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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
10/325

*** 10 さあ、いよいよ俺の初魔法だ! ***


 


 夕食後、システィはまたラノベを読み始め、俺は各種の勉強を続けていた。



「なあアダム、そういえば実際に魔法を行使するときって、何が起きてるのかな。

 つまりはどんなメカニズムで魔法が動いてるのか、っていうことなんだけど」


(そうですね、まずはサトルさまが希望される魔法現象があるとします。

 例えば『周囲の水分や水脈から水を集めて直径10センチほどの水球を作り、目の前の空間に浮かべる』という魔法がございます。

 この魔法には『水球(小)』という名称がついています。

 この現象をマナに命じるための専用言語式もその登録名称も、まだサトルさまの脳内に保存されてはいませんので行使することは出来ません。


 ですが、例えば同じ『マナ行使権限(超初級)』をお持ちの精霊さまが、魔法の名称を唱えて行使されるのを身近で見た場合、その名称とマナ言語が自動的にサトルさまの脳内にコピペされます。

 そうしてそれからは、その名称を唱えるだけでおなじ魔法現象を起こすことが出来るようになるのです。

 周囲の空間のマナは希薄ですので、ほとんどはサトルさまの体内マナを使用することになりますが)


「なるほどな。簡易魔法は定型化されていて、その名称を聞いて実行されるのを見れば、自動的に俺も使えるようになるわけだ。便利なもんだな」


(まあそれが『マナ使用権限』でございますので)


「それじゃあさ、定型化されていない複雑な作業をするときにはどうするんだ?」


(その場合には、ご希望の魔法現象を詳しくわたくしにお命じください。

 わたくしが代わりにマナ言語に翻訳いたします)


「そのお前の翻訳機能ってPCの音声入力ソフトみたいなもんなのか?」


(大雑把な概念としてはそうなります)


「っていうことは、俺はお前のいないところでは複雑な魔法は使えないっていうことか」


(はい)


「っていうことは、魔法には2通りあるんだな。

 まずは与えられた『マナ使用権限(超初級)』の範囲内で、あらかじめ記憶に刷り込まれた魔法式を使用して簡易魔法を発動させるものか……

 これを使用出来る者は……」


(システィフィーナさまとサトルさま、それから精霊さまや一部の知的生命体一族らも行使可能です)


「それから複雑な魔法を新たに行使するケースか……

 これはアダムに頼んでマナへの命令式を作ってもらうわけだ」


(はい。ご自身でこのマナ語翻訳を行うことも可能ではあるのですが、かなり複雑な言語ですのでどなたも行われてはいません。

 ですから現状、わたくしのいないところでは、複雑な魔法現象は行使不能でございます)


「そうか、お前ってけっこう重要な役割を持ってたんだなあ。

 それにしても大変じゃないか。

 俺やシスティの要望をいちいちマナ言語に翻訳するのって」


(まあそのために創られた存在でありますから。

 それに頻繁に使用する魔法は定型化されておりますから、あとはパラメーターを変えるだけですから、それほどの負担ではございませんよ)


「へー、『定型化』か」


(わたくしどもは『マクロ』と呼んでいるのですが、例えばサトルさまを地上界に転移させて頂く際には、『サトルさまの周囲の空間の確保』、『転移先の座標の設定』、『転移先の空間の安全確認』、『転移実行』という手順になります。

 これをマナへの命令言語に翻訳すると80行ほどのものになるのですが、この命令は『転移』というマクロとして既に登録済みなのです。

 ですから各地への転移を希望された場合でも、変えるのは『転移先の座標の設定』というパラメーターだけですので、それほどの負担ではございません)


(『マクロ』って……

 それって表計算ソフトのマクロそのものじゃん……

 ま、まさかお姉さま、これもパクったのか?)



「あ、ということは、ヒト族や獣人族たちも、アダムさえいれば複雑な魔法って使えるのかな?」


(ほとんどの知的生命体が魔力、つまり『マナ保有力』、『マナ操作力』、『マナ放出力』を持っておりますが、システィフィーナさまのご許可が無いためにわたくしの協力が得られません。

 この世界ガイアでわたくしへの命令権限をお持ちなのは、システィフィーナさまとサトルさまだけになります)


(なるほどな。

 地球でも俺たちが魔法の存在を意識していたのは、魔力そのものは持っていたけど、地球のシステムへの命令権限が与えられていなかったからだったんだな……)



「それじゃあ、俺も学習すればそのマナへの命令式やマクロを作れたりするようになるのかな?」


(はい、もちろん可能でございます)


「ところで今、『マナ操作力』と『マナ放出力』って言ったけどさ。

 それってどういう力なんだ? システィはよく知らなかったみたいだけど……」


(『マナ操作力』は、体内マナを使って事象を起こす力になりますが、非常に長いマナ命令式を使って複雑な作業を行うときに必要な力でございますね。

 また、『マナ放出力』は、一度にマナに命令出来る量を司ります。

 どちらも普通の単純な魔法行使に於いては、ほとんど意識することもございませんので、システィフィーナさまもご存じ無かったのでしょう。


「なるほど。

『マナ保有力』は体内のエネルギー量を司り、『マナ操作力』はそのエネルギーを現象に変換する作業量を規定し、『マナ放出力』はそのときのエネルギー変換速度を規定するのか……」



(はい、ですが、『マナ操作力』と『マナ放出力』は余程に複雑な魔法マクロを行使しなければ必要とされませんので、天使族の方々も神族の方々もほとんど意識されていらっしゃらないのではないでしょうか)


「うん、よくわかったよ。ありがとう……」





 翌日、俺はまず、水の大精霊ウンディーネに【水球(小)】を出してもらった。


 さあ、いよいよ俺の初魔法だ!


 俺は、「魔法発動! 【水球(小)】!」と唱える。

 すると体の中から何かがすっと抜ける感覚とともに、目の前に直径10センチほどの水玉が浮かんだんだ。


 おおおおおおお…… なんという感動! なんという感激!

 俺は魔法が使えるようになったんだ!


 だが、ナゼか頭の中で「ぴこ~んぴこ~ん」と音がしているな……

 だが、俺は音を無視して、2つ目の水球も出現させた。


 途端に……

(体内マナが枯渇しました……)

 というアナウンスを微かに聞きながら、俺は気絶することになったんだ……


 目が覚めると、システィが心配そうな顔で俺の顔を覗き込んでいた。

 近い! 近いよシスティさんっ!


 よく見れば5人の大精霊たちも、俺の周りに集まって俺を見ている。


「サトル…… 気分はどう? 大丈夫?」


「あ、ああ…… 大丈夫だ……

 ちょっと気分が悪くてふらふらするだけだ……

 そうか、これがマナ枯渇なんだな……」


「…… よかった ……」

「…… ちとさま、復活 ……」

「はは! システィフィーナさまがマナ補給したら一発で復活だな!」

「お見事な気絶だっただす ……」

「ふん! なによ! たった水球2つで気絶だなんて! 根性無し!」


「ふふ…… 光の大精霊ルクサーテムちゃんはね、慌ててサトルに飛びついて、『治癒魔法キュア』をかけてくれようとしたのよ♪

 でもそれだと体内マナの枯渇には効果がないから、わたしがマナを補給してあげたのよ」


「そうか…… ルクサーテム…… ありがとうな……

 それからシスティも……」


 途端に「ぼんっ!」と音をたててルクサーテムが真っ赤になった。


「なっ、なによなによっ! 

 あ、アンタのためじゃあなくって、システィフィーナさまのためなんだからねっ!」


(はは…… 光の大精霊は随分とツンデレだったんだな……)




 俺は起き上がると自分のステータスをチエックしてみた。


 おお! 総合魔力(MP)が1から2に増えてるじゃないか!

 マナ保有力も1から2に上がってるぞ!

 そうか…… やっぱり気絶するまで魔法を使うとレベルアップするんだな。


 次に、俺は火の大精霊サラマンダーに頼んで、『火球(小)』を出してもらって脳内に登録した。

 今度は3つの火球(小)を出したところで警告音が鳴り、4つ目を出したところで気絶する。


 今度も10分ほど気絶していたらしいが、流石に少し体がダルくなっている。

 次に風の大精霊シルフィーに風玉を教えてもらおうとしたところで、システィに言われた。


「もうサトルはかなり疲れているでしょ。

 だから、次は自分で回復出来るように、ルクサちゃんから『治癒キュア(小)』を教えてもらったらどうかしら」


「ふ、ふん! システィフィーナさまが言うから教えてやるんだからね!

 あ、ありがたく思いなさいよっ!」


「わかった、ありがとうな……」


「っう――――――っ!」



 俺は『治癒キュア(小)』も覚えることが出来た。

 おお! これ気持ちいいなあ。

 でも、あんまり使うと体力系のレベルが上がらないからな。

 やっぱり体力系は、自力で回復しようとするときに上がり幅が大きいようだし。

治癒キュア(小)』の使い所は考えんといかんか……




 その後は休息と昼食タイムだ。


「なあ、システィ。

 俺たちばっかり食べるのもなんだしさ。

 この子たちってなにか好きな食べ物ってあるのかな?」


「う~ん…… どうかしら。

 この子たちはマナを摂取して生きてるから……」


「なあ、お前たち、食べたいものってあるか?」


「……?……」

「たべもにょ?」

「食べ物ってなんだ?」

「食べたことない……」

「ふ、ふんっ! 食べ物を食べたことがあるぐらいでエラそーにしないでよっ!」


「そうか…… それじゃあ試しに何か食べてみないか?

 もし食べられないようだったら無理しなくてもいいし……」



 俺は俺たちの昼食に加えて、いちごのショートケーキを7個注文した。

 システィが小さなフォークを5個用意してくれる。


 俺は別のテーブルにショートケーキを5個並べた。

 途端に精霊たちがずずずずずぃっと近寄って来る。


「…… くんくん ……」

「こ、これが食べもにょ……」

「はぁはぁ……」

「(じゅるり……)」

「な、なによっ! いい匂いがしてるからって、たかが食べ物のくせにエラそーにしないでよっ! 上に乗った赤い木の実がふんぞり返っているじゃないのっ!」


光の大精霊ルクサーテムさん……

 金髪縦ロールのお嬢さまが、「ふんぞりかえる」っていかがなもんでしょうか……)




「さあ、魔法を教えてくれるお礼だ。食べてくれ」


 途端に精霊たちがショートケーキに飛びかかっていった。


「……はむはむはむはむ……」

「……はぐはぐはぐはぐ……」

「……むひょー、むひょー……」

「ううううっ、お、美味しいだすぅ!」

「……がつがつがつがつ……」


 ものの5分ほどでケーキは全て無くなった。

 30センチほどの精霊にとって、ショートケーキとはいえけっこう大きかっただろうに……


 ああ…… みんなお腹ぽんぽこりんになってるよ。

 水の大精霊ウンディーネだけはお腹膨らんでないけど、それでも全体的に膨らんでデブい精霊になってるぞ。

 美人が台無しだな……


「ふ、ふんっ! ま、まあ悪くなかったですわっ! げぷっ!」


 お前誰だよ……

 顔も頭も生クリームに覆われてて識別不能だよ。

 しかも頭に苺のヘタ乗っけてるし……





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