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ステータスが見えるようになったらハーレムできた  作者: マルコ
エルフの同級生(仮)

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26/47

本音とエルフ

 日曜日の駅前はそれなりに混雑している。

 待ち合わせ場所というのは、本人同士が理解できれば何処でも良いはずなのだが、「駅前の榊武丸像」は人気スポットだ。

 戦国武将で地元の英雄なのだが、全国的な知名度はほぼゼロ。それどころか、地元民でも名前を知らない人が多い。「駅前の銅像」「駅前の騎馬武者」で通じるからだ。

 それなのに、信長を苦しめただの、秀吉に勝っただの、西軍で幸村と双璧をなしただの、眉唾ものの逸話に事欠かない人物だったりする。

 地元の有力者だったのは間違いないだろうが、逸話に尾ひれがつきまくってるのも間違いないだろう。


 達也がそんな話をしている相手は、当然アリシャだ。

 達也と出かけると知った沙織は一緒に行くとブーたれていたが、どうやら別の日に遊ぶ約束をしたことで引き下がったらしい。

 そんなに遊んで編入試験は大丈夫なのかと達也が問うと、


「息抜きも大切だよ。それに、達也も期末試験があるだろ?」


 と、カウンターを食らった。

 確かに、勉強漬けではまいってしまう。


 そんなことを話をしている間も、達也は周囲を伺う。

 待ち合わせの時間にはまだ早いが、そろそろ誰か来てもおかしくない時間だ。

 実を言うと、周りの視線も気になりだしている。


 達也は問題ない。

 彼女3人を侍らせている時はともかく、彼単体では特に目を惹く容姿はしていない。

 問題は、アリシャだ。

 観光案内で「美形が多い」と評されるエルフだ。

 魔法で耳を誤魔化す程度の事はしているが、本来の容姿はそのままなのだ。

 なので、ナンパがウザいだろうと達也は予想していたのだが、そうはならなかった。

 理由はアリシャの格好だ。

 長いブロンドはポニーテールというには無造作に後ろで纏め、達也とほぼお揃いのズボンとシャツという格好なのだ。昔もスカートよりはズボンを好んでいたが、今でも変わらないらしい。

 この格好だと、遠目には男……しかもイケメンに見える。

 なので、男連中はあまり見ない。

 逆に女性の目線を集めてはいるが、ちょっと近寄ってよく見ると女だと判る。

 なので視線は集めるが、声はかけられない。という微妙な状態が続いている。

 達也は早くこの状況から脱したかった。


「随分ソワソワしているな。トイレか?」

「ちげーよ!」


 あんまりなアリシャの言葉に反論する達也。


「こんなに見られるのは慣れてないんだよ……アリシャは慣れてるかも知れないけど」

「まぁ、ね。でも、向こうよりは人は多いかな? ……昔より人増えたか?」


 たしかに、ここ数年ほど再開発が進んで街の人口は増えている。

 アリシャの場合は、視線を集めることよりも人の多さの方が驚きのようだった。


「あ、いたいた」


 陽子の声が聞こえ、そちらに視線を向けると3人が向かって来ていた。

 とりあえず、合流できたことに達也はホッとした。

 女を侍らす男というのも視線を集めはするが、この日本では意外にハーレム男だとは認識はされない。「ハーレム状態」だということで注目はされても、せいぜいが何かのサークルの集まりだと認識される。

 ……実は本当に全員と付き合っている。などという非常識な事は思いもよらないのだ。


 ひとまず、達也が従姉のアリシャを紹介し、恵、陽子、香苗の順で名前を名乗る程度の紹介を済ませる。詳しい話は、この後何処かの店にでも行って……と達也が考えていると、アリシャが陽子に問いかけた。


「えと、陽子ちゃんだっけ? キミ、公園で虐められていた小学生?」

「あ、ハイ。 あの時は助けてくれて、ありがとうございました! でも、そのせいで……」

「いや、良い。そっちは自業自得だから。 ……達也」


 なにやら感動の再会ぽかったが、ジト目で達也を睨むアリシャ。


「小学生は犯罪だと思う」

「今は違うから! 年齢見て! 同学年だから!」


 あまりな誤解に、達也は全力で抗議した。



 ★



 ぬちょ……ねちゃ……ぐちょ……


「すごい……糸ひいてきた」

「ふふ、上手よ」

「……ん、匂いが……」

「へへ、慣れると病みつきになるよ」

「ほら、お豆を摘んで……」

「お前ら、ワザとやってるだろ!」


 駅前から移動して、今は卓ゲ部の部室である。

 休日の学校に、部外者のアリシャを連れて入れるのか? という疑問はあったが、香苗が何とかしていたらしい。

 元々、部活関係で休日でも学校に出入りする者は多い。

 厳密にいうと、登校時は制服着用が義務付けられているが、守っている方が一部である。


「ワザとって、何が?」

「拓也くん、納豆嫌いだからって、僻んでるの?」


 その部室で何をしているかというと、アリシャの「歓迎会」である。

 3人にはアマレスの事や、アリシャがエルフだという事は既に伝えてある。

 逆に、アリシャにも3人の種族は伝えてある。

 そういった状況で恵たちは「アリシャに日本食をご馳走しよう!」と、色々持参してきていたのだ。

 納豆もそのひとつだ。


「ん、遠藤家では納豆は出ないからな。今まで食べる機会が無かったが……口がネバつくのが気になるが、うん、なかなかイケるな」


 アリシャがそんな感想を漏らす。


「いやー、やっと初体験だねー」

「ほんと、味噌や醤油も普通に知っているなんて……もっとマヨネーズに感動したりしないの?」

「いや、 アマレスにもマヨネーズくらいはあるから」


 陽子と香苗の言葉にアリシャが言い返している。


「なんか、こう、異世界ぽくないよね」

「お前ら、アマレスを未開の原始人の国とか思ってないか?」


 恵の言い草には達也が反論した。

 達也も、WEB小説の影響でそういったイメージがあるのは否定しないが、これでも4分の1はアマレスの血が流れているのだ。不当に低い評価には反論もしたくなる。


「原始人とは思ってないけど、中世くらいのイメージはある」

「その辺りは否定しきれないな。科学技術という点では、大きく遅れているから。ただ、それなりに日本と交流あるんだから、調味料程度は手に入るんだよ」


 恵のイメージをアリシャが微修正する。



 なかなか良い感じに仲良くなっているようなので、達也はアリシャを恋人にしたい旨を3人に伝えた。

 その反応はというと……


「え?」

「まだだったの?」

「もうそのつもりだったのだけど……」


 3人の意外そうな反応に、達也の方がたじろいだ。


「あー、いや、ほら、勝手に増やしたら、みんなに悪いじゃん?」


 なんでこんな言い訳をしているのだろうか。と達也は疑問に思った。普通逆ではないか?


「そういうトコ、達也はカタイよね」

「生真面目というか」

「4人誑かしている時点で手遅れなのに」

「だがそこがいい!」


 散散な評価で、誰が何を言っているのか、達也はほとんど頭に入ってこなかった。


「昨日なんて、胸まで見せたのに触れてもこなかったんだぜ」


 アリシャが爆弾を投下する。

 昨日は構わないと言っていたではないか。と達也は胸中でぼやく。


「達也、酷い」

「据え膳食わぬは男の恥」

「女に恥かかせちゃダメよ」

「親も妹も居る所でどうにかできるワケ無いだろ!」


 わりと本音で達也が吠えた。


「じゃ、ココなら平気ね」

『え?』


 恵の言葉に、達也とアリシャの声がハモった。






 後日、香苗は語る。


「声だけ聞いたら濃厚なBLだった」


 と。



次回25日です。

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