表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社会不適合者の異世界戦記  作者: サツキ
第1章~落とされて異世界~
6/32

満天の星空ほどキレイなものはないよな!

1日遅れで申し訳ありません。


次話投稿します。

 暗い水底に向かって沈んでいくような感覚。これが死ぬということかと、微睡まどろみの中にいるような意識ながらにそう思った。しかしそれも長くは続かない。一条の光が水面から差し、そこに向かって浮上する。そして、眠りから覚めるように意識が覚醒した。



 パチパチと、何かが弾けるような音が聴こえる。ゆっくりと目を開けると、最初に視界に入ったのは満天の星空。都会で暮らしていた時は見ることが出来ず、田舎の祖父の家に帰った時にしか観れなかった光景が広がっていた。



 「キレイだな……」


 思わず漏れた感想に誰の反応など期待していなかったが、声を聞き取った誰かが俺の顔を覗き込み、意識が戻ったことを確認すると慌てて誰かを呼んだ。



 「ライアン隊長、少年の意識が戻りました!」


 「本当か!?わかった、すぐに行く。ケリーとダニエルは念の為にお嬢さまの傍にいろ。セリウスは周囲の警戒を続けておけ」


 「「「了解!」」」


 どこかで聞いたような声、それがどこだったのか思い出せない。いや、それよりも俺はどうして野外で寝ていたりするんだろうか?鈍痛のはしる頭を抱えながら重たい体を無理やり起こそうとすると、始めに俺の顔を覗き込んだ青年が背中を支えてくれた。



 「ああ、どうもすみません」


 「構わない。それよりも意識ははっきりしているか?先ずは水でも飲んで落ち着くといい」


 「ありがとうございます。いただきます」


 木製のカップの水をゆっくりと飲んでいると、大柄の男が近くまで来て片膝を付いた。



 「飲みながら聞いていてくれて構わない。先ずは礼を言う。君がいなかったら我々は生きてグラン・スコルピオから逃げ切ることはできなかっただろう。ありがとう」


 「グラン・スコルピオ?ああ、ちょっと待ってください。まだ少し混乱していて……」


 ああ、少しずつ思い出してきた。確か俺は空から落ちてきて、そしてでっかいサソリに追われてた6人の騎士と少女を助けるために立ち向かって……立ち向かって、どうなったんだ?そうだ!確か倒そうとして奴の上からランスを撃って地面に串刺しにして……最後の悪あがきで腹に毒針の一撃を喰らったんだった!慌てて服をたくし上げ、触って確認したが傷など始めからなかったようにキレイなままだった。



 「傷がない?なんで……いや、どうして俺は生きているんだ?」


 「それは私も知りたい。だがその前に自己紹介だ。いつまでも少年のままでは不便だからな。私はライアン、ライアン・バトラン。サンベルグ領で近衛隊、第二部隊の隊長を勤めている。少年の名前を教えてくれないか?」


 「これはご丁寧にどうもありがとうございます。自分はサツキと言います。それで、自分はどうなったのでしょう?あなた方が助けてくれたのではないですか?」


 「我々は何もしていない。私が君の元へ駆けつけた時には確かに死んでいた。だが、死んだことを確認した瞬間、勝手に傷が塞がった」


 「勝手に……」


 傷が塞がったことよりも、自分がまた死んだことにショックを覚える。だとすればやっぱりあの水底に沈んでいくような感覚、あれが死と言うものだろう。そのことを思い出してブルリッと体が震える。あんな感覚、できればもう二度と味わいたくない。



 「我々は君が何か特別な魔法道具アーティファクトを持っていたか、それに準ずる魔法を受けていたかのどちらかだと思っている。なにか身に覚えはないか?」


 「いえ、どちらも心当たりはないです。あの、それとこの服の方も一緒に貫かれたと思うのですが、これも勝手に直ったのですか?」


 「そうだな。それに関しては服を着ている者の魔力を吸収して自動修復する効果のある魔法があるから、それが作動したのだろう。それよりもだ。なぜ自分が身に着けている物の効果も知らん?君はいったい何者で、どうしてこんな所に身一つでいたのだ?」


 とうとう来た。正直この質問にはなんて答えればいいのか判断に迷う。自称女神の少女から服なんかは貰った。そして気付いたら空から落ちてここにいますなんて言って、信じてもらえるだろうか?もちろん俺なら信じない。頭がおかしいんじゃないかと思う。だからここで俺が説明するとしたら、いろいろと誤魔化して話すしかないだろう。


 とりあえず、肝心なところは誤魔化して説明した。魔法という言葉をライアンさんが使っていたことからそれが普及していること信じて、魔法の実験、それも転移か召喚系の魔法に失敗して気付いたら空からここに落ちてきて、自分が今どこにいるのかもわからないということと、お金もないし身分を証明するものもないことを伝えた。



 「ふ~む、信じがたい話ではあるが少なくとも空から落ちてきたというのは真実だとわかる。我々もグラン・スコルピオに追われる前に空で数回の爆発と、何かが落ちてくるのを目撃している。まあ、まさかそれが人で、しかもその人物に助けられることになるとは夢にも思わなかったがな」


 ガハハハッと豪快に笑うライアンさんに釣られて一緒に笑う。だがそれも束の間、一瞬で表情を引き締めたライアンさんは真剣な顔でこちらを見つめてきた。



 「サツキ、どうやら我々は君を殺さずに済みそうで良かったよ。命の恩人を殺したとあれば寝覚めが悪いからな」


 「それはどういう……ことなんですか?もし自分がその、ライアンさんが殺さなければならないような理由があれば、教えてもらえませんか?」


 自分が知らず知らずのうちに命の危険にあり、しかもそれがなんとか助かっていたことに胃が捻じれるような嫌な感覚に襲われる。なんでこうも短い間に命を狙われなければならないのか。これでは命がいくつあっても足らないではないか。いや、すでに3回中2回は死んでいる訳ではあるけどさ。



 「君はその黒髪を見るにずいぶん遠い国からこちらに飛ばされてきたのだろうな。東方の果てにある国では黒髪黒目の者たちが暮らしていると聞いたことがあるから、そちらの出身なのだろう。そして君を殺すことになるかもしれなかった理由とは、現在我が国を含めてだが、近隣諸国に対して西のエル・ドラード帝国が侵略戦争を仕掛けている」


 「戦争を……。もしかして自分はスパイか何かだと?」


 「そうだ。サンベルグ領は帝国との国境に近い。また彼の国では魔法や剣よりも君が使っているような銃が発達している。それで君を疑っていたんだ。ああそうだロベルト、彼に銃を返してやれ」


 「どうぞ。土は払っておきましたが、動作の確認は一度されていた方がいいでしょう」


 「あ、ありがとうございます。でも、よろしいのですか?こんな簡単に素性も知れぬ者に武器を返したりして。あとから口封じの為に後ろからズドンッとやるかもしれませんよ」


 癖っ毛の強い金髪の好青年、歳は20代中頃といったところだろうか?そのロベルトさんから銃を受け取り、シリンダーの中身を抜いてしまってから何もない空間に向けて銃を構え、撃つ仕草をする。それを見てからでさえ、ライアンさんはまた笑う。



 「ハハハッ、自分でそんなことを言うやつがスパイなんぞできるものか。それにスパイならもっとマシなウソをつくし、何より我々を助けたりせんだろうよ。それとも何か?本当にスパイで、捕まえてほしいのか?」


 「いえ、そういう訳では。あまり簡単に信用されるのもどうかと思ったものでして、そこまで言っていただけるならこの件は終わりにしましょう」


 ニヤリと意地の悪い笑みを向けられてそう言われては、もう黙るしかない。仕方ないので銃に弾をリロードしてホルスターに戻す。なんだかドッと疲れたような気がする。知らず知らずのうちに緊張していたのだろうか。さっきまで寝ていたのにまた眠気が襲ってきた。失礼にならないように欠伸をかみ殺しているとそれに気付いたのか、ライアンさんが苦笑した。



 「昼にあれだけの魔法を行使したのだ。疲れているのも無理はないだろう。我々の主人であるお嬢さまも、もうお休みになられていることだし、挨拶は明日の朝にでもすれば良い。今日はもうゆっくりと休め」


 「では、お言葉に甘えてそうさせてもらいます。ああそうだ、マントはお返しします。ありがとうございました。自分はコートがあるので大丈夫ですから」


 「そうか?別に使ってもらっても構わないが、そう言うのならわかった。朝は起こしてやるから、安心して眠るといい」


 「はい、ありがとうございます。それではすみません、お先に休ませてもらいます」


 うむ、と頷いて離れていくライアンさんとロベルトさん。2人で何かを話しているから明日の打ち合わせでもしているのだろう。ゆっくりと身を地面に横たえると、星空を眺めて数秒もしないうちに瞼が重くなってきてすぐに意識が落ちた。

何気に作者は戦闘パートは大好きなのですが、こういう話は少し執筆作業が遅れがちになってしまいます。


やっぱりノリと勢いってのは大事なんだなと思いました。


それではまた次回に、今度もあまり間を置かずに更新したいと思います。(ストックができればいいんですけどね)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ