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ステータスが見えるようになったらハーレムできた  作者: マルコ
アマレス旅行

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38/47

初日の夜

 遠藤 幸太郎は自分を名前ほど幸運だとは思っていない。運が良いと思うことはあるが、その前後に不幸があるからだ。

 例えば、軍に付いていたお陰で大空襲を逃れる事ができた。……家族は失ったが。

 そんな具合だ。とはいえ、不幸の連続よりはよほどマシだと理解はしている。

 軍に入った経緯はよく覚えていない。というか、知らない。いつのまにか後方勤務に組み込まれていた。

 終戦後に知ったことだが、学徒出陣も未成年は対象外だったというから、わけがわからない。学徒動員とは違うはずなのだ。軍規違反だったであろうことは想像に難くない。

 ああ、もしかしたら、東條閣下の工場視察が縁だったのかも知れない。

 閣下の視察に合わせて、雑用係に割り当てられたのだ。

 結局、工場で何やら作業を行う学生たちを見学し、何らかの説明を聞いている閣下の後をついて行くだけの退屈な仕事だった。

 ぶっちゃけていえば、学生たちは作業をしているフリ(・・)をしているだけで、その実何もしていなかった。何せ物資不足。閣下が来るとはいえ、何も無いので工場は稼動できない。結果、稼働しているフリだけしていたのだ。


「こんな事してたら負けるよね」

「だよねー」


 友人同士そんなヒソヒソ話もしていた。

 上官に嘘の報告をしているのだ。勝てるわけがない。

 その視察後、何がどうなったか。単に使い勝手の良い雑用係として目をつけられたのか、工場に行くよりも軍の雑用をする事が増えてゆき……東南アジアへの出征にまで付いていった。

 ……軍規どころか、国際条約違反な気がしてきた。

 ともかく、その出征した先の島で部隊ごと異世界転移した。原因は未だに不明。

 その後、米軍は半年ほど無人の島を無駄に包囲し続けていたらしい。ザマァ。

 まぁ、転移した先では言葉も通じない未知の環境だったので、それはそれで大変だった。何とか日常会話が身振り手振り混じりでできるようなった頃、あの竜が暴れ出した。


 数十年に一度目覚めては暴れる竜。

 なんて、「異世界日本軍」では描かれていたが、何の事はない。そのくらいの周期で天候不順が起こり、山の食料が枯渇して人里に降りて来る熊みたいなものだ。

 熊もたいがい恐ろしいのだが、相手はその何倍もある竜。

 当然、国の軍隊が動く事になったのだが、幸太郎たちが滞在する村にも竜はやってきた。

 どうにか撃退しようとしていたのだが、歩兵銃や自動小銃程度では竜にダメージを与えられない。戦車砲の一撃を喰らわせる為に身を潜めていた幸太郎達だが、その近くに竜が吐いた火弾が着弾し、轟音を轟かせた。

 恐怖に駆られた幸太郎は咄嗟に近くの人物に抱きついた。子供とはいえ、日本男児として恥ずべき行為だったが、怖いものは怖い。抱きつかれた方も、美少女ならともかく、男に抱きつかれても迷惑なだけだろうが、その後数発の火弾が炸裂する間、抱きついて震えていた。


「遠藤少年」


 竜の攻撃が収まった頃、幸太郎の頭上から声がかけられた。

 見上げると、隊長の顔があった。

 よりによって、幸太郎が抱きついていたのは、鬼隊長と呼ばれる伊万里 浩介だった。幸太郎は「軟弱者!」という言葉と鉄拳制裁を覚悟した。


「あの攻撃から俺を庇うとは、見上げた根性!」


 だが、かけられた言葉は賞賛だった。


 ◇


 「ちょ、あのシーン、そんなのが元ネタなんですか!?」


 達也の祖父である幸太郎の昔話に、香苗が不満の声を漏らす。同じく、映画やドラマを観た恵や陽子も同様の表情だ。

 一方、物語を知らないゆかりは特に思うところは無いので、3人の不満げな態度がよく分かっていない。

 沙織とアリシャは、3人の気持ちが分かるのか、微妙な笑みを浮かべている。


「ははは、言い出せなくてなぁ……ちょっとした英雄扱いで、尻が痒かったわ」

「本当に、この人は……おだてられて舞い上がっちゃってねぇ」

「ぬぅわ、そこまで話さんでええだろ!」


 楽しそうに若い娘たちと話す祖父母。

 それを見る別卓──人数が多いので別れた──の達也がポツリと漏らす。


「あの話、何回目だろ?」

「まぁ、爺ちゃんも、孫娘が増えて喜んでるんだろうよ」


 達也の呟きに応えたのは、伯父の幸一だ。


「あ、その、すみません……アリシャだけじゃなくて……」


 何となく、敬語になる達也。だが、幸一はそんな事は気にしていなかった。


「あー、良いんだよ。そんな事は。日本じゃともかく、この国では当たり前だしな。俺も、何でメアリだけなんだとか、よく言われるしな」


 割と本気でどうしようかと色々悩んでいた達也だが、どうやら許してもらえるようで安心した。

 安心したら、ふとした疑問が湧いてきた。


「そういえば、なんで幸一伯父さんはメアリねえちゃんだけなの?」


 ──30過ぎてねえちゃんもねえんじゃないかな?


 喉まで出かかったセリフを、幸一は飲み込んだ。

 ちょうどその時、台所のメアリと目が合ったのと無関係ではないだろう。


「まぁ、そういう話は、お互いシラフじゃ言えないなぁ。ほれ、お前も飲め!」

「ちょっ、俺、学生! 未成年だから!」

「ここはアマレスだから、日本の法律なんかカンケーねーよ。ほら、飲んだ飲んだ!」


 アマレスでは15歳で成人。子供の飲酒は禁じられていないが、慣例として成人まで飲ませない。

 繰り返すがアマレスでは15歳で成人である。つまり、アマレスでは達也が飲酒しても全く問題はない。


「俺の娘をキズモノにしたんだから、ちょっとは付き合え!」

「やっぱり、ちょっと怒ってるぅぅ!」


 そんな風に、旅行の初日は過ぎていった。

今回、割と実話が元になってます。

工場の芝居&セリフはうちのばーちゃん

上官に抱きついて褒められたのはじーちゃん

それぞれの実体験らしいです。


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