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社会不適合者の異世界戦記  作者: サツキ
異世界ライフも悪くない!
16/32

リロードは気分♪

 「んじゃ、準備も整ったところで戦闘開始といきますか……!!」


 恐怖心を押し殺し、己を鼓舞するかのように呟き、銃把を握り締める。呼吸を整え、茂みから顔を覗かせてオークの集落を観察する。こちらに気付いた様子がないのを確認してから撃鉄を引き起こし、戦いのゴング代わりに爆烈魔術を立て続けに6発、集落全体に発動させた。


 爆発が巻き起こり、それぞれ2~3体を吹き飛ばす。致命傷に至らないまでも、ある程度の手傷を負わせたりできたから結果は上々だろう。空薬莢をシリンダーから排出し、スピードローダーで装填する。


 ブヒブヒ鳴いてわめいているオークたちの視線を集める為に茂みから飛び出し、木々の間から射線が通っているオークに向かって銃撃を開始する。距離にして25メートル。この距離なら外すことはまず有り得ない。



 「さあ、豚ども!!俺はここにいるぞ!!」


 一発一発丁寧に両手で狙いを定めて胴体に2発ずつ撃ち込んでいく。込めた魔術は魔力弾が相手に撃ち込まれると、体内で小規模の爆発を起こして破壊するものだ。相手を確実に殺傷することが目的のため、人相手には安易に使用する訳にはいかない。そして、なぜ一発で発動できる威力の高い爆発魔術がすでに使えるのに、この魔術弾を作ったのか。それは単純にマガジン火力を底上げするためと、リロードの隙をなるべく少なくするためだ。



 「リロードは気分って、まさにこのことだな……」


 6発しか装填できないリボルバー拳銃で合計30発の魔術弾を撃ち尽くす。迂回するように木々の陰から近付いてくるオークから距離を取るために後退を開始する。罠を仕掛けた場所は少し離れているため、移動しながらリロードし、なるべくオークがバラバラにならないよう牽制しながら走るのは結構骨が折れた。



 「追ってきてるオークの数は20体ってところか。洞窟の中にあまり残ってなければいいんだけど……」


 目印の布を越えて50メートルほど疾走する。オークたちの集団の中心が布の辺りに来たところで用意していたカードに魔力を通し、仕掛けていた魔術を遠隔起動する。



 「実戦で初めての中規模魔術の発動だ。上手くいってくれよ?」


 オークたちがいる周辺の木々には黒字に白の文字でそれぞれゲボ、スリサズ、ナウシズのルーンが書かれたカードを張り付けてある。意味は”惜しみない茨の苦しみを”だ。そして黒は地属性を示すシンボルカラーだ。故に発動する魔術は地面から無数の茨を出現させ、オークたちを拘束するものだ。



 「うわ~~、やった自分で言うのもなんだが……この光景だけはないわ~~」


 想像して……いや、やっぱり想像するのはおすすめしない。アレな漫画で触手とかで縛られているのが女性だから良いものの、目の前で繰り広げられているのはみにくい豚どもが茨で締め上げられている光景だ。正直言ってこれ以上見たくない。



 「とりあえず、効果が切れる前に止めはさしておかないとな」


 念には念を入れて近づきすぎないように注意しながら一体一体、頭に狙いを付けて倒していく。ゲームみたいに死体が消える訳ではないので、グロテスクな光景がそこには広がっている。茨が絡みつくようにして拘束しているので、頭が吹き飛んだオークはさながら赤いバラを咲かせているようだ。



 「もともと花を愛でるような趣味はないけど、しばらくバラを見たら思い出しそうで嫌だな」


 15体を数えた所でオークを拘束していた茨が緩み始めているのに気付く。慌てて残りを倒そうと思ったが時既に遅く、2体が無理やり茨を引きちぎってこちらに向かってきていた。



 「ああ、くそっ!射線が通らねぇ!」


 ぷぎー!!っと仲間を殺された恨みからか、怒ったように雄叫びを上げながら二手に分かれて突撃を敢行してくる。どちらも仲間の死体や木々を盾に近づいてくるので狙いを付けることが叶わない。銃で迎撃するのを諦め、ハンターナイフを引き抜く。



 「近接戦闘に自信はないけど、殺されてやる訳にもいかないからな!!」


 イヤリングを仮面に変えて心造兵装を発動させる。するとオークたちの動きが緩慢になり、少し心に余裕が生まれる。冷静に動きを見極めながら、始めに接敵したオークの手斧をかわし、2体目の槍の突きをさらに体を回転させて避けきる。

 そのまま回転しながらナイフを一閃、くの字型に曲がったハンターナイフは重心が刃先に偏っているため、遠心力を十分に活かして首を叩き斬る。



 「一体目!!」


 勢い余って後ろに流れていったオークがまだ体勢を立て直し切れていないのを確認してから、残りの3体を迎え撃つ。


 剣による横薙ぎの一撃をスライディングで躱し、ついでに足をすくい上げるよう切りつける。バランスを崩して倒れるのを待たず、すぐに立ち上がって残りの2体を警戒する。


 正面にいたオークは突然現れた自分に驚いたのか、すぐには身動きが取れないようだったので脳天にハンターナイフを振り下ろして叩き割る。頭蓋骨に刺さったまま引き抜くことができなかったハンターナイフをすぐに諦めて手放し、動きを止めないように走り抜ける。



 「残りは三体、増援なし」


 妙に冷静な頭で状況を把握しつつ振り返る。足に傷を負わせた奴はまだ立ち上がれていないようだが、始めの手斧を持った奴と最後尾にいた棍棒を持ちのオークは別々に襲い掛かるのは得策じゃないと感じ取ったのか、じりじりと襲い掛かる隙を窺がっている。



 「警戒してくれるのはありがたいけど、この距離は俺の間合いだぞ?」


 距離にして10mほど、詰めようと思えば容易に詰められる距離だ。武装に関して言えばハンターナイフは手放してしまったのでない。カードで魔術を使おうにもすぐには無理。となれば残る手はホルスターに仕舞った拳銃だ。幸い、撃ち切ってはいないので、弾切れの心配はいらない。


 気分は西部劇のガンマンってね。少しでも切っ掛けがあれば動き出す状況。張りつめたこの緊張感はキライじゃない。


 そして状況は動き出す。戦いのゴングを鳴らしたのは倒れていたオークだ。なんとか立ち上がろうとして失敗したのか、派手に音を立てて転んだものだからそちらに2体の気が逸れる。その隙を見逃さずにクイックドロウ、先に振り向いた方に一発叩き込み黙らせる。遅れた方にもすぐさま撃ち込んで仕留める。そして隙を作ってくれたオークにも止めを刺しておくのを忘れない。



 「これで終わりじゃないんだよな~~。よっと、ハンターナイフも回収完了っと。うへぇ、血がべっとり……、帰ったらまたロベルトさんにでも相談して手入れの仕方を教えてもらわないとな」


 ハンターナイフを振って血糊を払い、鞘に納める。拳銃も装填し直し、戦闘準備を整えてから洞窟の方に戻る。ちなみにオークの死体は放置することにした。討伐証明部位がどこかわからないし、何より連れて行かれた人たちが気になる。血の臭いに狼たちが寄ってこないか心配ではあるが、先ずは人命救助が最優先だ。



 「やっぱり世の中そう甘くないよな……」


 オークたちの集落まで戻ってくると、洞窟の入口を守るように10体のオークが周囲に目を光らせて警戒していた。さらに悪いことに、急いで戻ってきたため気配を消し切れず、こちらの方に気付いているようだ。



 「さあて、第2回戦といきますか。ここからは少しピッチを上げさせてもらうからな。覚悟しろよ!」


 気合を入れ直し、襲い掛かってきたオークたちを迎撃するために拳銃を構えた。

またまたお待たせしました。


どうにも自分にとってはこれくらいの更新速度の方が性に合っているような気がします。

それでも遅くならないようには努力しますが……。


では、また次回もよろしくお願いします。

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