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ステータスが見えるようになったらハーレムできた  作者: マルコ
アマレス旅行

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観光

 大通りを歩く一行。


 そこには様々な種族の人々が行き交っていた。


 エルフやドワーフといった人々や、ゴブリンやオークといったモンスターに分類されそうな人々も、普通に店で買い物をしたり、逆に店員だったりしている。


「失礼なことを言うけど、ゴブリンとかが普通に歩いているのって、違和感あるわ」


 恵がそんな本音をポツリと漏らす。


「ふふ、セカイの人達はそういう部分でも驚くわね。確かに、ロームンドでも種族同士で争っている国はあるけど、アマレス国内ではそういった事はないわね」


 メアリがそんな風に説明をする。

 なんでも、3代ほど前の王が国内のヒト種の融和に成功したのだという。

 その王だけではなく、数代かけた努力の末の偉業なのだが、その3代前の王は今でも信仰に近いほどの尊敬を集めているという。


 そんなアマレスの歴史も聞きつつ、通りを歩いていたが、達也は違和感を覚えた。


「こんなに色んな種族のヒトが居るのに、何で俺何も知らなかったんだろ?」

「あ、私もそれは思った」


 沙織も同じ事を考えていたようだ。

 いくら幼い頃とはいえ、何度かアマレスに来ていたのは確かなのだ。

 それなのに、オークやゴブリンといった明らかに人間とは違う種族のヒトを見た記憶が無かった。


「ああ、それは達二さんたち(達也の両親)の方針でね。秘密を守れる年になるまでは、日本人街の外に出さないようにしていたのよ」


 子供というのは、喋るなと言われても喋るモノだ。

 いや、子供でなくともそうだが、それなりの分別がつくようになるまでは、余計な情報を与えない方針だったようだ。

 その点、日本人街ならほぼ日本と同じ街並みで異種族もほとんど居ないらしい。

 結局、達也たち兄妹のアマレスの記憶が中途半端なのは、大人たちがそうなるように仕向けたから。という事なのだ。


「なんだ、記憶操作とかされたのかと思った」

「できないし、やらないわよ」


 達也の言葉に、心外とばかりに答えるメアリ。

 実は記憶操作の術はあるにはある。

 だがメアリの知り合いにその術を使える者がいないというのは、本当だ。

 それに、その術は非常に高難度で、意図しない記憶が作られたり、ゴッソリ抜け落ちる事も多い。そのため、刑罰に用いられる事もある。


 そもそも、日本で子供がこの国の事を喋ったところで、イタい子だと思われるだけだ。それを予防する程度の事で、子供にそんな術をかけるはずもないのだ。


 メアリの説明に、達也と沙織は安心した。

 当事者なのに、最近までほとんど何も知らなかった事をそれなりに気にしていたのだ。

 だが、そうなるように仕向けられていたなら、自分に問題があるわけではない。

 誘導されやすいと言われることはあるだろうが……



 ◇



 それからまた暫く歩いた時。


「ねぇ、首輪みたいなチョーカー付けてるヒトがちらほら居るけど、ああいうのがここの流行りなの?」


 香苗がアリシャに問いかけた。


「どれのこと……って、ああ、アレか。みたいな。じゃなくて、首輪だよ。奴隷の首輪」

『え!?』


 事もなげに言うアリシャ。

 その答えに、聴いた香苗だけではなく皆が驚きの声を上げた。


「この国、奴隷なんているの?」


 多少の嫌悪感を滲ませて香苗が問う。


「いる。……言いたい事はわかるけど、みんなが考えているほど不当な扱いはされていないからね」


 曰く。奴隷は財産なのだ。


 よく「家畜や物同然の扱い」などと言われるが、それはつまりそれだけの扱いはされるという事なのだ。住む場所や食事が保証されるという事にもなる。


 日本などでは生活保護などは国や自治体が賄っているが、それを金持ちや貴族が個人的に行っている。というような状態だ。

 職業選択や移動の自由は無いが。


 主に破産した人物や、孤児なんかが奴隷になる。犯罪奴隷も居るが、それは国が管理している。


 路頭に迷うよりも、奴隷を持てるような金持ちや貴族の「所有物」になる方がよほどマシなのだ。


 もちろん、家畜や自分の持ち物を乱暴に扱う者もいるだろう。

 だが、そんなヒトは周りから白い目で見られる。

 なので、少なくとも露骨な虐待をする者は少ない。


 そんな状態なら、自ら奴隷になる者もいそうだが、そんな人物はほとんどいない。

 彼らが身につける首輪はマジックアイテムになっており、主人の命令には絶対服従となる。

 奴隷の犯罪は主人の罪になるので、犯罪行為を強要されるといった心配は無いが、それでも命令に絶対服従の制約がかかるなど、普通のヒトは受け入れ難い。

 ……とはいえ、普通のヒトは、だ。望んで奴隷に堕ちるものも居るには居る。


「ねぇ、あの首輪って、おいくら?」


 興味津々に聞く香苗のような存在は、どこの世界にでも居るらしい……



 ◇



「何? アレ……戦車?」


 そう呟いたのは陽子だった。

 その視線の先には広場があり、そこには石の戦車と、その周りに人の石像が並んでいる。


「あれは英雄の像よ。たっくんたちも見たこと無いでしょ?」


 メアリの解説の通り、達也も沙織もその像は初見だった。

 ファンタジー世界に似つかわしくない、戦車の石像。そして、その周りにあるのは旧日本軍兵士の像だ。


「なんだって、こんな像が?」


 当然の疑問が達也の口からでる。


「あら、『異世界日本軍』読んだことない?」


 メアリの言葉で達也は思い出した。

 あの小説はほぼノンフィクションだったのだと。


 という事は、「竜を退治して村を救った」というのも、事実かそれに近い何かがあったということになる。


「当時、国を騒がせていた竜を退治したのが、お爺ちゃんたちの部隊でね。その功績を讃える像が、こうしてできたのよ」


 本当に竜を退治したらしい。


 像は戦車を中心に、当時の部隊員全員の像が飾られているらしい。


「と、いう事は、達也くんのお爺さんの像もあるんですか?」


 陽子の問いかけにメアリが指したのは、他の像より小柄な少年の像だった。


「あの子ね。本人は恥ずかしがって教えてくれないけど、写真と同じ顔してるし」


 確かに、自分の像というのは小恥ずかしいものかも知れない。

 少年像は、物語の「近藤少年」よりも幼く見えた。


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