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ステータスが見えるようになったらハーレムできた  作者: マルコ
彼女ができたらもう1人増えた
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お茶したら天丼が出た

「あら、進藤さん。ちゃんと手伝い見つかったのね。

 一人で運んでくる。なんて言って出て行っちゃったから、どうしようかと思ってたのよ」


 図書室隣の事務室まで荷物を運んだ一同を、司書教諭の根岸が労った。


「ご心配おかけしました。ちょうど2人に会ったので、手伝ってもらいました」

「そう。2人もご苦労さま。ちょっと待ってて。お茶をご馳走するわ」


 そう言って根岸が給湯室に引っ込んだ瞬間、陽子は腰が抜けたように座り込んだ。


「……なに? 今の……」

「操作魔眼。私の能力よ」


 あの後、放心した陽子を操作し、3人でここまで荷物を運んできたのだ。

 先ほどの受け答えも、恵が操作していた。


「人間じゃ……ない?」

「そうよ。貴女と同じ。もっとも、私は鬼じゃなくてサキュバスだけど」


 陽子が息を飲んだ。それは、恵がサキュバスという事に対してか、それとも自分が鬼だとバレている事に対してか。恐らく、その両方だろう。


「なんで……わかったの?」

「達也がそういう能力を持っているからだけど……あんなモノを持ち上げていたら、そのうちみんなにバレるわよ」


 恵の視線の先には先ほど運んできた段ボールがあった。

 はっきり言って、あれを3つ持ち上げていた陽子の力はどう考えても異常だ。

 達也は1つ持ってきただけで腕が上がらなくなっている。


「進藤の力はさ、俺の……ざっくり8倍あるんだよ。もっと加減しないと、怪しまれるよ」


 達也の言葉に、陽子はピクリと反応した。

 彼に対しては、正体の件以外にも懸念事項があるのだ。


「あら、力が8倍とか何の話?」


 意外に早く根岸先生が戻ってきた。

 紅茶とケーキを持ってきてくれたようだが、達也たち……特に陽子はどこまで聞かれていたのか、気が気ではない。


「遠藤君何だかんだ言って、卓ゲ部復活させる気なんじゃない」


 どうやら、根岸先生はゲームの話をしていたと思ったらしい。

 達也はその勘違いに乗った。


「ええ。ちょっとだけ、どういう事をやるのか説明していたんです」

「ふふ、そうなんだ。顧問は任せてね? じゃ、私は仕事があるから外すけど、みんなゆっくりしていってね。あ、食器はそのままにしていておいて良いから」


 そう言って、根岸先生は部屋から出て行った。


「誤魔化せ……た?」

「……みたいね」


 恵と陽子が安堵の息をつく。が、達也は何か考え込んでいた。


「達也、どうかしたの?」


 恵の問いに、達也は少し考えて応えた。


「いや、今の話、ちょうど良いと思ってさ」

「今の話って……タクゲ部?」

「ああ」


 先ほどのように種族やステータスの話をしていて、誰かに聞かれたら色々と面倒なことになる。

 かといって、誰にも聞かれない状況でしかそういう話ができない。というのも何かと不便だろう。


 そこで、卓ゲ部だ。


 去年まで存在していたこの学校の卓ゲ部の守備範囲としては、ボードゲームやTRPG全般。その他では囲碁や将棋は別に部があるので自粛気味だったが、チェスはやっていたらしい。


 ここで重要なのは、TRPGだ。モノにもよるが、モロにステータスや異種族が絡んでくる。

「ステータス」「サキュバス」「鬼」といった言葉が出てきても、そういうゲームの話だ。という言い訳がし易いのではないだろうか?


 紅茶とケーキを食べながら、達也は2人にそんな話をした。


「つまり、タクゲ部の活動という事にすれば、そういう話がし易いと?」

「ついでに、進藤も運動部からの誘いを断りやすくなるんじゃないか?」

「……え? 誘われてるの、知ってたの?」


 知っていたというか、達也と陽子は同中(おなちゅう)……どころか小学校からの付き合いなので、説得を頼まれたりしたのだ。

 ずっと運動系の部活を避けていたのは知っていたので、達也はその話を断った。避けている理由までは知らなかったが、何となく悟った。鬼の身ではヘタに運動部には入れないだろう。


 一方、陽子は感激していた。達也は自分の事など眼中に無いと思っていたのに、そんな事まで知っていてくれたのだ。


「うーん、イイカンジに恋する乙女の目をしてるね。で、達也はどう思ってるの?」

「……あ……う……」


 恵が楽しそうに放った言葉に陽子が反応した。

 今までの会話の中で、陽子にも達也と恵が非常に仲がいい……というか、恐らく恋人同士であろうことは察知できた。

 つまりは、恵にとって陽子はお邪魔虫なワケだ。普通に考えれば。それなのに、達也に陽子の事をどう思ってるのか聞いている。とても楽しそうに。それはつまり、陽子の想いは受け入れられないであろうという自信に見えた。

 普通はそう考える。日本の常識の中で生まれ育ったら、誰だってそー考える。鬼だってそー考える。


 だが、サキュバスは違う。

 より正確には恵は違う。一夫多妻が彼女の日常で、理想の家庭像なのだ。

 達也も昼休みに聞かされて、それは分かっている。


「そりゃぁ嬉しいし、好きだけど……」


 陽子は可愛い。誰もが認めるだろう。「美人」ではなく「可愛い」だが、そんな幼さも彼女の魅力だ。性格だって良い。達也としても好きか嫌いかなら、迷わずに好きと答える。そんな女の子に好かれて、嫌なはずがない。


「そう。なら、陽子ちゃん()達也の恋人ね。よろしくね、陽子ちゃん。あ、陽子ちゃん(・・・)て呼んで良い?」

「え? あ、はい。構いません。よろしくお願いします……?」(何がよろしくなんだろう?)


 陽子は話についていけていなかった。

 ほんの数秒前まで、部活の話をしていた。それが何故か達也が陽子をどう思っているかの話になった。

 達也も陽子の事は好きらしい。話が飛躍しすぎて何がなんだか分からないが、とりあえず陽子と達也は恋人同士になれたらしい。


(いや、「陽子ちゃん()」って言った? 堂々とフタマタ宣言!?)


「そうと決まったら、例の部屋に行きましょうか」


 陽子が色々と考えている間にも、恵は話を進めてしまっている。


「え? 何しに行くんだ?」


 達也も陽子ほどではないが、状況に付いていけてなかった。


「もちろん、恋人としてやる事ヤる為よ♪」

『……え゛!?』


 達也と陽子の声がハモった。



 -----------------------------------------------------



「なんていうか、ロリっ子にイタズラしているようにしか見えなかったわね」

「合意だし! 同学年! 同い年だから! ていうか、恵も手ぇ出してたよね!?」


 あれから数時間後の準備室で身支度を整えつつ、恵が漏らした感想に達也が突っ込んでいた。

 ちなみに、陽子は誕生日の関係で一応年下ではある。


「学校で……学校で……しかもさんにん……」


 恵に言葉巧みに篭絡されたとはいえ、自分の意思で色々と後戻りできない事をしてしまった陽子は、軽く自己嫌悪に陥っていた。

 もちろん、達也とそういう仲になった事は微塵も後悔していないのだが、


(場所と人数に問題がありすぎる……)


 陽子も年ごろの女子として、そういう想像をしたことはある。あるが、ソレは自分か達也の部屋でふたりきりというシチュエーションだった。

 学校で3人など、彼女の想像の及ばない事だったのだ。


「達也は先に部屋を出てて。女の子は色々あるんだから」

「そうか、じゃぁ外で待ってる」


 達也と恵がそんな会話をして、達也だけが部屋から出て行った。


(いや、それよりも……)


 先ほどから大事なモノが見つからない。具体的にはパンツだ。

 見つからないからといって、あきらめて帰るわけにはいかない。

 恥ずかしいが探すのを手伝ってもらうため、恵に話しかけようとした陽子の動きが止まった。


「それ……私のパンツ……?」


 恵が楽しそうに眺めていたのは、まぎれもなく陽子のパンツだった。


「あらこれ、貴女のパンツに似ているの? でも達也の名前が書いてあるから、これは達也のモノだわ」


 そんな芝居口調でポケットにパンツをしまい、そのまま部屋を出ようとする。


「ちょ、鬼ぃ! あくまぁ!」

「悪魔は否定しないけど、鬼は貴女でしょ♪」


 渾身のドヤ顔で言い放って部屋を出て行ってしまう恵。


(あんな(ヒト)とうまくやっていけるんだろうか?)


 最大級の疑問を胸に、陽子も2人を追って準備室を出た。






 ノーパンで。


これにて2章終了です。


3章はまた少し時間いただきます。


一応、時間かかりそうなので、その前にちょっとした小噺を挟もうと思ってます。

1、2章の中で出せなかった設定とか、何よりヒロイン2人の交流もそれなりに書きたいので。


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