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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
103/325

*** 103 対ヒト族戦争の記録映像 ***

 


 翌日、システィ天使域での戦略会議にて……


「というわけで、ここ数日の戦果は、ドワーフ領に侵攻してきたヒト族軍5万5000全員捕獲でありまして、現在収容所に収監されています」


「サトルよ。映像は無いのかのう……」


「それでは昨晩アダムが編集してくれた記録映像をご覧いただけますでしょうか」


「是非見せてくれ♪」


 はは、みんなこくこく頷いてるわ。

 それから俺たちはみんなで1時間ほどに編集された映像を見たんだ。

 みんな歓声を上げたり爆笑したりしながら夢中で見てくれてたよ。



「サトルよ。お前は『不殺の誓い』を貫き、味方に負傷者すら出さずにヒト族軍を全員捕獲したのだな」


「はい」


「ほんに大したものよのう。見事だったぞ」


「はは、まあこのために修行して来たわけですからね」


「うむ、褒美にわたしの体を自由にしてよいぞ。

 戦帰りの男は溜まっておるというからな。

 その精を受け止めるのも女の役割であろう」


「そ、そそそ、それはまた次の機会にということで……」


「はは、楽しみにしておるぞ。

 ところで念のために教えて欲しいのだが、何故アダムと大陸上を飛びまわってヒト族軍を片っ端から捕えないのだ?」


「ええ、理由は3つあります。

 ひとつ目は、やはりその行為はどう贔屓目に見ても『誘拐』になってしまうことなんです。

 システィの使徒であるわたしが、地球では犯罪に相当する行為を行うことには抵抗があるんです。

 まあ侵略して来た連中を捕獲して収容所に転移させることについては、充分に戦闘行為に含まれるでしょうから構わないでしょう。


 2つ目は俺とアダムの負担の問題です。

 実はこの『ヒト○イホイ』のように、俺が造った施設内からのヒト族の収容所への強制転移はかなり容易なんですが、それ以外の場所からですと、相当に負担が大きいんですよ。

 そうですね、体感で5000倍から1万倍ほどでしょうか。

 アダムですら1万人を転移させるには10分かかります。

 ですからその間に逃がしてしまう恐れも大きいんですよ」


「なるほどのう。

 そういえばお前が造った『システィの天使域』の中と外ではアダムの管理能力に大きな違いがあったのう」


「それから3つ目の理由は各地の治安維持です」


「治安維持とな……」


「たとえばギャランザ王国の兵士を全員捕獲したとしましょう。

 そうすると、ギャランザ王国内では抑止力が無くなって、周辺国から膨大な数の盗賊や軍が殺到して来ると思われます。

 また、今まで単なる村人だった連中が、突然盗賊団に早変わりして近隣の村を襲うかもしれません」


「な、なるほど……

 ここまでE階梯の低いヒト族ならば、充分に有り得る話か……」


「ですからもしやるのならば、ギャランザ王国の全国民を一斉に収容所に入れなければならないんです。

 そうしなければ却ってこの世界ガイア罪業カルマポイントが増えてしまうんですよ。

 ですがそうするにはまだ俺の力が足りないんです」


「なるほど理解したわ。

 ところで、お前が『死んだ方がマシ』なメに遭わせてやると言っておった、あの先鋒軍指揮官の男爵はどうなったのかの?」


「それでは、その後の男爵の様子を記録した特別映像をごらんいただけますでしょうか……」


「是非とも見せてくれ♪」







 翌週の神界。時は夕刻……


「なあ、そういえば昨日のローゼマリーナの『ガイア観察日記』見たか?」


「見た見た! もーど爆笑!」


「俺も見たわ! あの決死の勢いで城門から突入したヒト族の男爵と兵士たちが、突然侯爵さまのお邸の庭に強制転移させられちゃうやつだろお!」


「しかも転移の途中で鎧も服も消されちゃって、まっぱで侯爵邸庭園に突入して来るんだもんなあ!」


「俺、お茶飲んでたんだけど、盛大に吹き出しちゃって女房に怒られたわ……」


「しかもさ! 庭園では侯爵夫人とご令嬢さまが、大勢の貴族のお嬢さまたちを招いてお茶会開いてたんだもんなあ!」


「そこに鬼の形相の男たちがまっぱで突撃して来たら、そりゃお嬢さまたちも驚くわなあ」


「『うおおおおおお~』とか雄叫び上げてたしな!

 しかも、あまりにも必死だったんで、手に持ってた剣が花束に変えられちゃってるのに誰も気づいてないんだもんな! あれワロタわー」


「お嬢さまたちから見たら、花束持って求愛に来たように見える男どもが、額に青筋立ててまっぱだもんなー。あれビビるわー」


「なあ、額だけじゃあなくって、あいつらちんちんも元気にして青筋立ててたろ。

 あれなんでだ?」


「あれな、ヒト族の男って、命の危険を感じるとああなることがあるんだと。

 どうやら、死ぬ前に少しでも子孫を残そうとする種族保存本能らしいんだけど……」


「おかげで令嬢のうちのひとりが、先頭で雄叫びを上げてるおっさんを見て叫んでたもんなー。

『お、お父さまっ!!! な、ななな、なんという卑猥なお姿をされているのですかっ! 

 そ、それに今はご出兵の最中だったはずですっ!』とか……」


「その瞬間のおっさんのあの『死んだ方がマシ』級の絶望した顔…… 

 なにもあの顔だけどアップにして何度も繰り返さなくってもいいのになー。

 ちゃらら~ん♪とか効果音付きで、スロー再生までやってるしさ。

 ローゼマリーナも編集の腕が上がったもんだよ。

 俺も死ぬほどワロタわー」


「そ、それに…… あ、あのリボン…… ぷくくくくくくーっ!」


「も、もうダメ…… お、思い出しただけで、ぷくくくくくくくくくくーっ!」


「まさか全員のちんちんがカラフルなリボンで飾りつけられてるとはなーっ!

『爆撒英雄サトル』って、いったいどんなギャグセンスしてるんだよ! ってなもんだわ!

 あれじゃあ知らせを聞いて駆け付けた侯爵サマが、額の血管破って流血するのも無理ないよなー。

 デコからぴゅーとか血ぃ吹いてたし……」


「な、なあ、お前達…… 気づいて無かったのか?」


「なになになに? なにに気づいたの?」


「あのまっぱ突撃してきた兵士たちのケツ…… 花が差してあったんだぜ……

 走る度にぷらぷら揺れてたんだぜ……」


「ぎゃはははははははははははははははは~っ! ま、マジ? マジそれ!」


「ああ、俺気づいた瞬間から息が出来なくなって、しまいにゃ顔が紫色になったんだ…… 

 もう死ぬかと思った……」


「お、俺、早く帰ってもう一度見直す!」


「お、俺も俺も!」


「それじゃあ今日は早めに帰るかーっ! じゃあなーっ、お疲れーっ!」


「「「「「 お疲れーっ! 」」」」」」



 神界は今日もまた平和であった…………






 その頃、ギャランザ王国王宮では……


「今日も討伐隊からの伝令は無いのか!」


「は、はいドラグント殿下。

 3日前に、最西端の村まであと4日の距離まで到達したとの報告の後は一切連絡がございません……」


「いったい何があったというのだ!」


「そ、それが皆目……」


「この王宮からは陛下への経過報告の使いが毎日出ておるのだぞ!

 これでもう『先遣隊連絡無し』の知らせが2回も行ってしまっているではないか!

 ギャランザ王! 調査隊は出したのか!」


「はい、2日前直轄軍100を派遣いたしました……」


「そやつらからの報告は!」


「ま、まだございません……」


「ええい! もう一度調査隊を出すのだ!」


「は、ははっ!」




「なあアダム、どうしてヒト族の軍はこうも簡単に『ヒト○イホイ』に引っかかるんだろうかな?」


(そうですね、司令官の貴族が野営に慣れていないせいもあるんでしょうか……)


「まあその分、俺たちは楽チンでいいんだけどな」


(はい……)




 その2日後。


「ええい! まだ調査隊の報告は来ないのか!

 これでビクトワール王国軍2万から連絡が来なくなって5日ぞ!

 その上にギャランザ王国の調査隊からの報告も無いではないか!」


「は、はい…… さらに1000名の調査隊を出したのですが……」


「ギャランザ王よ、よもや貴様、ビクトワール大王国に対し謀反の意があるのではなかろうな……」


「め、めめめ、滅相もございません!」


「ドラグント殿下。

 もしかすると、これはドワーフ軍の罠なのでは……」


「な、なんだと!

 あのドワーフ軍が山を下りてきて、我が軍を罠にかけたと申すのかっ!」


「いえ、ただの可能性ですが……」


「まずい…… まずいぞ……

 このままでは父上が俺に付けた軍監が、そう邪推して王都に報告を出すかもしれんではないか!

 このままでは俺が無能だと思われてしまう!」


((( 充分無能ですけど…… )))



「それでは殿下。

 かくなる上は、ビクトワール大王国軍から5000の兵を調査隊として出されたらいかがでございましょうか……」


「3000だ!

 それ以上出すと俺の護衛が減り過ぎてしまうではないか!

 至急貴族を指揮官に立て、調査に向かわせろっ!」


「ははっ」





「おいアダム…… また『ヒト○イホイ』に3000人もかかったぞ」


(さすがはサトルさまでございます。

 素晴らしい装置を開発なされましたな……

 ところで30名ほどの見張り番が血相を変えて王都に逃げ帰ろうとしておりますが、いかがいたしましょうか)


「いつものように俺が転移させるわ……」




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