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魔法少女殺人事件  作者: 宮元戦車
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警察からの逃げ方

 伊丹の服は魔法少女のそれではなく、元の制服に戻っていた。


「しかし、困ったな」


 伊丹はそう言うと、眉をひそめて腕を組む。


「確かに萌子のアパートがこんなことになるなんてポニ。さすがに自然災害で片付けられないポニ」


「事件の手がかりがなくなった」


「そっちポニか!」


 どう見ても、萌子のアパートの惨状のことかと思ったのに。


「だって、魔法で直せるのだろ?」


「直せないポニ」


 伊丹の質問に俺は首を振って答える。


「……なんだって? 魔法なのにか?」


「直せる魔法も存在するポニ。でも、俺は使えないポニ」


「サポート系が得意じゃないのか?」


「簡単な傷を治す。三十分間の簡単な幻覚を見せる。それくらいならマスコットの俺でもできるポ

ニ。でも、それくらいは魔法少女なら使える者は多いポニ。サポート系最強のプリティ・マキーナとかは丸一日、完璧に他人に成り代わる魔法とか大怪我でも一瞬で治す魔法とか使えるポニ」


 その辺りの魔法は萌子にも出来ていたが。


「意外と使えないな」


「しょうがないだろポニ! 俺は十二年間引きこもっていたんだポニ! 魔法なんてほとんど忘れた

ポニ!」


「……君は今、いくつなんだ?」


「二十三歳ポニ」


「ボクよりもはるかに年上じゃないか」


 ああ、やっぱり年下だったか。よかった。この体格で年上だったら、人間界を疑っていた。


「伊丹は今、いくつポニ」


「十一だ」


「……なんというか、外見と中身が全く合ってないポニ」


「年齢が不詳の君に言われたくない。それに、ボクは昔から探偵に憧れていたから、自然とこのよう

な話し方になってしまっただけさ」


 マスコット界の住人は成長しないから仕方ないんだよ。


 反論しようとしたその時――。


「そこに誰かいるのか?」


 外から男性の声が聞こえてきた。


「……まずい。気づかれた」


「に、逃げるポニ!」


 慌てて、立ち上がろうとする。


「待て。もう遅い。慌てて立ち去ると逆に怪しい」


「だけど!」


「ここは人形のふりをしていたほうがいい。生物だと知ったら、余計騒がれる」


 そう言うと、伊丹は俺を抱きかかえてドームの外に出る。


「君、こんな時間にどうかしたのかい? お父さんとお母さんは?」


 公園の入口にいた年老いた警察官が懐中電灯を伊丹に向ける。


 まずい。正直に説明するわけにもいかない。どうするつもりだ?


 ちらりと、伊丹に目を向けると、伊丹の瞳には涙が浮かんでいた。


「えっとね。あっちにいるの」


「…………!?」


 伊丹の口から発せられた気弱い少女みたいな言葉に驚いて思わず声が出そうになる。


 そういえば、俺と初めて会ったときもそんな声だしていたな。


 伊丹は公園を挟んだ道路の向かい側にいるサラリーマンらしき男性を指さす。


「あっちってっどっちだい」


「おとーさん!」


 優しく問いかける警察官を振り切って伊丹が知らない男性に向かって走り出す。


「行こ! お父さん!」


 知らない男性の手を引いて歩き出す伊丹。


「え、え?」


 男性は戸惑いながらも、伊丹に手を引かれていく。


 やがて、警察官の視線が外れたのを確認した伊丹は男性から手を離す。


「助かったよ。ありがとう」


 伊丹は笑みを消して男性に礼を言い立ち去る伊丹の姿を男性は呆気に取られた表情で見送る。


「……こんなところか」


 やがて、誰も見ていない路地裏に着いて呟く。


「……演技ポニか!」


「当然だ。あの場でボクみたいな口調をさせた子供など容疑者の中に仮面つけてたり、マスク被って

たりするやつと同じくらい警戒するぞ」


「仰る通りポニ」


「とにかく、一旦、撤退だ。改めて事件を考えないといけないな」


「撤退って……。どこに行くんだポニ? やっぱり、探偵事務所ポニか?」


「こんな子供が事務所なんて持っているわけないだろう。ボクの家だ」


 いや、そうなんだけど。なんかイメージ的にはすでに百戦錬磨の探偵っぽい。


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