いたずらっ子にはご注意を!
「パンパカパーン!おっめでとぅございまぁーす!あなたは異世界を救う救世主として、このわたしに選ばれちゃいましたー!イェーイ!!」
ドンドン、パフパフなどのパーティーグッズでも使っているような耳障りな音に眉をしかめる。昨日は花の金曜日で今日は土曜。やっときた休みなんだからもう少し寝かせてほしい。
「あっれぇ~?これでも起きないなんてなかなか図太い神経してるね~。じゃあ次はこれをいっちゃおう!」
楽しげな少女の声が終わるのと同時に、何か重たい物が枕元に置かれる音が響く。夢にしては
やけにリアルな音だなと思いつつも寝返りを打って音がしたほうとは逆を向く。そうして微睡からまた深い眠りに落ちようとしたところでテレビでしか聴いたことがないような導火線を焼くようなジジジッという音が近づいてくるのを耳にした。
「さあさあ、これで起きるでしょう!わたし特製目覚まし大砲Ver.2.7!今回は音と紙吹雪の量をなんと2.7倍にしてみました!イェイイェイ!」
Ver.2.7ってその2.7倍のことかよ!と心中で突っ込みをいれるが起きるとはしない。とにかく俺は眠たくてしょうがないのだ。
「さ~てここでカウントダウンいってみよ~!せ~の!3!2!1!」
ゼロッという少女の声が聴こえた瞬間、ドッカーン!とこれまた漫画とかでしかないんじゃね?みたいな音が鼓膜を震わせ、音と衝撃に驚いて飛び起きる。目を見開いて周囲を見渡すとそこは真っ白い床と天井がどこまでも続いている空間と楽しげに大成功!わ~い!とはしゃいでいる見た目小学6年生の少女がいた。いや、正直な話、耳はまだ聴こえていない訳で、少女が何を言っているのかは想像に過ぎないのだが、とにかく安眠妨害をしたこの愉快型極悪少女を一発殴りたいと思った俺は悪くないと思う。
……悪くないよね?
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「さて、先ず最初に言うことがあるよね?」
「え~と、おはようございますぅ?」
可愛らしく人差し指を頬に沿えて小首を傾げる仕草に思わず笑みを浮かべそうになったがすぐに表情を引き締め、年長者としていけないことはいけないと注意をすべく、厳格な態度を維持する。
「違う!ごめんなさいだ。人に迷惑をかけたらごめんなさいと言う、そうお母さんに習わなかったのか?」
「う~ん、お母さんはいないよ?」
「なっなんだって!?」
こんな小さい、と言っても小学生高学年ならそうでもないか?の少女にお母さんがいないなんて、これはもしかしなくても地雷を踏んでしまったか?辛いことを言ってしまったという自責の念からどう謝ったらいいのか1人悶々としていると、少女が笑いながら話しかけてきた。
「別にそんなこと気にする必要ないよ。だってわたしは1人で勝手に生まれてこうして存在しているだけだし」
「うぅ、なんて強い子なんだ」
健気な少女の様子に目尻から涙が零れる。それを気づかれないようにそっと拭い、意を決して両手を広げて少女に合わせて片膝を着く。
「そんなに強がらなくていいんだ!さあ、お兄さんの胸に飛び込んでおいで!優しく慰めてあげるから!」
「え、やだ気持ち悪い。お巡りさ~ん!ここに変態がいま~す!」
「ちょっ、それだけはマジで勘弁してください!お願いします!」
相手が少女であることを星の彼方にすっ飛ばし、平身低頭、土下座して許しを請う。ロリコンなんていう不名誉なレッテルを貼られるのは絶対に嫌だ!俺の好みは色気溢れるお姉さん系なのだ……って何を言ってるんだ俺は!?
「まあまあ、そろそろ頭を上げなよ、お兄ちゃん。でないと話が進まないんだから」
「話って……、そういえばここはどこなんだ?俺は確か狂った男に勘違いから刺されて……」
思い出したように刺された筈の腹をさすってみるが痛みなどないし、服をめくってみても傷跡一つない肌がそこにはあるだけだ。
「ふっふっふぅ~ねぇ知りたい?ねぇねぇ知りたい?」
「あれが夢じゃないとしたら、ここは死後の世界ってことか?」
「ぶぅ~、ちょっと~わたしを無視しないでよぉ~~」
いちいちメンドクサイ態度を取る少女にげんなりしつつ、とにかくこのうざったい少女の話とやらを聞かないことには何も始まらないかと思い直す。
「うざったいとは失礼だな~。これでもわたしは女神様なんだよ?偉いんだから!」
えっへんと無い胸を張られても全然何も感じない。
それよりも、うざったいだなんて自分は口にしてないのになんでわかったんだろうか?え?女神様の部分?きっと頭のイタイ子なんだろう。うん、きっとそうだ。
「イタイ子だとは失礼な!もう怒ったもんね!女神の力の一端を見せてあげる!」
「いや、人の心を勝手に読むのをまずやめっ!?」
突然頭に衝撃がはしり、あまりの痛さにうずくまる。それと同時にガランガランッという金属質の音が聴こえたのと視界の隅に映ったものでその正体に気付く。
「金ダライって、けっこう痛いものなんだな。つか、なんで金ダライ?」
どこから降ってきたんだろうと上を見上げてみるも、そこにあるのは白い天井のみ。どこかに開閉装置でもあるのか?と思って目を凝らしてみるもそんなものは見つけられなかった。
「ふっふっふぅ~。これでわたしの力を思い知ったかな?」
「もうわかったから続きをへぶっ!?」
金ダライ2発目。今度はやや小さかったのかそこまで衝撃はなかったが痛いものは痛い。あまりの痛さとムカつきから少女の頭にアイアンクローを極めたほどだ。
「イタイイタイイタイッ!!やめて離して、お願いぃ~~!!」
「もうやらないか?」
「やらないやらない!だから離して!」
「わかったならいいんだよ」
手を離し、掴まれていた頭をさする少女を改めて観察する。
髪はこの空間と同じ白、瞳は金色に輝いている。その容姿だけで確かに神様と評してもいいくらいに現実感がない。つか金色の瞳の人間っているのか?少なくとも俺はまだ会ったことがない。服装はこれまた真っ白なワンピースに、足首に巻きつけるタイプのめんどそうなサンダルを履いている。
そうやってしばし観察していると、痛みから回復して観察するために見つめられていた視線に気づいたのか、恥ずかしそうにもじもじとしだした。
「や~そんなに見つめられると恥ずかしいよ~。もしかしてわたしに惚れちゃった?でもダメダメ!わたしはみんなの女神様なんだから、誰か一人の為に生きられないの!!」
やっぱりメンドクサイ。黙っていれば美少女なのに、発言すべてが残念感丸出しでなんだか疲れてきた。とりあえずイヤイヤと身をくねらせて頬を赤く染めている少女にアイアンクローを喰らわせてやる。
「だからイタイからやめてってば~!」
「だったら話を進めてくれよイタイ子ちゃん」
「誰がイタイ子ちゃんよ!もうそんな悪口を言う人にはお仕置きなんだから!!」
えいっと頭上を指差した少女の挙動にまたタライか!?と身構えてみるもいつまで経っても何も起こらない。もしかして不発か?なんて油断したところで今度は背中を思いっきり強打されて床にキスをするはめになってしまった。
「ふふっ、女神様の力、思い知ったかな~?」
「くっ、今度はなんなんだよ?」
わざわざ覗き込むようにしてしゃがみ込んだ少女の顔を見上げれば、にんまりと意地の悪そうな笑みを浮かべる顔が目に映る。それにまたイライラを募らせながら起き上がろうと床に手をつき、身を起こそうとする。
「あ、ダメ!まだ直してなっ」
少女の焦った注意の声も遅く、勢いよく身を起こしたところに後頭部に衝撃が襲い、再度床に強烈なキスをしてしまう。そして意識が遠くなっていくのを感じつつ、後頭部を襲った物体の正体だけでも確かめようと首を巡らせる。ギリギリ視界の端に捉えたそれは縄で吊られた丸太。あまりにもあんまりなそれに、丸太かよという突っ込みをいれて意識を手放した。
いや~久ぶりに書いてますが、すんげぇ楽しいですわ。
あまりにも楽しくて長くなりがち(といっても他の方の作品に比べれば文字数はすくないでしょうが)で、2分割にしようと思います。
まあ、更新を続けて行うことで習慣化させようという意図もあるにはあるんですけどね。
それでは、また明日にでも更新できるように頑張ります!!