突然の訪問者
「好きなだけここにいてくれていいよ。」
クロルのその言葉に甘え、俺はしばらくここでクロルたちと過ごすことにした。
クロルには助けてもらった恩もある。乗ってきた宇宙船が直るまでの間、俺で役に立てる事があるならなんでもしたいと思っていた。
ときどき来るという各星々を巡回しているバスのような乗り物に乗り、マーケットのある惑星にも行った。見たことのない食べ物や生物たちにもあった。どうやら少なからず地球とこの星々とは交流があるらしい。詳しくはわからないが宇宙船に乗って地球人が着陸する度に少しずつ交流をしていったそうだ。公には公表できないことなのだろう。
気がつけば月に来てから半年が経とうとしていた。月での生活はクロルたちのおかげで楽しく過ごすことができ、あっという間に月日が流れていった。地球に帰らなくてもいいかもしれない。そんな事を思い始めたある日だった。
「んー?あれってもしかして•••。」
あいつが月にやってきたのは。
バタン
「クロル?」
息を切らせてクロルが家へ帰ってきた。
「良介。来たよ。」
クロルは俺の顔をまっすぐ見てそう言った。
クロルに連れられて外に出る。そこにあったのは、
「!これって!」
目の前には宇宙船があった。それも俺が乗ってきたのと同じ型のヤツだ。「どうしたのか。」とクロルに確認を取ろうとしたその時、
「いってー!」
予想もしていなかったことが起きたのだ。
宇宙船の周りに立ち込める粉塵の中から声が聞こえてきたのだ。
「あー!」
まだ姿はこちらからは見えない。でもこの声、どこかで聞いたことがある気がする。
「•••いた。本当にいた!」
煙の中の人物は俺の腕を掴んだ。
「迎えに来ました!良介さん!帰りましょう!」
煙の中からは見知った顔。突然かけられた「帰ろう」という言葉。まだ状況を飲み込めていない俺の後ろ姿をクロルはどこか寂しそうに見つめていた。