エイルの過去
エイルは幼い少女に手当をしてもらい、城へ戻った。
城へ入るときは人型に戻り、せっかく巻いてもらったドレスの布もほどけてしまった。
血は止まっていたが傷口が痛む。
「ライラ・・・か」
確か、隣の国の兎の国の王女の名前がライラ・ラビィークという名だった。
「兎国の姫か」
エイルは手当てしてもらった布をじっと見つめた。
綺麗なドレスを着たいたのに・・・。
(俺の為に破かせてしまった)
そう思うと心が痛んだ。
王に相談して、お礼にドレスを送ろうかとも考えた。
しかし、王族が狼になれることは隠しておかないといけない。
「・・・」
(何とかしてお礼がしたい)
エイルは考えた。
ライラのことを思い出すと心が満たされるように感じた。
(優しい娘だった。小さくて守ってあげたくなるような子だったな)
「・・・そうだ!」
「父上。お話があります。今お時間宜しいですか?」
「おお、エイルか。お入り」
エイルは父の部屋へ足を踏み入れた。
「父上、兎の国と同盟を結んでくださいませんか?」
「兎国と?何故?あの国は小国で特に何もないし、同盟国になってもだれの得にもならないぞ」
王はそういうと怪訝そうな顔をした。
「それは・・・そうなんですが・・・」
エイルは口ごもった。
「実は兎国の王女に命を救われました。怪我をして動けなくなっていたところを助けていただいたんです」
そう告げると王は考え込んだ。
「そうか、そんなことがあったのか」
「はい」
エイルは真剣な眼差しで王を見据えた。
「・・・わかった」
「え?」
エイルは驚いた。あっけない承諾に。
「父上、本当にいいんですか?」
「ああ、お前が世話になったんだからな」
それだけでこの父が了承してくれるとは考えられない。
「エイル、お前その王女に惚れているな?」
「!」
「ちが・・・」
「よいよい、隠さずとも。お前の顔を見ればわかる」
「よい女だったのだろう」
「っ・・・」
エイルは顔を真っ赤にして黙り込んだ。
「お前は分かりやすくて良いな。クリヴとは大違いだ」
「・・・」
クリヴは今日も狩りに出かけている。
王はそのことをどう思っているのだろうか。
「お前の気持ちは分かった、兎国と同盟を結んで王女を妃にもらおう」
「妃!?」
王の申し出にエイルは驚いた。
だが王の決めたことだから止めることはできない。
エイルも望んでいることなので、止める理由もない。
「妃、ではなくて正妃として迎えたいです」
「はははは、わかった。兎国にはそのように伝えておこう」
こうして無事に兎国と同盟を結び、ライラを正妃として迎えることができた。
エイルはライラさえいればほかの妃は必要ないと思った。
それから数年後無事ライラを正妃として迎えることができた。