*** 119 世界樹森林公園完成! ***
「エルフ族に告げる!」
拡大されて大音声になった俺の声が辺りに響く。
ナイショだがちょっとエコーもかけている。
「「「「「 うはははぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ! 」」」」」
「俺はこの慈悲の心溢れる世界樹の懇請を聞き入れ、創造天使システィフィーナの名の下にお前たちの命は助けてやることにする」
まばらな歓声が沸き起こった。
「だがしかし!
お前たちのうち、巫女と村長一族と守備隊は重罪犯収容所に隔離する。
一般エルフたちも収容所に隔離して再教育を行う。
そうして今後100年の間、世界樹とこの森に近づくことは許さん!
再教育の内容は多岐に渡るだろう。
まずは嘘をつかないことなどの倫理心の函養、それから植物学、鉱山学などだ。
それら再教育の進捗度と、農業を中心とする生活態度によっては、俺たちが造る国の国民として受け入れてやってもいい。
この条件が受け入れられない者は前に出ろ」
守備隊と年寄りの巫女の何人かが喚き散らしながら前に出て来た。
俺はそいつらに指を向けると、『1人用収容所』に転移させる。
(き、消えた……)
(ほ、本当に消えたぞ……)
(こ、このひと、システィフィーナさまの使徒だっていうのは本当だったのか……)
俺はまた手をひと振りした。
すぐ横の地面に、小麦やジャガイモ、塩等の基礎食品の山が現れる。
「お前たちの収容施設の準備が整うまでの7日間、ここで反省しながら暮らせ。
世界樹と周囲の森は今から連れて行く」
そうして俺はまた世界樹の傍らまで宙を飛んで行ったんだ。
はは、エルフたちがみんな地に伏してるぜ。
「さあ世界樹と森よ。新天地に移動しようか」
(は、はい…… ありがとうございます使徒さま……)
こうして世界樹とその森は、それを包む直径50キロの巨大プランターごと『中央街』の北側30キロ地点に移住したんだ。
俺はその場に深さ50メートル、直径50キロ少々の穴を掘った。
その穴に深さ100メートル、直径50キロのプランターを作って嵌め込む。
もちろん底には石を敷き、水はけを良くしたうえで、その上に大森林から得た腐葉土を敷き詰めたんだ。
プランターの底の穴から出た余分な水は、すべて『転移の魔道具』で大森林に移動させるようにもしてある。
「今からお前をこの新しい地に移植するが、痛いようだったら言ってくれ」
(は、はい……)
それからまずは世界樹を浮かせて周囲の土を取り払い、根を露出させた。
(う、うひょひょひょひょひょひょ……)
「どうした? 大丈夫か?」
(そ、それが、なんとも不思議な感覚で……
ひ、ひょっとしたら、これが動物がいう、『くすぐったい』という感覚なのかも……)
うりうり。
(むひひひひひひひひひひひひひひひひひ……)
(あ、遊んでる場合じゃなかったか……
それにしてもすごい根だわ。
これほどの巨体を支えるにはこれほどまでの根が必要なんだな……)
そうして俺は新しいプランターにその根が入りきるだけの穴を掘り、そこに世界樹を移動させた。
後は土魔法で土を移動させて、根の隙間を埋めれば完成だ。
まあ規模が大きいだけで、単なる植木の植え替えだからそんなに大変な作業でもない。
「どうだ世界樹。新しい住処の具合は」
(はぁはぁはぁはぁ……
す、素晴らしいです……
なんという滋養に溢れた土でありましょうか……)
「それでな、もしよかったら、ここを『世界樹森林公園』にしたいんだ。
俺の街には西の大森林で暮らしていた種族が大勢いるから、連中が森を懐かしがったときに、ここに来て憩えるように。
だからみんなが歩く遊歩道とか作ってもいいか?」
(どうぞどうぞ)
「それじゃあまず薄い歩道を作るから、根が傷むかどうかチェックしてくれ」
(はい)
俺は、世界樹の周囲、半径100メートルほどの輪状に、厚さ1メートル、幅25メートルのマナ建材製遊歩道を作った。
「こんなもんでどうだ?」
(少々お待ち下さいませ。
ただいまその『遊歩道』とやらの下にあります大きな根を、地下深くに移動させますので)
「すげぇな。お前ほどの木になると、そんなことまで出来るんか……」
お、なんだか地面の下でなにやらもぞもぞ動いてる気配がするわ。
(お待たせしました。
これでもうその『遊歩道』にどれだけ重さがかかっても大丈夫です)
「そうか。さすがだわ」
俺は遊歩道を重力魔法で土に押しつけると、約5メートルほど沈降させ、その上に幅25メートル、厚さ7メートルの道を作った。
土と遊歩道の隙間は土を埋めて塞ぐ。
はは、これでベヒーモスが歩こうがドラゴンが着地しようが平気な歩道が出来たぜ。
(相変わらず凄まじいお力ですなあ……)
それから俺は、輪状の遊歩道から反対側に向けて、世界樹のすぐ傍を通るようにアーチ状の頑丈な橋も架けた。
これなら街のみんなも世界樹をすぐ傍で見ることが出来るぞ。
それから今度は世界樹を中心にして、半径300メートル程の輪状の遊歩道も作り、売店や食事処のスペースも作る。
もちろんトイレもな。
そうして今度は直径50キロものスペースに、うねうねとわざと曲がりくねった遊歩道もたくさん作って行ったんだ。
その遊歩道にはたくさんのベンチも作った。
公園の南側の端には大地との間に広くてなだらかなスロープも作り、さらにあちこちに『固定式転移の魔道具』を配置した建物も作る。
これで街のみんなも好きなときに、この『世界樹森林公園』に来ることが出来るだろう。
俺は土の精霊たちと植物の精霊たちを呼んだ。
「あの円盤の上にある木や草を、この森林公園に移植してくれ。
世界樹を囲む2つの環状遊歩道の間は、芝生と花畑にしてくれな。
その外側に樹を移植して森を作って欲しいんだ。
内側のスペースには世界樹の種を植えて世界樹の子供たちを増やしてやりたいからな。
ついでに木たちには、システィの水やマナ・ポーションもたっぷりかけてやってくれ」
「「「「「 はぁ~い♪ 」」」」」
へへ、中央街のすぐ傍に巨大な森林公園が出来るぜ。
しかも世界樹というシンボル付きだわ。
ここはいい観光地になるだろうなあ。
子供たちの遠足には最高の場所だろう。
まあしばらくは植物の精霊たちに活躍してもらって、森の再生をしてやらんとな。
あ、そうだ。
『念話の魔道具』でも開発して、子供たちが世界樹とお話出来るようにしてやるか……
エルフたちの街も作ってやったよ。
基本的には『9時街』を小さくして3万人ほどの収容人数にした『エルフ街』を、森林公園から10キロほど北に離れたところに作ってやったんだ。
敷地はちょっと広めにして、内部には農業用のプランターもたくさん作ってやった。
周囲は高さ50メートルの城壁で囲ってあるぞ。
もちろんこの城壁には外に出る門も無いし。
それから俺は旧エルフの森に戻って、直径50キロの範囲を高さ10メートルほどの城壁で囲ったんだ。
「なあ土の大精霊」
「はいだす」
「ここに少し土を持って来て、その上に世界樹の模型を作らせて欲しいんだ。
幹は茶色に塗って葉もつけて本物そっくりにな。
エルフたちの家もその傍に置いてくれるか」
「畏まりましただす。
でも…… なんでそんなものを作るだすか?」
「はは、そうすればここにヒト族が押し寄せて来るんだよ。
そしたら全員を収容所に転移させちまおうと思ってな」
「あははは。
サトルさまがヒト族軍を捕まえた『ヒト○イホイ』の世界樹版だすな♪
それでは本当に本物そっくりに作らねばだすな♪」
「頼んだぞ」
「任せてくれろだす!
最近おらの下の土の精霊たちも腕が上がって来たもんで、新しく30人ほどを『棟梁』に指名しただすよ。
その下にモノづくりの好きな精霊たちを10人ほどつけて、『建築集団』を作ろうと思っているだで、この仕事はそのうちのひとつに任せてみるだ」
「おお、それいいなあ。
やっぱ国造りの基本は『建築』だからな。
お前たちほんっと頼もしいわ」
「へへ、サトルさまにそう言って頂けるなんて、みんな喜ぶだすよ。
いいものが出来上がったら是非褒めてやって欲しいだす」
「もちろんだ」
エルフたちの移住も終わった或る日の晩のこと。
「のうサトルや。
聞くところによればエルフ族2万を移住させたようじゃの」
「ええ、エルダさま。今日無事に移住が終わりました」
「映像は無いのかのう……」
「それじゃあアダム、一部始終を編集してエルダさまたちにお見せしてくれ」
(畏まりました……)
そしたらさ、翌日エルダさまとローゼさまとシスティが、巫女服着て現れたんだ!
周りには同じ巫女服着た悪魔っ娘たちが50人もいるし!
それもハイパーミニどころか、おしりが半分見えてる&胸元全開のエッチぃ巫女服で!
ローゼさまなんかまたパンツ穿いてないし!
そうして、エルダさまが俺にしなだれかかって来て、潤んだ目で言うんだよ。
「のうサトルよ♡
お前は、あの美形エルフ族の巫女たち50人が、奴隷になると申し出たのを断ってくれたのじゃの♪
褒美に今日は我ら53人の巫女をエッチな奴隷にしてかまわんぞ。
もちろん、どんな狼藉でもどんな卑猥な命令でも、喜んで受け入れるので是非楽しんでくれ。
ご 主 人 さ ま ♡」
うううううう……
かつてない激しい攻撃にサトル自制心戦線は崩壊寸前でありますっ!
明日31日から1月3日にかけて、12:00と20:00に1日2話投稿させて頂きますです。
それではみなさまよいお年を……