です。

 この辺りはまだマナ濃度が薄れて間もないんで、植物もほとんど生えていない岩稜地帯なんですけど……

 ほら、下を見ると、私たちの素晴らしい街が見えますでしょ。

 マナ建材の白と、土の黒と、街路樹の緑と、プランターの花の色のコントラストの美しい、ボクたち自慢の街なんです。


 あ、そろそろ城壁の建設が始まるみたいですね。

 カメラをギャラリースタンドに戻しましょう」



「おーい、みんなー。

 そろそろ城壁が造られ始めるからよく見ていてくれなー。

 そーら始まった♪」


「「「「「「「「 わああああああああああーっ! 」」」」」」」」


 幅40メートル、高さ70メートル、長さ50メートルの巨大な壁が形作られて宙に浮いた。

 その壁が次々に飛んで行っては街の周囲に着地して融着されている。

 そのうちに約1000個の石壁によって、街が囲まれていった。

 例え100万の軍勢に攻撃されても持ち堪えられそうな、巨大な城壁がそそり立っている。



「最後に城門の建設だよー♪」


 目の前の大城壁がみるみるうちに形を変えて行く。

 そこに銀色の粒が無数に飛んで行ったかと思うと、2枚の巨大な扉が形成されて嵌め込まれる。

 その幅40メートル、厚さ3メートル、高さ25メートルもの金属製の扉の表面には、システィフィーナ天使の姿が浮き上がって来た。



「さあ、これで大体の街の形が出来たかな。

 ユニット住宅の配置にはあと5時間ぐらいかかるけど、それが終われば俺たちの街が完成するんだ。

 どうだい、面白かったろー♪」


「「「「「「「「 わああああああああああああーーーっ! 」」」」」」」」

「「「「「「「「 パチパチパチパチパチパチパチパチパチ 」」」」」」」」




 若い天使が映像を止めた。

 会議室を沈黙が支配している。

 それはもちろん、想像を超えた恐ろしいまでの建設の技を目撃したが故の沈黙である。

 この男は、神界の神々ですら驚嘆のあまり絶句する事業を為したのだ。



「あ、あの…… この都市の最大収容人数は40万人なんですけど、ユニット住宅の輪と輪の間には100メートルもの土のスペースがあるんです。

 ですから、それを少し縮めて、また街全体をもう少しだけ大きくすれば、8時間ほどで100万人都市が出来るそうなんです。

 水と食料さえあれば、明日からでも100万人が生活できる都市が……」


「だっ、だが、10億人が暮らせる都市を造るためには8000時間もかかるだろうに!」


「い、いえ。これは彼らが『魔法マクロ』と呼んでいるもので作られています。

 最初にサトルが魔法マクロ名を唱えていましたが、その瞬間からその中に含まれる魔法式が発動され、後は自動的に街の建設が進みます。

 マクロ実行者はもう何もする必要がありません。


 そしてそのマクロは、魔力さえ十分な者が唱えればマルチタスクが可能なんです。

 つまり何カ所ででも同時実行が可能なんです。

 しかも驚くべきことに、彼らは体内マナの減少を補うために、純粋マナの水溶液である『マナ・ポーション』まで開発していました。


 ですから、この魔法マクロとマナ・ポーションと充分な土地と建材などの資源さえあれば、このわたくしでさえ、50時間以内にこの100万人都市を1000個作ることが可能かもしれないんです……」



 またもや神々の間を沈黙が支配した。


 ある高齢の神の発した独り言が会議室に響く。


「い、一介の中級天使の、それもその使徒の作ったシステムを、この神界が使わせてもらおうと言うのか……」



 その考えはその場の多くの神々が共有していたに違いない。

 だが……


「最高神さまの御指示は、『いかなることをしてでも惑星ウールの生命を救え』である。

 その『いかなること』の中には、わたしが一介のヒト族の使徒に頭を下げることも、当然含まれようて……」


 上級神ヴラビエールの晴れ晴れとした笑顔とそのひと言で、神界の方針は決定したのである。






 そのころ最高神さまの執務室では……


 最高神のトーガの裾を掴んでいたゼウサーナが、それを離しながら言った。


「ですから申し上げておりましたでしょう最高神さま。

 ヴラビエールはそんなに器の小さな男ではございませんと」


「だ、だってさ、最初は『ガイア観察日記』を見ようとしなかったし、それにもしもあれ見てもサトルくんに頭下げに行こうとしないようだったら、怒鳴り込んでやろうと思ってたんだよう」


「早まって怒鳴り込まずにようございましたな」


「う、うん……」


(だいじょうぶかウチの最高神さまは……)





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