ライラの過去
幼いライラは従者とはぐれて森の中で迷子になっていた。
ライラは心細くて泣き出しそうになった。
ガサガサと木々が揺れ葉がこすれる音にビクつきながら森をさ迷い歩いた。
すると目の前に大きな狼が怪我をして倒れていた。
体に数本矢が刺さっているのが見えた。
気を失っているのか狼はじっとしたまま動かない。
ライラは勇気を出して近づいた。
狼は起きていた。
急に近づいてきたライラを威嚇するように牙をむいた。
それを見たライラは安心させるように狼に声をかけた。
「大丈夫だよ。手当してあげる」
「・・・」
狼は唖然としているようだった。
「ちょっと待ってて」
そう言うとライラは自らドレスを切り裂いた。
「まずは、矢を抜かないと・・・少し痛いかもしれないけど手当してもいい?」
「・・・」
狼は何も言わなかった。
了承されたとライラは解釈した。
ライラは護身用の短剣を取り出し、矢じりを取り除き始めた。とても丁寧な手際だった。
「痛い?ごめんね、もう少しで終わるから・・・」
「!!」
よほど痛かったのか狼の体がビクついた。
「水を汲んでくるから待っていて」
剣の鞘を手に持ち川へと向かった。
ライラはすぐに水を汲んで戻ってきた。
切り裂いたドレスに水を含ませ、傷口を丁寧に消毒した。
そして余ったを包帯の代わりに傷口にぐるぐると巻き付けていった。
「ふう、これで何とか大丈夫そうだね!よかった!」
何とか狼を手当てすることができた。
ライラは一安心した。
その時だった。
「ライラ様!!どちらにおられますか!?」
「従者さんが呼んでいるわ。行かなきゃ」
ライラは狼の頭を撫でながら言った。
「私はライラ。あなたの怪我が早くよくなるよう祈ってるわ」
そう言い残し踵をかえしライラは従者の声のする方へ駆けていった。
この時の狼がのちにライラの結婚相手のエイル・カタームとわかるのは数年後のことだった。
エイルはライラのことをこの時から好きになっていた。
この森での出会いは運命としか言いようがなかった。