つかの間の平穏な日々
それから、エイルと過ごす時間が増えた。
お互いを知る為だろうか、初めて出会って一緒にいられなかった時間を埋めるようにエイルは時間を作ってはライラの部屋を訪れた。
食事もティータイムも一緒に過ごすようになった。さすがに寝るときは別室だったがエイルは離宮の自室で休むようになっていた。
(これじゃぁ・・・まるで新婚生活のようだわ)
さすがにエイルの行動に驚いたが、やはりクリヴのことなどがあるのでこの方が安心できた。
「お食事のご用意ができましたのでお持ちしました」
「ああ、入れ」
エイルの言葉を合図にネイが入ってきた。
ネイはエイルと親しいのだろうか?和気あいあいと話している。
カチャカチャとテーブルに手際よくセッティングしていくネイ。
「エイル」
「ネイと仲がいいのね」
そういうとエイルが手招きしたのでライラは彼の近くに行った。
耳元でエイルが小声で話し出した。
「ネイは腹違いの妹なんだ」
「え?」
「自分から王女という地位を捨てて今の職に就いているんだ」
「ええ!!?」
ネイは声をあげたライラのほうを見た。
「お兄様!内緒にしておいてくださいとお願いしたはずです!」
「・・・ネイ、今の話本当なの?」
王女の方が待遇もいいし、何不自由ない生活が送れる。それなのになぜネイは侍女という職に就いたのだろうか。
「好きな人ができましたの。その人は一般人でどうしても一緒になりたくて、お父様に相談してみても全然相手にされなくて悔しくて当てつけのつもりで初めて見たら自分にこの職業が合っていたみたいで侍女生活を毎日楽しく過ごしています」
ぽかーんっと開いた口が塞がらないライラを見て面白そうに二人が笑っている。
そう言えば、どことなく雰囲気が似ていなくもない。
「さぁ、ライラ様、お食事の前にお召しかえをいたしましょう。殿方を楽しませるのも女性の務めですよ」
そう促されライラは戸惑った。
「クローゼットの中にたくさんのドレスが入っていますからお好きなものを選んでください」
かちゃっとクローゼットを開けるとたくさん可愛い色とりどりのドレスが入っていた。
「それじゃぁー・・・このドレス着てみたいです」
「それか、似合いそうだな」
すかさずエイルが会話に入ってきた。
「あの、婚約とか結婚の話はひとまず置いておいて、ドレスや食事、居場所をくれて感謝しています。エイル・・・本当にありがとう」
ライラはそういって微笑んだ。
その笑顔はライラがエイルに心を開いている証拠でもあった。
「・・・俺は着替えが終わるまで廊下にいるから終わったら声をかけてくれ」
頬を赤らめてエイルは部屋から出て行った。
パタンっと戸を閉め戸に背を預けた。
鼓動が段々と早くなっていく。
(またこの発作か・・・狩りたいという衝動が全身を駆け巡る。いつもは眠り薬で押さえているが
俺が眠っている間にクリヴが何かしてくるかもしれない)
(今回の発作は自分で抑え込むしかない)
(ああ、でもライラはすごくいい匂いがした。思いのままにできたらいいのに)
抱き寄せてキスをしてー・・・。
ライラの姿を思い浮かべた。
(細い手首、小さくて頼りない体。柔らかそうな肌。護りたいのに壊してしまいたい激しい衝動)
「でも駄目だ、そんな思いが知れたら嫌われてしまう」
(だから今は何もしない。その時が来るまで・・・)
エイルはひとり呟いた。
「本当の俺を知ったらライラは離れていってしまうのだろうか・・・」