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ステータスが見えるようになったらハーレムできた  作者: マルコ
アマレス旅行

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43/47

オークの村での少女たち

「くっ、殺せ……」


 石造りの牢の中。鎖に繋がれた女騎士が悔しげに吐き捨てる。


「ククク、そうはいかん。タップリと楽しませて貰おうか」


 その女騎士の前には黒衣の男。敵国の魔術士で、無敵の女騎士を捕らえたほどの実力者だ。


「くっ、一体、何をしようというの!?」


 万全の状態で敵わなかった相手。しかも、今は拘束もされている。強気な語気とは裏腹に、彼女の声には恐怖の色が混じっていた。


「くっくっ、女に生まれた事を後悔する事になるのだけは確かだなぁ」

「くっ、どんな目に合っても、私は決して負けたりはしない!」


 男の手が女騎士のむき出しになった内腿を摩り、抵抗できない彼女を抱き寄せる。そして──


「ハイ、カットー! ジャ、ポーズ決メテー、モニターノ()リニ(トオ)ルカラネー、ソレデ良イ? ハイ、チーズ!」


 片言オークの店員の言葉に従い、ポーズをキメる女騎士と黒衣の魔術士……もとい、香苗と達也。牢もセットだ。


 それを見ていた恵がポツリと漏らす。


「負けない。っていうか、捕まってる時点で負けてるよね?」


 そう言う恵の格好は「これぞサキュバス」という露出過多な服装だ。……実は水着程度だが。


「くが多い」

「女に生まれた事を後悔……毎月してたなぁ……」


 冒険者風のアリシャ、お姫様ファッションの陽子も続いて漏らす。


「ちょっと、私まだなんだから、あんまり脅かさないでよ」

「事実だよ。(ピル)飲んでなかった頃は、毎月地獄だった」

「いや、人によるから……」


 生理の辛さを語る陽子と、怖がる恵。安心させようとする軽いアリシャ。そんな彼女たちに、オークの店員から声がかかる。


「オ次ノ方ー、ドゾー」

「あ、はーい」


 次は陽子の番だ。いつのまにか牢のセットは片付けられ、何やら豪華な寝室になっている。達也は先程とは真逆の騎士風衣装だ。


「台本覚エタ? マダデモ、アソコニセリフ出ルカラネ。ダイジョーブ、ニホンゴデ出デルカラ」


 店員の説明を聞きながら、達也は馬車の出来事を思い出していた。


 ◇


「ハハハ! コイツはキレイ所が揃ってるじゃねーか!ん? 男も居るのか。ちぃ、なかなかやりそうだな。ヤロードモ! 油断するなよー!」

『オオォーー!』


 太った身体に豚……というよりは、猪に近い顔。見た瞬間にオークだと断言できる容姿の集団。

 そんな集団のリーダーらしき男が、何故か親切にも日本語で色々言ってきている。

 それでも、達也たちが乗るものも含め、数台の馬車を囲むような大人数。かつ、屈強なオークに凄まれるというのは、なかなかに怖い。怖いのだが……


「キャー、こわ〜い、達也くぅーん、助けてぇー」


 メアリがわざとらしく怖がって達也に抱きついてきたので、妙に冷静になっている。


「ナニ? コレ?」


 ひとまずメアリを引き剥がして達也が問う。

 メアリはかなりの美人である。だが、伯母な上に彼女が4人居る達也は、そっちの方向にはそれなりに耐性がある。──4人の目が無ければ、鼻の下伸ばすくらいはしただろうが。


「盗賊よ、盗賊。異世界お約束の盗賊。しかも、オーク! 女の子たち守るのは、男の役割よぉー」


 そんな言葉と共にメアリが指し示した方向を見ると、隣の馬車の男が馬車の上で女の人を庇うように立ち、何やらオークたちに宣言している。言ってる内容はアマレス語でよく分からないが、雰囲気的には挑発しているように聞こえる。ステータスもスキルも大したことはない。日本の一般人より多少マシ。警察官よりは下。といった程度だ。とてもこのような集団を挑発して勝てるようには思えない。

 達也はふと、先ほどのメアリの言葉を思い出す。

 女の子を守るのは男の役割(・・)

 彼はその役を果たしているのだ。


「ああ、つまりはそういうアトラクションなんだね」

「バレちゃった? ま、でもちゃんとロールプレイしなきゃダメよー」


 存外、アッサリヤラセだと白状したメアリ。

 だが、達也もこの手のロールプレイは嫌いではない。

 隣の男を真似て馬車の上に立ち、盗賊(偽)のステータスを確認してみたが……4桁に届こうかという数字が並んでいた。身体強化前でも後でも、絶対勝てない。

 本物の盗賊なら、アッサリと殺されていただろう。

 だが、達也はそんな屈強なオークに怯まず、先ほど日本語を喋っていたリーダーらしき人物に吠えた。


「お前たちのようなオークの賊に、俺の女たちには指一本触れさせはしない!」


 ──正確には伯母や妹、その友達も込みだが。


「なるほど! いい気迫だ! だが、多勢に無勢でどう守る?」


 オークリーダーが言い返してきた。

 TRPGではよくあるシチュエーションだが、実際にやるのも意外に気持ちいい。

 とはいえ、ここからどういう流れにすれば良いのか?

 正直、陽子の倍近くの筋力の持ち主と、フリとはいえ格闘するのは遠慮したい。

 そんなヘタレた事を考えていた達也の耳に、凛とした声が届いた。


「待てぃ!」

「ぬぅ、何奴!?」


 どこかで見たようなやりとりで現れたのは、全身甲冑の騎士風の人物だった。


「のどかな馬車の旅を邪魔する悪漢供! 例え女神が許しても、この俺が許さん! 正義の使者、騎士仮面推参!」


 ちなみに、やり取り、口上共に日本語アマレス語同時音声である。


「キャー、キャー」


 先ほどまで(一応)恐怖の悲鳴を上げていた女性たちが、黄色い声援を上げる。

 騎士は「どこのアニメだ?」というような装飾過多な見た目をしているので、この茶番のヒーロー役なのだろう。

 呆然と見守る達也たちの前で、騎士と盗賊たちの大立ち回りが始まる。魔法が乱れ飛び、リアルにオークが吹っ飛ぶ。

 そんな、特撮そのままの状況に加え、どこからともなく主題歌と思しきBGMまで流れてくる。

 よく聞いてみれば、特撮や熱血アニメといった所謂燃えコンテンツでよく聞く「SpreadProject」だ。そんなヒーローショーが、異世界クオリティで繰り広げられていったのだった。


 ◇


 その後連れて来られたのが、このオークの村だった。


「いや、ホント、何だココ」

「いやでも、テーマパークとしては、面白いとは思うよ?」


 どこぞの勇者風の衣装の達也が漏らした声に、サキュバス衣装の恵が応える。

 本物のオークやゴブリンといったモノと触れ合え、ファンタジーでよくあるシチュエーションを再現した参加型即興劇(写真、動画撮影付)ができ、貸衣装で散策もできる。

 なるほど、ファンタジー異世界を堪能できるテーマパークだろう。何せ、着ぐるみではなく本物の亜人。CGではない本物の魔法が乱れ飛んだりするのだ。このアマレスでも、攻撃魔法に分類されるような大規模魔法はそれなりには珍しいので、現地人にも人気の観光スポットのようだ。

 今、達也たちが居るのは騎士仮面との握手会&記念撮影の会場だ。アマレスの女性たちは騎士仮面にご執心のようだが、達也の妹の沙織はオークの盗賊役たちにハマったらしい。


「演技の実力的には盗賊役の人たちの方が上だったよな」

「ていうか、本当に殴られてなかった? 平気だったぽいけど」


 実際、騎士仮面のステータスは他の役者とは少し劣る。ステータスは見えないのに、実力のある方のファンになった妹を誇らしく思う達也。外見より中身を見れる女になってくれて嬉しいと感じる兄だった。


 ◇


「いやースッゴイ筋肉ですね!」

「ホント、沙織は筋肉フェチだよね……」


 盗賊役の役者たちとの触れ合いを喜ぶ友人に付き合い、ゆかりもこちらに来ている。あちらの騎士仮面とやらにばかり人が集まり、こちらは貸切状態だった。

 筋肉フェチな沙織には天国だろう。

 そう、筋肉フェチ。

 オークたちは太ってはいるが、その脂肪の下は筋肉の塊。それを見逃す沙織ではなかった。

 ゆかりと沙織が仲良くなったきっかけも、着替えの時に見られた腹筋に食いつかれたのが縁だ。ダイエットでやりすぎた。と伝えてはいたが、それから着替えなどの度に見られるし、触られる。写真を撮らせてというのは流石に断ってるが。


「まぁ、体が資本だからな。でも、女の子は騎士仮面の方がいいんじゃないか? つか、商売的にもアッチ推しなんだが」


 日本語が話せるオークのリーダーが、戸惑ったように沙織に言う。


「えー 外見()より 中身(筋肉)ですよー」


 ブレない友人に、ゆかりはそっとため息をついた。


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