あなたをお迎えにあがりました
俺は高峰 光揮、17歳。
ごく普通に高校生活を送って、ごく普通に朝を迎えたのだが、
10分前から玄関のチャイムが鳴り止まない。
妹の晴美は部活で出かけているため、家に居るのは俺だけだ
久しぶりにバイトのない休日をゆったり過ごしていたというのに、居留守を使ったのだがどうも騒音は鳴り止まない。
部屋は2階で下にも隣にもこの音は迷惑がかかる
俺はしかたなしに重い腰を上げた。
「すんません、何かの勧誘ならお断りっすよ」
扉を開けると、白い服に白い髪をした可愛らしい女の子が立っていた。
「はじめまして、こんにちは! 高峰 光輝さんですよね? お迎えに上がりました!」
「は?」
お迎えに上がりました? 俺を?
訳がわからずそのまま扉を閉めようとしたが、閉まる前に彼女が扉に足をかけて閉めるのを止めた。
「待ってください! えーっとリスト、リスト!」
彼女はバッグから紙の束を取り出した。
「見て下さい! 今日あなたは死ぬことになってるんです!」
その紙には俺の証明写真と今日の日付で死亡予定と書かれていた。
「わかっていただけましたか?」
いかにもドヤっとした顔をしながらこちらを見てくる。
「新手のサギっすか? うちには金ないんで帰ってください」
「いやいや! 本当のことなんです!」
さすがに冗談にも程があるので、彼女の足を蹴り飛ばし扉を閉めた。
「あ、開けてくださいよー! 貴方が死ぬことは変わらないんですー!」
わめいているが、無視して寝ようと思ったとき、奥の部屋から物音がした。もしかして彼女の仲間が入って来たのか?
不法侵入で訴えてやろうとおもむろに扉を開けた。
やはり知らない男が立っていた。しかし、全身を一瞬見たとき目に止まったのは右手の包丁だった。
ーーマジかよ。
男はこちらを確認するなり、包丁を振りかぶってきた。
どういうことだ? さっきあいつが言ってたのって?
コレのことなのか?
思考が停止気味の頭をフルに使って一撃一撃を避けていく。
狭い室内に逃げ場なんてものはなかった。
ーーコノママジャコロサレル!
俺は玄関へと走った。早くここから出なくては!
彼女のことなんて頭から忘却していた。
扉を開けると体育座りをした彼女が目に入った。
死ぬ直前だというのに、馬鹿な俺は彼女に覆いかぶさった。
この子まで殺されることはない。なんて心が叫んだのだった。
彼女もびっくりしたようにこちらを見る。大丈夫という意思表示に優しく微笑んでみた。
刺される衝撃に耐えようとしたが、違う衝撃が当たって前を見た。
男と目があった。手すりの外の空中に放り出されて落ちていく。
1テンポ遅れて叩きつけらた嫌な音が鳴った。
ゆったりと下を見ると男は首があらぬ方向へと曲がっていて、下には血が広がっていく。
腰が立たなくなり後ずさりする横で彼女が大声を出した。
何ごとかと思い彼女が持っている紙を覗き込む。俺の証明写真が貼られた紙の死亡予定と書かれた日付にはもっと遠くの未来、それこそ俺が爺さんになるほどの日付が記載されていた。
「か、変わっちゃった……! 死亡予定は変わっちゃいけないのに!」
蒼白しながら叫んだ彼女の頭を思いっきり叩いた。
「それよか、言うことあるだろ! 命助けてやったのに!」
「何言ってるんですか? 私はあなた以外に見えてはいませんよ」
さも当然のように言いやがった。
「というか、まだ私のこと見えてるんですよね」
「ああ、っていうことはあんたは幽霊か何かなのか?」
顔をしかめてこちらを見る
「失礼な! 私は東方局極東支部第9係お迎え担当者死神、日月 零です」
「は? 死神?」
話の内容についていけず頭が痛くなってきた。
「ところであなた私を手伝ってくれませんか? これから死ぬ人を迎えにいくのを!」
「は、はぁぁぁあああ!!?」
絶叫とサイレンの音が混じり合いここら一帯に響いた。
このときは、この後俺の心に変化をもたらすことが起こるなんて思いもおよばなかったのだった。




