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ステータスが見えるようになったらハーレムできた  作者: マルコ
ただの日常

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セクハラと猫

「生理痛はいつも酷い?」

「はい。今回は特に」

「大きな塊が頻繁に出たりする?」

「いいえ」

「周期は安定してる?」

「はい」


 恵の母(第4夫人)の問診に淡々と答える陽子。

 ものがものだけに結構きわどい質問もあるが、相手は医者だ。素直に答えていく。

 それにしても、この人も若い。ヒトケタ年齢で恵を産んだのではないだろうか?


「んー、鬼のヒトはだいたい重いから、種族的なものかしらねー」


 頭を掻いて言った恵の母――明美の言葉に陽子が反応した。


「私の他にも鬼を知ってるんですか?」


 陽子が鬼だという事は伝えていたが、今の言葉は陽子以外の鬼を知っている風だった。

 たしか、恵は鬼が存在するとは思っていなかったと言っていたのに。


「こんな仕事をしていると、色々あるからね。惚れた先輩がインキュバスだったり、担当した患者が吸血鬼だったり雪女だったり……娘の友達が鬼だったりね。恵にはあんまり仕事の話をしないから、どこの誰が妖怪だとか吸血鬼だとかは知らないでしょうね」


 陽子が考えていた以上に、この世には亜人が多いらしい。

 それなりの種類、人数が人間社会にとけ込んでいるいると明美は言う。


「うちのダンナなんかは、絶滅種人類の子孫だ―なんて言ってるけど、私としては異世界から来た説を支持するわ」

「異世界……ですか?」

「そ、夢があるでしょう?」


 よく見ると、机の上には医学書に混じって文庫のライトノベルや新書のファンタジー小説が置いてある。休憩中にでも読んでいるのだろうか。


「さて、大丈夫だと思うけど、やれる検査はやっときましょうか。陽子ちゃん、性交経験は?」


 突然話題を戻され、陽子の頭の方がついて行けなかった。


「セイコウケイケン?」

「そう。性交経験。 ぶっちゃけて言うと、カレシとヤったことある?」

「……あります」


 面と向かって聞かれると恥ずかしいが、正直に答える。


「そう、じゃぁ下を全部脱いでアレに座って」


 そう言って、明美が内診台を指した。

 ……産婦人科にある例のアレである。


(……診察……診察だから……)


 そう自分に言い聞かせて陽子は下を脱ぐ。


「ヤったことあるなら、指とか(・・)入れても大丈夫よね?」


(診察診察診察診察診察診察診察診察診察……けど!)


 そのとっても良い笑顔は何なのだ!?



 -----------------------------------------------------



「大丈夫?」


 恵が診察から戻った陽子に声をかけた。

 何というか、凄く疲れた顔をしている。

 逆に、恵の部屋まで連れてきた実母は凄く楽しそうにしていたので、まぁ色々あったのだろう。


「大丈夫。薬も貰えた」


 ぐったりしているが、精神的なものだろう。

 明美はセクハラ発言するが、仕事はキッチリする人だ。

 高橋家の娘たちの定期検診は彼女がやっているので、セクハラは口だけだと恵は理解している。

 ちなみに、母親たちは父親が診ている。こちらは毎回終わった後に上気した顔になっているので、何をしているかはお察しである。


「効くといいなぁ……」


 陽子が薬袋を見ながらしみじみ呟いた。


「そんなにキツイの?」

「キツイ。(メグ)は軽いの? いいなぁ……」


 心底羨ましそうに言う陽子。だが、恵の場合は軽いというわけではない。


「私、まだだから」

「え!? そんな……」


 陽子が目を丸くする。


「えと、その、何か……」


 病気か異常があるのか、と聞きたいのだろう。言いにくそうにしている陽子に恵は明るく答えた。


「定期検診では異常は見つかってないわ。私は種族的に遅いだけ」


 父の情報だと、サキュバスの平均は20歳前後。恵の姉たちもだいたいその枠に収まっている。心配するような事ではないのだ。

 逆に、妊娠の心配なく、思う存分する(・・)事ができる。


「ああ、だからか……」


 何やら納得する陽子。避妊しないことを気にしていたので、そのことだろう。

 だが薬があれば、彼女も同じように楽しめるはずだ。




「ニャー」


 話し込んでいると、一匹の猫が部屋に入ってきた。


「あら、可愛い。 このコ飼い猫? なんて名前?」


 陽子が寄ってきた猫を抱き上げて訪ねた。


「……飼い猫というか、母親。名前は美貴。……なんでその姿なのよ、母さん。それに、仕事は?」

「え?」


 恵の言葉に驚いた陽子の腕から猫がスルリと抜け出し、2人の目の前で人の姿になっていく。

 恵は科学や物理が苦手だが、原因の一旦はこの変身にあると思っている。質量保存の法則とか、絶対に嘘だ。


「鬼子ちゃんが来た。っていうから、急いで(猫になって)帰って来た。仕事は定時で上がったわよ、失礼ね!」


 美貴が頬を膨らませて言う。全裸で。

 猫の姿で服を着ていなかったので、当然だ。


「あ、陽子です。はじめまして……あの……」

「はい、はじめまして。 ねね、陽子ちゃんて鬼なんでしょ? 空飛んだりできる?」


 全裸&満面の笑みで聞く美貴。


「いえ、できません。あの……」

「そっかー、彼氏のことは「ダーリン」て呼んでる?」


 目を輝かせて聞く。全裸で。


「いや、普通に名前で呼んでます。その……」

「今は制服だけど、普段着は虎柄ビキニだったりするの?」


 矢継ぎ早に質問する全裸。


「へ!? いや、普通の服です」

「そっかー、まぁ現実であんな(・・・)恰好してたらただの痴女だよねー」


 全裸の質問攻めにあっている陽子が恵に視線で助けを求める。


「母さん、少し落ち着いて。今の母さんの恰好の方がよっぽど痴女よ!」


 恵に怒られる全裸……もとい、美貴。

 だがまぁ、概ねこれが高橋 恵の日常風景である。


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