表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女殺人事件  作者: 宮元戦車
16/39

一日の終わり

 年端もいかぬ少女に全身をまさぐられるという地獄のような風呂場からなんとか逃げ出して居間へと辿り着く。体中から石鹸の匂いが漂っている。


「う、うぅ」


 自尊心が全て奪われた感覚だ。


 伊丹は俺を洗った後、そのまま風呂に入るらしく、俺は慌てて逃げてきた。


「ウホウホウホ(お疲れ様です。翼様)」


「……ゴリラ」


「ウホ(ゴリ子ですわ)」


 ゴリラが心なしか、瞳を輝かせて嬉しそうな表情をする。


「ウホウホ(でも、よかったですわ。あんなに嬉しそうなお嬢様を見るのは初めてですわ)」


「……そうかポニ」


 とりあえず、俺はゴリラの言葉に頷く。


「ウホウホウッホ(お嬢様は浮世離れした性格ですので、ご学友がなかなかできず、本人もコミュニケーションをあまり必要と感じておりませんでした。結果、お嬢様はずっと一人で本と事件ばかりを追っていました。子供であることから、誰にも認められずにいながらも)


 ゴリラが顔を上げる。ゴリラの顔にはとびっきりの笑顔があった。


「ウホウホウッホ!(だから、お嬢様をお願いします)」


 ゴリラが頭を下げるが――。


「重要なこと喋ってるつもりだと思うのに、何を言っているのかさっぱりわからないポニ!」


 なぜかゴリラが落胆して、睨みつける。


 ……悪いことは何もしていないのに、なぜだ。


「ああ、こんなところにいたのか」


 ピンク色のフリフリが付いたパジャマを着た伊丹がバスタオルで濡れた髪を拭きながらやってく

る。


「……随分、可愛らしいパジャマポニね」


 伊丹のことだからTシャツ一枚だけとかだと思っていた。


「ボクも女の子だからね。そんなことよりも、これからの事について話したいのだが」


 伊丹がチラリとゴリラを見る。


「ウホウホウッホ(わかりました。では、お嬢様。お先に失礼します)」


「すまない」


 ゴリラが一礼して去っていく。


「ワシントン条約はどこにいったんだろうポニ」


「なんでそこでワシントン条約が出てくるのだ?」


 ……わからないならいい。


「それにしても、もう橘萌子のアパートには行けないだろうね。困ったよ。橘萌子は異常なほど情報

が少ない。まるで自殺の決意した人間のようだ。アパートは数少ない彼女の手がかりだったの

に。……ワトソン。何か彼女について、手がかりはないか? こうなってくると、君の思い出だけが

手がかりだ」


「ワトソンじゃないポニ。……それなんだけど、一人だけ、気になる人物がいるんだポニ。当時、萌

子と付き合っていた俳優ポニ。名前は――」


「――宮本勇だな」


「なんだ。知ってたポニか」



「ああ、一応、ボクのネットワークにも入ってきたからな。何か知っているのではないかと思って真っ先に調べたのだが」


 伊丹が言葉を濁す。


「何か……あったポニか?」


「宮本勇なんだが、彼は既に死んでいる。それも、萌子が死んだ数時間前――午前一時頃に成王子

ドーム近くの場所で鋭利な刃物で心臓を一突きらしい」


 一瞬、言葉が出なかった。


「宮本勇を殺した人物と橘萌子を殺した人物は別だろう。『鋭利な刃物で一突き』、『生きたまま判

別不能になるまでバラバラ』殺し方に差があるからね」


 夜は更けていく。俺が人間界に戻って最初の夜はこうして終わりを告げた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ