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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
108/325

*** 108 収容所の子供達…… ***

 


 5歳以上15歳以下の子供たちについては、年齢とE階梯別に10種類の収容所を作ってあった。

 そうしてまずは、子供たちをE階梯の順に2つの層に分けたんだ。

 これさ、驚いたことに、E階梯だけで分けたのに見事に2つの層に分かれたんだわ。

 E階梯1未満の子たちは全員が性を持つ旧支配層の子弟だったんだよ。

 1以上の子たちはちらほら性を持つ者もいたが、大半は親が旧支配層の従者や使用人だった子たちなんだ。だから親たちと一緒に洞窟に残っていたんだろう。


 これ、考えさせられちゃうよな。

 支配層になるとE階梯が下がるのか、それともE階梯が低いから支配層になれたのか、どっちなんだろうか?

 このことについては追々研究して行こう。



 E階梯1以上の子たちのいる収容所はA収容所と名付けた。

 もし親が団体収容所にいたら、そのうちに親子で暮らせるようにしてやりたいものだ。

 生活態度を見て、それから試験的に親子で暮らさせてみよう。

 また、E階梯も小数点以下3位ぐらいまで毎日細かく計測してみるつもりだ。

 子供たちだけで暮らすのと、親と一緒に暮らすのでは果たしてどちらがE階梯上昇に効果があるものだろうか。

 俺の予想だが、旧体制に染まりきった大人たちと暮らすよりも、子供たちだけで育てて街に連れて行った方が遥かに好影響があると思うんだが、まあこれもやってみなければわからないだろう。


 全ての収容房にはドワスター・ドワーフの保母さんが配置されている。

 もちろん保母さんたちにはすべての体力系、特に防御系に関しては充分な加護が与えられていた。

 例えドワーフの戦士階級が力一杯殴っても傷一つつかないだろうな。



 A収容所の子供たちについてはほとんど問題は見られなかったんだ。

 まあどうやら従者や使用人の中にも多少の序列はあったようなんだが、保母さんたちや悪魔族の子たちが毎日根気よく話しているうちに、子供たちは徐々にそんな序列を気にしなくなって行ったんだよ。

 プリンみたいな美味しいおやつを与えても、寄こせだのと命令するヤツもすぐいなくなったし。



 だがB収容所の子供たちには問題児が多かったんだ。

 一部長老一族の子で、後は上級戦士階級の子供たちだな。

 悪魔の子たちにはこのB収容所の保母さんにもヒアリングしてもらったんだ。




 5歳児と6歳児のB収容所。保母さんとの対話。


「ドミルスキさんこんにちは。子供たちの様子は如何ですか?」


「そうねえ、ほとんどの子は素直でちゃんと食事をしたりお絵かきしたりするんだけど、

 2人だけ族長一族だった子が居るのよ。

 その子たちが、『他の下賤な者とおなじ物が食べられるか!』とか、『もっと贅沢な食事を出せ!』とかいつも騒ぐの。

 それに注意しても、『お前は族長一族に対する敬意が足りん!』とか言い出して聞かないし……」


「そうですか…… それでは使徒さまにお知らせして対処させて頂きます。

 たぶん、料理付きの1人用収容所に入ることになってしまうと思うんですが……」


「その方がいいかもしれないわね。

 このままだと、あの子だけじゃあなくって周りの子にも悪影響が出るかもしれないわ」



 7歳児と8歳児のB収容所。保母さんとの対話。


「ドフトスカヤさんこんにちは。子供たちの様子はいかがですか?」


「ええ順調よ。ここにはたまたま旧族長一族の子がいないせいかしら。

 みんな文字を書く練習も始めたし。

 ああそうそう、もう少しノートを頂けないかって使徒さまにお願いしておいて下さるかしら」


「かしこまりました。アダムさん、お願い出来ますでしょうか?」


「はい」


「まあ、こんなにたくさん! きっとみんな喜ぶわ」


「あの、もしよろしければ必要なものはこのスクリーンに向かって話して頂ければ、アダムさんが対応して下さると思います」


「ふふ、ありがとう。もう少しお勉強の時間を増やしてみようかしら」




 9歳児と10歳児のB収容所。保母さんとの対話。


「ドンナさんこんにちは。子供たちの様子はいかがですか?」


「もう困ってるのよ。

 旧族長の親戚の子が3人もいて、いつもみんなに命令しようとするの。

 食べ物まで取りあげようとするんだもの」


「そうですか…… それではその子たちをひとりずつ呼んで頂けますでしょうか」



「ドミトールさんこんにちは」


「なんだそちは! わらわのことはドミトールお嬢さまと呼ぶように!」


「いえ、もう誰も誰かに様をつけて呼んだりしなくなったんですよ」


「誰がそんなことを決めたと言うのだ! わたしの父は族長の甥だぞ!」


「決められたのはシスティフィーナさまです」


「っ!」


「ところでどうしてあなたは他の子たちに命令ばかりするのですか?」


「それが族長一族たる者の義務だからだ!

 下賤の生まれの者は高貴な生まれの者が導いてやらねばならん!」


「あの…… あなたが言う下賤の生まれの者も、システィフィーナさまがお創りになられた方々なのですが…… あなたはそれでも下賤などと呼ぶのですか?」


「ええいやかましい! お前は2度とわらわの前に顔を出すでない!

 これは命令だ!」




「ドミナールくんこんにちは」


「誰だお前は。高貴な身分の俺様に向かって馴れ馴れしい口を利くでない」


「あの、ここにはもう身分とか高貴とかそういう区別は無いんですよ。

 みんな等しく平等なんです」


「なんだと! キサマ反乱分子か! 兵に命じて処刑するぞ!」




「ドクトワルくんこんにちは」


「よし、お前を俺の召使にしてやる。早くここへ来い」


「いえ、お断りします。わたしは使徒さまに仕える身です」


「あのような下賤な男に仕えてどうなるというのだ。俺は族長一族でドワーリンの性を持つ者だぞ」


「あの…… ご存じ無いのですか?

 サトルさまはあのシスティフィーナさまの『使徒』なのですよ?」


「そんな者よりドワーフ族長一族の血の方が遥かに高貴だろうに!

 いいからすぐに来い! すぐに来たらお前を上級従者にしてやる!」


「絶対嫌です」


「な、ななな、なんだとぉっ! む、むき――――っ!」


「あ、ヒステリー起こした……」




 夕方になって仕事を終えると、カウンセラーの子たちがぐったりしてるんだよ。

 だから俺はその子たちを集めて話を聞いてやったんだ。

 はは、これも一種のカウンセリングだな。


「疲れたかい?」


「ええ、申し訳無いんですけど、とっても疲れました」


「まああいつらが相手だと俺も疲れるからなあ。

 それでどうする? 嫌だったら別の仕事に回ってもいいぞ」


「いえ、もう少しだけやってみたいと思います。

 それにしても、もうあんな子供のころから『支配者』であることに染まってしまうんですね……」


「そうだな、それだけ他人を支配するっていうのは快感なんだろうな。

 支配される側から見ればたまったもんじゃないけど」


「あの、ひとつご提案なんですけど、問題児たちをしばらく隔離するのはいかがでしょうか。

 周囲に誰も支配できる相手がいなければ、彼らも少しは考え直してくれると思うんですけど……」


「それもそうだな。周りの子に悪影響が出ないようにそうした方がいいかもなあ」




 それで俺はドワスター・ドワーフの大族長を訪ねたんだよ。


「なあ大族長、またちょっと頼みがあるんだが」


「お師匠殿。なんでも言ってくだされ」


「実はかくかくしかじかでさ、保母さんを増員して欲しいんだわ」


「お安いご用ですな。

 ところでその子たちを隔離した後、私がその子たちの収容所を直接回ってもよろしいでしょうかの?」


「大族長御自らかい?」


「はは、まあ役に立てるかどうかは分かりませぬが、彼らが考えるきっかけになるかもしれませぬ」


「そうだな、試しにやってみるか。すまんな」


「やれやれ、これで少しはご恩返しが出来るかもしれませんわい」





 翌日俺はB収容所の問題児たちを全員1人用の房に移して観察を始めたんだ。

 ああ、みんな見るからにうろたえてるわ。

 大声で子分の名を呼んでも誰も来ないもんな。

 きっと生まれてこの方常に周囲には誰かいたんだろう。

 俺の隣では大族長がうんうん頷きながら子供たちを見てたわ。


「使徒殿、もしよろしければこの子たちを3日ほどこのまま1人でいさせてくださらんか。

 3日後にはわしが全員の房を訪問させて頂く」


「すべて任せる。よろしく頼むよ」



 3日後。


 収容者:14歳男児。E階梯0.3。


「よう、元気かの」


「だ、誰だお前は!」


「わしはドワタルニクスという者じゃ」


「よ、よし! お前を俺の第一従者にしてやる! 俺に忠誠を尽くして励め!」


「いや、もう従者や家来などというものは無くなったのだよ。

 これからはみんなただのドワーフじゃ」


「な、なんだと! 族長一族の俺に向かってそんなことを言うと、上級兵士たちに処刑させるぞ!」


「その上級兵士たちは皆、殺人の罪で終身刑になっておるぞ?」


「なっ……」


「まあいい。ところでお前は何がしたいんだ?」


「お、俺は族長一族だと言っただろうに!」


「いや、それは階級であって『したいこと』ではないぞ。

 その階級が無くなってしまった後は何をしたいんだ?」


「何をするも何もあるか!

 族長一族の仕事は平民ドワーフを正しき道に導くことだ!」


「ここには他に誰もいないのにか?」


「ぐうううう……」


「ならば他人を正しき道に導く前に、まず自分の正しき道を探してみたらどうかのう」


「な、なんだと! 族長一族の正しき道とはだな」


「それはお前が考えたことではないだろう。自分で考えたことは無いのか?」


「す、すべてのドワーフはシスティフィーナさまと始祖ドワーフ様の教えに従って、長老一族に導かれるのだ!」


「システィフィーナさまはそんなこと仰っておられなかったろうに。

 お前はあの場にいたのに聞いていなかったのか?」


「あ、あんなものはニセモノだ! 族長さまもそう仰られていただろう!」


「やれやれ。お前さんは残念ながらもう手遅れかもしらんのう」


「な、なに……」


「ここでひとりで考えなさい。

 もうお前の従者になってくれる者は誰もいないのだよ」





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