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ステータスが見えるようになったらハーレムできた  作者: マルコ
ただの日常ぱーとつー

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秘密のデート

 その日、達也と香苗はデートを楽しんでいた。


 デートは4人だったり、3人だったり、達也ヌキだったり色々なのだが、教師という立場上抜ける事が多い香苗を想い、今日は珍しく1対1でのデートなのだ。

 1対1が珍しいというのも、変な話だが。


 近場では色々問題がありそうなので、香苗の運転でドライブを楽しみつつ、郊外の複合アミューズメント施設に繰り出していた。

 地元からは少し遠いので、知り合いに会う確率は非常に低い。

 会ったとしても、部活関連とか何とか言い訳するつもりだ。



「ここ、本当に何でもあるわね……」


 香苗が言ったように、この施設はボーリング、カラオケ、ゲームセンター、映画館、スパに飲食店街や宿泊施設まで併設されている。

 近隣の住人は遊びに困らないだろう。


 達也たちの本日のメインは映画だ。

 ベタだが、お忍びデートとしては都合が良い。


 ついでに言うと、上映されている映画は達也の……というか遠藤家のお気に入り作品なのだ。


「ホントにこれでいい?」


 達也が香苗に確認する。


「ええ、ファンタジーもSFも好きだし。この作品も好きよ」


 この作品、元は小説なのだが、何度かドラマ化、映画化されている。

 今回上映されているのは、先日封切られたばかりの最新作だ。


『異世界日本軍』


 達也の父方の祖父の戦友が作者らしく、祖父や祖母が大ファンなのだ。作中に出てくる学徒兵は祖父がモデルなのだとか。

 脇役なのでドラマ版ではカットされていたし、今回の映画でも出てくるかどうかは不明だ。




 時は太平洋戦争末期。


 東南アジアでの作戦行動中、主人公達の部隊は異世界に転移する。

 戸惑う主人公部隊。だが、野盗に襲わていた村を助けた事を切欠に言葉も通じなかった現地の人々と交流を深めていく。

 持ち込んだジャガイモを栽培し、大工の隊員は家を建て、鍛冶の経験者はドワーフに製鉄技術を伝える。

 その他にも野盗やモンスターを蹴散らしつつ、元の世界に帰る方法を探す主人公たち。


 そして、クライマックス。現地の少女がドラゴンに攫われてしまう。

 これまでは無敵の快進撃を続けていた部隊も、流石にドラゴン相手では分が悪い。

 少女は見捨てるしかないのか……?


「土人の娘一人助けられんで、何が帝国軍人か! たかがトカゲ1匹何するものぞ!」


 傲慢の塊の様な態度の隊長のそんな言葉で部隊はドラゴン退治に向かう。

 激戦の末、竜を退治した主人公達は竜の宝から異世界転移の呪法を見つける。

 こうして部隊は日本へと帰って行った……




「はぁー、やっぱり信楽(しがらき)隊長はカッコイイわねぇ……」


 香苗がうっとりとした眼で言った。

 達也も同意だ。普段エラソーにしているだけに見えても、「やるときはやる」漢はカッコイイ。

 祖父がモデルになったという、近藤少年(ちゃんと出てた)には悪いが。

 それにしても、アメリカ軍をドラゴンに見立てるとは、祖父の戦友の感性もなかなか変わっている。

 まぁ、だからこそただの戦争体験記ではなく、ファンタジー小説を書いたのだろうが。


 現在、達也と香苗はカフェで映画の感想を言い合っていた。


「意思の疎通も苦労してたけど、ファンタジー世界に転移だと言葉だけは通じるのが普通よねー」

「まぁ、実際に言葉が通じない地域で戦争やってたヒトが書いた話だからね」

「そうよね。でも、言葉が通じる設定の話って、どうやって通じてるのかしら?」

「テレパシーとか?」


 ……と言いつつ、話はファンタジー世界の設定談議にシフトしつつある。


「きゃっ!」


 達也の直ぐ近くで控えめな悲鳴と共に何かが倒れる音がした。

 驚いて視線を向けると、先ず倒れた女の子が目に入った。次に通路の真ん中をノシノシ歩いていくやたら恰幅の良いおばさん……


 ……まぁ、だいたい何が起こったか察しがついた。


「えーっと、大丈夫ですか?」


 達也はフェミニストでもないが、流石にこんなに近くで倒れられたら声をかけざるをえない。


「はい、大丈夫で……あ」

「あ」


 知り合いだった。

 クラスメイトの清流院 麗華だ。


 ……名前の通り、結構なお嬢様らしいのだが、本人は超庶民でクラスでも目立たない娘だ。


「遠藤君? ……と根岸先生?」

「ああ、ちょっと部活の相談に乗ってもらってて……」


 確かに言い訳として考えていたが、それはちょっと見られた場合を想定していた。

 こんなに近くで、バッチリ現地で会話するとは思っていなかった。

 案の定、バッチリキッチリ疑いの眼差しで見られた。


「麗華、どうかしたの? ……あ」


 清流院の連れらしき女の子もやってきて……その子もこちらに気が付いた。

 同時に、達也は別の意味でも焦った。

 その子に会った事はある。

 会った事はあるどころか、確かクラスメイトだ。


 だが、名前が出てこない。

 こんな子居たっけ? という程度だが、確かにクラスメイトだと本能が告げている。


『ステータス・オープン』


 結局、達也はカンニングする事にした。



 名前:海藤 専一(童貞)

 種族:人間

 年齢:16

 家族:父・母

 恋人:1

 体力:90

 筋力:85

 (以下略)



「海藤!?」

「あ、う、え……」


 いや、海藤と清流院が付き合っている事は知っている。

 ステータスが見れるようになった日に確認したのだし、今もお互いの「恋人」は一致している。

 ここにデートに来ることもあるだろう。


 だが、目の前の海藤はどうみても女の子だった。

 香苗は誰だか分かっていなかった様子だったが、名前で分かってしまったらしい。


「あー、海藤……君? さん? 性同一性障害とかなら、申請すれば考慮するわよ?」


 そんな事を言い出した。

 小声だが、こんな場所で言う事ではない。どうやら、相当混乱しているらしい。


「あー、大丈夫……です。たぶん。今のところは服の趣味だけなので」


 海藤があきらめたように答える。

 まぁ、清流院と付き合っているからには、男が好きという事ではないのだろう。と達也は結論付けた。

 ……女装姿の海藤に腕を絡めている清流院はどうか知らないが。


「あのー、この事は秘密にしていただけると……」

「えー、こちらこそ」


 お互い口止めをする海藤と達也。

 思いがけず、お互いに秘密を共有することになってしまった。

 ついでに、知り合いに遭わないようなデートスポットの情報も。


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