ライラとエイル2
ライラは目を覚ました。
目の前にはもふもふしたものがいる。手で触ってみると最高の手触りで何度も繰り返して撫でた。
「・・・くすぐったい」
もぞもぞともふもふした物体が動き、シーツから姿を現した。
その姿は狼だった。
「もしかして・・・エイル?」
「ああ、そうだがよくわかったな」
そう問われてライラは答えた。
「王族に生まれた以上隣国の事はある程度教え込まれますから・・・でも狼族の王族が狼になれるって聞かされたときは信じていなかったです」
「そうか。今は信じてくれるか?」
「はい、目の前にいますから」
「お前は姿を変えたりすることはできないのか?」
エイルは兎族のことをあまり詳しくは知らない。特に王族のこととなるとトップシークレット。
なので情報を集められなかったのだ。
「耳だけならうさぎ耳になれますよ。ほら」
ライラはぴょこんと両耳を立てて見せた。
「・・・!」
(可愛い)
エイルは心の中で叫んだ。
そんなエイルのことに気付きもしないライラはふと思った。
(・・・この狼どこかで見たような・・・)
「俺のこと覚えてるか?」
考え込んでいるとエイルが声をかけてきた。
(覚えてる)
「あの時怪我をしていた狼さん?」
「そうだ」
嬉しそうにエイルは答えた。
エイルは覚えてもらえていた事が嬉しかったようだった。
「どうしてあんな森の中で怪我をしていたの?」
ライラの記憶では結構ひどい怪我のように見えた。
「・・・クリヴと間違えられてほかの部族の連中にやられたんだ」
クリヴは兎族だけを滅ぼしたわけではなくほかの部族のところにも度々軍を率いて攻め込んでいた。
「服装や、背格好がにていたから威嚇されて矢で射られてしまったんだ」
「・・・」
(それであんな怪我をしていたのね)
「貴方は抵抗はしなかったの?やり返そうとか・・・」
「俺は争いは好まない。狼族全員がクリヴみたいだとは思わないでくれ」
エイルはクリヴがやっていることを否定しているが、狼族の軍人は残虐で危険な人たちばかりだった。クリヴは軍のリーダーを務めている。軍人の人数もかなりいた。
ライラは狼族で穏やかな人物はエイルしか知らない。
「ライラ・・・信じてくれないか?俺と同じように戦いを好まない者も大勢いる」
エイルはライラの瞳をじっと見つめながら話した。
エイルが嘘を言っているようには見えなかった。
「わかったわ。エイルを信じるわ」
ライラはエイルの真摯な態度に負けた。
その時ドアをノックする音が聞こえた。
「エイル王。そろそろお時間です」
「ああ、もうそんな時間か」
そう言うとすっと元の人の姿に戻った。
ライラは驚いた。まるで魔法のようにすっと姿を変えることができる事に。
「ライラ、俺はまた公務に行かなければならないから離宮から出ずにゆっくり過ごしてくれ」
エイルは念を押し部屋から出て行った。
ライラは一人残されたことを心細く感じたが、狼族がみんな敵ではないとわかって少し安心することができた。