1区:入学
――――4月。
神谷七海は新しい制服に袖を通した。
「うーん。ちょっと、短いかなぁ~。」
スカートの丈を短くしてみるが、どのぐらいの長さなのかわからず悩んだ。
七海は中学生の頃からいたってどこにでもいるような生徒だった。部活はテニス部に所属していたが、ユニフォームがかわいいという理由で入部したので遊びみたいな感じであった。結果もでていないので高校からは別の部活に入ろうと考えている。
「ななみ~!しおんがきたよ~!」
母に呼ばれて、あわてて外に向かった。
「詩音!早くない!?」
「え~!今日ぐらいは早くなるじゃん!!」
今日は高校の入学式。いつもはギリギリに家まで来る詩音も余裕をもってきた。
急いで準備をして詩音の元に行き、高校へと向かう。
一緒にいくのは園田詩音。小学生の頃から仲がよくなにかあるごとに一緒に行動していた。
詩音は運動能力が高くて3年間陸上と駅伝で活躍している。中学1年から地区大会のメンバーに入って上位入賞をしている。そのため、周囲からの注目があった。有名な名門高校からの推薦もあったが、全て蹴って同じ公立学校に進学することになった。
理由は単純で近くて楽に陸上ができると感じたらしい。
つまり、詩音は陸上部に入部することが確定していた。
向かう高校は地元の高校で偏差値や部活などいたって普通の次木西高校。
制服がかわいいということでほどほど人気はある。
学校までは自転車で20程度。到着したときには同じ新入生の多くがクラス発表の名簿を眺めていた。
二人もクラスを確認しに見に行った。
1組から順番に掲示され探していく。
クラスは5組まであるようだった。
「詩音何組?」
「うーん。あった!1組だ!」
「あ!うちも1組だ!」
「おぉー!同じクラスだ!また、七海のお世話係かな。」
「それはこっちもだよ。詩音のお世話係。」
そんな話をしながら入学式の会場である体育館へと移動した。